解説: Expedition 33 - Act III. マエル
第 33 遠征隊はモノリス頂上でルノワールとペイントレスを撃破し、数十年来のルミエール市民の悲願であるゴマージュの停止を成し遂げた。ルミエールへの凱旋後、アリシアから託された手紙によってこの世界の構造が明かされる。この世界は現実世界の画家アリーン・デサンドルが、火事で失った息子の悲しみから逃れるために描いた画布の中の世界であり、倒した「ペイントレス」は画布に没入し続けていたアリーン本人、白髪のキュレーターは妻を引き戻そうと画布に介入していた現実世界の夫ルノワール、画布のヴェルソはアリーンが亡き息子から描き直した複製、そしてマエル自身が、火傷で顔と声を失った現実世界の末娘アリシアが画布に入った姿だった。モノリスの数字は死の宣告ではなく、衰弱するアリーンが「これだけしか守れない」と市民に告げる警告だった。ヴェルソが真実の手紙を海に捨てた瞬間、ペイントレスの庇護を失った画布世界は崩壊し、ルミエール市民は全員霧散した。
エピローグでは現実世界の屋敷で目覚めたアリシアが姉クレアから両親の闘争と画布世界の状況を告げられるが、アリシアは再び画布に踏み込んだ際にアリーンのクロマに飲み込まれて記憶を失い、そのまま画布の中で「マエル」として 16 年を生き直してきた。Act III は、その外装が剥がれ、画家としての能力とデサンドル家の記憶を取り戻した白髪のマエルが、廃墟のルミエールに立つ場面から始まる。
Table of Contents
- 1. ルミエール
- 2. 史上最高の遠征隊
- 2.1. 仲間との再対面
- 2.2. 新しい遠征の発足
- 2.2.1. マエル
- 2.2.2. ルネ
- 2.2.3. シエル
- 2.2.4. エスキエ
- 2.2.5. モノコ
- 2.2.6. 史上最高の遠征隊をつくる
- 3. 最後のキャンプ
- 3.1. 入水自殺の真実
- 3.2. ウルリエの奪還
- 3.3. 三つのサブクエスト
- 3.3.1. シエル: 親密度 6
- 3.3.2. シエル: 親密度最高
- 3.3.3. ルネ
- 3.3.4. モノコ: 親密度 5
- 3.3.5. モノコ
- 3.3.6. エスキエ: 親密度 5
- 3.3.7. エスキエ: 親密度 6
- 3.3.8. エスキエ: 親密度最大
- 3.3.9. マエル
- 3.3.10. 仲間の様子を見る
- 4. シレーヌのドレス
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- 4.0.1. ルネ: 親密度 6
- 4.0.2. ルネ: 親密度最高
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- 5. 聖なる川
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- 5.0.1. モノコ: 親密度 6
- 5.0.2. モノコ: 親密度最大
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- 6. リーチャー
- 6.1. 緑のオルフラン
- 6.2. アリシアとの対面
- 6.3. リーチャー後のキャンプ
- 6.3.1. マエル: 親密度 6
- 6.3.2. マエル: 親密度最高
- 7. 噴水
- 8. ヴェルソのジャーナル
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- 8.0.1. ジャーナル - ヴェルソ
- 8.0.2. ジャーナル - 捜索救助隊ジュリー
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- 9. アトリエ
- 9.1. 工房に置かれた聖書
- 9.1.1. 最後の審判
- 9.1.2. 受肉
- 9.1.3. 左ページ: マタイ伝第二十五の末尾から二十六章の冒頭
- 9.1.4. 右ページ: マタイ伝第二章
- 9.1. 工房に置かれた聖書
- 10. 空飛ぶ屋敷
- 10.1. 四体のネヴロン
- 10.2. 画布のクレアとの戦い
- 10.2.1. 空飛ぶ屋敷にいるジェストラル
- 10.2.2. 空飛ぶ屋敷にいる少年
- 10.2.3. 四体の敵を倒した後
- 10.2.4. クレアに勝利した後
- 11. ルノワールの下書き
- 11.1. 深淵
- 11.2. シモンのジャーナル
- 11.3. クレアと自己の解釈権
- 11.3.1. ジャーナル - シモン
- 12. 終わりなき塔
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- 12.0.1. 最初の会話
- 12.0.2. 挑戦途中の会話
- 12.0.3. クリア後の会話
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- 13. ルミエール
- 14. マエルとして戦う
- 15. ヴェルソとして戦う
- 16. 世界の真相
1.
ルミエール
人々がゴマージュで霧散した後のルミエールに、白髪のマエルが現われる。前章のエピローグで、マエルが画布の世界に入ったときにアリーンのクロマに飲み込まれて記憶を失ったことが語られた。しかしここで、アリーンが描いた外装のクロマがゴマージュによって剥がれ、画家としての能力やデサンドル家の記憶と共に本来のマエルの姿に戻ったことを描写している。ここまでの物語でずっと「マエル」として生きてきた彼女は、画布世界の住人のマエルであると同時に、画家アリシア・デサンドルとして画布の中に立っている。
マエルはルミエールの廃墟を歩き、BOULANGERIE の看板を見つける。これはヴェルソがルミエールにいた頃に住んでいた場所。物語中盤でのヴェルソとの会話を覚えているプレーヤーは、マエルがこの看板を頼りにヴェルソを探していることを察する。マエルはその近くの広場にヴェルソが一人佇んでいるのを見つけ、静かに横に座る。
1.1.
二人の再会
マエルとヴェルソの再会の会話で、これまで両者が抱えてきた秘密と誤解が整理される。マエルは、現実世界のデサンドル家の末娘であり、火事でヴェルソを失った張本人であるという自分の本当の出自を思い出している。ヴェルソもまた、自分が真のヴェルソではなく、母アリーンが息子の記憶を元に画布の中に描いたコピーであることを、もはや隠さない。しかし、マエルは「あなたはあなた」「わたしはまだマエル」と応答し、二人とも自分たちの存在の偽性を引き受けつつも、その上で互いを互いとして認め合う。
この会話の中でマエルは初めて「わたしが母さんの話を聞いていたら、作家たちを信じていなかったら、ヴェルソはまだ生きている」と罪責感を口にする。火事は、アリシアが幼かった頃、両親が警告していた作家たちの危険を信じず、彼らに何らかの形で利用されてしまったことに端を発しており、ヴェルソはその結果として妹を救うために命を落とした。マエルは長年その事実を背負って生きており、画布世界に逃避した動機の中核にこの罪責感が据えられていたことが、彼女自身の言葉として表れる。そしてマエルの「思い出すのを助けてくれたら良かったのに」という言葉は、ヴェルソが手紙を捨てたことを知っているようにも取れる。いずれにせよ、ヴェルソが隠していたことは一往復の謝罪で清算される。両者は互いの罪責を認め合い、それでもなお共に立っている関係を選び直す。
しかしここで二人の対立が浮上する。ヴェルソは画布世界の存在そのものが母アリーンの病理の原因で、現実のデサンドル家を引き裂いてきた根源であり、消滅させるべきだと考えている。一方、マエルは、彼女にとって画布世界は単なる母親の悲嘆の容器ではなく、自分が 16 年間生きた現実であり、ギュスターヴもルネもシエルも、彼らの愛も笑いも痛みも、本物だった。この主観的真実と存在論的偽性の対立こそが Act III 全体を支配する争点の根本となる。
マエルは画布世界を再構築する計画をヴェルソに告げる。彼女はエピローグで姉クレアとキャンバスを巧妙に隠しており、母が再びこの世界に戻っている道を塞いでいる。ゆえに父が画布世界を破壊する理由はもはや存在しない。そして、画布のルノワールは母さんが悪く描いていて実物はもっと理性的な対話ができ、何より私に弱いから願いを聞いてくれると楽観的でいる。
1.2.
父との対峙
広場で待ち受けるキュレーターが巨大な筆を大きく一振りすると真のルノワールの姿に戻る。これは遠征隊が戦った画布のルノワールとは異なる、現実の画家としてのルノワール・デサンドルの姿である。彼はマエルを「アリシア」と呼び、無事を喜ぶ。しかしその直後の対話が、マエルの希望的観測を完全に裏切ることになる。
ルノワールはまず、ヴェルソに対して意外な敬意を示す。ルノワールは画布のヴェルソを単なる消去対象として見ているのではなく、妻が描いた偉大な作品として認識し、その存在自体がヴェルソ本人に与えた苦痛に対して謝罪している。マエルが先ほどヴェルソに告げた「実際のルノワールはもっと思いやりがある」という観測は、表面的には正しい。
しかし、ルノワールはマエルに画布世界の完全消去を改めて告げる。母を画布から引き剥がしただけでは不十分であり、画布そのものを破壊しなければ家族は完全には救えない。「生きている者のために、死んだ者は手放さなければならない」というルノワールの倫理の核心は、画布世界の完全消去を愛による救済として要求する。母が病から戻れない今こそ根本解決の最後の機会であり、画布の中に長く留まる娘自身も同じ病に冒される前に連れ帰らねばならない、と判断している。
しかしマエルにとって、火傷を負った現実の自分の人生よりも、画布で築いた 16 年の方がはるかに本物の人生である。父の「生きている者のために」という倫理に従えば、彼女自身が手放される側に分類される。懇願は退けられ、ルノワールが杖を振るうと衝撃波がルミエールを包み始める。ヴェルソが霧散しかけるが、マエルが画家としての力を初めて自覚的に行使して抹消を止める。そこにエスキエとモノコが現われる。二人がエスキエに乗ろうとするとき、マエルは周囲に散るクロマに「みんなが見える」とつぶやき、クロマを集めてから広場を離脱する。
このムービーパートにより Act III が思いやりに満ちた父の愛と、画布の住人を救おうとする娘の愛という対立構造が確定する。この章は両者が同じ画布世界を巡って正反対の結論を導き出す倫理的衝突として展開して行く。
会話の書き起こし
ヴェルソ「アリシア?」マエル「“マエル” の方がいいかな。」ヴェルソ「俺もだ。だが、俺は本当はヴェルソじゃないし、きみは本当はマエルじゃないだろう?」マエル「うん、あなたはヴェルソじゃない。見た目も声もそっくりだけど、あなたはあなた。わたしはまだマエルだけど。」立ち上がるヴェルソ。マエル「思い出すのを助けてくれたら良かったのに。」ヴェルソ「ああ。俺は… そうしたかった… だが… すまない。」マエル「こっちこそ。わたしが母さんの話を聞いていたら… 作家たちを信じていなかったら、ヴェルソはまだ生きていて、あなたは…」ヴェルソ「存在しなかっただろう。」マエル「板挟みになっていなかっただろうね。母さんはひどいことをした。ヴェルソのキャンバスにあなたを描いて、彼の記憶を与えて。火事が奪ったのはわたしだけだと偽って。だけど、あなたがいてくれて嬉しいよ。」ヴェルソ「きみの父親には全員を消す権利があった。こっちの方がマシだ。」マエル「マシって誰にとって?ヴェルソなら、自分のキャンバスが消えることを絶対に望まない。彼はエスキエも、ジェストラルもグランディスも愛してた。」ヴェルソ「それが俺の… 俺たちの母親を殺し、ひどく長い間、見せかけの世界に留めていた。見せかけの家族とともに。」マエル「見せかけじゃない。違う… あなたは… 私にとって…」マエル「父さんはここにいる。ルミエールを直すのを手伝ってくれる。」ヴェルソ「そうだろうか。」マエル「母さんは父さんを実物よりもかなり悪く描いていた。あなたの知っているルノワールよりもずっと思いやりがあるよ。」ヴェルソ「だな。」
マエルはペイントレスとしての記憶を取り戻した。ヴェルソ「みんなを消したのは、君の父親だ。なのに、すべてを描き直すのを手伝うだろうか。」マエル「ここに入る前にキャンバスを隠したの。だから母さんは二度と戻ってこられない。もうキャンバスを消す必要なんてないの。」ヴェルソ「彼は君に帰ってほしがるだろう。」マエル「わたしは母さんみたいに不安定じゃない。このキャンバスにいる時間も、そんなに長くない。それに、父さんは私に弱いから、聞いてくれるよ。」ヴェルソ「ふむ。」
広場に大きな筆を持ったキュレーターが立っている。筆を振ると花びらに囲まれルノワールが現われる。マエル「父さん!」ルノワール「アリシア。無事でよかった。家にいろと言わなかったか?」マエル「厳密に言えば、体は家にあるよ。」じろりとヴェルソを見るルノワール「アリーンの最高傑作だ。お前にひどい痛みをもたらし、後悔している。アリーンがしたことは道義に反していた。何よりお前には。どうかデサンドル一家を許してくれ。償いとして忘却を提案するのは不条理に思われるだろう。だが恐らく、それが我々の両方が望む結果だ。」マエル「え…」ルノワール「お前を誇りに思うよ。母親をキャンバスから引き出すのは簡単なことではなかった。だがキャンバスを消してしまえば、もう何の心配もない。」マエル「だけど母さんはもう家にいる、なんで…」ルノワール「分かるだろう。ヴェルソが描いたキャンバスはあの子の魂の一部を抱え込んでいる。母親は絶対に手放そうとしない。」マエル「違う。」ルノワール「生きている者のために、死んだ者は手放さなければならない。」マエル「やだ、父さん、ねえ、キャンバスは隠し…」ルノワール「彼女は必ず見つける。これが唯一のチャンスなんだ。彼女がキャンバスに長く潜りすぎて病み、戻ってこられない間に。」マエル「でも… 嫌… 父さん。父さん、お願い。ヴェルソのキャンバスはこれだけなの。わたしたちに残された最後のヴェルソを奪わないで。ここが私の家なの!父さんに決める…」ルノワール「お前の家?母親にあんなことがあったのに、留まりたいのか?」マエル「分かるでしょ。外の世界のわたしの人生は、ないも同然だって。」ルノワール「アリシア。このままでは死んでしまう。既にここに留まれる限度を超えているんだ。」マエル「でも…」ルノワール「駄目だ。いいか、駄目だと言ったんだ。娘の命を危険にさらすことはしない。アリシア。」アリシア「私は母さんとは違う。ここにいても自分を見失ったりしない!」ルノワール「いいや、失うさ。そして私は二度とこんなのは御免だ。」ルノワールが杖を地面に突き立てると、衝撃波が周囲を包み世界を破壊して行く。マエル「父さん、何を…」ルノワール「家に帰る時間だ。」ヴェルソがクロマに覆われ霧散しかける。しかしアリシアが力 (描画) を使って抹消を止める。エスキエ「友よ!」モノコ「乗れ!」マエル「ヴェルソ、来て。ほら!」次々と生まれる大型ネヴロン。周囲には花びらのようなクロマが散ってる。マエル「みんなが見える…」集めたクロマを胸にマエルはエスキエに乗る。
2.
史上最高の遠征隊
ルミエールから逃れた二人のキャンプでは、マエルはクロマを制御しようとするが、画家としての力はまだおぼつかない。この章から本作におけるペイントレスという語は、母アリーン個人の呼称ではなく、本来の「画家」を指す名前で使われるようになり、画布の世界で命の創造と消滅を操る者と再定義される。ここで、シレーヌは母アリーンの「脅威をもてあそぶ女」、ヴィサージュは兄ヴェルソの「嘘で真実を守りし男」として、アクソンがルノワールによって描かれたものであることが明かされ、ヴェルソは「絵は本物に見えるものを描くことじゃない、本質を描くことだ」と助言を与える。マエルはそれを手がかりにルネとシエルの本質を捉え、彼女らの復活に成功する。前章の終盤で抹消されたパーティが、画家としての娘の手で再び形を取り戻す。
2.1.
仲間との再対面
しかし復活と和解は同義ではない。ルネは、真実を知りながら仲間を欺き続けた行動は裏切り以外の何物でもないとヴェルソに激しい怒りをぶつける。ルネは「母を救うために人々を犠牲にする」という二項対立そのものが間違っていると反論し、ヴェルソが信頼して真実を共有していれば、第三の道も見つかったかもしれないと告げる。これは、アリシアの手紙にも書かれていた、ゼロサムに捕らわれない結末の模索そのものである。ヴェルソは反論せず受け止めた上で、亡くした人たちを甦らせるために何でもすると確約する。
シエルの反応はルネとは正反対である。画布世界の存在論が露呈したことで、シエルにとって死は「永続的な喪失」から「再会の可能性」へと意味が変わった。彼女は怒りを既に自分の中で昇華しており、物語中盤で示した死生観が再会の希望へとさらに更新される。ただし彼女は感傷的になるのではなく「ピエールを甦らせるのを手伝う限りは」と明確に取引化し、希望を希望のまま宙づりにせず、義務として固定する。
マエルは父ルノワールがまだ画布世界を消去していない理由を「母との戦いで弱っているから」と分析するが、ヴェルソは再び大規模に崩壊が起きたら今度はマエルがモノリスに幽閉される危険を語る。ヴェルソは、画布世界をめぐる戦いを終わらせる唯一の方法は、マエルが画布から去って「家に帰る」ことだと提案する。これは、ルノワールに画布世界を消去させることを意味する。マエルはこれを受け入れない。
2.2.
新しい遠征の発足
ペイントレスとしての能力を取り戻したマエルだが、ルミエール市民を全員復活させるには大量の純粋なクロマが必要。そのほとんどは父ルノワールの支配下にある。しかし、ネヴロンに殺された遠征隊のクロマは遺骸に残っているという事実を生前のギュスターヴが発見しており、解決の糸口として浮上する。遺骸のクロマは古く純粋なものではないが、当面の目的として各所に散らばる遠征隊の遺骸からクロマを回収することとなった。
この計画の意義は重層的である。第一に、ギュスターヴの生前の発見が、彼自身を含む数十年間のすべての遠征隊の死を意味のあるものへと転換している。彼らはペイントレス討伐の過程で失敗したのではなく、ルミエールを再構築するためのクロマを温存する入れ物として死の意味を変えた。前章の終盤で後に続く者たちが抹消され空転していた遠征隊の合い言葉が、ここで新しい意味を獲得して再起動する。第二に、旧来の遠征隊はペイントレスを倒すために大陸へ出ていったが、新しい遠征隊はマエルというペイントレスが同行してルミエールに帰還する。目的は破壊から創造へ、遠征隊の歴史的な反転である。
マエルとシエル、ルネの静かな調子で会話する。マエルは「外の世界の家族」と「画布の家族」の両方の記憶を持つ違和感を語る。シエルが「本当の家族が見つかったからもう孤児じゃない」と慰めるのに対して、マエルは現実の家族への愛と、画布の家族への愛をどちらも本物として並列に保持することを選ぶ。ギュスターヴもエマも、代わる代わる面倒を見てくれたみんなも等しく自分の家族であると。その言葉を聞いたシエルはすこし微笑んだ顔をする。
シエルの「長い時間の中で初めて希望が持てた」という一言がこのキャンプ全体の感情的な総括となる。32 歳までしか生きられない宿命を抱えていた彼女が、画家による世界の再構築という前例のない可能性の前で、初めて未来に希望を持つ。前章まで遠征隊を駆動していた死の覚悟が、本章では生の可能性へと裏返り、第 33 遠征隊は各地を廻ってクロマを回収する。
パーティはかつて訪れた各地を巡り、ネヴロンに殺された遠征隊員たちの遺骸を次々発見し、そこからクロマを抽出して行く。この遠征はムービーで一気に進行し、プレーヤーは傍観者としてモンタージュ的に見守るだけである。ここはプレイヤー操作で再訪したかった場面でもあるが、これまで隅々まで探索し尽くした地域を改めて巡回コンテンツに仕立て直すのは開発リソースの観点で割に合わなかったのだろう。物語の側で解釈すれば、ルノワール戦までの時計が既に動き始めている中で第 33 遠征隊の遠征のテンポを緩めず、破壊から創造への転換のトーンを薄めないための、必要な省略として受け取るのが収まりが良い。
キャンプでの会話の書き起こし
クロマの制御を練習するマエル。マエル「父さんはあんなに簡単にやってたのに。どうしてうまくいかないんだろう?」モノコ「仕方ない。自分がペイントレスだと思い出してまだ一日しか経っていないんだ。」ここからペイントレスとは画家の意味を持つ。エスキエ「君ならできる!」ヴェルソ「彼女たちを思い出せ。絵は本物に見えるものを描くことじゃない。本質を描くことだ。」マエルの手を取る。ヴェルソ「彼女たちという人間の真実を。きみの父親がアクソンを創ったんだな?」モノコ「脅威をもてあそぶ女。嘘で真実を守りし男。」ヴェルソ「きみの母親と… 兄の本質だ。」マエルが剣を一振りすると、クロマの中からシエルとルネが現われる。ルネ「どうやって…」シエル「あたしたち、抹消されたのに…」ルネ「マエル… その髪は?」マエル「何から話せばいいかな。」
ルネ「あなたは彼女の娘だったのね。そしてペイントレスでもある。」エスキエ「かなりクールだよな?」ルネ「それに貴方。ずっと知っていたのね。この臆病者。私たちを裏切った。私たちは貴方を信じていたのに貴方は…」シエル「あんたは元に戻せるんでしょ?あたしたちが失った全員を。」マエル「わたし… うん。けどクロマが要るし、ここのクロマは全部、父さんの手の内にある。」ルネ「いいえ。すべてではないわ。ネヴロンに殺された遠征隊員たち。ギュスターヴが気付いたの。彼らの亡骸にはクロマが残っていた。彼らは消散しなかった。抹消のように。」マエル「うーん。古いし、純粋なクロマじゃない。二人を甦らせたようにはいかないだろうけど… 別の方法で使えるはず。」モノコ「史上最高の遠征に向かうときが来たな。」
2.2.1. マエル
「父さんが全部消しちゃう前に、キャンバスから追い出さないと。」「まだ消していないのが驚きだ。」「母さんと戦って弱っているんだよ。だからわたしたちを追ってこないのかも。でも時間はあんまりない。」「きみが父親と戦い続けていたら、再びこの世界が壊れる危険がある。また崩壊が起き、今回はきみがモノリスの中に閉じ込められるかもしれない。」「他の方法は?」「きみが… 家に帰るべきかもな。」「ヴェルソ…」「きみたちは戦い続けているが、やっているのは同じことだ。」「違う。」「アリーンは息子を、ルノワールはきみとアリーンを取り戻したがっている。そしてきみはギュスターヴを。俺たちが壊すべき輪廻は抹消じゃなく、きみたち家族の悲しみの連鎖だ。」「…」「俺たちの世界は、きみたち家族の悲しみという重荷を背負っている。」
2.2.2. ルネ
「ルネ…」「貴方を信じたのは間違いだった。」「なら、きみが俺の立場だったらどうしていた?」「私なら仲間を裏切らない。大事な人たち全員に、貴方たちは消されそうだと警告する。真実を伝えるわ。乗り越えてきたことを考えれば、私たちはそうされるに値していた。」「きみなら母親より遠征隊を選ぶのか?」「それは貴方の問題でしょう。その二項対立は間違っている。二者択一の状況ではなかった。他の解決策だってあり得たのよ、貴方が私たちを信じて頼ってくれてさえいれば。」「真実を知ってもなお、俺が母親をキャンバスから追い出すのに手を貸してくれたか?」「…」「彼女を救ったことに対して謝罪はしない。だが、きみの信頼を裏切ったことは申し訳ない。全員を甦らせるために手伝えることは、何でもするよ。」「どうかしらね…」「…」
2.2.3. シエル
「やめてよ。」「…」「謝罪なんて要らない。あんたは自分がしなくちゃならないと思ったことをやった。もちろん間違っていたけど… 仕方ないね。」「もっと怒っているかと思った。」「怒ってたよ。もう忘れた。」「…」「この世界について知っていたことは、全部間違いだった。だから?どうでもいいよ。だって死はもう死じゃない。また旦那に会えるってことでしょ。」「シエル…」「ちょっとやめてよ。あたしは旦那を取り戻すためなら、迷わずあんたを犠牲にする。だから… 分かるよ。もう気にしてない。」「ありがとう。」「あんたがピエールを甦らせるのを手伝ってくれる限りはね。貸しだよ。」「了解だ。」
2.2.4. エスキエ
「おやおや、みーんなお前にプンプンだ。」「お前は?」「エスキエはシクシクもオラオラもギンギンもできる!だがプンプンにはならない。悪いことはプンプンしているときに起こる。」「ああ、そうだな。」「だが、お前にプンプンすることは絶対にない。」
2.2.5. モノコ
「だから言っただろうとは言わないが、実際… オレは言ったはずだ。」「協力に感謝するよ。」「それだけの価値はあったか?」「…」「これからどうするんだ?」「信頼を取り戻すために全力を尽くす。」「かなり険しい道のりだな。」
2.2.6. 史上最高の遠征隊をつくる
シエル「いい髪型じゃん。」マエル「ああうん、まあね。」ルネ「外に別の世界があるなんて信じられないわ。私が絶対に見ることのない世界。」マエル「ごめん。わたし… 記憶が… 知ってたらみんなに伝えて…」ルネ「謝らないで。貴方もだまされていた。私たちと共に生きた、私たち側の人間よ。同時に彼ら側の人間であるとしてもね。」マエル「すごく変な感じ。二つあるの。子どもの時の記憶も、家も、ルミエールも。」シエル「あんたはもう孤児じゃない。家族が見つかったでしょ。あの人たちと一緒にいたくないの?」マエル「家族のことは愛している。でも… みんないなくなった。いろんな形で。それに、みんなもわたしの家族だよ。ギュスターヴもエマもそう。あのときは分からなかったけど、代わる代わるわたしの面倒を見てくれた家族たちみんな…」シエル「マエル。」ルネ「頭が混乱する話ね。」シエル「だね。けど長い時間の中で初めて希望が持てた。」
3.
最後のキャンプ
各地から過去の遠征隊のクロマを回収して帰還したパーティは、ルノワールとの最終決戦に向けてキャンプで一夜を過ごす。誰もが明日の死を覚悟していたモノリス前のキャンプとは対照的に、この夜は誰もが翌日に世界を取り戻す可能性を抱えている。
3.1.
入水自殺の真実
ヴェルソはシエルを湖に連れ出して泳ぎを教えるが、その過程でシエルは水嫌いの真の理由を告白する。ピエールを失った後、彼女は入水自殺を試みて気がついたら波止場で目覚めていたこと、その時に妊娠したことに気付かず入水で子を亡くしたことを告げる。Act II 中盤の「枯れた花もいいものだよ」という背景には、夫を追って未生の子をも巻き添えにしたという深い罪責感が横たわっている。
「ピエールにどう言えばいいか。あたしたちの子どもは死んでしまったなんて。生きていたら 6 歳だった。」マエルが死者を蘇生できる現実を前にして、シエルは蘇生後の説明責任という新しい重みに直面する。ヴェルソもまた、自身が家族に対して同じ暗い思想を抱えていた経験を打ち明け、不死の絶望と入水の絶望が等価に並べられる。そしてヴェルソは「キャンバスにヴェルソが描いたある生き物は、暗い考えに捕らわれたときはいつも人を助けている」とエスキエの存在を示唆する。
シエルが自らエスキエに歩み寄り、洞窟での出会いの前にシエルと会ったのはいつかを聞く。「あんたがあのとき、あたしを助けた。でもどうやって?」「君の涙の音が聞こえた」海の真ん中で泳ぐのをやめたシエルを波止場まで運んだのはエスキエだった。幼少期のヴェルソが描いた「悲しむ人を見つけて助ける生き物」というエスキエの本質がここで描写される。
エスキエの「あのとき君は誰かを探していた。見つかったのか?」「私も石をなくしたときは悲しい。だが必ず探し当てる。君もまた見つけ出せるだろう」石 (ピエール) を失ったものが石 (ピエール) を取り戻すという、フランス語の語呂を貫通する慰めが再びここで成立する。Act II モノリス前夜にエスキエが「ソリアが恋しい」と漏らしていたが、ようやくここで互いに同じ運命を抱えていることを確認し合う。
3.2.
ウルリエの奪還
ヴェルソは、エスキエにソリアを隠していた理由を問い詰められ、エスキエが飛べると分かれば彼女らはルミエールに返りたがると思ったからと答える。エスキエはヴェルソのことを「本当は意地悪じゃないのに物を隠す意地悪」なフランソワそっくりだと評する。ここでエスキエは、フランソワがペットの岩のウルリエ (Urrie) を持っていることを思い出す。エスキエはキャンプで見つけた石を使って、フランソワの上にクレアが乗っているフィギュアを作り、それと交換してもらおうと画策する。
フランソワとの戦闘後、ウルリエを返してもらい、洞窟を出るときに遠くから聞こえるフランソワの泣き声は、マエルの姉でフランソワの友だちだったクレアの不在の重みを物語る。キャンプに戻り、ヴェルソが「おまえも本物のヴェルソが恋しいか?」と問うと、エスキエは「お前は友だ。もう一人のヴェルソも友だ。お前たちは… いとこだよ。同じ同じ、けどそれぞれ違う」と答える。エスキエは画布のヴェルソが「真のヴェルソの代替物」ではなく独立した存在だと認めている。
このイベントによりエスキエの潜水能力がアンロックされ、海に沈んだルミナのカラーを回収できるようになる。
なお、ウルリエ奪還後に再びフランソワを訪ねると、ヴェルソとフランソワの会話イベントが発生する。ヴェルソが「エスキエはお前を気難しいのではなく悲しんでいるだけだと言っていた」と切り出すと、フランソワは「奴の親友は死に、わしの親友は消えた」と、(真のヴェルソを失った) エスキエと (クレアを失った) 自分が同じ喪失を抱えていることを吐露する。突き放すような態度を崩さないまま、フランソワは最後に「エスキエに早く帰ってこいと伝えろ」と言い残し、その不器用さの奥にある友情を覗かせる。
この一連の挿話の中で、エスキエは「てっぺんに小さなクレアを描く」と言い、フランソワは「クレアの絵が手元にあるのは嬉しい」と言っている。自分たちが絵の中の人物であることを理解している画布の最古の住人たちは、画布世界の中で作った物が「描いた絵」だと認識しているからこそ無意識に出た言葉だろう。
再訪時のヴェルソとフランソワの会話
「きさまの臭い石など、これ以上いらんわ!」「なぜいつもエスキエにそう冷たくする?友人じゃないか。」「エスキエはいつもお気軽すぎるのだ。なぜあんなにお気軽でいられる?いいから… 放っておいてくれ。」「エスキエが言っていたぞ。お前は気難しいのではなく、悲しんでいるだけだと。」「なぜ気に掛ける?何度言えば分かるのだ。出て行け!」「エスキエがお前を気に掛けている。あいつにとってお前は親友だ。」「フン。きさまが何を知っているというのだ。奴の親友は死んだ。そしてわしの親友は消えた。」「残念だ。だが、それでもお前たちには互いがいるだろう。」「ああ。かもな。」「外には広い世界がある。そしてお前には、気に掛けてくれる友人がいる。」「[愚弄するように鼻を鳴らす]」「ふむ。それなら、行くとするよ。」「あの石をありがとう。クレアの絵が手元にあるのは嬉しい。」「じゃあな、フランソワ。」「それとエスキエに伝えろ。早く帰ってこいと。」
3.3.
三つのサブクエスト
このキャンプの会話から三つのサブクエストが発生する。それぞれが、ルミエールへの最終突入の前に自分自身の死者を取り戻す機会として配置されている。ゲーム構成上も、これらのクエストによりグラディエントアタックがすべてアンロックされるため、ルミエールに向かう前にクリアしておきたい。
Sirène's Dress - ルネは、それまで一切話題に出さなかった第 46 遠征隊についてヴェルソに尋ねる。彼女の両親が参加し、13 年前に出発した遠征隊である。ヴェルソは、その遠征隊に同行したことはないが、シレーヌの島のはずれ「シレーヌのドレス」で痕跡を見たと告げ、そこに連れて行くことを約束する。
Sacred River - モノコが「ノコを甦らせよう」と申し出る。ジェストラルには聖なる川という蘇生の場所があり、順番待ちがあるが、モノコはそれを抜かすことを企てる。
The Reacher - マエルは Act II の最後にヴェルソが捨てたアリシアからの手紙を見つけており、火傷の跡を引き受けて画布で生まれた自分の姿であるアリシアに直接会いたいと申し出る。ヴェルソは強く反対するが、マエルは押し切る。アリシアは三体目のアクソン「リーチャー」(The Reacher) のいる山の頂にいる。画布のマエルと本来あるべきアリシアを直接対峙させるこのサブクエストは、アリシアの最後の願いを叶えるイベントとなる。
このキャンプと三つのサブクエストは、ルノワールとの最終決戦の前に、各人が自分の死者と決着をつける必要があるという物語的論理を置いている。マエルが世界全体を再構築する画家になる前に、まず各人の個人的な蘇生と再会が完了していなければならない。第 33 遠征隊の「最後の遠征」は、もはやペイントレスを倒す使命ではなく、各人が自分自身の死者と向き合うための私的な巡礼として、ルミエール突入の前夜に置かれている。
Act III は、メインストーリーを追うだけであれば、マエルがルミエールへ直接乗り込んで決着をつけるという、ごく短い道のりで幕を閉じる。しかし Act II の終盤でエスキエの飛行が解禁されたことにより、大陸の各所には本筋では語られなかった背景を補完する数多くの寄り道ステージが開かれている。いずれも本編の進行には必須ではないが、この世界の成り立ちや登場人物たちの来歴に、本筋とは別の角度から光を当てる内容となっている。
キャンプでの会話
3.3.1. シエル: 親密度 6
「普通はこんな緊張しないんだけどさ… あー、緊張する。」「ああ、そのようだ。」「前も無関心だったわけじゃないけど、任務に集中してたんだよね。でも今は…」「個人的なことになったからな。」「…」
ヴェルソは確信を持ってシエルに近付く。「エスキエと泳ぎに行くが、きみも来るか?」「エスキエにそそのかされた?」「当然だ。」「エスキエは大した策略家だね!いつもあたしを水に引っ張り込もうとする。」「あいつから、きみがカナヅチだと聞いた。」チッというシエルの舌打ち「エスキエの奴…」「水の上を移動しているとき、きみはいつも不安げだ。泳ぎを学んだ方が良い。そうすれば、きみが水中に落ちたとき、俺は助けに飛び込んで服をびしょ濡れにせずに済む。」「なんて優しい人。」「俺は仲間を大切にするが、湿った服を着て喜ぶ人はいないさ。」「やけに具体的な例を挙げるじゃん。いい考えだとは思うけどね。」「そうだろう。着替えたら湖のところで待ち合わせだ。」「了解。」ヴェルソとシエルは着替える。ヴェルソは、モノコの鞄に密かに水着を入れていることを明らかにする。そして女性用の水着も、念のため。ずる賢いヴェルソ。
「言っとくけど、泳ぎ方は知ってるよ。あたし島育ちだもん。ただ… 泳ぐことに嫌悪感があるだけ。」「ああ、それなら手を貸せる。俺はキノコに嫌悪感があったが、克服した。」「へえ、ならその秘密を教えてよ。」「浴び続けるんだ。避ける方が嫌になるくらいな。エスキエに山ほどキノコを食わされたんだ。最初の数回は死んだが、今は免疫がついた。」「これが心を動かす物語だと思うわけ?」「さらに、俺は学校で泳ぎのリーダーだった。」「それって感心するとこ?100年前は他の子どもと泳いでいたんだ~って?」「俺は今でも泳ぎがうまい。泳ぎは身についたら忘れないものだ。ほら、手伝うよ。問題なのは恐怖だ。恐れるものもパニックになる理由もないと、きみの心と体に理解させる必要がある。」「分かったよ。ああ、なんて賢くて腕のいい泳ぎのリーダー。最初はどうすればいい?」「少しの間、水の中に座っているだけでいい。落ち着いたら、もう少し深いところへ行く。その後は、さらにもう少し深いところへ。あそこの島に歩きにたどり着いたら完了だ。」「…」シエルは勇気をかき集め、水の中に入る。彼女はパニックになるが、その恐怖に打ち勝つのにヴェルソが手を貸す。彼女は落ち着き始める。… しばらくして、彼女はなんとか島へ泳ぎつく。「やった!うまくいくなんて信じられない!ありがとう。」「俺を疑っていたが…」「あんたは確かに泳ぐのも教えるのも上手だね。」「さて、泳いで戻れるかな。」「え、今回は応援の激励はないの?」「つまり、さっきの話は応援になっていたんだな。」「まあ… ちょっとはね。」「ところで、今の気分は冒険的かな?ここにもう少し留まるのはどうさ?」「あ。ヴェルソ…」「どうした。」「残念だけど、状況が変わったの。マエルがピエールを甦らせてくれる。ごめん。」「ああ。いや、そうだな、もちろんだ。分かるよ、気にするな。」「今夜はここで過ごすべきだとは思うけど。」「そうなのか?」「あんたと一緒に過ごした時間は、あたしにとって特別だった。最後にもう一度だけ、それを記念して。」「そうだな、記念して。」「他に泳ぎを見せてよ。」「俺のテクニックは素晴らしいぞ。」ヴェルソとシエルは島に留まる。二人は一緒に最後の夜を過ごす。とても情熱的な夜だ。シエルとヴェルソは忘れられない経験をする。親密度アップ 6. 二人は島で数時間を過ごし、泳いで戻る。二人は疲れ切っているため、泳ぐのが大変だ。
3.3.2. シエル: 親密度最高
シエルと話をしたくてたまらないヴェルソは、彼女に近付く。「教えてくれたことがなかったが… なぜ農業から学校の運営に進んだ?」「え、分かるでしょ?」「俺はきみほど賢くないからな、説明してもらえると助かる。」「あたしの方が賢いって認められて偉い偉い。ピエールは… 昔ボランティアで、学校の子どもに船の操縦方法や自然で生き延びる方法を教えてたんだ。彼が死んだ後、あたしは… ひどい状態だった。学校にいても気分が悪かったけど、少なくとも彼の存在を感じられた。子どもたちから彼の話を聞いて、彼の仕事を続けて。」「ふむ。なるほどな。」「あんたの母親の取った行動の理由が、あたしには理解できる。」「…」「息子を、ヴェルソの存在を身近に感じていたかったんだよ。」「可能なら、きみもピエールのコピーを作っていたということか?本物ではないとしりながら?」「…」「いま聞かれたら、答えはノーだね。そのせいであんたがどれだけ苦しんでいるか見てきたから、他の人にも背負わせたくない。だけどあの頃に聞かれていたら…」「…」「彼とまた会うためなら、彼の声を聞くためなら、彼の温度を感じるためなら、なんでもやたっと思う。毎日、喪失感があったの。彼がいた場所が空白になったような。彼が座っていた椅子はへこんでて、彼の靴は空っぽで、彼の上着の中には何もない。… なんであたしが水嫌いか知りたい?」「…」「入水しようとしたの。」「なんだって?」「ピエールを失って、あたしは… ルミエールから泳いで離れようとした。力の続く限り、波に運ばれるままに泳いだ。もう泳げなくなるまで。」「…」「けど… 次の日に目が覚めたら、ルミエールの波止場にいた。あたしは生きていた… なんでかは分からない。それから、あたしは気付いていなかったけど… 病院で… 妊娠しているって言われた。けど… 子どもは亡くなっていた。」「シエル…」「心の底から、マエルにはみんなを、ピエールを甦らせてほしい。だけど、ピエールにどう言えばいいか。あたしたちの子どもは死んでしまったなんて。生きていたら6歳だった。」「本当に気の毒に思う。」「“暗くて個人的”、でしょ?」「俺も… 以前は同じような考えを持っていた。方法は入水ではなかったが… 分かるだろう。そうすれば、みんなにとって多くの問題が解決するだろうと。」「ヴェルソ…」「それも一つの選択だ。他の選択と同じように。」「そうだね。」「だが、キャンバスにヴェルソが描いたある生き物は、暗い考えに囚われたときにはいつも人を助けている。」「それって…」「ああ、あいつだ。…」「…」シエルは彼女の最も暗い秘密をヴェルソに打ち明ける。悲しみと暗い考えに囚われていると… 二人のつながりは深まる。親密度アップ最大. ヴェルソとシエルは、一緒に星を眺めて時間を過ごす。二人の親友は、沈黙を楽しむことができる。シエルは宵の明星からひらめきを得る。そして時間はあっという間に過ぎた。
「マエルに甦らせてほしい特別な人、いる?あんたって100年くらい生きてるんでしょ。会いたい人はいる?」「ああ、一人… それから、共に旅をした隊員たち。彼らに伝えられたらいいな。俺たちは… やり遂げたと。」「うん」「それから説明したい。機会がなく説明できなかったことを。」
3.3.3. ルネ
「彼女を見ていると、奇妙な気分だわ。」「マエルのことか?」「彼女はこの世界を作り変える力を持っている。彼女はペイントレスだった。だけど私たちのマエルでもある。」「ああ。彼女は俺たちのマエルだ。」
ヴェルソはルネに近付く。彼女は思うところがあるようだ。「他の遠征隊と旅をしたと言っていたわね?」「ああ、いくつかの遠征隊と。」「46 とは?」「46?いいや。なぜだ?」「ああ。なんでもない。ただ… ひょっとしてと…」「深刻な話のようだな。いつものきみはもっと雄弁だ。」「そう?」「すまない。今なんて?」「わたしの両親。二人は、その…」「彼らは第46遠征隊だったのか?」「…」「俺は彼らと旅はしていないが、そうだな… 痕跡は見つけた。」「そうなの?」「ああ。シレーヌの島だ。」「ああ。」「見せてあげよう。」「本当に?」「だが… あまり期待はしないでくれ。行こう。遠くはない。特に今はエスキエが飛べるからな。」「いいえ、駄目よ。今の私たちに寄り道している時間はない。」「ふむ。まあ、気が変わったら… いつでも言ってくれ。シレーヌの島のはずれだ。遠くない。」「ありがとう。」ヴェルソはルネに、彼女の両親が所属した第46遠征隊を見つけた場所を案内すると約束した。シレーヌの島にある場所で、シレーヌのコロシアムから遠くない。
3.3.4. モノコ: 親密度 5
「それで、どうやって彼女らの信頼を取り戻すつもりなんだ?」「お前、今の状況を楽しんでいるな?」「オシャレな髪と魅力はもう当てにならない。なら次の計画は?」「…」「まあ、とりあえずまだ会話はしてくれる。まずはそこだな!」
ヴェルソは、考え込んでいる様子のモノコに近付く。モノコは、ペイントレスがキャンバスから追放された後に起きたことについて考えている。「…」「大丈夫か?」「どんな気分なんだ?長い時を経て目標を達成するというのは。」「…」「結局のところ俺はタダのジェストラルで、いつもオマエを支えていたが、それでも…」「決闘をすれば気分が良くなるだろうか?」「今日はいい。人間を好きになるべきじゃないのは分かっている。人間は儚い生き物だ。現われてはすぐに消え、消えてしまうと二度と戻らない。それでも… オレは人間の悲しみを共有する。人間の喜びを共有する。」「ヴェルソはキャンバスの外でお前を知っていたからだ。そして俺は、中でのお前を知っている。お前は最も忠実な友だ。絶対に“ただの”ジェストラルではない。」「10年前、グランディスのためだと自分に言い聞かせてオレはオマエから離れた。だが本当は、遠征隊がどんどん死んでいくのを見ていられなかった。」「ああ… 分かるよ。」「なのにオレはまたオマエとこうしている。オレが忠実なのは、そういう性質だからか?それともヴェルソがオレをそう描いたからか?」「もう十分俺をボコボコにしてきたのだから、そういう性質だと分かっているだろう。」「それは確かに。」「今後はあまり自惚れるなよ。」「昔に戻りたいと思うときがあるよ。クレア、アリーン、そしてルノワールと遊んでいたあの頃に。オレたちの誰にも、悪いことは起きない気がしていた。」「楽しいときは永遠に続かない。」「悪い時は随分とくつろいでいくようだが。」「まあ、悪い時が去って行くかは俺たち次第だ。あの古き良き時代のように、ネヴロン狩りに行くか?その間は嘆かずに済む。」「それは… 心が温まるだろうな。」「では、奴らを真っ二つにしに行こう。」士気を上げるために体の痛みに耐えることを厭わないヴェルソに、モノコは感心する。そしてヴェルソは、逆の立場ならモノコも同じことをしてくれると知っている。親密度アップ. 二人は古き良き時代と同じように、真夜中に醜態のネヴロンと戦う。それから、仲間のところへ戻る。「…」「…」
3.3.5. モノコ
「美しき夕べだ。空の色に、星々の輝き。今夜は希望に満ちている。」「そうなのか。」「ノコを甦らせよう。」「お前は状況が落ち着くまで待ちたがっているのかと。」「明日どれほど時間の猶予があるか分からない。ああ、ノコに今日を贈らせてくれ。聖なる川に向かうだけだ。駅の近くだ。遠くない。」「ゴルグラは喜ばないだろうな。お前がまた順番を抜かして。」「ゴルグラには後で話すさ。お前は前にも一度、ノコを甦らせる手伝いをしてくれた。今回も頼めるか、友よ?」「いつだって手伝うさ。」ヴェルソはノコを甦らせるとモノコに約束した。聖なる川は北にあり、モノコの駅から遠くない。
3.3.6. エスキエ: 親密度 5
「怒ったルノワールは怖い。」「俺の父と大差ないと思うが。」「いとこだからな。」
ヴェルソはエスキエに重要な話をするために近付く。「お前がシエルにワインのことを話すとはな。」「ああー。その。彼女はとても説得力があるんだ。」「まあな。」「それに!彼女に笑いかけられると、心が温かくフワフワする。」「つまりお前は笑い掛けられてバラしたのか?大した秘密の守り人だ。」「おや、私は秘密の守り人と言うよりワインの守り人だと思っていた。」「どのみちお役目を立派に果たしたな。ワインはほとんど残っていない。」「お前は分かってくれると思っていた。本当のことを言え。彼女に笑い掛けられると、お前も心が温かくフワフワするだろう。」「何、いいや、それは… それは違…」「暑いのか?顔が少し赤いぞ。あ、そうだ、それに彼女は本当に素晴らしい岩を見せてくれた!」「岩一つと引き換えに、彼女に俺の最高のワインをやったのか?さぞ特別な岩なんだろうな。名前は?ああ、この岩はまだ自己紹介してくれていないんだ。だから呼び名も、特別な力が何かも分からない。」「なるほど。」「おお、だがルネが調べるのを手伝ってくれている。彼女は岩について詳しいぞ!」「無論、愛好家だよ。」「ルネは本当に物知りだ。彼女と話しているとすごく楽しい。彼女はとても好奇心旺盛で、夢中になってくれる。初めて会ったときのお前そっくりだよ。お前にはたくさん質問されたな。私のことやお前のこと、お前の…」「お前、ルネとも話しているのか?」「ああ。なぜ?お前はずっと彼女と話してる。お前たちはいーっつも話している。」「ああ、まあ…」「それに、彼女が物事に夢中になるのがお前も好きだろう。」「それは違… いったい何を言って… いや、忘れろ、話が脱線して…」「動揺しているようだ。」「動揺していない…」「ハグしようか?」「頼む。」「わーい!」「エスキエのハグを拒否できる奴はいないさ。」ルネとシエルをどう思うかという話題をエスキエがやめてくれて、ヴェルソは安堵する。そして自分のことをよく分かってくれているエスキエに、ひそかに感動する。親密度アップ. その後、二人は長すぎるくらいしっかりと抱きしめあい、仲間のところへ戻る。
3.3.7. エスキエ: 親密度 6
「…」「…」「…」「浮かない顔だな…」「なぜソリアを隠していたんだ?」「ああ、いや、俺は… お前が飛べると分かれば、彼女らはルミエールに連れて帰ってもらいたがるのではないかと思ったんだ。」「それは意地悪だ。お前は時々、すごく意地悪になる。むむ。だが意地悪であることは必ずしも意地悪なことじゃない。」「ああ、ええと、そうだな。」「んー。お前はフランソワそっくりだ。」「それを聞いたら、彼は嫌がるだろうな。」「おおっ。おおおー!それにフランソワはお前そっくりだ!」「つまり?」「うんうんうん!本当は意地悪じゃないのに物を隠す意地悪なやつ!ヴェルソ、ヴェルソ、思い出したぞーっ!!!」「おっと、落ち着け。何を思いだした?」「ウルリエを失くした場所だ!」「ウルリエ。そうか。ああ、どれがウルリエだったか、もう一度聞いても?」「ウルリエは私が泳ぐのを手伝ってくれる!」「ああ、そうだった。それで、ウルリエはどこに?」「フランソワの洞窟に置いてきた!」「なるほど。ふむ。戦わないとフランソワはウルリエを渡さないだろうな。」「ああ、むしろ戦いたくない。前回、彼はちょーう怒っていたんだ!お前がセレナーデを演奏したらどうかな?彼とクレアは四六時ちゅーう歌ってた。すごく幸せそうだったな。それに、お前の声は本当に素敵だ。」「どうも。だが果たしてフランソワが俺の歌声を聞きたがるかな。」「おやおやおや!なら彼と踊るのは?お前は素晴らしい踊り手じゃないか。」「フランソワは踊れるのか??彼が動くところを見たことがない。時々、頭は少し動かしているようだが… ともかく、なんとか交換してもらえるかもしれない。彼が好きなものは?花か?果物?光るもの?」「ううううーん。分かった!彼と交換できるのは… …別の岩だ。」「なぜ別の岩を欲しがるんだ?」「もっといい岩だからだ!」「もっといい、とは… どう?」「フランソワそっくりの岩にするんだ!そしててっぺんに小さなクレアを描く!」「分かった。そうしよう。」「最悪、うまくいかずに彼と戦うことになる。」「ああ、ありがたいね。」「おおっと、あそこにあるあの岩はどうだ!」「ジャジャーン!まさに彼そっくりじゃないか?フランソワがそばにいるようにすら感じる。よし、準備はできた!」「何、今から行くのか?」「うんうんうん!時間はかからないさ、なんたって私は飛べる!フランソワに会いに行こう!」
エスキエの隠れ家: フランソワ「戻ったか」エスキエ「フランフラン!」「その呼び方はやめろ。」「ウルリエを持っていたんだな!なぜ言ってくれなかった?」「証拠はあるのか?」ヴェルソ「取引しよう。この、ええと… お前を模した素敵な彫像とウルリエを交換だ。」「それがわしだと!?」エスキエ「きみの本質を見事に捉えていると思うよ。」「フン。話にならん。ウルリエが欲しくば、奪ってみせろ。」フランソワとの戦闘後、ウルリエを受け取る「もういい、結構結構。そら。チェッ!岩を持って立ち去れ!」「ああーっ!ウルリエ!会いたかったよ!ありがとう、フランフラン!」「さっきの岩を置いていっても構わんが。」「ああ、フランソワ…」「…」洞窟を出ようとする遠征隊の耳には、遠くからフランソワの激しい泣き声が届く。フランソワ[劇的なむせび泣き] ヴェルソ「本当に彼女が恋しいんだな…」
キャンプに戻り、エスキエは新しい岩のウルリエを飲み込む。「ウルリエがある今なら、水中を冒険できるぞ!ヴェルソ、お前は最高だ。」「役に立ててよかったよ。」「役に立ったどころじゃない!お前は最も賢く最も素早く最も面白く最高に最強で最もフワフワで…」「最もフワフワ??」「お前は最もフワフワな心を持っている。」「ありがとう、でいいのかな。」「どういたしまして!」この素晴らしい冒険を通して、ヴェルソとエスキエの絆はますます強くなった。親密度アップ. 二人は仲間のところへ戻る前に、もう少しだけ雑談をする。
3.3.8. エスキエ: 親密度最大
「フランソワは本当にクレアを恋しがっているんだな。」「うん。毎日待っているんだ。彼女がいなくなってから、歌うのをやめてしまった。だが大丈夫。彼女はきっと戻ってきて、フランソワはまたハッピーになる!」「本当にそう思うか?」「二人は親友だ。何世紀も過ぎたが、彼女がフランソワを置いていくはずがない。お前が決して私を置いていかないように。」「ふむ。お前は… ヴェルソが恋しいか?つまり、お前のヴェルソ、本物のヴェルソのことだ。」「…」「いや、恋しいに決まっているな。すまない、なぜこんなバカなことを聞いたのか。」「ただ… お前は俺といるとき、彼のことに触れないから。」「だってお前を悲しませてしまう。」「そのせいで… 困っているか?俺は彼ではないから。」「お前は友だ。もう一人のヴェルソも友だ。お前たちは… いとこだよ。同じ同じ、けどそれぞれ違う。それで私が困ることがあるかな?」「エスキエ、俺は… ありがとう、友よ。」「ささ、永遠に冒険を続けよう!」エスキエ [満足げな音] エスキエは言葉でヴェルソの心を動かした。ヴェルソとエスキエの絆は今や永遠に壊れないものとなった。親密度アップ. エスキエの言葉はヴェルソの想像力を刺激し、新たなスキルをもたらす。二人は次にどんな冒険へ行きたいか、話に花を咲かせる。それから、仲間のところへ戻る。
「海中を探索しよう!」「海中に何があるか怖くないのか?」「海の石も私の友人だよ。」
3.3.9. マエル
「マエル…」「家に帰れって言われるのはホントうんざり。だから言わないでよ。」「分かった。お望み通りに。」「みんなは私を頼りにしている。見捨てたりしない。あなたのこともね。」
マエルは湖のそばで話をしようとヴェルソを誘う。二人は一緒に歩いていく。「…」「…」「手紙を見つけたよ。」「なに?」「アリシアからの手紙。」「…」「彼女と会って話して、理解しなくちゃ。」「理解するとは?」「どうして母さんが…」「彼女の傷を残していたか?駄目だ。彼女の心に干渉するな。彼女はそんなことを必要としていないし、きみに答えをくれることもない。」「彼女はずっとわたしのところへ来てた。わたしに会いたがっているよ。」「彼女をそっとしておいてくれ。頼む。」「ヴェルソ。あなたがやっていることは彼女のためにならない。あなたはもう、彼女の世界を壊したでしょ。わたしなら助けられるかも。彼女にはわたしに借りがなくても… わたしには借りがある。」「…」「あなたの彼女への借りについては置いといて。あなたも彼女に会いたくない?」「会いたいさ。だが、彼女が俺に会いたがらない。こうなる前からね。」「なら、彼女に放り出されたらそっとしておけばいい。」「…」「それは同意?」「…」「よかった。彼女はどこにいるの?」「どうしてもと言うなら… お気に入りの場所がある。モノリスのそばにある山の頂上だ。そこには三体目のアクソンがいる。」「ああ。あのアクソン… 登山するってことね。」ヴェルソは彼の妹の元へマエルを連れて行くと約束した。妹の居場所は十中八九、最後のアクソンがいる島の巨塔だ。モノリスの近くにある。
3.3.10. 仲間の様子を見る
シエルはエスキエに大事な話をするために近付く。「エスキエ?」「ん?」「…」「お困りかな、友よ。」「初めて会ったとき言ってた “カナヅチの友” ってどういう意味?」「んん?そんなことは言っていないぞ。」「あたしははっきり覚えているよ。」「ああ、二度目にあったときのことか。」「え?」「洞窟で、だった。」「ごめん、あたし… かなり混乱してる。」「そうだな、私もだ。楽しいな。」「“二回目” ってどういうこと?」「初めては一回目という意味で、二回目は再びということだ。」「ええと。うん、それは分かる。つまりあたしは… あんたと初めて会ったとき、泳いでた?」「ああ。その後、海の真ん中で泳ぐのをやめた。あれは危なかった!」「あんただったんだ。あんたがあのとき、あたしを助けた。待ってよ、でもどうやって?」「君の涙の音が聞こえた。」「そんなに遠くから?」「聞こえたから、私は行ったんだ。」「へえ。なるほどね。」「ほほほ。」「あたしは… ええと… ありがとう…」「また泣いている。君は泣くのが好きなんだな。」「みたいだね。」「ヴェルソも泣くのが好きなんだよ。」「うん、知ってる…」「ハハハ。」「あのとき君は誰かを探していた。見つかったのか?」「んー、ううん。けどすぐ見つかるといいな。」「ふむむ。うん。私も石をなくしたときは悲しい。だが必ず探し当てる。君もまた見つけ出せるだろう。」「友よ、あんたって最高だね。」シエルとエスキエは長い時を一緒に過ごすうちに、確固たる友情を築いた。
4.
シレーヌのドレス
シレーヌの島の反対側、エスキエの飛行能力でしかアクセスできない場所に、楽屋裏を示唆するシレーヌのドレス (Sirène’s Dress)がある。入口の巨大な装飾門は物理的な力では開かず、ルネがギターを演奏することで開く。両親が「浮ついている」と切り捨てた音楽が、両親の場所に行き着く鍵になっていることを描写している。なおバレエを選択するとルネがすこしバツの悪い思いをする。
クロマティック・グリッサンド戦の後に拾う第 46 遠征隊のジャーナルに、ルネの母ブリジット (Brigitte) の死が記されている。彼女は 4 日間、昼夜問わずネヴロンを抑えて仲間を守り、深手を負って死んだ。死の間際に発した「娘のルネが仕事を終わらせてくれる」という言葉を、ルネは娘への信頼ではなく代役指名として受け取る。4 歳から研究助手として育てられ、自分自身の声と両親の声の境界を持てないまま 32 年を歩んできた彼女にとって、この一言は娘を遺志継承として位置づける呪縛と感じられた。
ヴェルソはキャンプで「きみの両親は死んだ。その声は彼らのものではなく、きみのものだ」と、彼女に死者の声と自分の声を区別するように助言する。芸術家の家系に生まれ音楽家を志したヴェルソと、研究者の家系に生まれ研究者を継いだルネは、共に親の声に支配されてきた者同士として語れる。
キャンプでは、ルネが密かに歌を書いていた。両親に否定された音楽を、彼女は隠れて自分のために書き始めていた。ヴェルソの助言が彼女の内的実践として既に発芽していた。Act II モノリス前夜に冗談で口にされた「第33遠征隊楽団」がここで結成され、二人はピアノとギターで何時間も作曲を続ける。そしてルネは「マエルが私のために外の世界を描くと言ってくれた。絵の中の絵、ということね」と、画布が保存された世界で実現する世界像を予告する。両親が見られなかった世界、自分の声で生きる人生を、彼女は画布の中に描き直された形で受け取る希望を持ち始める。
ところで、「忘れられた戦場」の赤い葉の木の下の墓標には “46” と書かれた腕章が多く見られる。これは、ヴェルソが第 46 遠征隊の隊員の多くをあの場に埋葬したことを意味しており、ヴェルソがルネに伝えた「第 46 遠征隊には同行していない」という話は嘘であった可能性がある。
ブリジットの死因については解釈に迷うところである。第 46 遠征隊ジャーナルには以下のように書かれている:
- 🇯🇵 日本語「ブリジッドがついに、奴の影響に屈した。」
- 🇬🇧 英語 “Brigitte finally succumbed to her infection.”
- 🇫🇷 フランス語 «Brigitte a fini par succomber à son infection.»
infection は裂傷が化膿して敗血症になるなどの医学上の「感染症」を指すのが一般的だが、一方で呪いや精神崩壊、ゾンビ化のような内的な浸食を指すこともある。前者の意味であればグリッサンドのような一般的なネヴロンの物理攻撃による「大裂傷を受けての感染症」だが、後者の意味であればグリッサンド後に三体現われたバレエ (Ballet) のような「精神攻撃による発狂」とも受け取れる。ジャーナルには「深手を負った」「死期が近づくにつれ平穏を感じているようだった」「娘のルネが仕事を終わらせてくれる」と最後まで正気を保っているように書かれていることから、状況説明としては感染症が強いが、この場所や日本語訳から発狂を示唆した可能性も残る。
シレーヌのドレス~キャンプでの会話
「第46遠征隊はすぐ近くだ。」「ここ?」「ああ。だが、たどり着くのは厄介かもしれない。」「厄介じゃないときがあった?」
… 門はびくともしない。ヴェルソによると、この扉の先には第46遠征隊の痕跡がある。ルネの両親がいた遠征隊だ。周りを見渡す。周りに扉を開くのに役に立ちそうなものは何もない。ルネは扉を調べる。試してみるべきかもしれない… バレエを踊る。ルネは簡単なバレエのヴァリエーションを優雅かつ上品に踊る。門はびくともしない。扉は開かない。ルネはばつの悪い思いをする。音楽を演奏する。ルネはギターを召喚する。彼女の指はためらうが、目を閉じ、切望の曲を演奏する。扉は音楽に共鳴する。悲しげな笑みを浮かべて、ルネは完全にメロディに没頭する。谷が弦の音に合わせて踊る。最後に響いた音が消えて静まり返ると、門が開く。
「彼らは…」「私の両親じゃない。アメリとクリストフね。よく我が家で夕食を共にした。」「お悔やみを。」「いい人たちだった。[咳払い] 彼らの記録はこのあたりにあるはずよ。」
クロマティック・グリッサンド戦後、第46遠征隊のジャーナルを見つける。「第46遠征隊、アネリ ブリジッドがついに、奴の影響に屈した。彼女は4日間、昼夜問わずあの忌々しいネヴロンを抑え、私たちを救ってくれた。けれど、そのせいで深手を負ってしまった。終わりが近付くにつれ、彼女は平穏を感じているようだったと言ってもいい。彼女は言った。自分の娘のルネが仕事を終わらせてくれるから、心配はいらないと…」ルネ「…」ヴェルソ「大丈夫か?」「キャンプへ戻りましょう。」
4.0.1. ルネ: 親密度 6
キャンプに着くと、ヴェルソはルネが気掛かりなことをたくさん抱えていると気付く。彼は仲間たちから離れた場所で話そうと、彼女を誘う。「…」「…」「生涯、私たちはペイントレスに関わることしかやってこなかった。耳元でずっとささやきが聞こえていた。この不安、この責任。とにかく、ずっと。ずっと… いつも、必ず。安らぎを感じたことは一度もなかった。眠っているときでさえも… そこにある。まるで絶対に吐き出せない息のように。」「かなりの重圧だな。」「母の最後の言葉も── “仕事を終わらせて”。」「それだけ君を信じていたということでもある。」「それも一つの見方ね。」「では、別の見方は?」「二人にとって私の価値は、娘ではなく、代役でしかない。自分たちの遺志を継がせるものなの。」「本当にそう思うのか?」「二人はいつも言っていた。勝負の最後に意味があるのは、努力ではなく結果だと。」「そんなにも嫌がるなら、なぜ両親の仕事を続ける?」「分からない。頭の中ではまだ二人の声が聞こえているからかも?逃げたところで聞こえなくはならないでしょうね。」「きみの両親は死んだ。その声は彼らのものではなく、きみのものだ。」「たとえ両親が生きていたとしても、きみの頭の中の声、きみが耳を傾ける声は、きみ自身のものであるべきだ。」「… 貴方は自分の声に耳を傾けられている?」「段々とね。見分けにくいときもあるが。」「そうね。」二人は同情的な笑みを交わす。二人は互いのことを分かっている。親密度アップ. ルネは衝動的にヴェルソの頬にキスをする。不意を突かれたヴェルソは、問いかけるようなまなざしで笑いかける。笑いながら、二人は仲間のところへ戻る。
4.0.2. ルネ: 親密度最高
ヴェルソはノートに書き込んでいるルネに近付く。今回は何を書いているんだ?ネヴロンの記録か?」「いいえ。」「違う?なら “アクソンについての仮説”?それとも "動植物に関する見解”?」「当ててみて。」「ふーむ。さっきモノコに質問していたな。では “ジェストラルの行動に関する論説” か?」「ああ、かなり近い。」「俺のことだろう。 “ヴェルソ・デサンドルの奇妙でボロボロな人生” (The strange and tattered life of Verso Dessendre)。」「かなり長い物語ね。」「まあね。」「本当に?」「頼むよ。笑っているからにはいいものなんだろう。」「まあ、どうしてもと言うなら。歌を書いているの。」「歌?」「両親は音楽なんて浮ついていると言っていたけど、ね。“耳を貸すべきは自分自身の声”。空いた時間を少し自分本位に使ってみることにした。私たちの問題はまだ解決しないでしょうし。」「きみの歌を聞かせてくれ。」「うーん。どうかしら。もう遅いし、貴方はシエルと会うんじゃない?」「…」「嬉しいわ。彼女が幸せを… 少なくとも楽しみを見つけられて。でも、きっと素敵だったでしょうね。もし…」「…」「オーケー、演奏してあげる。でも笑ったり、生意気なコメントはしたりはしないで。」「ルネ…」「それじゃ、ピアノを出して。この部分の意見が聞きたいの…」ヴェルソとルネの絆は非常に強い。親密度アップ. 共に何時間も過ごし、作曲や演奏をする。キャンプに戻ったとき、両者の心ははるかに軽くなっていた。ルネは世界と自分自身をより理解できるようになる。
「これが終わったら、貴方はどうするの?ルミエールで貴方が “普通の” 生活をしているところが想像できない。」「ああ、もう町で暮らせる気がしないな。分からないが。きみは?」「そうね。私たちはこのキャンバスから出られない。だから優しいマエルは、私のために外の世界を描くと言ってくれた。それなら私にも見える。」「つまり…」「絵の中の絵、ということね。」
5.
聖なる川
血気盛んでよく死ぬジェストラルが生まれ変わることは、ここまでのストーリーで何度か語られている。モノコの駅の近くに聖なる川 (Sacred River) という場所があり、死んだジェストラルたちはそこで生まれ変わりのための順番待ちをしている。この画布世界の真の創造主であるヴェルソ・デサンドルは現実世界で既に死んでいるが、その魂の欠片は今も画布の中で絵を描き続けていることが Act II エピローグにおいてクレアの口から語られている。生者の世界へ生まれ直すというこの儀礼の空間も、その魂の欠片による創造の持続によって機能し続けているのだろう。
ただし、生まれ直した子どもの守り手の数が常に不足しているため、列に並ぶ全員がすぐに蘇生されるわけではない。蘇生の流れを決める役を担うのが族長ゴルグラである。ノコの蘇生を頼む際にモノコが「ゴルグラには後で話す」と漏らしたのは、彼が順番抜かしを企てているからに他ならない。
聖なる川に到達した一行が光るピンクのジェストラルに話しかける。ノコの蘇生が始まりかけたところでゴルグラが介入し、戦闘が発生する。ヴェルソとモノコの二人の限定戦闘である。しかし、戦闘に勝って蘇生されたノコは、モノコやゴルグラはかろうじて覚えているものの、ヴェルソやモノコとの冒険、遠征隊の仲間たちとの記憶は一切消えている。ノコは再適応のためゴルグラがジェストラル村へ連れて行くことになる。
キャンプに戻ると、モノコは順番を抜かしてまでノコの蘇生に固執した理由を話す。画布世界の最古の住人の一人であるモノコは、明日の決着がどうなるかに関わらず画布の世界がいずれ終わることを理解しており、未来がない以上、早く甦らせて残されたわずかな時間をかつての師であるノコと共に過ごす選択だった。しかも「ヴェルソのため、そしてオマエのため」と自分とノコが共に消されることを承知で友に手を貸している。甦るたびに少しずつ別のノコになってゆく喪失感を抱えながら交わされるこの対話を通じて、長年の親友であった二人の絆はさらに深く結び直されてゆく。
聖なる川~キャンプでの会話
ヴェルソ「ここに来たのは久しぶりだ。」モノコ「聖なる川。急ごう。彼女には…」ゴルグラ「モノコ!また順番を抜かそうと、この老いぼれ… ええと… 追いぼれ… 怠け者… 元戦士!」モノコ「オレがここにいるとどうして分かった?」ゴルグラ「キサマは山ほどの脚をぶら下げている。大陸の反対側からでも嗅ぎ取れるわ。」モノコ「確かに。」ゴルグラ「以前話しただろう。このジェストラルたちを見ろ。彼らはみな他の者と同じように、順番を待っているのだ!」モノコ「くだらんルールだ。今すぐ全員を甦らせるべきだ。」ゴルグラ「そうなったら混乱状態に陥ると分かるだろう。新しく生まれた者を導くには、大人のジェストラルが足りない。それに、うるさいのは大嫌いだ。赤ちゃんジェストラルでいっぱいの森が想像できるか?」モノコ「ならば選択の余地はない。」ヴェルソ「ああ… よく考えろ、モノコ。」モノコ「もうよくよく考えた。ゴルグラ!戦いによる審判を求める。」ゴルグラ「ふん、キサマがそういうのを待っていた。」ヴェルソ「俺は参加するべきか?」モノコ「手を貸してくれ。」ヴェルソ「では、ノコのために。」ゴルグラ「キサマらがこの戦いの後も生きていることを祈ろう。」ゴルグラとの戦闘に突入する。
ゴルグラ「おっと、もうすぐスクワットトレーニングの時間だ。脚を鍛える日ではん。悪いが戦いを続けられない。」モノコ「冗談だろう!オマエは負けるのが恐いだけだ。」ヴェルソ「モノコ、頼むから黙れ。」ゴルグラ「楽しませてもらった。今回は大目に見てやろう、モノコ。行け。アイツを甦らせろ。」モノコ「礼は言わないぞ。ありがとう。」光るジェストラル像にノコの遺骸を渡すモノコ。
ノコ「モ… モノコ?」モノコ「ああ。オマエの声を聞けて本当に嬉しいよ。」ヴェルソ「やあノコ。俺のお気に入りの商人。調子はどうだ?」知らない人に話しかけられたように困惑するノコ「…」ノコ「ゴルグラ?」ゴルグラ「…」モノコ「ゴルグラ。泣いているのか?」ゴルグラ「泣いていない。」ノコ「ぼくたち、お家に帰れる?」モノコ「残念だが、まだなんだ。任務がある。遠征隊の友人たちは覚えているか?」ノコ「ううん?」モノコ「彼女らはオマエを見たら喜ぶだろう。とても心配していた。さあ、キャンプへ戻ろう。オマエが取引できるよう、たくさんの宝物を見つけておいたぞ!」ノコ「…」「…」ヴェルソをちらりと見て目を落とすノコ。ゴルグラ「ノコはワタシが村へ連れて行こう。甦ったばかりの者は混乱するものだ。ノコには適応する時間が要る。ノコ、村に帰ろうか?」頷くノコ「…」モノコ「だが、オレはノコの保護者だ!」ヴェルソ「ノコをそばに置いておきたい気持ちは分かる。だが、村の方が安全だ。戻ったらいつでも会える。」モノコ「…」うつむくノコ「…」モノコ「待っていてくれ。すぐに戻るよ。」ゴルグラ「では行こうか。」
ヴェルソ「あいつは大丈夫だ。お前と一緒にいるより断然いい。」モノコ「そうだろうな。手を貸してくれてありがとう。ゴルグラがあんなに異常に強いとは思っていなかった。」ヴェルソ「俺ならゴルグラを一人で倒せた。」モノコ「二度とオマエに弱みは見せんぞ。」ヴェルソ「さあ、キャンプへ戻ろう。」
5.0.1. モノコ: 親密度 6
キャンプで、モノコは一人、座って考え込む。ヴェルソには親友が話しがっていると分かる。たとえ本人はプライドが高すぎて認めないとしても。ヴェルソはモノコに近付く。「…」「大丈夫か?」「…」「少なくともノコは安全で、また適応し始めている。」「ノコは甦るたび、少しずつ変わっていく。前のノコを失うのが悲しいよ。だがそれも、かつての師はまだそこにいる。ありがとう、友よ。」モノコは泣いているようだ。ヴェルソとモノコはこれまでも親友だったが、冒険を通じて、その絆はますます強くなっている。親密度アップ. 二人はもう少しだけ一緒に過ごし、ヴェルソはモノコを励ます。それから、仲間のところへ戻る。
5.0.2. モノコ: 親密度最大
ヴェルソはモノコに近付く。モノコが何を考えているか、彼にははっきり分かる。「…」「ノコはいつも順番を待つのは構わないと言っていた。お前はなぜ、彼を早く甦らせることをあんなにも譲らなかった?」「順番などなかったはずなんだ。ヴェルソは… ヴェルソはオレたちに、新しい始まりの興奮を体験してほしかった。彼は川を贈ってくれた。なぜそれを使ってはいけない?」「…」「オレは崩壊の後にノコに見つけてもらった。ノコに育てられ、教えられ、守られた。次はオレが彼を守る番だ、そうなっている。彼がオレの面倒を見ていた。今度はオレが彼の面倒を見る。まあ、できなくなったが。」「俺のせいで。」「オマエがそうしている理由は分かる。終わりがどうなるかも。オレは明日に賭けていない。」「モノコ…」[疲れたため息]「では、なぜ俺に手を貸す?もし…」「ヴェルソのため。そしてオマエのためだ。」「友よ。」「ヴェルソはオレたちに多くの新しい始まりをくれた。彼はオマエにも新しい始まりを望んだだろう。オマエは新しい始まりを手にするに値する。オマエ自身が望むのなら。俺たち全員が望むのなら。」「…」「さあ、こっちに来い。一緒に横になろう。」「抱きしめてくれるのか?」「当たり前だ。」モノコとヴェルソは、これまで以上に互いのことを理解している。二人の絆は壊せない。親密度アップ. 本心からの対話を通して、モノコは思い出した。他にも忘れていたスキルがあったことを。二人は奇妙で感傷的な時間をさらに過ごし、仲間のところへ戻る。
「…」「ノコが恋しいだろう。」「ああ。ノコがそばにいると日々がより色鮮やかになる。」「ジェストラルの村に少し立ち寄れるかもしれない。どのみち物資が必要だしな。」「それは嬉しいな。」
このイベント後にジェストラルの村を再訪してノコに会えるが、他人に接するように挨拶され、かつての関係はもう取り戻せないことにモノコは声を出して泣く。ここで、操作キャラをモノコにしてゴルグラに話しかけると会話イベントが発生する。順番を抜かしたノコ蘇生の件でゴルグラはなお怒っているが、それは「恨みを抱えていると不機嫌で強くいられる」というジェストラル流の流儀によるもの。ゴルグラとの再戦に勝利すると、和解こそ明言しないものの、村への再訪を認め、さらには次の冒険には私を誘っても構わないと提案し、不器用な形で関係の修復を示す。
ジェストラル村再訪時のモノコとゴルグラの会話
「モノコ。愚かにも、またワタシの前に顔を出そうとは。」「本当にまだ怒っているのか?恨みを忘れない期間1位になっても商品は出ないぞ。」「商品など不要。恨みを抱えるのを楽しんでいるのでな。おかげで、いい感じに不機嫌でいられる。強くもいられる。」「あー… まあそうだな。オレたちは壁を乗り越えたと思ったんだが。前回…」「いいや。オマエを倒すのを楽しむとしよう。今回も。」ゴルグラとの戦闘が始まる。
「結構。留まることを許そう。」「仲直りってことか?」「… いいや。だが… 好きなときに村を訪ねてもいい。あるいは次に冒険へ発つとき、ワタシを誘ってもいい。」
6.
リーチャー
リーチャーは大陸北西部にそびえる、塔のような巨大なアクソンがいる領域。Act II では純粋なクロマを得るために二体のアクソンを倒す必要があったが、リーチャーは高い山に登らなければならないため候補に上がらなかった。ストーリー上で明かされているように、画布のアクソンはルノワールがデサンドル家の人物像をそれぞれ自分の解釈で描いた像である。ヴィサージュ (Visages) は「嘘で真実を守る者」のヴェルソ、シレーヌ (Sirène) は「脅威を弄ぶ女」の母アリーン、リーチャー (The Reacher) は「空を掴む女」の妹アリシアの本質を描いている。旧ルミエールで討伐されていた、背中に小さな街を背負ったアクソンのホーラー (The Hauler) は姉クレアに相当する。
入口での会話
パーティが入口で巨大化したアクソンを見上げながら。ルネ「またアクソンね。どうやってここまで大きく?」ヴェルソ「昔はここまで大きくはなかった。だが、星々に手を伸ばそうと躍起になってから…」マエル「父さんと父さんの比喩だよ。」ヴェルソ「比喩?」マエル「父さんは意味のない絵は描かなかった。すべてのものには層が必要なの。意味と目的が重なってなくちゃいけない。すべてのものに教訓があるの。」ヴェルソ「ふむ。」ルネ「この教訓は?」マエル「希望。」ヴェルソ「アリシ… 俺の妹は一番上にいる。」マエル「めまいがする。それも父さんにはお見通し。」
6.1.
緑のオルフラン
塔の途中で遭遇する緑のオルフラン (Green Orphelin) は、他のオルフランと違って敵性がなく、また白いネヴロンとも違っている。創作作業に没頭し、敵意をみせず、マエルに手製の翼を贈ろうとする。しかし、マエルの「飛ぶのは怖いよ」という意図を察すると残念そうに引っ込める。実際には、マエルはここでは「目まい」と表現している。これは、入口のムービーでマエルがリーチャーを見上なら「目まいがする。それも父さんにはお見通し。」と言ったことに通じている。
この緑のオルフランは父ルノワールを象徴する像としてこの塔に配置されている。父ルノワールは娘のアリシア (マエル) に飛翔の手段を与えようとする善意の人物だが、その過大な期待が娘の恐怖や望みを考慮しない一方的な押しつけになっていた、ということをこのシーンと会話が示唆している。そしてこの像が画家ではなく創作者 (=芸術家) として描かれていることが、父ルノワールは娘アリシアに高く飛んでほしいというメッセージと同時に、娘には創作者としての没頭する父親の姿として見てほしいという心情にも見える。
マエルは、デサンドル家の三人兄弟の中で自分が常に比較され劣位に置かれた末っ子であったことを語る。これは前章のエピローグでクレアがアリシアに向けた冷淡な扱いや、壁に飾られた家族の作品の根にある関係性であり、彼女が画布の世界に逃避した動機の一つでもある。ヴェルソはルノワールがアリシア (マエル) のことを「希望の星」(secrète étoile) と呼び、愛していたが、その愛を娘に伝えることができないままだったと明かす。緑のオルフランが言葉を持たずに手製の羽だけを差し出す様子は、まさにこの父娘関係の構造のぎくしゃくさを表している。
なお、緑のオルフランの作業机に置かれている紙は LE LUMIERIEN (ルミエール市民) という週間新聞で、LE GRAND CAFÉ DE LUMIERE OUVRE SES PORTES! (ルミエールのグラン・カフェが開店!)、LA SOIRÉE D'INAUGURATION (開店記念の夜会) などの見出しが見えるが、本文はすべて Lorem ipsum のダミーテキストであるため、単なる演出用の小道具である。この新聞はプロローグの空中庭園の壁に貼られている掲示物とも一致している。
緑のオルフランでの会話
帽子を被った緑のオルフラン (Green Orphelin) が創作作業に没頭している。敵意はなさそうに見える。パーティに気付くと、マエルに手製の羽をわたそうする。マエル「目まい、覚えてる?」残念そうに羽を引っ込めるネヴロン。周囲を見回しながらマエル「あの人は善意でやってるけど… 方法は…」ルネ「貴方の父親のこと?」マエル「わたしは末っ子だから、そのせいでいいことなんかなかった。」ルネ「ああ、分かるわ。」シエル「あたし一人っ子。」マエル「一番上のクレアは、すごく… 完璧。本当に頭がよくて才能があって。父さんもお気に入りで、自慢に思ってた。ヴェルソは… いつも父さんを笑わせていた。二人だけに通じる冗談がたくさんあった。わたしは違う…」ヴェルソ「その通りだ。本当のお気に入りはきみだよ。あいつは “秘密の星” だと呼んでいたが、当の本人は恥ずかしがりで内気すぎて、分かっていない。」マエル「だとしても、わたしは今ここで状況をどんどんめちゃくちゃにしている。」ヴェルソ「奴はただ、君にも羽ばたいてほしいんだよ。」
このオルフランは他と違う。邪魔をせず、創作に夢中になっている。ルネ「この発明品… ギュスターヴは見たがったでしょうね。」
6.2.
アリシアとの対面
山の頂では、画布のアリシアがキャンバスに向かって巨大なリーチャーの顔を描いている。ヴェルソはアリシアの手紙を渡すが、アリシアは手紙を捨てる。この手紙は Act II 終盤でヴェルソが海に捨てたが、その後にマエルによって拾われ、またヴェルソに返されたのだろう。その手紙を、アリシアは既に取り返しの付かない過去のものとして扱う。彼女は手紙の中で兄に第三の道を託したが、兄は後戻りできないところまで手紙を読まず、画布の世界は崩壊した。今となってはこの手紙はもう機能しない。アリシアの手紙の捨て方が冷たく見えたのは、手紙を読まなかったヴェルソを責める気持ちを示唆している。
アリシアが力を使い、世界がモノクロになりマエルとアリシアだけが動ける時間が訪れる。テーブルに置かれたアリシアの仮面は、Act II のモノリス前夜のキャンプでヴェルソが外して以来、外されたままになっている。マエルはその仮面を静かに手に取る。マエルはアリシアが自分を責めていると感じるが、アリシアは少し笑ったような顔を返す。
そしてアリシアはアクソン「リーチャー」を引き寄せ、その中に入ってマエルに片目の人形を見せる。その人形こそが、父ルノワールが娘の本質として描いた像、星に手を伸ばす片目の少女の「真のアクソン」である。Reacher という英語名が示す「手を伸ばす者」とは、失われた目で見えない星に手を伸ばし続ける娘の像である。父は娘の傷 (失われた目) を肯定したまま、それでも空をつかもうとする力を持つ存在として彼女を描いた。
アリシアは静かに剣を出し、マエルもこれに応じる。この決闘は、アリーンの記憶から生み出された「描かれた存在」から自らの主体性を取り戻すものとなる。アリシアはこの苦悩に満ちた生に終止符を打ち「友好的な」形で自らの存在を終えることを望んでいる。決闘の後、アリシアは新たな始まりを拒み、マエルに自身の存在を終わらせてほしいと頼む。マエルはその願いを叶える。
ヴェルソが掴んだのはアリシアの霧散したクロマだけだった。崩れ落ちるヴェルソの肩をシエルが抱く。
アリシアとの対面時の書き起こし
ネヴロンの前で絵を描いている画布のアリシア。マエル「こんにちは。」ゆっくりアリシアに近付くヴェルソ「アリシア。きみの手紙…」アリシアは受け取った手紙を捨てる。アリシアが力を使い、マエルとアリシアだけが動けるモノクロの世界となる。テーブルに置かれたアリシアのマスクを手に取りながらマエル「彼女はわたしを責めてるんでしょ?あんまりだよね…」少し笑ったような顔をするアリシア。アリシアが立ち上がり、アクソン “リーチャー” を引き寄せ、中に入るよう促す。その中には片目の人形 (アリシアの失われた目を表す) がいる。マエル「ああ。あなたは本物のアクソンだね。彼女は父さんが描いたって分かってるよね?」軽くうなずくアリシア。マエル「だから何を意味しているかも分かってる。あなたは… ここにいたいの?アクソンと一緒に。」静かに剣を取るアリシアとマエル。同じ技を使う二人の戦闘となる。
マエルが勝利する。アリシアは人形の方を見て剣を収める。アリシアが最後に振り返って人形を見て 外に出る。マエル「多分… これは… 父さんの期待を表している。わたしたちへの。」顔を見合わせる両者。マエル「わたしへの。」マエルがアクソンに手を向けて「行って。あなたの空を手に入れて。」と言うと、巨大なアクソンはその場を離れる。マエルが再び時間を動かし始める。マエル「わたしたちには羽ばたく権利がある。新しい始まりをあなたにあげる。」アリシアの胸にゆっくり手を当てるマエル。ヴェルソ「アリシア…」アリシア「家族のもとへ行かせて。」霧散するアリシア。ヴェルソ「待て─── マエル…!」駆け寄るヴェルソがつかんだのは、霧散した花びらだけだった。崩れ落ちるヴェルソ。近付いて肩を抱くシエル。
6.3.
リーチャー後のキャンプ
その夜のキャンプでヴェルソは誰とも話さず、一人湖のそばに立っている。マエルが歩み寄る。ヴェルソは怒りを隠さない。「別れを言えなかった。俺に彼女を説得するチャンスをくれなかった。」「きみたち画家は自分の思うままに行動し、残った者への影響を気に掛けない。」この世界での、画家として死者を消去する力を持つ者と、消去された死者を悼む者の間に走る根本的な非対称性がむき出しになる。
マエルの応答も誠実である。「彼女は自分の望みを分かっていた。話をして決心をにぶらせられたはずだと彼女を否定するのは間違いだと思う。」アリシアの抹消は彼女自身の意思であり、それを尊重することが妹を真に尊重することだと。しかしマエルは最後にヴェルソの言葉を受け止める。「あなたのことを考えるべきだった。お別れを言う時間を上げるべきだった。本当にごめんなさい。」Act III で初めて、マエルが画家としての自分の力の代価を受け入れる描写であり、画家の暴力性を自覚した上で人間関係を維持する責任を引き受ける覚悟を描写している。
マエルがモノリスを見つめているところにヴェルソが訪れる。ここでクレアとヴェルソの過去三回の
マエルは決定的な問いをする。「ホントはギュスターヴを助けられたのに、ルノワールを止めなかったの?」長い沈黙と深い呼吸の後、ヴェルソは「そうだ」と肯定し、その理由について、ギュスターヴが生きていれば、画布世界の真相を知った後にマエルが画布存続側に傾く可能性が高すぎた、と語る。ヴェルソは、旧ルミエールでも、屋敷の扉を開けさせるために途中からマエルを一人で行かせている。しかしギュスターヴを見殺しにしたのは、マエルが彼女の計り知らないうちに意思決定を曲げさせるための謀略で、それとは比べものにならない汚い一手である。しかし、マエルの「ありがと。ホントのこと言ってくれて」と応えは、この旅を通した彼女の倫理的成熟、そしてアリシアを通じた「家族は複雑だよ」という意味への理解を示している。怒りでも糾弾でもなく、嘘の終わりへの感謝。Act II 全編を通じて嘘の上に築かれていた二人の関係が、ここでようやく真実の上に建て直される。
しばらくの沈黙の後、マエルは話題を変えるように、何も書かれていないモノリスは味気ない、とつぶやく。ヴェルソが今の君なら何でも描けると返すと、マエルは “父さん、家に帰れ” (Papa, Va T'en) はどう? と提案する。思わず吹き出すヴェルソ。Va T'en はフランス語で「出て行け」「消え失せろ」というような、家族間で発するには相当強い拒絶の言葉。子が親に対して使うとなればなおさらのこと。母アリーンがモノリスに描いてきたのは画布世界への切実な警告だったが、そのモノリスが娘から父への個人的な警告に使われるというコミカルな様子を描いている。この描写は、このイベントでのマエルとヴェルソのやりとり ── アリシアの抹消、ギュスターヴの犠牲 ── という極めて重い結果を引きずらないようにうまく着地させている。
これ以降、キャンプやワールドマップからは “PAPA, VA T'EN” と描かれたモノリスが見られるようになる。
キャンプでの会話の書き起こし
6.3.1. マエル: 親密度 6
キャンプで、ヴェルソは誰とも話したがらない。彼は湖のそばに一人で立っている。しばらくして、決心したマエルが話しかけに行く。「…」「…」「…」「ごめん。」「…」「彼女の望みだったの。わたしは、わたしたちは、彼女に大きな借りがある。」「…」「わたしは彼女の願いを引き受けた。あなたにもルノワールにもできなかったことなの。母さんにもね。」「… 別れを言えなかった。きみは待たなかった。俺に彼女を説得するチャンスをくれなかった。」「彼女は自分の望みを分かっていた。彼女の気持ちを変えることはできなかったよ。」「彼女はきみとは違う。きみは分かっていない。俺の方が彼女のことをよく知っている。だが、きみは俺に試みるチャンスすらくれなかった。ただ彼女を消した。」「ヴェルソ…」「きょうだいを二人失くしたなら、きみにも分かるだろう。喪失感と、別れを告げられなかったことをどう感じるか。」「…」「きみたち画家は自分の思うままに行動し、残った者への影響を気に掛けない。」「わたしは気に掛けてるよ。あなたが傷ついてるのは分かるけど、あの決断をしたのは私じゃない。彼女だよ。話をして決心を鈍らせることができたはずだからってだけで彼女を否定していたら、間違ってたと思う。」「彼女は俺にとっての最後の家族だった。今はもう誰もいない。」「わたしが、わたしたちがいるよ。」「マエル。俺には心の準備ができていなかった。」「分からないよ。父さんを解放したときには覚悟ができていたでしょ。あなたは父さんがキャンバスと、そこにいるみんなを消すと分かってた。それと同じじゃないの?」「違う。同じじゃない。なぜ彼女にあんなことをした?」「理由は分かるでしょ。」「…」「けど、あなたの言う通り。あなたのことを考えるべきだった。お別れを言う時間をあげるべきだった。本当にごめんなさい、ヴェルソ。」静かに泣くヴェルソ「… 少なくとも、彼女はもう自由だ。」不満を抱えていたが、ヴェルソはマエルの言葉を理解している。彼はマエルが正直に打ち明けてくれることに感謝する。そしてマエルは、ヴェルソに心から共感する。マエルとヴェルソは互いに親近感を抱いている。親密度アップ. しばし二人は黙って座っている。今回は、マエルがヴェルソを慰めている。二人は仲間のところへ戻る。
6.3.2. マエル: 親密度最高
ヴェルソは、一人でモノリスを見つめているマエルに近付く。「…」「…」「母さんやあの数字がないモノリスって、変な感じ。」「からっぽに感じるな。」「うん。母さんが見えないとちょっと寂しいかも。母さんは今頃なにしてるんだろ。すごく怒ってるだろうな。」「ああ。」「クレアも喜ばないだろうな。あの二人、お互いに腹を立ててるかも。まあ、クレアはあんまり家にいないだろうけど。クレアのことだから、作家たちを追求しているかも… 火事の責任について。」「クレアらしい。」「うん… 家にいるとき、クレアの姿をめったに見なかった。クレアはヴェルソが死んだことに、かなり被害者意識を持ってた。まあ、家族みんなそうだったけどね。」「彼女とは三回会ったよ。」「そうなの?」「最初は崩壊の直後、第0遠征隊と一緒にいた時だ。結界のところで止められた。」「なら、全部聞いてたんだ?」「ああ。俺たちが引き返そうとしないと、殺そうとしてきた。」「クレア。」「数年後、会いに来て勧誘された。その次に会ったのは、今から16年前だ…」「…」「きみを見守るように言われた。彼女の戦いから離れてここにいる方が、きみにとって安全だと感じたんだろう。」「待って、じゃああなたはずっとわたしを見てたの?」「遠くから。たまに隠れてルミエールへ戻っていた。」「… つまりあなたも、私の居場所を知ってて放っておいたんだ。」「きみを連れて行くことはできなかったんだ。だが気を配ろうとはした。きみがルミエールを出たときには、そばにいた。本当に危険なネヴロンは通り道からすべて排除したし、浜辺ではきみを連れ出して…」「… でも、ルノワールが他の隊員を殺すのを止めなかったよね。みんなを助けなかった。」「救うには人数が多すぎたんだ。」「… 聞きたいことがあるの…」「なんだ?」「ウソはつかないで。いい?」「きみに嘘をついてももう意味が無い。」「崖で… ギュスターヴを… …」「どうした?」「ホントはギュスターヴを助けられたのに、ルノワールを止めなかったの?」長い沈黙と深い呼吸の後「そうだ。(真実)」「…」「すまない。」「なんで?」「俺は恐れたんだ。キャンバスの真相を知ったとき、彼が一緒にいたら… きみは母さんを家へ帰す手伝いをしてくれないだろうと。」「だからギュスターヴを死なせたんだ。」「そうだ。」「…」「もっと早く、きみにすべてを伝えるべきだった。だが… 俺にはリスクを冒せなかった。」「…」「ありがと。ホントのこと言ってくれて。」深く呼吸をするヴェルソ「…」「…」「うん、数字がないと味気ないよね。」「きみはペイントレスだ。何でも描ける。」「“父さん、家に帰れ” (Papa, Va T'en) はどう?」「グッとくるな。」「よし、描きに行こう!」マエルとヴェルソの絆は今や確固たるものだ。真実で築かれた絆だ。親密度アップ. 二人はモノリスへ向かい、マエルはモノリスに手を加える。父親へのメッセージだ。この冒険のおかげで、マエルは自身の画家としての一面をより理解できるようになった。二人はキャンプにいる仲間のところへ戻る。
マエル「ここのところ詩を聞かないけど?」ヴェルソ「最近はあまり思いつかなくてね。」マエル「ワインが役に立つかも。エスキエがもっと持ってないか見に行こ。」
7.
噴水
エスキエの飛行能力が利用できるようになることで、キャンプで発生するサブクエスト以外にも物語と関係する場所やイベントを訪問できる。
噴水 (The Fountain) では白いブランシュと対話して画布世界で起きている創造の暗部を知ることができる。
白いブランシュとの会話は、彼が遠征隊に敬意を示すところから始まる。モノリスに到達してペイントレスを倒したことで「主 (クレア)」は喜ぶだろうというねぎらい、そして、画布世界が今後どうなるかという問いかけ。続けて、自分を生み出したクレアのもとで自分たちネヴロンが担っていた役割を明かす。遠征隊がこれまで大陸で戦ってきたほとんどのネヴロンは、画布の中で「主の敵対者 (アリーン)」からクロマを遠ざけて消耗させ、画布世界の本来の争い (ルノワールとアリーンの衝突) の終結を早めるという目的のために生み出された創造物だったことを遠征隊に明かす。これはエピローグでクレアが語ったことと整合している。
加えてこのブランシュは別に任務が課されている。クレアが描いたネヴロンのうち未完成のまま画布に放たれた同類を始末するという役割である。彼らはクレアの失敗の証であり、消されるものとして扱われている。だが彼はできなかった。同じ筆で書かれた者として、自分と同類の哀れな状況を見過ごせなかった。彼は世界をさまよい、自分に課せられた任務を残酷だと感じ、暗い思考に沈んでいったが、最終的に自分もまたその同類の一人であるという認識に至った。その後、不完全なネヴロンたちをこの遠征隊が慈悲を持って助けてきたことを知り、感謝の意を示してパーティを見送る。
白いブランシュとの対話では、現実のクレアの完璧主義、そして徹底して冷徹な創造の姿勢を浮かび上がらせる (また彼は自身がいずれクレアに消されることを予見している含みもある)。しかし任務を拒んで彷徨ったこのブランシュの存在は、その統制にも隙があったことも示してもいる。自分の創造物が、敵であるはずの遠征隊に救いを見出したという事実を、姉は画布の外から把握できないまま現実世界での闘いを続けている。
モラルプレイをしていればここでルミナのカラー×100 を入手できるため、最終戦前に寄り道してルミナを強化しておきたい (ただし 2 体以上の白いネヴロンを倒している場合は戦闘となり 10 個しか手に入らない)。
ネヴロンの創造主がマエルの姉クレアだとパーティに判明する重い場面で、モノコだけは「なぜネヴロンの脚をあんなに鋭く描いたのか、磨くのに不便だ」と的外れな文句を言い、その場違いさがマエルを笑わせる。
白いブランシュの会話
ブランシュ「お前たち… モノリスを征服した者たち… そしてこの絵を自分のものとして求めた女性を倒した者たち。主はお前たちの功績を聞いて喜ぶだろう。さて。お前たちの勝利の結果に無知なままではいられない。キャンバスはどうなる?」ルノワールがすべてを消そうとしている。「予想通りだ。これは悲劇でもなければ勝利でもない。」ルノワールがキャンバスを破壊するのをやめる。「不可能だ。お前たちが目指すことは成し遂げられない。… だが、決断を推奨する。主は… 同じ性質で私を苦しませた。彼女の創造物である我々は、同じ責務を共有している。彼らの破壊の力を取り除き、クロマを手に入れられないようにすることで、彼らの衝突の解決を早めることだ。だが、私には他にも責務が与えられていた。主の手で甦った未完成の不完全な創造物たち… 彼らを無効化するために、私は描かれた。」なぜ主はそんなことを?「彼らが存在することは主の失敗の証となる。そしてそのために、私は彼らを消すことになっていた。だが、できなかった。同じ筆で書かれた、同類なのだ。彼らの哀れな状況を見ると。私はどうしてもできなかった。だが、お前は。助けてくれたのだな。多くが立ち直っている。お前たちのおかげだ。慈悲をかけてくれたな。お前たちは優しさを選んだ。… よく考えたよ… 希望を持つことは間違っていると。あまりにも長い間、私は世界をさまよっていた。残酷な責務が与えられたと思っていた。新たな目的を定めたときでさえ、同様に不可能であるとすぐに分かった。そして私はさすらった。自分を取り囲む世界を知るにつれ、少しずつ、暗い考えに没頭した。それから、真実を知った…」自分も彼らと同じだと?「遠征隊よ。お前たちは私たちの多くを救ってくれた。どうかこれを受け取ってくれ。お前たちがこれらかも、道から外れた者たちを助けてくれますように。」
マエル「クレア…」ルネ「貴方のお姉さんがネヴロンを創ったの?」マエル「うん、アクソンの島にいた奴は違うけど。」モノコ「彼女はなんでネヴロンの脚をあんなに鋭くしたんだ?手を細くしないと磨けないじゃないか!非常に不便だ。」ヴェルソ「ああ、かなり腹が立つな。」笑うマエル「…」
ブランシュ「進むがいい。私のことは気にするな。」見逃してくれると?「お前たちを止めようとするのは、恩知らずの愚か者だけだろう。私たち… 未完成の者たちは… 感謝している。」立ち去る
8.
ヴェルソのジャーナル
忘れられた戦場の出口側のすぐ西に、飛行でのみたどり着ける丘があり、そこでヴェルソとジュリー (Julie) のジャーナルを入手できる。
ジュリーのジャーナルには「捜索救助隊」と書かれている。第 0 遠征隊当時、ヴェルソの部隊はモノリスの結界前で現実のクレアと遭遇し、おそらくそのために全滅している。生き残った不死のヴェルソやノワールは、ジュリーのいる後方部隊と合流して生存者の捜索と救援に向かっていたのだろう。ただし、モノリス結界前でクレアから聞いた「この画布の世界の真実」をすべて話せば気が狂った思われると考え、ゴマージュを発動している者はペイントレスではなく別にいることだけを伝え、画布世界や自身の不死については口を閉ざしていた。
ヴェルソたちが合流したこの部隊には、ヴェルソが恋心を抱いていたジュリーがいた。ある夜、ヴェルソとルノワールは胴が真っ二つになるほどの致命傷を負うが、その後何事もなく生還する。その不可解な様子を見たジュリーは彼らが何か重大な秘密を隠して自分たちを誘導しようとしている「裏切り者」と疑いを持ち、同じく、その様子を見ていた仲間と共にヴェルソらを捕らえて尋問しようとする。結果的に、彼は自身の計画を遂行するためにジュリーと隊員全員を殺害するに至った。
キャンプでのルネのとの会話で遠征隊の裏切りにあったという事件はこの時のことを指している。またプロローグの祭典でルネにギュスターヴが言った「生き残りがいたのは第 0 遠征隊だけだ、それにモノリスへもたどり着いた」という会話とも整合する。
ヴェルソのジャーナルからは、この時すでに姉である画布のクレアが現実のクレアに連れ去られていることも分かる。当時、ヴェルソは父ルノワールと協力して母親のアリーン (ペイントレス) をモノリスの頂上から救出し、画布のクレアや、画布世界そのものを救う計画を立てていたようだ。そして、アリーンさえ救出すればジュリーや他の遠征隊も甦らせられると信じていた。
おそらくこの丘はマエルの最初の悪夢と 3 度目の悪夢に出てきた場所であろう。これらのカットシーンではジュリーの腕章に “0” の数字が見え、アリシアの後ろ姿も映る。これらをつなぎ合わせると、第 0 遠征隊には母アリーンを捜索するために画布のデサンドル一家の全員が参加していたことが分かる。
Act II で赤い葉の木の下にギュスターヴの義手を弔ったとき、ヴェルソが “0” の腕章が取り付けられた墓標を一瞥するカットがある。おそらく、この丘で殺害したジュリーや他の遠征隊員たちは、ヴェルソの手によってすぐ近くのあの場所に一番最初に埋葬された隊員であろう。
ジュリーの時代、ヴェルソは自身の不死という異質性を絶対に知られてはならない秘密として隠した。結果としてその沈黙は、仲間から「裏切り者」の嫌疑をかけられることに繋がり、捕縛、尋問、殺害という最悪の結果を招いた。一方、第 33 遠征隊では不死を余興として軽やかに開示している。67 年の中で彼は、自分の異質性を隠すのではなく、親しさを生む害のないものと仲間に認知させるべきだと学んだようだ。
キャンプでのシエルやエスキエとの会話で、ヴェルソは心からジュリーを愛していたことや、彼女や遠征隊を生き返らせて真実を話したいと強く願っている胸の内を明かしている。ただし、ヴェルソはすでに心変わりしており (多分、2 度目のクレアとの邂逅時から)、ジュリーを甦らせたい気持ちとは別の目的を隠し持っている。
ヴェルソとジュリーのジャーナル
8.0.1. ジャーナル - ヴェルソ
君に会いたいよ。俺にそんな権利はないが、会いたい。きみと話ができたらいいのに。伝えたい…
クソ、何をと言うんだ。
ただ… 許してほしい。ジュリー… すまない… 俺は… 裏切ってない。断じて違う。俺は… 俺たちはみんなを救おうとしているんだ。
だが、きみが正しい。俺は臆病者だ。ひどい臆病者だよ。きみには理由を知る権利があった。なのに俺は… ちゃんときみに向き合えなかった… それでも、やるべきだったことをやる。
父さんはきみの創造主がクレアだと思っている。たとえそうでないとしても、俺たちはもうきみを信じられない。けど、きみは答えが欲しかっただけなんだろう。
なぜだ?なぜ、そっとしておいてくれなかった… なぜ、彼らを説得して俺を誘拐させた?尋問した?俺は…
いや、クソ… 分かっているよ。きみは俺を裏切り者だと思って、正しいと思ったことをしていた。俺たちと同じように。
誓って言うが、俺は正しいことをしているんだ。
きみが疑問に思い始めたときに気付くべきだった。きみは騙されないだろう。だが、説明できるわけがない。気が狂っていると思われただろう。ドッペルゲンガーたちに、キャンバスの中の世界…
クソ。
だが父さんが正しい。俺たちは危険を冒せない。あまりにも多くのものが懸かっている。やるべきことだった、そうだ。クレアにはもうきょうだいを奪われた… 俺たちの家族を、世界を、人々を救うには… 危ない橋を渡れない。
それに母さんを自由にすれば、きっと… きみを甦らせてくれる… 今だけの辛抱だ。本当だよ。
約束する…
俺たち全員に生きる価値がある。存在する価値がある。
ヴェルソ「…」マエル「ヴェルソ…」ヴェルソ「… 行こう。」
8.0.2. ジャーナル - 捜索救助隊ジュリー
ジュリー、捜索救助隊
私は確かに見たの。彼は死んだ。死んだのよ。あの攻撃で胴の半分がダメになって、そこから一歩も動かなかった。なのに私が彼を見つけたとき、意識はなかったけれど、それだけだった。もちろん服は破れていたけれど、彼の胸には痣があるだけだった!
彼と彼の父親は、ペイントレスは問題ではなく解決策だと言い続けている。でも、私には信じられない。彼らは第0遠征隊に何が起きたか、ウソをついている気がする。他のみんなは死んだのに、あの人たちだけかすり傷ひとつなく引き上げられたって言うの?
彼が私たちを裏切るとは考えたくない。でも、裏切りは前触れがないものよね。とはいえ、彼は勘違いをしている。魅力があっても嘘は信じ込ませられない。私たちは明日の晩、彼を連れて行く。クロードも、ルイーズも、ダイオンだってバカじゃない。彼らは私と同じものを見た。きっと答えが得られるはず。もし彼が裏切り者なら、相応の運命が待つでしょう。
9.
アトリエ
アトリエ (Painting Workshop) は、現実のクレアがネヴロンをデザインし制作していた工房である。大陸の三箇所に入口が分散したオプションエリアであり、忘れ去られた戦場北西、岩波の崖北東、シレーヌ東の浮遊島にそれぞれ入口がある。いずれも足場渡りのパルクールを経た途中に少年がおり、協力の意を示すと、訪れた地点ごと獣の光・獣の色・獣の形の一つが授けられる。
中央のアトリエのランプマスターの像にそれらを収めると、モノクロームの風景に色彩が戻り、奥の封印が解かれランプマスターと対戦できる。Act I 終盤に遭遇した個体と同種のネヴロンだが、格段に強化されており、複数の浮遊ランプを従えた多段攻撃を仕掛けてくる。ランプマスター撃破後、出口の近くに居る少年から「完璧なクロマカタリスト」を入手できる。
工房には制作途中のネヴロンが数体と、作成時にクレアが傍らに置いていた道具の数々が残されている。ただし、今はこの工房は使われておらず、現実のクレアはすでに画布の外へ出ており、代わりに空飛ぶ屋敷において画布のクレアがネヴロンを作り続けている。
顔のない少年との会話
顔のない少年「恐怖を描く、姉の筆。彼女が描いた化け物は、おれの夜に住んでいる。嫉妬が歪み、愛が目くらませる。彼女のキャンバスは悪夢を、おれを眠らせない生き物を生み出した。彼女が創ったものを壊さなくちゃいけない。ここに属するものじゃないから。手伝ってくれる?」手伝う。「暗闇の中にある光を探して。彼女の心はねじれた道の迷路。だけど彼女の心は道を知っている。さようなら。」
未完成の獣の像だ。獣のシェイプを使いますか?はい。獣の物語が書かれている。すべての部品がそろった。物語が明らかになるだろう。獣を追放するには、勇気を持たなければならない。影に対峙し、画家を探し、源を探せ。暗闇をほどき、その道を壊せ。
ランプマスター討伐後に出口近くに現われる顔のない少年「獣はもういない。また眠れる… また夢を見られる… 影が落ち、化け物たちが逃げ、夜明けに包まれ、魂は自由になった。彼女が二度と、ここに恐怖を描きませんように。」
9.1.
工房に置かれた聖書
工房の机の上に一冊の古い本が開かれたまま置かれている。フォトモードで拡大すると、これは英国の聖書学者アダム・クラーク (Adam Clarke, 1831) による聖書
よりにもよってクラークの註解のこのページを開いていること、そしてそれが作成中のネヴロン彫刻の前に置かれていることは、偶然の配置とは考えにくい。さらに、この見開きは実在の書物の連続した 2 ページではなく、異なる章の組み合わせであることも、解釈の対象が聖書全体というより制作側が選んで示したページの内容と考えるべきである。
9.1.1.
最後の審判
左ページは最後の審判 (The Last Judgement) であり、これは世界の終わりに「生かされるもの」と「退けられるもの」に選り分けられる場面。クレアがネヴロンの創作過程でそれを参照していたということは、単なる宗教的装飾を超えた意味を帯びる。この場面が説くのは、善行 (人が弱き者にしたこと) がそのまま自身への所業として数え上げられるという清算 (reckoning) の理念である。
もっとも、クレアが実際に何を思ってこれを開いていたのかは定かではない。想像するに「創る者は、創られた者をいかに扱い、その生と死をどう決するのか」という問い、つまり、創作者が自らの被造物に対して負う責任とその重みを常に意識し自戒する目的で開いていたのではないだろうか。ひいては、この物語は誰が善で誰が悪かではなく、創られた生を存続させる権利 (アリーン、マエル、画布のルノワール、現実のヴェルソ) と、それを手放す赦し (画布のヴェルソ、現実のルノワール) の、いずれを選ぶのかという答えなき最終審判の物語として、制作はここに「最後の審判」を置いて物語の枠を示そうとしたのかもしれない。
なお、ルネがエレメンタル・ジェネシスを発動するときの “Meet your reckoning” (報いを受けろ) のように、この物語ではしばしば reckon という言葉が使われている。
9.1.2.
受肉
右のページは受肉 (Incarnation) であり、創作者がアトリエで作品に「肉」を与える様子を想起させる。ただし、クレアがクラークのこの章をネヴロン創作の傍らに置いていたとすれば、そこから汲まれていたのは「受肉」だけではない。註解が記す通り、ベツレヘムの「肉」は祭壇で焼かれる供犠の肉を指す語でもあった。肉を与えて生み出すこと (受肉) と、その肉を捧げて滅ぼすこと (供犠) とは、地続きであるという考えが根底にある。クレアが想像するネヴロンもまた、生み出された端から戦いの内に滅ぼされる、または、すべてが終われば抹消される存在であるという、創造の二面性を示している。
そして見落とせないのは、この章が誕生の章であると同時に「子どもの死」と「慰めを拒む母」の章でもあることだ。「子のために泣き、彼らはもういない」という一句は、息子ヴェルソを失い慰めも拒む母アリーンによってこの画布世界の物語が駆動しているという本作の構造に不気味なほど重なる。クレアが手を動かすこの工房も、無数の「受肉した供犠」たるルミエール市民やネヴロンも、突き詰めれば、息子を喪った母の嘆きのただ中に置かれている創作物である。生み出すことと、捧げて喪うことと、それを嘆くことが、この章とこの画布の双方で分かちがたく結ばれている。
アトリエの本に書かれていた内容
OCR と機械学習による書き起こし。
9.1.3. 左ページ: マタイ伝第二十五の末尾から二十六章の冒頭
25:24 Then he which had received the one talent came and said, Lord, I knew thee that thou art an hard man, reaping where thou hast not sown, and gathering where thou hast not strawed:
25 And I was afraid, and went and hid thy talent in the earth: lo, there thou hast that is thine.
26 His lord answered and said unto him, Thou wicked and slothful servant, thou knewest that I reap where I sowed not, and gather where I have not strawed:
27 Thou oughtest therefore to have put my money to the exchangers, and then at my coming I should have received mine own with usury.
28 Take therefore the talent from him, and give it unto him which hath ten talents.
29 For unto every one that hath shall be given, and he shall have abundance: but from him that hath not shall be taken away even that which he hath.
30 And cast ye the unprofitable servant into outer darkness: there shall be weeping and gnashing of teeth.
31 When the Son of man shall come in his glory, and all the holy angels with him, then shall he sit upon the throne of his glory:
32 And before him shall be gathered all nations: and he shall separate them one from another, as a shepherd divideth his sheep from the goats:
33 And he shall set the sheep on his right hand, but the goats on the left.
34 Then shall the King say unto them on his right hand, Come, ye blessed of my Father, inherit the kingdom prepared for you from the foundation of the world:
35 For I was an hungred, and ye gave me meat: I was thirsty, and ye gave me drink: I was a stranger, and ye took me in:
36 Naked, and ye clothed me: I was sick, and ye visited me: I was in prison, and ye came unto me.
37 Then shall the righteous answer him, saying, Lord, when saw we thee an hungred, and fed thee? or thirsty, and gave thee drink? 38 When saw we thee a stranger, and took thee in? or naked, and clothed thee?
39 Or when saw we thee sick, or in prison, and came unto thee? 40 And the King shall answer and say unto them, Verily I say unto you, Inasmuch as ye have done it unto one of the least of these my brethren, ye have done it unto me.
41 Then shall he say also unto them on the left hand, Depart from me, ye cursed, into everlasting fire, prepared for the devil and his angels:
42 For I was an hungred, and ye gave me no meat: I was thirsty, and ye gave me no drink:
43 I was a stranger, and ye took me not in: naked, and ye clothed me not: sick, and in prison, and ye visited me not.
44 Then shall they also answer him, saying, Lord, when saw we thee an hungred, or athirst, or a stranger, or naked, or sick, or in prison, and did not minister unto thee?
45 Then shall he answer them, saying, Verily I say unto you, Inasmuch as ye did it not to one of the least of these, ye did it not to me.
46 And these shall go away into everlasting punishment: but the righteous into life eternal.CHAP. XXVI.
26:1 AND it came to pass, when Jesus had finished all these sayings, he said unto his disciples, 2 Ye know that after two days is the feast of the passover, and the Son of man is betrayed to be crucified.
9.1.4. 右ページ: マタイ伝第二章
ST. MATTHEW — CHAPTER II.Wise men come from the east to worship Christ, 1, 2. Herod, hearing of the birth of our Lord, is greatly troubled, 3; and makes inquiry of the chief priests and scribes, where the Christ should be born, 4. They inform him of the prophecy relative to Bethlehem, 5, 6. The wise men, going to Bethlehem, are desired by Herod to bring him word when they have found the child, pretending that he wished to do him homage, 7, 8. The wise men are directed by a star to the place where the young child lay, adore him, and offer him gifts, 9-11. Being warned of God not to return to Herod, they depart into their own country another way, 12. Joseph and Mary are divinely warned to escape into Egypt, because Herod sought to destroy Jesus, 13, 14. They obey, and continue in Egypt till the death of Herod, 15. Herod, finding that the wise men did not return, is enraged, and orders all the young children in Bethlehem, under two years of age, to be massacred, 16-18. Herod dies, and Joseph is divinely warned to return to the land of Israel, 19-21. Finding that Archelaus reigned in Judea in place of his father Herod, he goes to Galilee, and takes up his residence at Nazareth, 22, 23.
A.M. 4001 / B.C. 4 / An. Olymp. CXCIII〜CXCIV
NOW when Jesus was born in Bethlehem of Judea, in the days of Herod the king, behold, there came wise men from the east to Jerusalem, Saying, Where is he that is ...
NOTES ON CHAP. II.
Verse 1. Bethlehem of Judea] This city is mentioned in Judg. xvii. 7, and must be distinguished from another of the same name in the tribe of Zebulon, Josh. xix. 15. It is likewise called Ephrath, Gen. xlviii. 7, or Ephratah, Mic. v. 2, and its inhabitants Ephrathites, Ruth i. 2; 1 Sam. xvii. 12. It is situated on the declivity of a hill, about six miles from Jerusalem. בית לחם Beth-lechem, in Hebrew, signifies the house of bread. And the name may be considered as very properly applied to that place where Jesus, the Messiah, the true bread that came down from heaven, was manifested, to give life to the world. But לחם lehem also signifies flesh, and is applied to that part of the sacrifice which was burnt upon the altar. See Lev. iii. 11-16; xxi. 6. The word is also used to signify a carcass, Zeph. i. 17. The Arabic version has Beet lehem, and the Persic Beet allehem: but lehem, in Arabic, never signifies bread, but always means flesh. Hence it is more proper to consider the name as signifying the house of flesh, or, as some might suppose, the house of the incarnation, i.e. the place where God was manifested in the flesh for the salvation of a lost world.
In the days of Herod the king] This was Herod, improperly denominated the Great, the son of Antipater, an Idumean: he reigned 37 years in Judea, reckoning from the time he was created king of that country by the Romans. Our blessed Lord was born in the last year of his reign; and, at this time, the sceptre had literally departed from Judah, a foreigner being now upon the throne.
As there are several princes of this name mentioned in the New Testament, it may be well to give a list of them here, together with their genealogy.
Herod, the Great, married ten wives, by whom he had several children, Euseb. l. i. c. 9. p. 27. The first was Doris, thought to be an Idumean, whom he married when but a private individual; by her he had Antipater, the eldest of all his sons, whom he caused to be executed five days before his own death.
His second wife was Mariamne, daughter to Hircanus, the sole surviving person of the Asmonean, or Maccabean, race. Herod put her to death. She was the mother of Alexander and Aristobulus, whom Herod had executed at Sebastia, (Joseph. Antiq. l. xvi. c. 13.—De Bello, l. i. c. 17,) on an accusation of having entered into a conspiracy against him. Aristobulus left three children, whom I shall notice hereafter.
His third wife was Mariamne, the daughter of Simon, a person of some note in Jerusalem, whom Herod made high priest, in order to obtain his daughter. She was the mother of Herod Philippus, or Herod Philip, and Salome. Herod or Philip married Herodias, mother to Salome, the famous dancer, who demanded the head of John the Baptist, Mark vi. 22.
His fourth wife was Malthake, a Samaritan, whose sons were Archelaus and Philip. The first enjoyed half his father's kingdom under the name of tetrarch, viz. Idumea, Judea, and Samaria: Joseph. Antiq. l. xvii. c. 11. … This is the Archelaus mentioned in Matt. ii. 22.
The fifth wife of Herod the Great was Cleopatra of Jerusalem. She was the mother of Herod surnamed Antipas, who married Herodias, the wife of his brother Philip, while he was still living. Being reproved for this act by John the Baptist … he caused him to be beheaded … It was to this prince that Pilate sent our Lord, Luke xiii. 31, 32. He was banished to Lyons, and then to Spain, where both he and his wife Herodias died. ...
10.
空飛ぶ屋敷
空飛ぶ屋敷 (Flying Manor) は Act III のオプションエリア。雲の中に浮かぶ崩れかけた建造物の遺構で、奥には画布のクレアが幽閉されている。その手前の広場には、四体の彫刻が納められた尖塔屋根のケースが置かれ、その中央に幼い少年が佇んでいる。少年の語りからすると、ここはもともと現実のデサンドル家の三兄妹、ヴェルソ、クレア、アリシアが幼少期に画布世界を訪れた際の遊び場で、当時の屋敷だった場所と推測される。
橋の手前に佇むジェストラルは、ここにいてはいけないとマエルらを諫めつつ、崩壊の直後にここに現実のクレア (=クロマの巨匠) が現われ、電光石火のごとく砕けた大地を描き直したと語る。ヴェルソは「彼女はここで暮らしていた」と漏らし、マエルが頷く。崩壊後、父を支援するために画布へ入った現実のクレアは、まず子どもの頃によく遊んだ思い出の場所であるこの屋敷を自らの居住地としたのだろう。マエルがアリシアとして覚醒している今、その時期の姉の所在を彼女は画布の外から見ていたことを思い出しているのかもしれない。そしてこの屋敷は後に、現実のクレアが画布のクレアを幽閉する場という、さらに別の用途で再利用されている。
10.1.
四体のネヴロン
広場の中央にいる少年は「子どもの頃に三兄妹で遊んだこの場所には、今、画布のクレアが閉じ込められて永遠に絵を描かされ続けている。今ここにいる画布のクレアはもう以前の彼女ではなく、二度と元に戻れないことを本人も分かっている。奥の扉を開けて彼女を自由にするには、色を盗んだネヴロンを倒し、画布のクレアの作品に色を取り戻す必要がある。」と独白する。少年の語りは「彼女」の指示先が頻繁に切り替わるのでわかりにくいが、昔少年と一緒に遊んでいたのは幼少時代の現実のクレア、「今ここにいる彼女」は上書きされ奥に幽閉されている画布のクレア、完璧主義でアリーンの作品 (つまり画布のクレア) をあざ笑ったのは現在の現実のクレアを指す。
注意を要するのは「彼女はアリーンの創ったものをバカにして、自分の絵に閉じ込められた」という一文で、日本語訳時に係り方だけでなく前置詞情報も落ちているため間違った読み方ができてしまう点である。これは英文では “trapped by her own paintings.” となっている。つまり「絵たちによって閉じ込め」られており、さらに paintings と複数形である以上、(閉じ込められた) ある特定の一枚の絵ではなく、道具としての複数の作品を意味する。つまり正しくは現実のクレアは画布のクレアの出来映えをあざ笑い、画布のクレアは自分の描いた 4 体のネヴロンによって幽閉されていると語っている。人が文字どおり絵の中に閉じ込められうるこの世界では「絵の中への幽閉」という読みの方がむしろ自然に成立してしまうが、ここで語られている「絵」は場所ではなくクレア自身の描いた作品 = ネヴロンである。
この「自分の描いたネヴロン」が誰の手のことかははっきりと確定しない。少年の台詞を素直に繋げば、現実のクレアが画布のクレアを幽閉するために描いたと読めるが、一方、現在のネヴロンの生産構造を考えればこの 4 体もまた画布のクレアが描かされた産出物 (意思を支配され自縄自縛になっている設定) とも読める。いずれにせよ、上書きされた画布のクレアがもはや自分の意志で筆を執れない以上、どちらの手が描いたとしても、その作者性は現実のクレアに帰属する。
なお、少年の言葉だけでなくこの「牢」の機構からも広場のケースに収められた 4 体の彫刻が画布のクレア自身の作品である可能性が高い。母アリーンの創造物からのクロマの環流を遮断することによって衰弱させた現実のクレアは、この牢においても類似した手口を適用していると考えられる。
10.2.
画布のクレアとの戦い
4 体のネヴロンを倒すとアトリエへ続く扉を開けることができる。少年は、画布のクレアの魂はずっと昔に失われており、扉の先で会う彼女は本来の彼女が望んだ姿ではないこと、現実のクレアに自分たちの色を奪われないように気をつけることを重ねて警告する。
扉の先のアトリエでは画布のクレアはネヴロンを生み出している。ヴェルソが「クレア?」と声を掛けると彼女は振り返る。その顔と身体は上から塗り重ねられており、現実のクレアの支配下にあることが視覚的に示されている。彼女はヴェルソに歩み寄って手を伸ばす。ヴェルソが「生きていたのか?」と漏らす。画布のクレアがとうに抹消されたものと諦めていた彼にとって、目の前で彼女がなお存在していることが予想外の発見だった。しかし画布のクレアは、自分の義務を思い出したかのように再びネヴロンの創作に戻る。
現実のクレアは、母アリーンが描いた自分の肖像 (つまり画布のクレア) を嫌い、そのために画布のクレアは上書きされたのだろう、とマエルが推測する。ヴェルソは元に戻せないかとマエルに問うが、画布の中で他人の作品を上書きできるほどの実力を持つのは現実のクレアのみであり、画布のクレアを元に戻すことは私にはできないと答える。画布のクレアが手を振りかざすと周囲のネヴロンが目覚め、戦闘が始まる。
クレア戦に関しては、物語上の位置づけに見合う格別の強さを持つため簡単に触れておく。画布のクレアは、後半になるほど巧妙さを増す長い連続攻撃を繰り出し、これをすべてパリィで避けきることが事実上の前提となる。一撃でも受け損なうと 50 万を超える HP を回復するため、攻撃パターンを身体で覚えて耐え、盾とパリィで有利を取れるビルドを整えた上で、強化したスタンダールと抹消を叩き込み続ける、純粋な粘りと習熟の戦いとなる。十分にレベルを上げているのであれば、攻略サイトで紹介されている「一撃で倒すビルド」を参考にするのも良い。
戦闘に勝利した直後、画布のクレアの片目だけが上書きの支配から解かれたように光を宿す。歩み寄ったヴェルソに彼女は手を伸ばしかけるが、思い止まり、ゆっくり首を振りながら後ずさる。そして自ら手を振りかざしてデュアリステを召喚し、その双剣に自分の身体を貫かせる。さらに他のネヴロンを次々と召喚し、自身を貫かせていく。マエルは「彼女は逃げたかった」と漏らし、ヴェルソは目を背ける。絶叫とともに身体が砕け散ったクレアのクロマの残澱の前で、ヴェルソはひざまずいて謝罪し、マエルがその肩に手を当てる。
広場に戻ったパーティに、少年は画布のクレアの望みを叶えてくれたことを感謝し、もし現実のクレアが自分の話に耳を貸してくれていれば、この絵 (アリーンが描いた画布のクレア) をここまで苦しめずに済んだのに、と漏らす。続けて少年は、絵とはいえ画布のクレアには感情と魂があった、それは自分の見方であって現実のクレアの見方とは違ってるかもしれないが、エスキエもジェストラルもグランディスも、そしてアリーンが描いた絵 (画布の家族やルミエールなど) すらも、自分にとってはこのキャンバスにあるすべてが現実の世界と同じ生気と魂を持つ存在である、絵は祝福であるべきで、それは音楽と同じだ、と自分の世界観を語る。少年は最後に、子供の頃に自分とクレアが共にデザインしたという衣装を一着、贈り物としてパーティに渡す。
空飛ぶ屋敷での会話
10.2.1. 空飛ぶ屋敷にいるジェストラル
ジェストラル「人間よ… ここにいてはいけない!ここのものは強力すぎる!崩壊直後に、この… この… クロマの巨匠が現われた。シュッ、シュッ!電光石火のごときクロマのストロークだった。シュッ、シュッ。そして彼女は壊れた大地を、今このよーうにつくり直したのだ。あの浮いている島々には… 恐ろしいオーラを感じるぞ! … これでお別れだ。ワタシは聖なる川へ向かって発つ!」そう言って姿を消すジェストラル。
ヴェルソ「彼女はここで暮らしていた。」マエル「うん。」
10.2.2. 空飛ぶ屋敷にいる少年
幼い少年「きみは… きみはここにいる…」「この場所は?」「彼女の… 家だよ。ここ、キャンバスの中。昔はここでよく遊んだ… 他のみんなと一緒に… だけど今ここにいる… 彼女は彼女じゃない。元の彼女にはもう戻れない。そして彼女はそのことを分かっている。」「誰の話を?」「全部、いつも、彼女について… 彼女の絵、彼女の彫刻について… すべてが完璧じゃないといけないけど、おれは完璧だったためしがない。そして彼女は完璧じゃない、今ここにいる彼女は。多分… 全部忘れる方がいいのかも… でも彼女はここに、この扉の向こうにあるアトリエに、閉じ込められている。永遠に絵を描きながら。」「後ろの扉を開けるには?」「色… 彼女の絵に色を取り戻して。彼女はアリーンの創ったものをバカにして、自分の絵に閉じ込められた。彼女のネヴロンが色を盗んだ。彼らを見つけて色を取り除けば、多分… 彼女は自由になるかも。」
10.2.3. 四体の敵を倒した後
幼い少年「きみは… やったね。これで彼女のアトリエに行ける… でも… きみが分からないかもしれない。彼女の魂はずっと昔に失われたから… 彼女に色を奪われないように。それは… 彼女が望んだことじゃないだろうから…」
扉の先では画布のクレアがネヴロンを作り出している。ヴェルソ「クレア?」ヴェルソが声を掛け近付くとクレアは振り向く。その顔や身体は上からペイントされており、現実のクレアの支配下にあることを表している。クレアは近付いて手を出す。ヴェルソ「生きていたのか?」クレアは思い出したように再びネヴロンの創作に戻る。ヴェルソ「彼女に何があった?」マエル「クレアは母さんの描いた肖像画を嫌がってた。だから上書きしたんだよ、きっと。」ルネ「そして今は… ネヴロンを描いている。」クレアが振り向いて手を振りかざす。ヴェルソ「彼女を癒やせるか?元に戻せないか?」首を振るマエル「私には描き直せない。才能のあるクレアにしかできないの。誰かの作品を上書きすることは。」クレアの振りかざした手に応じて、周囲のネヴロンが目覚め始める。ヴェルソ「気に食わないな…」ルネ「厳しい戦いになりそうね。」クレアとの戦闘が始まる。
10.2.4. クレアに勝利した後
クレアに勝利する。シエル「なんであんなに強いの?」マエル「クレアの作品だから。」そのとき、クレアの片目だけが上書きされた支配から解かれたように光を宿す。近付くヴェルソ「クレア。」クレアは近付いてヴェルソの手を取ろうとするが、その手を引き留め、ゆっくりと首を振りながら後ずさる。クレアが片手を振りかざすと背後にデュアリステが現われ、クレアに標的を定める。ヴェルソ「おい、駄目だ、待ってくれ…」デュアリステの双剣がクレアを貫く。クレアはさらに他のネヴロンを召喚し、自分の身体を貫かせる。マエル「彼女は逃げたかったんだ。」目を背けるヴェルソ。クレアが絶叫すると、その身体が砕け散る。クレアのクロマの残澱に近づきひざまずくヴェルソ「すまない。」マエルはヴェルソの肩に手を当てる。
広場に戻る。幼い少年「彼女を… 眠らせた?」彼女自身がそうした。「ありがとう… 彼女は… それが彼女の望みだった。」眠らせた。「そっか… それは… よかった。彼女にとって。利己的であることが必要なときもあるんだ。」「おれに… 耳を貸してくれていたらなあ。それなら、この絵を苦しめなくていいだろうに。絵だろうとそうじゃなかろうと、彼女には感情と魂があった。おれがそう思うだけ、だけど。彼女の考えは違うだろうね。おれにとっては、このキャンバスにあるすべてに、外と同じくらいの生気がある。エスキエ、ジェストラル、グランディス、アリーンの絵でさえも。おれはみんな歓迎する。絵はお祝いであるべきだ。音楽みたいに… 彼女の面倒を見てくれてありがとう。大したものじゃないかもしれないけど、おれからの贈り物を受け取ってくれる?おれたちが一緒にデザインした服。1着だけ作れるよ。誰が着たい?」「いいね。さあ、持っていって。ありがとう。いろいろと。自分を、そして自分の周りの絵を大切にね。」
11.
ルノワールの下書き
ルノワールの下書き (Renoir's Drafts) は、現実のルノワール (つまりキュレーター) が幽閉されていた地下空間である。旧ルミエールとヴィサージュの間の海中にあり、Act II でエスキエがサンゴ礁破壊の能力を得てからアクセス可能になる。
内部は岩場を基調としつつ、旧ルミエール、シレーヌ、ヴィサージュ、リーチャーなど各地の建築の断片が脈絡なく混在する地形となっており、ルノワールが幽閉されている間に重ねた習作の蓄積を表現している。
11.1.
深淵
深淵 (The Abyss) はルノワールの下書きの最も奥にある閉域。ここは「アリーンがルノワールをモノリスの下に幽閉した」場所であり、以前はキュレーター (現実世界のルノワール) を閉じ込める牢として機能していた。ただしキュレーターは既にこの牢を破っている。
パーティが深淵にたどり着くと、無数の輝く大剣に囲まれて一人の男が佇んでいる。ルネはこの剣が旧ルミエールのものであることに気付き、モノコは「そいつがアクソンを倒したんだな」と推測する。ヴェルソは男をシモン (Simon) と呼ぶ。共に第 0 遠征隊に参加し、道中で姿を消した旧友である。シモンと呼ばれたその男の顔には画布のクレアと同じペイントの跡が刻まれており、彼が現実のクレアの支配下にあることが視覚的に示される。ヴェルソが「安らかに眠れ、友よ」と告げると戦闘に入る。
この最初の戦いは比較的容易に決着が付く。戦闘に勝利すると、どこからか響くクレアの声に応えてシモンは再び立ち上がり、第二形態との戦いとなる。
シモンの第二、第三形態はクレアより上の本作最強のボス戦になる。まず付与した盾はすべて奪われてしまうので盾を使うことができない。HP を 1/3 まで削って第三形態になると、戦闘中のメンバー全員が抹消され、強制的に控えのメンバーで戦うことになる上、その激しい攻撃を凌ぎきることは通常プレイの範囲を超えている。一撃必殺と最大火力に全ステータスを振り切ったビルドで、第三形態に移行する前に決着させる短期決戦が前提となる。理想は一撃、許容しても 2〜3 ターンである。このゲームは周回することでより高レベルのピクトスが入手でき、「ルミナのカラー」を取り直してルミナポイントを実質倍にできるため、一周目のクレア戦やシモン戦で歯が立たなければ二周目以降に回す判断も合理的である。
パーティが勝利すると、シモンはゆっくりとヴェルソに歩み寄り、大剣シモソを差し出す。ヴェルソが受け取ると、彼は満足そうな表情を浮かべて消える。
11.2.
シモンのジャーナル
彼の居た傍らには、深淵で正気を失いかけながらも自らで記したジャーナルが残されている。彼は画布のクレアの恋人だった。第 0 遠征隊がモノリスの結界で現実のクレアと遭遇し、画布のクレアが行方不明になった後、おそらく現実のクレアはシモンの精神に語りかけ (あるいは直接訪れ)「私 (画布のクレア) は手の届かないところへ閉じ込められている」と信じ込ませたのだろう。現実のクレアが画布のクレアを装ってシモンを操っていたことは、第二形態になる前にシモンに語りかけたクレアの声から推測される。
シモンは現実のクレアにアクソンを倒す巨大な力を与えられ、恋人を取り戻すために結界を突破してモノリスへ突入する。つまり、第 33 遠征隊がようやく成し遂げた過程をシモンは数十年早く果たしている。彼はモノリスの中で、おそらくアリーンから直接話を聞いて自分が騙されていたことに気付く。また彼はこのときに画布世界の真実を知り、アリーン側についてルノワールを倒せば世界を救えて画布のクレアも取り戻せると理解する。
彼は今度はアリーンの助けを借りて「抹消を引き起こす者」を封じた場所であるモノリスの底、この深淵に下りるが、ルノワールの力は強大で、精神への影響が日に日に大きくなってゆく。ジャーナルは「いつか私たちの苦しみは終わり、互いの元へ帰り着くだろう。今生、あるいは別の生で」と死後にクレアと会う言葉で結ばれている。Act I の時点でキュレーターが地上を歩いていたことを思えば、最終的にルノワールはこの深淵から逃れ、シモンだけが深淵に取り残されたとみられる。
画布の外から父を支援する画布のクレアにとって、シモンは母アリーンへ差し向けるのに都合が良い駒であり、その餌に使われたのが彼のクレアへの愛である。だが、アリーンを討てば画布は庇護を失い、画布のクレア自身も滅びる (「君の未来を破壊する道を歩み始めた」という彼の自己認識) という欺瞞を知った彼を、今度は母の側が拾い上げる。すなわちシモンは、画布を挟んで争う二人の現実の娘と母に、クレアへの愛という同じ一点で利用された男である。
11.3.
クレアと自己の解釈権
現実のクレアが最初にシモンを差し向けた先が、父ルノワールが自分をモデルに描いたアクソンのホーラー (Hauler) であった点は、モノリスへ入るための戦略以外の現実のクレアの心理も透けて見える。背に小さな街を背負うホーラーは、一家の重荷を一身に担う長女という、おそらく愛情と敬意を込めた父の解釈である。しかしクレアにとっては、その解釈がたとえ正確でも (むしろ正確であればこそ) 他者の手で自分の役割が固定され、巨像として大陸に立ち続けることは容認しがたかったのだろう。アリーンの描いた画布のクレアにしても「他者が作った自分の像を盤面から取り除く」という一点で彼女の行動は完全に一貫している。
しかも当の本人は、シモンを欺くために自分の似姿を道具として演じてまでいる。他人による自分の像は決して許さず、自分が運用する自分の像だけを認めるという点で確固たる方針を持っている。描くことが解釈であるデサンドル家において、ホーラー討伐とは、自己の解釈権を誰にも、共闘する父にさえも譲らないというクレアの宣言ともとれる。協力相手であるはずのルノワールの作品をためらいなく壊している事実は、彼女の父への支援が従属ではなく対等の利害同盟であることも、あわせて示しているだろう。
深淵での会話
立ち並ぶ剣の前の男に近付くパーティ。ルネ「この剣。旧ルミエールのもののようね。」モノコ「つまりそいつがアクソンを倒したんだな。」男が動き始める。ヴェルソ「シモン。」ルネ「彼を知っている?」ヴェルソ「旧友だ。共に第0遠征隊に参加していた。彼は姿を消したから、てっきり…」男の顔には、画布のクレアと同じペイントの跡がある。ヴェルソ「クレアと会ったようだな。」構えるパーティ。ヴェルソ「安らかに眠れ。友よ。」第一形態のシモンとの戦闘に突入する。
闘いに勝利すると不気味な声が響く。クレア「愛しい人。この敵はあなたより弱いわ。あなたは力を尽くして戦い… 巨人たちを征服してきた… わたしを探し、彼女から自由にするために。なのにあんな者たちに屈するの?誓いをまだ果たしていないのに?立って。敵が待っているわよ。」再び立ち上がるシモン。パーティは第二形態との闘いに突入する。
闘いに勝利する。身体が霧散し始めるシモン。彼はゆっくりヴェルソに近づく。ヴェルソがシモンの差し出した大剣「シモソ」を受け取ると、シモンは満足そうな顔をして消える。
11.3.1. ジャーナル - シモン
シモン
意識がどんどんかすんでいく。完全に正気を失ってしまう前に、書き記しておこうと思う。
私の美しいクレア…
奴は君に何をしたんだ?あのペイントレスめ… だまされた。君に瓜二つで、私はあいつの話を信じてしまった。私は奴から、アクソンを殺し、モノリスに入る力を与えられた。
奴に乗せられたのだと気付いたときには手遅れだった。実際には君は奪われ、私の手の届かないところへ閉じ込められてしまった。そして私は、君の未来を破壊する道を歩み始めたのだ。
だが、その後に出会ったアリーンから、君を救えると言われた。彼女の助けを借りて、私はモノリスの底へくだった。アリーンがあの男を封じた場所だ。あの男… 抹消を引き起こす者。我々の存在を脅かす者だ。だが、奴の力は強大で、精神に及ぶ影響にあがらうのがどんどん難しくなっている。
私の心は壊れつつある。心残りは君のことだけだ。絶望するよ。だがいつか、私たちの苦しみは終わり、互いの元へ帰り着くだろう。今生、あるいは別の生で。
12.
終わりなき塔
終わりなき塔は、3 ラウンド × 11 戦、計 33 連戦が用意されたバトルステージである。腕試しのやりこみコンテンツであり、それ自体のストーリーとの関わりは薄いが、ここに居る消えゆく女 (現実のクレアの遠隔投影) の語りは、クレアという人物と画布世界の来歴についてまとまった情報を与えてくれる。
マエルを迎えたクレアは、第 33 遠征隊がアリーンを追い出したことに「本当に驚かされる」と素直な評価を口にし、続けて、ドッペルゲンガー (=画布のヴェルソ) の任務は本来マエルを見張ることであって仲間に引き込むことではなかったこと、あとはルノワールがこのキャンバスを一掃するだけであることを告げる。マエルが反発すると、彼女は自分とこの画布の関わりを語り始める。
この画布は幼少のヴェルソのものだが、実際のところクレアと一緒に描いたものであり、その半分はクレアによって描かれたこと。当時、アリシアが部屋で本を読んでいる間、クレアとヴェルソはこの画布の中で冒険をしていた。ガントレットと名付けたこの試練に出現する敵は、いたずら書きとして描いた過去の作品だった。
33 戦を制覇すると、クレアは「楽しかった?」と問うてから、彼女なりの忠告を残す。他人のドラマに巻き込まれてはいけない。両親はどちらも、必要な会話を持てるほど大人ではない。アリーンは現実に向き合うより見せかけの世界に依存し、手放そうとしない。ルノワールは家族を再び失うことを恐れ、全員を自分の意思に服従させようとしている。わたしは父に力を貸したが、手を貸すことと騙されて引き込まれることは違う。これはあなたの戦いではない。自分の選択をするのは自分勝手なことではない。過去を振り返ってはいけない。そして「自分の人生は自分自身のものだと思い出させてくれる」贈り物として、マエルは髪型「ポニーテール」を受け取る。
マエルへの贈り物については、描かれることを拒み、自己の解釈権を誰にも譲らない彼女が、試練を超えた妹に与えるのが髪型 (自分の像を自分で選び直す道具) であることは示唆的である。他者による自分の像を決して許さない人物にとって、自分の姿を自分で決めることは、おそらく自由の最小要件なのだろう。突き放すような忠告の連なりの末尾に置かれたこの贈り物は、クレアの冷徹さと思いやりが別々のものではなく、同じ「自分の人生の作者は自分であるべき」という一つの原則から出ていることを物語っている。
ガントレットに出現する敵が過去の作品という言葉は、第 33 遠征隊が戦ってきたネヴロンが元々このガントレットで遊ぶために創りだされたものだということを示唆している。また、この最終戦で現われるキュレーターとペイントレスのペア「描かれた愛」もまたクレアの描いた作品ということになる。つまり、父ルノワールがアクソンという形で家族それぞれの本質を解釈して描いたように、クレアもまた幼い頃に自分の両親を解釈してキュレーターとペイントレスの姿を描き、両親は画布に入るときのアバターとしてクレアの絵を使用していたことを示唆している。
なお、終わりなき塔にはアップデートで「クロマティック・ランプマスター」「デュアリステ」さらに強化された「クレア」「シモン」が追加されている。それぞれかなりの強敵なので私は諦めました。
消えゆく女の会話
12.0.1. 最初の会話
消えゆく女「アリシア。本当に、あなたには驚かされる。まさか… あなたと、あなたのお友達が成功するなんて。それに、ドッペルゲンガーが自分の計画にあなたを引き込んだのも、完全に予想外だった。彼の仕事はあなたを見張っていることで、仲間にすることじゃなかったのに。だけどあなたはうまくやった。あとはルノワールが、このキャンバスを一掃するだけ。」そんなことさせない。「アリシア、感情的にならないで。必要なことだと分かっているでしょう。このキャンバスたあなたにとってどれだけ大事かって戯言も聞きたくない。わたしがここで過ごしてきた時間は、あなたよりずっと多いの。わたしはヴェルソと一緒に、この世界の半分を描いた。あなたが部屋で本を読んでいる間、わたしたちはここで冒険をしていた。母さんが悲しみを癒やすためにここに残るのも、全然かまわなかった。あなたもここに残りたいと思うなら、お好きにどうぞ。でも。ルノワールは賛成しないでしょう。あの人には外で起きている本当の戦いを手伝ってもらわなくちゃいけない。ここでこれ以上時間をムダにさせられないの。もうじゅうぶんね。同じことを何度も言うのはウンザリ。ルノワールはやるべきことをやる。わたしたちは代わりに楽しむのはどう?」楽しめるならいいな。「よかった。あなたが何年も部屋に隠れている間にできなかったことを教えてあげる。わたしとヴェルソがよく遊んでいたゲームよ。」なんだか怪しい。「[ため息] この期に及んで、本当に臆病な子。あなたは一日中ふさぎこんで、一緒に遊ぶ友だちがいないことを悲しんでいる。なのに誘いをすべて断る。本当にもう付き合っていられない。やるかやらないかは構わない。ルールを説明するから、やりたければどうぞ。」「わたしはいくつかの絵をスケッチしてる。スケッチというよりいたずら書きだけれど。あなたのお友だちは “ネヴロン” と呼んでいるわね。独創的な名前ね、わたしは好きよ。わたしとヴェルソは、この試練を「ガントレット」と名付けた。全員を切り抜けたら、本当の絵を見せてあげる。さあ、アリシア。楽しみましょう。ガントレットはこのキャンバスの中にある。大丈夫、キャンバスの中で死んでも終わりじゃない。すべてのキャンバスには独自のルールがある。死なんてつまらない結末でしょう。そう思わない、アリシア?」
「ガントレットはこのキャンバスの中にある。アリシア、あなたがやろうがやるまいが、わたしは本当にどうでもいいの。手を握ってくれる人を待つのはやめなさい。
12.0.2. 挑戦途中の会話
「上出来ね。あなたは変わりつつあるのかも。なら真の絵には、どう立ち向かうのかしら。この絵には見覚えがあるはず。わたしの過去の試作品よ。あなたがどれだけ成長したか、見てみましょう。」
12.0.3. クリア後の会話
「悪くないわね。感心した。楽しかった?」はい。「よかった。やっとね。ちょっとした忠告よ。他人のドラマに巻き込まれないようにしなさい。あの人たちはどちらも、必要な会話を持てるほど大人じゃない。あの人たちは自分の悲しみに向き合うまで、距離を置いている方がいいの。だけどあの人たちは向き合わずに… こんなことをしている。他者を自分たちの面倒事に巻き込む。あなたのようにね。アリーンの妄想に囚われている。偽善者と呼ばれる前に言っておくと、そうよ、わたしは手を貸した。ルノワールが必要としていた力を与えた。そうしないと、とうの昔に彼女に圧倒されていたでしょう。結局のところ、彼女の方が力のある画家だから。でも、手を貸すことと騙されて引き込まれることは違う。これはあなたの戦いじゃない。あの人たちの面倒事を自分事にしないで。アリーンは現実に向き合うよりも、見せかけの世界に没頭したがっている。彼女は依存していて、手放そうとしないの。あなたは同じ間違いをおかさないで。そしてルノワールは… 家族をまた失うことを恐れている。だから全員を自分の意思に服従させようとしている。あの人の恐怖に支配されないようにして。あなた自身の選択をするのは自分勝手なことではないのよ。最後に会ってから、、あなたは大きく成長している。過去を振り返ってはだめ。これを受け取って。自分の人生は自分自身のものだと思い出させてくれるわ。もし楽しめないのなら… 他のことをしなさい。」マエルはポニーテールの髪型をもらう。
13.
ルミエール
第 33 遠征隊はルノワールの待つルミエールに突入する。市民のすべてが霧散したルミエールは、いまや父ルノワールの生み出したネヴロンが徘徊する敵地と化している。かつて遠征隊が大陸へと旅立った出発の港は、故郷であって故郷でないまま、この物語の最後の戦場として一行の帰還を待っている。
13.1.
不完全な遠征隊の帰還
パーティは、各地を廻って集めたクロマで復活させた過去の遠征隊員たちと共にルミエールへ突入する。古くて純粋ではないクロマのために完全な復活ではないが、ルノワールの作り出したネヴロンの一部を押さえ込んでマエルたちが先に進む助けになっている。
突入の途中、一行はオペラハウスの中でピアノの前に座って演奏に没頭している「顔のない少年」を見かける。特に話しかけるイベントもないため一瞥して終わる。これはエンディングのあるシーンの予告だが、この時点ではまだプレーヤーが気付くことはない。
オペラハウス前の海に第 60 遠征隊のジャーナルが浮いているのが見つかる。彼らはモノリスの内部まで到達して画布世界の真実を知り、ルノワールが幽閉されているモノリス下の「ルノワールの下書き」へ突入している。このジャーナルを書いた隊員は事実を知らせるために海を泳いでルミエールに帰還しようとしたが、ゴマージュに間に合わず直前で抹消された。この第 60 遠征隊はマエルら以前に唯一、ジェストラルの壁登りゲームを達成した「ちょっと変わった」マッスル信望部隊の彼らである。
イースターエッグプロローグでソフィーが彫刻家のエステルにアドバイスしていると、途中の広場のエスキエ像がそのように仕上げられており、台座に SOPHIE の名が刻まれている。
イースターエッグプロローグで広場のゴミ箱に隠れる男を見つけていると、ゴミ箱の中に書かれた彼のメッセージが残されており「完璧なクロマカタリスト」を入手できる。
イースターエッグプロローグで画家のニコラスに絵を描いてもらっていると、オペラハウスの天井にソフィーとギュスターヴがダンスする絵が描かれている。
13.2.
父との対峙
ねじれ塔の通路でルノワールと対峙する。ルノワールはかつて画布に没頭して死にかけ、そのときアリーンに救われたという過去を明かす。彼が画布を消去しようとする動機は、冷酷な合理主義ではなく、画布の魅力を経験者として知っている者の切実な予防策だった。脇から差し挟まれるシエルとルネの言葉「悲しみは不可逆の選択を導くこと、自分の声は親の声であってはならないこと」が、本作の倫理の中軸を父娘の対話の枠内で言語化する。
マエルが反論で漏らす「火事の後、ヴェルソの死が自分のせいで、現実世界では喜びを見つけられなかった」という告白が、彼女が画布に逃避した真の動機として露呈する。ルノワールはキュレーターの姿に変身して戦闘に突入する。
前半戦の終盤、ルノワールがアクソンを呼び出して回復し続ける窮地で、母アリーンが画布へ戻ってくる。彼女はモノリスの巨人となりシレーヌを撃破してルノワールの回復経路を断つ。アリーンは自分の体が衰弱して命を落としかねないリスクを引き受けてまでして画布に戻り、娘の選択の自由を守るために夫と戦う。彼女は画布の維持そのものを主張しているのではなく、娘が画布の運命を娘自身で決める権利を主張している。ルノワールの「死ぬ気か」という叫びも、敵への罵倒ではなく夫として妻の命を案じる悲鳴である。マエルの両親は依然として対立しているが、その対立は娘の自立を巡る成熟した夫婦の意見の相違である。
戦闘が終わると、ルノワールは現実世界のアトリエで嘆くアリーンの姿を見せる。目の周りに画家の青ペイントがあり、魂は画布の中にいる。彼は娘を画布から取り戻したいのではなく、娘が妻と同じ「生きる屍」になることに耐えられないのだと述べる。ルノワールが画布を消去する動機は、家族を喪失から守れなかった夫としての自己嫌悪だった。同時にこの映像は、マエルを画布の世界に留まらせることで起きる現実世界でのアリシアの悲劇をヴェルソに突きつけている。
ルノワールは、マエルなりの倫理よりも、マエルの存在そのものに対する救済を考えていたが、マエルが「父さんも失いたくない、置き去りにしない、もう少しだけ」と最終的に帰る意思があることを告げると、娘を信じる選択を取った。「明かりを付けておこう」「互いに手を離すな」という言葉を残して、ルノワールは画布の世界から去った。
書き起こし
父ルノワールに近寄るマエル。マエル「お父さん。」ルノワール「アリシア。」マエル「お願い。ただ分かってほしいの。このキャンバスがわたしにとってどんな意味を持つか…」ルノワール「分かっている。分かっているとも。このキャンバスがどれほど強力で魅力的か。自らの心や魂を注いだ世界に、どれほど深い愛着を持ち得るか。私は夢中になったあまり、死ぬところだった。」マエル「だからって、ヴェルソのキャンバスを消さなくてもいいでしょ!」ルノワール「娘よ (child)、私が望んでいると思うのか?あれほどの悲しみに耐えてきて、あの子の魂の最後の欠片を壊したがっていると本当に思うのか?」マエル「ならやめて。やめてよ。」ルノワール「人生は残酷な選択を強い続ける。私たちは、やるべきことをやる。」シエル「悲しみって、よく目をくらませるよね。それで二度と取り消せない選択肢をさせる。」シエルに向きなおすルノワール「お前は二人のために胸を痛めている。」シエル「あたしは大勢のために胸を痛めてんの。」ルネ「両親の選択は、子どもに消せない痕を残す。だけど結局のところ、頭の中の声は自分の声でなくてはいけない。子どものために、子どもの人生に境界を作ることはできない。」マエル「火事の後… 父さんはわたしに人生の新しい喜びを見つけて欲しがった。だから頑張った。けどダメだった。ムリだったの。ヴェルソはわたしのせいで死んだ。なのに喜びなんて見つけられない。」ルノワール「娘よ、状況は良くなる。本当だ。だが、このままではムリだ。お前の友だちたちは真実を言っている。そしてそれでは何も変わらない。私を憎んでいい。だが、私は成すべき選択をする。父として、お前の面倒を見なければならない。お前が自分の面倒を見られないのなら、なおさら。」マエル「いつまでも赤ちゃん扱い。」ルノワール「違う。我らの人生で最悪の日の影が、お前を窒息させ、お前をも奪おうとしている。そういう扱いだ。」声を荒げるルノアール。ルノアール「もういい。もういいと言ったのだ。」静かに剣を出すマエル。戦う意思を固めるパーティ。ルノワールが杖を突くと、クロマの舞う場所に転送され、ルノワールはキュレーターの姿になって剣を振り出す。
第一戦が終了間際になると、ルノワールは空にアクソンを描き始める。ルノワール「我々は状況をあるがままに受け入れなければならない。自らが望むようにではなく。」遠景にシレーヌとヴィサージュが現われ、シレーヌによってルノワールの体力が全回復する。ルノワール「この愚行をやめろ。家へ帰る時だ。」モノコ「試練は大好きだが、イライラしてきたぞ。」ルネ「クソッタレ。再生し続けてるわ。」シエル「まずはアクソンを集中的に狙う?」マエル [息を飲む]
パーティの背後に大きな入口が現われる。ヴェルソ「まさか!彼女には…」入口から衝撃と共に一人の女性が降り立つ。マエル「母さん…」ルノワール「アリーン、死ぬ気か!キャンバスに戻ってくるには早すぎるぞ!」アリーンは一瞬で消えると、モノリスの巨人となって遠景に立ちシレーヌを撃破する。
ルノワールとの第二戦が始まる。デサンドルのキャンバスを召喚するルノワール。ルノワール「どうしてそうも利己的になれる?アリーン!」ルノワールはキャンバスの中に入ると、キャンバスにはデサンドル一家の絵が浮かび上がる。光をまとって再びキャンバスから出てくるルノワール。
第二戦が終了間際になるとルノワールが力を解きはなつ。ルノワール「キャンバスを捨てろ。お前たちのどちらも死んでしまう。」しかしマエル「また今度! (Not this time!)」ルノワールを一閃に地面に突き刺しとどめを刺す。一瞬でクロマが霧散するルノワール・デサンドルの姿に戻る。
咳き込みながらよろよろと立ち上がるルノワール。ルノワール「皮肉な話だ。昔キャンバスで正気を失った私を救ったのは、お前の母親だった。彼女が… 私に教えた。」遠景にいるアリーンに向かうルノワール「この才能の安全な使い方を、太陽に近付きすぎることなく飛ぶ方法を。」ルノワールとアリーンは互いに手を伸ばす。ルノワール「私たちは… キャンバスに多くの世界を描いた。想像の限界を押し広げながら。そして彼女は、ここで過ごす日々には代償が伴うことを、決して忘れさせなかった。」役目を終えたアリーンが消える。ルノワール「だが… [咳] 今はこの有様だ。」マエル「なら母さんを信じて。母さんが今こうしているなら…」ルノワール「わたしは彼女が教えてくれたことを信じている。これは遊びではない!お前は自分が何を賭けているか分かっているつもりだが、分かっていない!」マエル「ちゃんと分かってるって!父さんは管理したいんでしょ。自分が何かしている気になりたいんでしょ。ヴェルソを助けられなかったから、私たちを助けたがってる。ムリだけどね。キャンバスを壊したところで私たちは前に進めない。感覚を取り戻させてくれる場所をわたしたちから奪うだけ。」ルノワール「67年だ。私はモノリスの中に67年囚われていた。だが残った。残ったのだ。なぜだから分かるか?なぜ私が彼女やお前を置いていけなかったか、分かるか?」
ルノワールが杖を突き立てると、入口が現われアリーンが屋敷のアトリエで嘆き悲しんでいる様子が映し出される。目の周りが青くペイントされているので、精神は画布の中に入っている。ルノワール「これが私が毎日見ているものだよ。」ヴェルソはそのアリーンに見入り、入口に近付こうとする。シエルがそれを心配そうに止める。ルノワール「生ける屍たちとこれ以上生活することはできない。火事の日から、私たち家族は崩壊した。キャンバスの中にいるアリーン。独りで戦うクレア。生ける幽霊のお前。」ルノワールと向かうマエルの後ろでゆっくりアリーンの入口に近づくヴェルソ。止めようとするシエル。ルノワール「ヴェルソの死で私たちは壊れた。私はそれを正したいのだ。正さなければならないのだ!私は… [咳] お前まで失うわけにはいかない。」マエル「分からないの?わたしにとってのみんなも同じなんだよ!どっちも失えない。わたしは失いすぎたの。父さん、ねえ。もうたくさん失ったんだよ。」ルノワール「私たちはどちらも多くを失った。」マエル「父さん。父さんも失いたくない。父さんをずっと置き去りにはしないよ。もう少しだけ。」ルノワール「お前を信じたい。だが…」マエル「信じて。」そのやりとりを背後から見つめるヴェルソ。うなずいてマエルを抱きしめるルノワール「お前のために明かりを付けておこう。お前に安らぎが見つかることを祈る。互いを手放すな (Hold on to each other)」。霧散して消えるルノワール。
13.3.
ヴェルソの決断
このシーン全体を通じて、画布のヴェルソはルノワールが見せたアリーンの嘆きを静かに見入っている。画布のヴェルソにとってこの女性は、自分を生み出した母 (死んだヴェルソ・デサンドルとは違う意味での) であり、また崩壊までのひとときをルミエールで過ごした母であるが、一方で、自分が彼女の喪失処理の道具としてのみ存在していることも理解している。さらに、この姿はマエルが画布の世界に残ったときの現実のアリシアの姿でもある。ヴェルソの様子がおかしいことに気付いたシエルは引き留めようとする。
ルノワールが去った直後、ヴェルソは「すまない」と告げて入口に飛び込む。自分自身の存在の根拠、そしてこの世界の存在の根拠と決着を付けるために、彼はこの画布世界を終わらせる覚悟を決める。結末を決めるのは、もはや父でも母でもなく、画布の中で生きてきた息子と娘の二人である。
13.4.
ヴェルソの欠片
ヴェルソが抜けた先には、日食の太陽が昇る荒涼とした空間が広がる。ここは画布世界の根幹、真のヴェルソ・デサンドルの魂の最後の欠片「顔のない少年」が何十年も絵を描き続けてきたメタ画布。エピソードでクレアが告げていた「画布はヴェルソの魂の欠片が書き続けることで維持されている」という言葉がここで姿を現す。ヴェルソは少年に近づき、もう絵を描くのをやめるように伝える。体が霧散し始めるヴェルソの後ろにマエルが現われる。
ヴェルソは、マエルが父との和解の場で嘘をついたことを突きつける。「もう少しだけ」と父に告げて画布の滞在を約束したとき、彼女の本心はもう画布を手放すつもりがなかった。父もそれを察しながら信じることを選んだ。あの譲歩は、娘の誠実さへの応答ではなく、娘の不誠実を承知の上での父としての祈りだった。
ルノワールの「互いを手放すな (Hold on to each other)」という言葉は、極限状態での家族の絆を保つことの重要性を示している。ここで彼は「兄ヴェルソ喪失の中での家族の絆」を意図しているが、マエルにとっての絆は画布の世界にもあることに、ルノワール自身は気付いていない。彼の物語での言動が何度も示唆したように、彼は画布の世界での出来事を潜在的に軽視している。そして、緑のオルフランでの会話の様子や、屋敷の壁に飾られた家族それぞれの作品から、家族の中で自身の立ち位置に居心地の悪さを感じていたマエルにとって、この言葉は「画布の住人を一人も手放すな」と聞こえている。
少年が顔を上げてヴェルソの差し出した手を取ろうとしたまさにその時、マエルの剣が二人の間を断つ。自分が居続けるために画布の世界を残したいマエルと、自分を消すために画布の世界を抹消したいヴェルソ、二つの選択肢がプレーヤーに迫られる。
- ⇨ マエルとして戦う。
- ⇨ ヴェルソとして戦う。
書き起こし
アリーンの嘆く姿が映し出されている入口に近付くヴェルソ。ルネ「ヴェルソ…」ヴェルソ「すまない。」入口に飛び込むヴェルソ。
中は日食の太陽が昇る荒涼とした世界。中では今までの旅で見かけた顔のない少年が絵を描き続けている。ヴェルソ「やあ。」ゆっくり顔を上げる少年。ヴェルソ「絵を描くのは疲れただろう。」軽くうなずく少年。ヴェルソ「俺も疲れたよ…」体からクロマが霧散し始めるヴェルソ。背後にマエルが現われる。マエル「あれは… あっ。あなたはここにいられないはず。」ヴェルソ「母さんの贈り物だよ。」マエル「なんで入ったの?ここはあなたには危険だよ。」ヴェルソ「“状況をあるがままに見よ。自らが望むようにではなく”。」マエル「え?」ヴェルソ「君は嘘をついた。父親に。」うろたえるマエル「ちが、わたしは…」ヴェルソ「彼も分かっていた。だが信じることを望んだ。きみはここで死ぬだろう。出たらどうだ?いつでも戻ってこられる。」マエル「出た瞬間に、父さんがこのキャンバスを消しちゃうよ。」ヴェルソ「ここにきみの人生に見合うだけの価値はない。」マエル「どの人生?殻に閉じこもった、孤独な人生のこと?声も未来もない人生のこと?」ヴェルソ「きみはマエルだ。どこにいようとも。このキャンバスは必要ない。」マエル「だけど、わたしが望むものは全部ここにある。生きられるチャンスがあるんだよ、ヴェルソ。生きられるの。外では、わたしは存在するだけ。」ヴェルソ「“人生は残酷な選択を強い続ける”。」マエル「父さんの言葉を繰り返すのはやめて!」強い怒りを込めて言葉を止めるマエル。少年に近付くヴェルソ「絵を描くのをやめるときだ。」少年に手を差し伸べるヴェルソ。少年もその手を取ろうとする。その時、マエルの剣の一閃がその手を止めさせる。マエル「ヴェルソ… 父さんは “互いを手放すな” とも言っていた。」うなずき、マエルに向かうヴェルソ「残念だ。」剣を出すヴェルソ。向かい合うマエルとヴェルソ。キャンバスの運命を決めるときが来た。
14.
マエルとして戦う
14.1.
ヴェルソとの決闘
二人の決闘が始まる。マエルは画布の抹消はみんなのためにならないと訴え、ヴェルソもまた人は誰でも偽善者だと剣を振るう。
戦いが終わると、ヴェルソは膝を突き、体からクロマが霧散し始める。彼は顔のない少年を見ながらマエルに「彼にもう絵を描かせるな」と告げる。さらに地に伏した彼は、自分を消してくれるよう繰り返し嘆願する。「俺を消してくれ」「こんな人生は嫌だ」「助けてくれ」。マエルは「一緒に生きたかった、わたしたちから奪われたこの人生を」とすがるが、ヴェルソは静かに消える。背後では顔のない少年が、何事もなかったかのように絵を描き続けている。
マエルは消えた場所を見つめながら、しばらく動かない。やがて、誰にともなく問うように呟く。
「あなたがもし… 年を取ることができたら… 見つかるかな?…笑う理由が。」
マエル vs ヴェルソの会話
マエル「ヴェルソ、やめて!こんなの、みんなのためじゃない!」ヴェルソ「俺たちはみんな偽善者だ。やっていることは同じだ。」戦闘が終わる。ヴェルソ「アリシア、頼む、彼にもう絵を描かせるな。」崩れ落ちるヴェルソ。体が霧散し始めている。マエル「やだ、ねえ、そんなこと言わないでよ。」何かの衝撃で倒れるヴェルソ「なあ、頼む、聞いてくれ。きみにしかできないんだ。きみならできるんだ。俺を消してくれ (upaint me)。消してくれ!」マエル「ヴェルソ…」ヴェルソ「頼む。こんな人生は嫌だ (I don't want this life)。」マエル「そんなこと言わないで。」ヴェルソ「こんな人生は… こんな人生は嫌だ…」マエル「わたしはただ… 一緒に生きたかったの。わたしたちから奪われたこの人生を。お願いだよ、ヴェルソ… お願い。」ヴェルソ「こんな人生は嫌だ… 助けてくれ… 助けて…」静かに消えるヴェルソ。少年は絵を描き続けている。
マエル「あなたがもし… 年を取ることができたら… 見つかるかな?…笑う理由が。」
14.2.
エピローグ - 絵を描く人生 (Une vie à peindre)
遠景からルミエールが映し出される。モノリスにはもはや何の数字も書かれておらず、67 年にわたって市民の年齢を刻み続けた死の掲示板は、その役目を終えて沈黙している。ゴマージュから甦った人々がオペラハウスに集っていく。ホールの入口にはエスキエとモノコが並んで立ち、押しかける観客を抑えている。
マエルがギュスターヴの弟子の一人、ギヨームの手を引いてホールへと現われる。客席ではルネがマエルとギヨームの姿を見つけ、隣に座るシエルにそっと知らせる。シエルの傍らには夫ピエールが座っており、シエルの失われた未来が画家の手で取り戻されている。やがてギュスターヴとソフィーが手をつないで会場に現われ、シエルの隣に並んで腰を下ろす。
ホールの灯が落ち、ステージに照明が降りた瞬間、世界は色彩を失いモノクロームに転じる。その光の中にはピアノを前にしたヴェルソが立っている。観客から拍手が湧き上がる。顔の傷が消え、少し老け、髭を蓄えた彼のたたずまいは、どことなく彼の父ルノワールの面影を帯びている。
何か思い詰めた顔をしているヴェルソは演奏を始めようとしない。静まり返る客席。そこで一瞬、ピアノの不協和音が響く。画面には、目の周りをペイントで縁取ったマエルの顔が大写しになる。火傷痕は見られないが右目は欠損しているように見える。
そしてヴェルソは、意を決したように鍵盤に指を下ろし、演奏を始める。
14.3.
マエルエンドの考察
このエピローグでは、物語で失われた愛が画家によって修復され、客席にはマエルを取り囲む幸せな風景として描かれている。表層的には間違いなくハッピーエンドである。しかしこの幸せは、ヴェルソという一人の監禁を対価とした幸福であり、マエルの欺瞞の上に建てられていることをプレーヤーは既に知っている。周囲の誰も、自分たちが何の代価で生かされているかを知らされていない。客席の全員がマエルとの共依存の共同体として配置されている。
このエピローグの多くのショットが微妙に斜めに傾いた構図 (ダッチアングル) で撮られ、途中でモノクローム 4:3 比に変わるのは、プレーヤーにこの虚構の構造を潜在的に感じ取らせるためである。物語の冒頭から本作が描いてきた構造は、ペイントレスの役割が母アリーンから娘のマエルへ踏襲されただけで寸分も動いていない。
ステージのヴェルソが少し年を取って見えるのは、ヴェルソとの決闘直後にマエルがつぶやいた願望が、画家の手として文字通り実現された結果である。しかしヴェルソは全く笑っていない。彼女の願いの前半「年齢を重ねさせる」は叶い、後半「笑う理由を見つける」は叶っていない。
ピアノに向かう彼の表情には、真実そのものではなく、しかし真実の手前の違和感が宿っている。自分はなぜここに立っているのか、なぜこれほど演奏に疲れているのか、なぜ観客席の妹を見ると説明できない悲しみを感じるのか。マエルは画布の中に彼を書き直したが、彼の意識の底には塗り直しても消しきれない疑問の影が存在している。彼は答えを持たないまま、自分の存在について何か重大な問いが立っていることだけを感じ取り、しかしその正体には届かない宙づりの状態でピアノの前に立っている。
善悪がはっきり分けられているなら、プレーヤーは安心して悪を糾弾できる。しかし、復活した友人たちとオペラハウスでピアノの演奏会という「兄が笑う理由」を用意したマエルの行動は、間違いなく本人の善意による。これは、この長い物語を通じて、母から息子へ、夫から妻へ行われてきたデサンドル家の「家族間の善意の暴力」をマエルもまた踏襲していることを表している。そして、プレーヤー自身が「仲間の家族を復活させてあげたい」とマエルルートを選んだのであれば、プレーヤーもまた善意でこの悲劇に荷担しているという構図を完成させている。
一つの推測として、マエルは自分が間違っていることにおそらく気付いている。客席のマエルの目にはどこかに空虚さがあり、彼女はこのすべてが茶番だと完全に分かっている。だが彼女は気にしない。彼女には兄がいる。兄がいる限り、彼女は兄の死の罪悪感から解放される。これは無自覚な悪よりはるかに重い。しかしプレーヤーは明にマエルを糾弾できない。この周到な設計がこのエピローグの真の恐ろしさである。
演奏を始めないヴェルソを映しながらマエルの目の周りに青ペイントが現われる描写は、この画布の世界の支配者がマエルであるということを、あらためてプレーヤーに示している。マエルは現実世界のアトリエで青ペイントをして画布を前に座っている。その現実のマエル像を、客席にいる彼女に重ねている。その表情はまるで「さあ、弾きなさい」と語りかけているようにも見える。マエルが支配する画布の中で、ヴェルソはピアノを弾き続ける。
15.
ヴェルソとして戦う
15.1.
マエルとの決闘
二人の決闘が始まる。マエルは画布の抹消はみんなのためにならないと訴え、ヴェルソもまた人は誰でも偽善者だと剣を振るう。
「もう疲れたよ、ヴェルソ。ねえ、家に帰ってから話そう。」倒れ込むマエルをヴェルソが支える。マエルの体はすでにクロマが散り始めている。「またわたしを置いて行かないで」と言うマエルに、ヴェルソは「君には素晴らしい絵の才能がある、望まない人生に苦しむことはない」「きみは大丈夫」とつぶやくように繰り返す。マエルはやがてクロマとなって散る。
立ち上がったヴェルソの前にはモノコとエスキエがいる。三人はゆっくり近付き、肩を抱き合う。「寂しくなるよ。」とヴェルソが言うと、モノコとエスキエはクロマとなって消えてゆく。
その向こうには入口を抜けてきたシエルがヴェルソをにらみつけるように、また悲しみとも諦めもと見える顔をして立っている。シエルの体も霧散し始めている。ヴェルソはゆっくり手を出そうとするが、シエルはその手を止めるようにヴェルソを見たまま消えて行く。ヴェルソが入口に目を向けると、その向こうにはルネが立っている。ルネはふてくされたようにその場に座り込んでヴェルソをにらみつけている。
ヴェルソは振り返り、少年に近づく。「大丈夫。終わったんだ。ヴェルソ。」少年はゆっくり立ち上がってヴェルソの手を取る。二人は奥に向かって歩きながら、やがて消えてゆく。
ヴェルソ vs マエルの会話
マエル「ヴェルソ、やめて!こんなの、みんなのためじゃない!」ヴェルソ「俺たちはみんな偽善者だ。やっていることは同じだ。」
マエル「ルネとシエルとモノコはどうなの?エスキエは?」ヴェルソ「シエルは正しかった。悲しみは目をくらませる。壁しか見えない。
ヴェルソ「俺は長い時を生きてきた、マエル。絶対に逃げられないものはあるんだ。」マエル「もう疲れたよ、ヴェルソ。ねえ、家に帰ってから話そう?」
体が霧散し始めるマエル。倒れ込むところを支えるヴェルソ。マエル「やめて。またわたしを置いてかないでよ。」ヴェルソ「大丈夫… きっと大丈夫だ。きみには素晴らしい絵の才能がある。これからはもう、望まない人生に苦しむことはない。」ヴェルソの腕にしがみつくマエル。ヴェルソ「きみは大丈夫。きみは大丈夫。きみは大丈夫。」クロマの花びらとなって散るマエルの体。
立ち上がったヴェルソの前にはモノコとエスキエがいる。三人はゆっくり近付き肩を抱き合う。ヴェルソ「寂しくなるよ。」モノコとエスキエの体が霧散する。その向こうには入口を抜けてきたシエルがヴェルソをにらみつけるように悲しみと諦めを蓄えた顔をして立っている。シエルの体も霧散し始めている。ヴェルソはゆっくり手を出そうとするがシエルは霧散する。ヴェルソが入口を見ると、その向こうではルネがにらみつけている。ルネはふてくされてようにその場に座り込み、ヴェルソをにらみつける。ヴェルソは振り返り、少年に近づく。ヴェルソ「大丈夫。終わったんだ。ヴェルソ。」少年はゆっくり立ち上がってヴェルソの手を握る。二人がゆっくり歩きながら花びらとなって消えて行く。
15.2.
エピローグ - 愛のある人生 (Une vie à t'aimer)
現実世界のデサンドル屋敷。歪んでいないエッフェル塔が見える場所に、花に囲まれたヴェルソの墓が映し出される。現実世界に戻ったルノワール、アリシア (マエル)、そしてアリーンとクレアが、ヴェルソの墓の周りに集まる。アリシアは、遠征中に屋敷のベッドの上で見かけたエスキエの人形を胸に抱えている。墓石には ≪BIEN-AIMÉ VERSO DESSENDRE 22 FÉVRIER 1879 – 33 DÉCEMBRE 1905 À JAMAIS PEINT DANS NOS CŒURS≫ と刻まれている。クレアは手に持っていた花束をヴェルソの墓前に供える。ルノワールは悲しむアリーンを抱きしめる。クレアはそれを見たのち、用事は済んだと言わんばかりに立ち去る。
ヴェルソの墓の前に一人立つアリシア。墓の向こう側には、画布の中で共に冒険した仲間たち、そして画布の中の自分自身としてのマエルが、手を振りながら消えてゆく姿があった。
15.3.
ヴェルソエンドの考察
このエピローグでは、画布の世界が消えた後の現実世界に戻ったデサンドル家が、ヴェルソの墓を前にようやく日常の側へ立ち戻ろうとする様子を描いている。だがその風景の隅では、ここに辿り着くためにヴェルソが 67 年かけて結んだ絆、そしてマエルとして生きた 16 年の人生が、その対価として置かれていることも示されている。
ヴェルソは画布の世界を終わらせるという結末を、この遠征に加わったときから自分の中に持っていた。モノコとエスキエは彼の意図を承知の上で同行しているが、シエル、ルネ、そしてマエルには最後まで明かさなかった。ヴェルソが仲間を二つに分けていたことが、最後の仲間との描写を明確に分けている。父ルノワールが彼のアクソンに込めた「嘘で真実を守る者」は、まさに後者の三人に対するヴェルソの振る舞いを説明している。彼女たちに選択の過重を負わせない形で終末に立ち会わせたことは、庇護でもあり、同時に最も親しい者に対する根源的な不誠実でもある。内心を共有していたモノコとエスキエが穏やかに別れを受け入れるのに対し、欺かれていたルネとシエルからはヴェルソが赦されないことが、このエンディングの倫理的な質感に繋がっている。嘘で真実を守り、赦されないまま前進することこそが、ヴェルソエンドの本質的な辛さを担っている。
ヴェルソの墓前に家族が集合している様子は、終わりというより日常への帰還である。死者の傍らに花を添えるという行為は、ヴェルソの死を生活の中に置き直し、生者が時間とともに歩み続けるための儀礼。この家族はようやくその儀礼を共同で行えるところまで戻ってきた。末娘の身体的な傷も、母の悲嘆も、長女が続けている闘いも、何一つ解決していない。しかし癒やしが訪れるための時間が用意されるところまでは、確かに来ている。
仲間たちが手を振りながら消えてゆく構図は、子どもが空想の世界に手を振って送り出してゆく、成長の通過儀礼の風景に重なる。アリシアが胸に抱いているエスキエの人形は、かつて共に空を飛び海を渡った仲間だった存在が、現実世界では無機質な玩具として手元にある姿である。だがその玩具を抱えていることは、画布で生きた過去を否定することにはならない。ただし、彼女にとってこの別れは時期尚早でもありうる。16 年をマエルとして生きてきたアリシアにとって、画布の仲間は「卒業した子ども時代の想像物」と呼ぶにはあまりに近すぎる存在だった。それでも、別れの形式そのものは、彼女がこれからその喪失を時間に預けながら歩いて行ける道筋を示している。
支払われた対価は決して小さくない。母は息子を二度失い、長女は復讐の道半ばに残され、末娘は本来あるべきだった自分を見送って傷ついた身体に戻った。誰一人として即座には救われない。しかし墓に花を供えるところまで戻れた家族は、その続きも歩んで行けるだろう。明と暗は分かちがたく一枚の絵に同居するが、明の側が見え始めたなら、その絵は時間とともに少しずつ呼吸を取り戻してゆく。倫理的な正しさは即座の幸福をもたらすものではない。しかし時間を介して、その選択が生を徐々に取り戻してゆく。このエンディングが聴衆に静かに手渡すのは、その見通しである。
16.
世界の真相
Act II での真相に続き、Act III で明かされた世界の真相を整理しておこう。
16.1.
現実のデサンドル家族
16.1.1.
画家の一族
この物語の中で「画家」は画布の中に (文字通り) 世界を創造する力を持っている。デサンドル家はその画家の家柄である。母アリーンはパリの画家評議会の前議長を務めた、画家派閥の上に立つ人物であった。クレアもまた傑出した画家であり、こうした家族の社会的地位と能力が、後の悲劇すべての土台となっている。
その一家を一変させたのが、屋敷を襲った火事だった。息子ヴェルソは、末妹アリシアを救おうとして 26 歳で命を落とす。この喪失は一家に、とりわけ母アリーンに癒えぬ傷を残し、彼女が画布の世界へ逃げ込む悲劇の発端となった。これはやがて崩壊やマエルの転生へと連なる。火事からそれらの出来事までは、長く見積もっても一年ほどの間だったと思われる。
ヴェルソエンドで映される現実のヴェルソの墓碑には、現実には存在しない 1905 年 12 月 33 日という日付が刻まれている。物語の舞台はベル・エポックのパリを下敷きにしているが、この点が示すように我々の世界とは少し異なる設定が敷かれているらしい。
家族それぞれの年齢は作中で明言されないが、墓碑のとおり兄ヴェルソは 26 歳で亡くなった。姉クレアは「作家たちを単独で追い、当局や敵対者と渡り合える年齢」という描写から 28〜30 歳ほど、末妹アリシアはマエルとほぼ同じ風貌であることから 16〜18 歳ほどだろう。長姉と末妹で 10 歳以上開くが、当時のフランス上流階級では珍しいことではない。両親ルノワールとアリーンの年齢は不明だが、ルネは最初のキャンプで画布のルノワールを 50〜60 歳と見積もっている。
16.1.2.
名前に刻まれたもの
一家の名前には制作の意図が透けて見える。父「ルノワール」と母「アリーン」は、フランス印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワール (Pierre-Auguste Renoir) と、その妻でありモデルでもあったアリーヌ・シャリゴ (Aline Charigot) に由来する。「ピエール=石」(シエルの夫)と「ルノワール=画家」が同じ Pierre に根を持つ重なりも、前述のピエール/石/Pierre 考と接続する。
Sandfall Interactive 自身が「ルノワールとアリーヌ・シャリゴの夫妻からインスピレーションを受けた」と公言しており、オルセー美術館もこのゲームの展示企画で、ベル・エポックとルノワール夫妻との関係を取り上げている。なお、ヴェルソが世を去った 1905 年は、我々の世界のルノワールが 64 歳で存命だった年にあたる。したがってこの物語のルノワールも同じ年齢が想定されているのかもしれない。
息子ヴェルソの名もまた、その出自を物語っている。画布のヴェルソが現実のヴェルソの複製であることは劇中で明かされるが、その複製性が名そのものに刻まれている可能性がある。フランス語では紙や本、紙幣、カード、チケットなどの「裏側」を Verso と呼び、美術用語でも油絵のキャンバスの「裏側」をそう呼ぶ。ヴィサージュの仮面の守護者が「表と裏」と言うときにも、この Verso の語が使われている。すなわちこの名は、画布のヴェルソを「裏側の存在」として位置づける意図の表れなのかもしれない。
16.2.
画布のデサンドル家族
16.2.1.
成り立ちと崩壊
画布のデサンドル家は、息子の死を受け入れられず画布へ引きこもった現実のアリーンが、ルミエールの街とともに描き出した存在である。画布のヴェルソはモノコについて「物心ついた頃からの友だ」と言っているが、おそらく現実の家族を元にアリーンの解釈した記憶も植え付けられている。一家は当初、現実のアリーンを中心に、画布のルノワール・クレア・ヴェルソ・アリシアの家族として旧ルミエールの屋敷で暮らしていた。
だが現実のルノワールがアリーンを連れ戻しに画布を訪れ、アリーンが依存するこの世界を消そうとしたため、二人は画布の中で衝突した。アリーンは屋敷の入口を大陸中に分散させて隠し、ルミエールを (おそらく街を守るために) 遠く離れた海上へ飛ばし、画布の家族を不死にしたことで彼らは髪の一部またはすべてが白髪になった。最終的にこのときの衝突は、アリーンはモノリス頂上に、ルノワールはモノリスの下に互いを幽閉することで一旦は収まった。しかし、事情を知らぬ一家は、この「崩壊」によって母が行方知れずになったと考えた。彼らはおそらく自分たちが不死にされていることにも気づいておらず、しばらくはパン屋「アンジェリケのブランジェリー」の上に住み、ルミエールの復興 (シールドドームの設置など) に携わっていた。
16.2.2.
第 0 遠征隊
やがて崩壊の調査と行方不明者の捜索のために大陸へ向かう第 0 遠征隊が結成された。ヴェルソのジャーナルや三度目のマエルの悪夢が示すように、ヴェルソたちは母を探すために家族でこの第 0 遠征隊に加わった。そしてクレアの恋人でヴェルソの友でもあるシモンもその隊の隊員だった。
暗き浜辺から上陸した隊はモノリス近くまで進むが、その結界の手前で現実のクレアと遭遇し、世界の真相・アリーンの正体・自分たちの不死などを告げられる。それでも突入しようとした部隊を、現実のクレアは全滅させた。画布のクレアが連れ去られたのは、おそらくこのときである。連れ去られた画布のクレアは空飛ぶ屋敷に幽閉・上書きされ、現実のクレアに代わってネヴロンを生み続ける装置とされた。
残されたルノワール・ヴェルソ・アリシアは、モノリスのアリーンを救えば世界もクレアも取り戻せると考えるが、真相をそのまま語っても狂人と見なされることは分かりきっている。そこで彼らは「ゴマージュを行う者は別におり、ペイントレスはそれから人々を救う存在だ」とだけ伝える方針を取った。
その後、一家は後方の捜索救助隊と合流した。その隊にはヴェルソが想いを寄せるジュリーがいた。その恋心が以前からか合流後かは不明だが、少なくともジュリーが初手で捕縛・尋問に出たことから恋仲だった可能性は低い。あるときヴェルソが胴を両断されるほどの致命傷を負いながら翌日には平然と復帰したことから、ジュリーら隊員は一家が重大な秘密を隠していると疑い、捕縛して尋問しようとする。だがアリーン救出を最優先する彼らは、アリーンさえ救えば殺したジュリーたちも蘇らせられると信じて隊員たちを殺害し、赤い葉の木の下に埋めて逃亡した。
一方、現実のクレアはどこかでシモンに接触していた。画布のクレアになりすまし「自分は囚われている、救うためにペイントレスを倒して」とそそのかし、力を与え (上書きし) た。シモンは隊を離れ、その強大な力をもって旧ルミエールのアクソンを単騎で討ち、そのクロマで (おそらく現実のクレアが用意したバリアブレイカー相当の道具を介して) モノリスの結界を破る。だがその途中か頂上でアリーンに世界の秘密を聞かされると、今度はアリーン側へ転じ (あるいは彼女にも上書き・強化され)、ゴマージュを発動するルノワールを討つべくモノリス下の深淵へ突入した。しかしルノワールの力は強大で、逆に深淵へ捕えられてしまう。
16.2.3.
第0遠征隊以後、第33遠征隊まで
画布のヴェルソはしばらくの間、ルノワール・アリシアと行動を共にしていた。おそらく、ルミエールから来る遠征隊にペイントレスは倒す対象ではないと説得したり、あるいは (暗き浜辺のように) 襲撃していたと考えられる。事実、岩波の崖にある第 56 遠征隊のジャーナルでは「あの白髪のクソッタレを 1 体捕まえた」とあり、この時期はまだヴェルソとルノワールは共に行動をしており、さらには捕縛されることもあったようだ。また牧草地近くの第 64 遠征隊のジャーナルでは崩壊前の暗号を使って無線でコンタクトを試みている様子が描かれている。
彼らは大陸を探索している間にエスキエやモノコと知り合って (ただし彼らの記憶はアリーンにすでに植え付けられている) 現実のヴェルソについても聞いたのだろう。だがヴェルソは、いつしか永遠を生きることに疲れていく。ペイントレスを守り画布を残そうとするルノワールと、ペイントレスを倒し画布を終わらせようとするヴェルソは対立し、第三の道を探すアリシアもまた、この世界を終わらせようとするヴェルソには賛同しなかった。おそらくこの頃、ヴェルソは現実のクレアから自陣営へと誘われている。
やがてヴェルソはルノワールのもとを離れ (おそらくそのときの戦いで双方とも顔に傷を残し)、ペイントレスを倒すべくルミエールから派遣される遠征隊に協力するようになる。モノリス歴 49 年にも現実のクレアが現れ、ルミエールに生まれたマエルを守るよう頼まれ、ヴェルソは秘かにルミエールを訪れて彼女を見守っていた。モノリス歴 49 年の時点では両親はなお互いを幽閉し合っていたが、その後にキュレーターは深淵を脱し、ヴェルソは「ペイントレスを画布から追い出す」という目的を共有する彼と相見える。またアリーンもどこかで頂上の幽閉を脱して画布のルノワール・アリシアと再会し、旧ルミエールの屋敷に戻っていたと思われる。ここから先、第 33 遠征隊と交わってからの顛末はこの解説で述べた通りである。
16.3.
クレアという人物
このストーリーには、物語全般を通じてネヴロンの創造者である現実のクレアを示唆する場面が数多く存在する。特に Act III で解放される場所ではその傾向が強くなる。現実のクレアは、本編にはあまり姿を表さないが、実際にはストーリー上に大きな影を落としている重要な人物である。このストーリーが「彼女」という指示語を使って何かを語るとき、多くの場合、それは現実のクレアのことを指している。
旧ルミエールの消えゆく男 (=現実のルノワール) は、クレアが子どもの頃、自身の死よりも、一生かけても世界中の絵画を鑑賞できないことや世界中の寓話を集められないことを悲嘆していた、と語る。自らの死さえ後回しにするほど純粋な芸術への渇きを幼くして抱いていた、というこの語りは、クレアの芸術家としての才能と完璧主義を説明する。
終わりなき塔の消えゆく女 (=現実のクレア) はアリーンが画布に引きこもることすらどうでもよいことだと語る。彼女がルノワールを支援して画布の世界にネヴロンを放っているのは、画布の中での争いを早く終わらせてルノワールに現実世界の問題に取りかかってほしいという理由である。
一方で、落つる葉のレディ・オブ・サップ (Lady of Sap) は現実のクレアの一部として描かれている。ここにいる消えゆく少年 (=幼少のヴェルソ) は、彼女の絵 (ネヴロン) がなぜこの画布の世界で命を奪うのかに思い悩んでいる。これに対しレディ・オブ・サップは「彼と共に描いたこの画布に敬意を払うため」と答える。つまり、現実のクレアの心底には (自覚があるかは分からないが) この画布を家族の争いの場にしたくない、他者が混入させた意図を排除したい、それがヴェルソと共に描いたこの画布に対する敬意だ、という思いがあることを示唆している。ただし、その考えは画布での共存共生を願うヴェルソの意思とは対立していることも描かれている。
空飛ぶ屋敷のジェストラルからは、崩壊後に現われた現実のクレアが崩壊によって砕かれた大陸を電光石火のごとく修復したことが語られている。これはレディ・オブ・サップの話とも整合しており、現実のクレアは画布世界そのものを破壊したいのではなく、あくまで異物を排除し、破壊を修復し、画布の世界を昔のまま維持することを意図した行動をとっている。
このような彼女の衝動の根底には、彼女の完璧主義がある。空飛ぶ屋敷の少年は「全部、いつも、すべてが完璧じゃないといけない」と語り、噴水の白いブランシュは、未完成のまま画布に放たれた創造物が「主の失敗の証」となるがゆえに、それらを消す任務を自分が負わされていたと明かす。異物は存在してはならない、失敗作は存在してはならない、というのが彼女の規律である。その目にこの画布はどう映るか。子どもの空想とベル・エポックの街が不調和に同居し、母の妄執と父の破壊が塗り重なり、自分の不完全な複製が歩き回る。潜在的に、彼女は今の画布を完璧ではないものと見なしているのだろう。完璧主義者にとって不完全なものは矯正の対象であり、抹消や上書きはその矯正の身振りにほかならない。
一方で、崩壊によって砕かれた大陸をすぐさま修復している様子は、彼女のとって画布の “完璧” とは、自分とヴェルソが幼い頃に共に描いた画布、さらに、現実の弟ヴェルソが亡くなった時点の画布と定義していることを示唆している。彼女は自身の幼少期を否定したいわけでも、画布世界そのものを消し去りたいわけでもない。むしろそれを「誰も触れてはいけない神聖な思い出」として扱っているようにも感じられる。これは、空飛ぶ屋敷で贈られた「幼い頃にヴェルソと共にデザインした衣装」を彼女が今も身に着け続けていることからもうかがえる。
また、現実のクレアは自己解釈の権利については厳しい行動を貫いている。父が描いた自分 (ホーラー) は倒させ、母が描いた自分 (画布のクレア) は自身で上書きした。彼女は、この画布に紛れ込んだ異物の排除よりも、他者による彼女の再解釈を優先して標的にしている。終わりなき塔で彼女がマエルに語った言葉や、贈ったものが髪型、すなわち自分の像を自分で決める道具であることも、彼女のこの理念を強く表している。
16.4.
ネヴロンの正体
大陸のネヴロンは大半が画布のクレアによって作り出されており、その画布のクレアを操っているのが現実のクレアである。
遠征中に遭遇した白いネヴロンたちが「彼女」「ご主人様」と呼んでいた相手は、したがってペイントレス (アリーン) ではなく現実のクレアである。かつて白いブルジョンが「空から自分たちを見守る
この対応関係は画布世界の構造を対照的に明らかにする。ジェストラルやグランディスが抹消の影響を受けないのは幼少の真のヴェルソが描いた住人だからであり、逆に抹消によってクロマがアリーンに還元されるルミエール市民は、ペイントレスとしてのアリーンが画布の中に描いた人々ということになる。ここからルミエールという都市そのものがアリーンの創作物であることが示唆される。
プロローグの祭典での「ルミエールはここに落ちたから守りを固める時間が稼げた」というジェロームとの会話や、回転木馬での「崩壊前にネヴロンはいなかった」というグランディスの話から、大陸では崩壊の後にネヴロンが出現し始めたと考えられる。ただし、崩壊直後はまだ現実のクレア自身が手ずからネヴロンを創り出していたため、画布のクレアを支配下に置くまではネヴロンの増加数はゆるやかだったと予想される。
このため、第 0 遠征隊が大陸に上陸した当時のネヴロンの数はまだそれほど多くなく、ルネが割り出した上陸地点の「暗き海岸」も当時は比較的安全な土地だった可能性がある。だが現在の暗き海岸は強力なネヴロン「ノアー」が徘徊する危険地帯であり、67 年前の上陸地点をそのまま踏襲したことが第 33 遠征隊の悲劇の入口となった、という推測がここから浮かび上がる。
現実のクレアはアトリエでネヴロンのデザインと制作を行っていた。アトリエは「創造主が被造物に肉を与える受肉の場」であると同時に「その肉が消されるために与えられた供犠の場」でもあるというマタイ伝の解釈は、ネヴロンの存在そのものの二面性を端的に示している。
16.4.1.
スプロング
忘れられた戦場の西の海に佇む巨大なスプロング(Sprong) を撃破すると、ヴェルソはこれがクレアによって最初に作られたネヴロンだと語る。ヴェルソが画布の中で時系列を観察できるのは、画布のクレアがネヴロンを作り始めて以降である。ここでの「クレア」が、画布のクレアを指すのか、それとも現実のクレア本人から最初期の制作について聞かされてた話をしているのかは定かではない。
16.4.2.
ゴブルについての考察
一方、浮遊する水の最後に遭遇したゴブルについては、他のネヴロンとは出自が異なる可能性が高い。第一に、ゴブルが第 33 遠征隊と戦闘になった動機は、遠征隊を狩る攻撃性ではなく、自分の縄張りと花を守るための防衛行動だったこと。つまりゴブルはクロマの固定化を目的としていない。第二に、終わりなき塔の消えゆく女は「この画布の半分は私が描いた」「ヴェルソと一緒に冒険していた」と語っており、屋敷のダイニングホールにはヴェルソのエスキエと並んでクレアのゴブルが飾られていること。第三に、空飛ぶカジノは崩壊のときにジェストラル村にあった建物が空に投げ出されたものだが、そこに動物に餌を与えるゴブルのネオン像が置かれていること。特に第三の描写は、崩壊前からこの世界にはゴブルが存在し、ジェストラルにも認知されていたことを示している。
これらのことから、ゴブルは比較的初期のクレアのお気に入りの作品であり、幼いクレアが花を愛でる登場人物としてヴェルソの画布に描き加えた存在ではないか、という推測が成り立つ。今でこそ冷徹な姿を見せる現実のクレアも、エスキエに乗った弟と一緒に、自らもゴブルに乗り、二人してこの世界の冒険に出かけていたのだろう (フランソワは動けないので / そしてゴブルとエスキエは体型も似ている)。そして、フランソワやエスキエと違って物を言わぬゴブルは、花や動物を愛したかつてのクレアを思いながら、今も花を守り続けている。それが本作で描かれたゴブルではないか、と想像される。
16.5.
アクソンの正体
すべての敵性体がクレアによって作られたものではない。屋敷のアトリエには 4 体のアクソンが描かれており、アクソンはルノワールが自身の作品を画布に持ち込んだものだと分かる。ヴィサージュで「仮面の守護者」を倒したとき、ヴェルソが「今のはヴェルソだったな、ルノワール」とつぶやいたことや、パーティがシレーヌに足を踏み入れた際にモノコが「このような様式の建物は崩壊前にはなかった」と語るのもこれと整合している。
仮面を使う「嘘で真実を守る者」のヴィサージュは兄ヴェルソ、精神攻撃を使う「脅威を弄ぶ女」のシレーヌは妻アリーン、旧ルミエールで街を背負ってシモンの大剣に貫かれていたホーラーは姉クレア、Act III で解放される「空を掴む女」のリーチャーは末妹アリシアを、父ルノワールによるそれぞれの解釈をモデルにしている。
屋敷のアトリエにはアクソンの他にも「クリアション (Creation)」や「アベレイション (Aberration)」のデザインもあり、それらは Act III でルノワールによって創られたネヴロンとして登場する。
16.6.
消えゆく人々の正体
画布世界の各地で散発的に姿を見せ、しばらく抽象的な言葉を交わした後に沈黙する「消えゆく人々」は現実のデサンドルの家族が対応している。
最も頻繁に出会う「幼い少年」は、火事で死んだ真のヴェルソの魂の欠片の一つである。時に昔を懐かしく語り、時にクレアが画布に持ち込んだ悪意に戸惑い嘆き、最後は自分が存在し続けるべきなのかを自問する。少年が「彼女」と言うときはほぼ確実に姉クレアについて言及している。
忘れられた戦場と終わりなき塔で遭遇する「消えゆく女」は非常に特徴的で、それが現実のクレアの言葉を直接語っていることは明らか。
後半に現われるシルクハットを被った「消えゆく男」は現実のルノワールの魂の断片を表している。息子のヴェルソが火事で死んだことへの嘆きや、息子の死によって衰弱した妻アリーンを取り戻したいことが語られる。
ルノワールが警告していた「画布に長く留まると生きる屍になる」という現象は、彼らのように画布での滞在中に魂が断片化して画布の中に散らばる様子を意味しているのかもしれない。ただし、クレアだけは「魂の欠片」ではなく、自らの意志で画布の中の特定地点に意識を投影し、単なる遠隔通信としての出現様式を成している点が、彼女の能力の高さを際立たせている。
16.7.
描かれなかったアリシアエンド
アリシアがヴェルソに託した手紙に書かれた夢を見る人生 (Une vie à rêver) という言葉は、本作の絵を描く人生 (Une vie à peindre)、愛のある人生 (Une vie à t'aimer) という二つのエンディングタイトルと通じている。この三つの並びは、プレーヤーにもう一つあり得たエンディング、アリシアエンドを想像する余地を与えてくれる。
アリシアエンドがあるとしたらどのようなものかはプレーヤーのそれぞれが想像することだが、私が推し量るとすれば、まずそれは画布を残すか消すかの二項対立ではない第三の道だっただろうことがアリシアの手紙から伺いとれる。アリシアの第三の道とは、家族四人がそれぞれ画布から手を引き、維持か破壊かの対象から完成された一枚の絵へと位置づけ直すことではないだろうか。現状の画布は家族それぞれの思惑が交差しており、誰一人として画布を「作品」として扱っていない。これを幼少のヴェルソが「絵は祝福であるべき」という哲学で立ち上げた一枚の作品に戻す。
アリーンは息子の死を現実として引き受ける、ルノワールは画布を泣き息子の遺作として保存する、クレアは画布のクレアの上書きを解除しネヴロンを消去する、マエルは画布の中で生き直すのではなく現実の身体で生きる。四人それぞれが画布に手を加えるのを止めることで、画布は完成した一枚の絵としてその場に残る。残された画布の住人たちは、真のヴェルソの魂の欠片による静かな下支えのもと、それぞれの生を緩やかに完結させていく。デサンドル家の紛争の駒としてではなく彼ら自身の物語の最後まで生きる時間を取り戻す。家族が訪れて思い出すことはできるが、住み込んだり、描き加えたり、上書きしたりはしない場所として確定させることではないだろうか。
現実のアリシア (マエル) にとって、画布での人生を「記憶」として手元に置きながら、現実の身体で生きてゆくことは、夢を見ながら生きてゆくことになるだろう。
16.8.
マエルエンドの曲に隠された意味
本作を起動すると、メインメニューで Lorien Testard による物悲しく印象的な曲 Alicia が流れる。プレイヤーが最初に耳にするこの曲は、特定の実在言語に結び付かないよう本作のために作られた架空の創作言語で歌われており、その歌詞の意味するところは誰も分からない。作曲を手掛けた Lorien Testard 自身、語を逐語訳することを意図したものではないと述べている。
ところが、マエルエンドの幕引きで流れる楽曲 Maelle は、この Alicia と同じ旋律でありながら、歌詞がフランス語で歌い直されている。すなわちこのエンディングに至って初めて、冒頭で意味を伴わずに聴いていたあの歌が、何を語っていたのかが明かされる構造になっている。ここに歌詞は引用しないが、上記リンクの公式 YouTube 動画 (Sandfall Interactive, Lorien Testard) の概要欄に掲載されているので、実際の言葉はそちらで確認してほしい。
歌詞の前半はヴェルソに宛てたマエルの一人称の誓いである。あなたを永遠に愛し、なお夢を見、なお涙する。そこには「愛する・忘れる・夢見る」という三つの動詞が畳み込まれている。後半は三人称の情景へと転じ、マエルとアリシアが同じ「絵を描く人生 (une vie à peindre)」を持つ者として並べて歌われ、淡く消える星、夜のとばりの
この歌が「アリシアからヴェルソへの言葉」であったと分かるとき、マエルエンドの意味は一段深くなる。彼女に与えられるのが「夢を見る人生」ではなく「絵を描く人生」である点は示唆的で、アリシア (マエル) が手放すことを選ばず、母と同じく画布を描き続ける者となったことを言い表している。「マエル」と「アリシア」という二つの名で自らを三人称に名指していく構文は、画布に留まることを選んだ者の自己疎隔を、そのまま言葉の運動として写し取っているように読める。
結びの「夜のとばりの裏側 (Verso)、その傍らの月 (Lune)」もまた一義には定まらない。Verso, Lune は登場人物のヴェルソ、ルネであると同時に「裏側」「月」でもあり、Lune は自ら光を発さず傍らで照らす存在の像とも重なる。消滅を拒まれ舞台で苦しみ続ける「夜の裏側」に、忠実な誰か (あるいは夜空の月) が寄り添う。それは恋情の成就とも、自由を奪われた者のかたわらに残る影とも読め、どちらと断じる必要はないだろう。
もしこの歌が文字通りであり、マエルが最終的にヴェルソとルネを結びつけたのであれば、エンディングに現われたギヨーム (ギュスターヴの弟子の一人) は二人の子として描き直された存在とも読める。そう仮定すると、このシーンで浮いていたいくつかの不自然が一つの像を結ぶ。年の近い叔母が兄ヴェルソの子の手を引いて父親の演奏会に連れて行く。物語の主軸ではなかった弟子を、しかも三人のうち一人だけをマエルが伴ってきたことも、主役たちのちょうど中央、ルネのすぐ隣に座らせたことも、そしてルネが母親のように彼に語りかけその頭をなでたことも、すべてが一本の線で繋がる。マエルの現実の兄はすでに亡く、マエルが兄の子を目にすることは永遠にない。この世界では、マエルにとって何が理想かがそのまま世界の理となる。ただ、それを示す直接的な表現はどこにもない。見たままの通り、マエルが守り抜いた画布世界の「次に続く者」の代表者としてただそこに据えられただけなのかもしれない。マエルがどのような結末を望んだかは、プレーヤーの想像に任せられている。
いずれにせよ、物語の始まりに流れていたあの曲が、最後を目にした者にだけ意味を開くというその仕掛け自体が、忘却と反復の上に成り立つマエルエンドの主題を静かに描いている。
16.9.
登場人物は喪失にどう向き合っているか
ここまではこの世界の仕組みを追ってきたが、Expedition 33 という物語全般に渡って問うている主題の一つは「人は取り返しのつかない喪失を抱えてどう生き続けるか」という死生観である。現実世界のデサンドル家はヴェルソを、画布世界の第 33 遠征隊はギュスターヴを中心に、いわば喪失の群像劇として編成されている。登場人物がそれぞれ喪失を自分の中でどう対応しているかを並べてみると、この作品で描かれた「さまざまな喪失」が見えてくる。
並べたときに浮かび上がるのは手放すかどうかという一本の軸である。デサンドル家はおおむね「手放さない」側へとどまり続け、対する遠征隊は「前に進む」側へ重心を置いている。
| 人物 | 抱える喪失 | 喪失への反応 | 物語内での処理 |
|---|---|---|---|
| デサンドル家 | |||
| 母アリーン | 息子ヴェルソ | 逃避・依存 | 画布に閉じこもり、ヴェルソと失われた世界を描き直して手放さない |
| 父ルノワール | 息子ヴェルソ/画布に囚われた妻 | 支配・恐怖 | 喪失の再来を恐れ、画布の住人を抹消して妻を現実へ引き戻そうとする |
| 姉クレア | 弟ヴェルソ | 任務への昇華 | 悲嘆を紛争に転じ、止まらないことで直視を避ける (弟を愛し、かつ憎む) |
| 妹アリシア | 兄ヴェルソ (庇われて死なせた) | 忘却・逃避 | 傷と声を描き直した画布世界で生き直そうとする |
| 第33遠征隊ほか | |||
| ギュスターヴ | 恋人ソフィー | 弔いとしての前進 | マエルを守る私的な愛と、ルミエールへの公的な義務の間で揺れつつ「進むこと」を弔いとする |
| ルネ | 両親/ギュスターヴ | 理性・任務への逃避 | 次の遠征と記録へ思考を移して悲嘆を回避する (クレアと同型) |
| シエル | 夫ピエール/子/ギュスターヴ | 受容 | 死を「家に迎えてくれる友」と捉え、失った時間より共有した時間に感謝し、今を生きて他者を支える |
| マエル | 養兄ギュスターヴ (庇われて死なせた) | 怒り・復讐 → 緩やかな受容 | 遠征を仇討ちと再定義して自分のものにし、悲しみ方そのものを学んでゆく途上 |
| 画布のヴェルソ | 67年の無数の死 | 慣れと諧謔、終われぬ喪 | 亡き者に語りかけよと助言し、言葉の代わりに沈黙を共有する |
| モノコ | ノコ | 諦念と日常への回帰 | 「甦らせても別のノコになる」と受け入れ、馬鹿げた応酬で悲しみに息継ぎを作る |
興味深いのは、マエルにとってのギュスターヴの死が、アリシアの傷をもう一度なぞっている点にある。庇われて兄を死なせたという罪悪感をマエルは二度負っている。マエルにとっての遠征とは、現実のアリシアが処理しきれなかった喪失を、別の人間のもとでやり直す試みでもあったのかもしれない。
16.10.
遠征隊員たちの背景
第 33 遠征隊の面々については、メインストーリーで語られる以上のことが、キャンプでの何気ない会話や各地のジャーナル、過去の遠征隊が残した手記の断片から拾い集められる。それらを繋ぎ合わせると、彼らがルミエールでたまたま寄せ集められた他人同士ではなく、出発のはるか前から互いの人生を幾重にも交差させていたことが見えてくる。彼らの結びつきはいずれも、抹消による肉親の喪失という同じ影を背負っている。
16.10.1.
ギュスターヴ
ギュスターヴはルミエールの技師であり、街の防衛設備から農業設備までを支えてきた人物である。出発に際して彼は、自分の留守中もシールドドームを維持し続けるよう弟子のギヨーム・アレクサンドル・アドリアンに託し、道中では、いつか彼らが読むことを願って旅の記録をジャーナルに書き留めていく。失った左の前腕には、彼の求めに応じて弟子たちが作り上げた電動の義手が嵌められている。もっとも、彼がどのようにして左腕を失ったのかは、作中で語られることも、それと分かる形で示唆されることもない。ルネと共同で第 33 遠征隊の切り札となるルミナ・コンバーターを開発したのも彼である。双子の姉エマはルミエール評議会の議長を務めている。彼とエマは 3 歳で孤児となり里親を転々としてきたマエルの後見人を引き受け、兄として、また父のような存在として育ててきた。
ギュスターヴがルミエールの農業に遺した代表的な事業が、多くの地区の食糧供給を担った農業施設アクアファーム 3 (Aquafarm 3) である。この事業には、後に恋人となるソフィーと、後に同じ遠征隊で轡を並べるシエルが共に携わっており、ソフィーとシエルは互いに親しい友人同士でもあった。つまりギュスターヴ・ソフィー・シエルの三人は、遠征のはるか前からこの農場を通じて接点があった。Act I でジェストラル村の闘技場にてシエルと再会し、彼女を仲間に迎える際、ギュスターヴが「アクアファーム 3 の仲間を見捨てられるか」と口にするのは、この縁の深さゆえである。
プロローグで描かれるソフィーの死は、ギュスターヴを遠征へと駆り立てた最大の動機である。かつて恋仲だった二人は、子をもうけるかどうかで考えが食い違い別れていた。ギュスターヴは「いつかゴマージュは止まり、子どもが親と共に育っていける日が来る」と信じて子を望み、ソフィーは「いずれ孤児になる世界に子どもは残せない」とそれを望まなかったのである。ただし、彼らはお互いへの愛がなくなったわけではない。別れて 4 年の後、33 歳を迎えたソフィーがゴマージュで消える日に彼は彼女に寄り添い、二人は最期に互いの想いを確かめ合った。
遠征に際してギュスターヴがまとう、義手に合わせて仕立てられたコートは、ソフィーが彼のために作ったものである。「後に続く者たちのために」(For those who come after) という言葉に象徴される彼の生き方は、遠征が次の世代のために道を切り拓く営みであることと、いつか親子が共に生きられる日を信じて子を望んだ彼自身の願いとを、分かちがたく重ねている。なお、マエルエンドの結末では、ルミエールの人々と共に蘇ったギュスターヴが、ソフィーとの関係をやり直している様子がうかがえる。
制作初期、ギュスターヴとヴェルソは「ノア」という名の一人のキャラクターとして構想されていたが、ゼノブレイド 3 の主人公との同名だったため改名したという経緯がある。ギュスターヴの初期の武器「ノアラム」(Noahram) はその名残である。
16.10.2.
マエル (隊員として)
マエルが現実のデサンドル家の末妹アリシアであることは前述の通りだが、ここでは彼女が自分自身と信じている、ルミエール市民「マエル」としての来歴を見る。
マエルは 3 歳で孤児となり、気難しい性分ゆえにその後いくつもの里親家庭を転々とした末に、最後に彼女を引き取ったのがギュスターヴと姉エマだった。ギュスターヴが兄として、また父のような存在として接したことで、マエルは自分の風変わりな気質を少しずつ受け入れられるようになっていく。とはいえ人と打ち解け、信頼することは今も苦手で、思ったことを率直に口にし、皮肉めいた軽口を好み、物事を静かに観察する、ルミエールの誰とも馴染みきれない少女だった。
十代のマエルは、倉庫の使い走りや孤児院のボランティアといった雑多な仕事をこなしながら、建物の屋上を飛び渡るパルクールに興じ、本を読みふけって過ごした。自らも孤児でありながら里子や孤児の世話を厭わなかったことは、その不器用な気性の裏にある優しさをうかがわせる。
第 33 遠征隊は、翌年のゴマージュを目前にした、残り一年あまりの者たちが多くを占める。その中で 16 歳のマエルは際立って若く、隊員としては異例の存在だった。彼女が遠征に加わったのは、ルミエールを救うためではない。むしろ一度も故郷と思えなかったこの街を出て、外の世界を見て、自分自身の生き方を掴むため、つまり半ばルミエールから逃れるためだった。しかし、彼女の後見人であるエマもギュスターヴも、まだゴマージュまで年月のある彼女の参加についてはあまり肯定的ではなかった様子が描かれている。
16.10.3.
ルネ
ルネの家族は姉ステラ (Stella)、兄ソル (Sol)、そして犬のパット (Patte) である。両親が研究者であったことから、Stella は星、Sol は太陽、Lune は月に当てて名付けられたと考えられる。一方で犬のパットだけは子であるステラが名付けたとされ、フランス語で動物の「足・肢」を意味する。天体の名で統べられた一家にあって、この犬の名にだけ子どもの手触りが残っている。
両親は著名な研究者であると同時に遠征隊員でもあり、ルネは幼い頃から遠征隊員として育てられた。彼らのもとには同年代の弟子 (見習い) の少年トリスタン (Tristan) もおり、ルネと共に厳しい訓練を受けていた。彼女の両親は第 46 遠征隊で命を落としている。ルネがペイントレスの謎を解くことに執着し、私生活を投げ打って研究に没頭しているのは、道半ばで断たれた両親の仕事を引き継ぎ、完成させようとしてのことである。ただし、それは「親から受けた呪いとしての期待」という一面も描かれている。
ルネとシエルが初めて知り合ったのはモノリス歴 45 年の 20 歳のとき。その年、シエルはゴマージュで両親を失ったが、それは同時に、前年に出発していたルネの両親の遠征が、ペイントレスを倒せずに失敗したことを示す出来事でもあった。同じ年に肉親を奪われた二人だったが、ルネはその後自らの殻に閉じこもり、シエルを遠ざけて両親の仕事に没頭していく。Act II でギュスターヴを失った二人が悲しみを分かち合って再び寄り添う場面は、かつて喪失を共にした者同士の再会である。
ルネがギュスターヴと知り合ったのは、兄ソルがギュスターヴの双子の姉エマ (後のルミエール評議会の議長) と付き合っていた縁による。やがてルネはギュスターヴの研究の相棒となり、二人で遠征隊員がクロマを扱いピクトを効率よく用いるための装置ルミナ・コンバーター (Lumina Converter) を作り上げた。遠征中、仲間の遺体を前に全てを失ったと絶望したギュスターヴが自死を図ろうとしたのを止めたのもルネである。ギュスターヴが倒れても歩みを止めず、後にはその死を背負って遠征の続行を促す。そうした彼女の姿勢は、この長い関係の積み重ねの上にある。
第 33 遠征隊では進路を選定するナビゲーターを務めた。上陸地点として暗き海岸を選んだのは、そこが唯一モノリスへ到達して生還者を出した第 0 遠征隊の上陸地点だと彼女が突き止めたからである。学者としての最善の選択が、67 年の時を経てネヴロンの巣食う最悪の入口へと変わっていたことは前述した通りである。
生涯をペイントレスとモノリスの研究に捧げてきたと言う彼女だが、ヴェルソとの会話で「本当に恋しいもの」として挙げるのは、ヴィエノワズリー (viennoiserie; ウィーン風の菓子パン) である。万事をなげうってきた学者のささやかで人間味のある一面がのぞく。
16.10.4.
シエル
シエルはもともと農家であり、後に教師となった女性である。陽気で社交的な物腰の裏に、深い喪失を抱えている。彼女が農業に通じていたことは、ギュスターヴやソフィーと共にアクアファーム3に携わった経歴ともつながっている。左腕に付けている多数のミサンガは、彼女の生徒ら一人一人から遠征出発前にもらったものである。
シエルの夫は、ルミエール郊外で植物の採集と研究を担う「アウトドーム・チーム」の一員ピエールだった。庭の手入れをしていたシエルがハニーペタルを少し探してきてほしいと頼んだところ、ピエールは花束に加えて 15 箱もの挿し木を抱えて現れた。そんな出会いから二人は結ばれ、やがて夫婦となった。彼の名がフランス語で「石」を意味することについては前述の通りである。
だがモノリス歴 39 年頃、シエルがまだ 26 歳ほどの時、ピエールは郊外の島で起きた事故で命を落とす。海に流されたその死は、定められていたゴマージュより 5 年も早い、あまりに不意のものだった。絶望したシエルは後を追うように海へ身を投げる。彼女は生き延びたものの、その身に宿していた子は失われてしまった。「海の真ん中で泳ぐのをやめた」彼女を救ったのエスキエである。「きみの涙が聞こえた」と言って駆けつけたのだという。エスキエが石を愛することと、シエルが「石」を名に持つピエールを愛したことが、二人の間に静かに重なる。パーティでのシエルとエスキエの親密さの根には、この出来事がある。
その後シエルは、かつてピエールがボランティアをしていた学校で教鞭を執るようになる。子どもたちが語る物語の中に彼の面影を感じ、彼の遺した仕事を続けることが、夫の死を受け入れる支えとなった。彼女の陽気な仮面の下にこうした哀しみを湛えていることはあまり表だって描写されない。なお、名の「シエル」(Sciel) はフランス語で空を意味する ciel を想起させ、戦闘で太陽と月の力を操る彼女の意匠とも響き合っている。
16.10.5.
ヴェルソ (隊員として)
ヴェルソの正体は前述の通りである。ここでは、第 33 遠征隊の面々が出会い、共に旅をした「隊員ヴェルソ」の姿を見ておきたい。
彼がパーティの前に現れるのは Act II の冒頭、ギュスターヴを失って沈むキャンプである。素性の知れぬその男は、ギュスターヴを救えなかったことを詫び、モノリスへ至る道筋を示す。なぜ遠征隊の制服を着ているのかと問うルネに、彼は 67 年前に発った第 0 遠征隊の生き残りだと答える。隊員の幾人かは老いることなく、ゴマージュを免れた、ギュスターヴを討ったあの白髪の男もその一人だ、と。男は自らをヴェルソと名乗り、同行を願い出る。
この自己紹介自体には嘘はない。画布のヴェルソは確かに、母を探すため家族と共に第 0 遠征隊へ加わっていた。彼が伏せているのは、自分が描かれた存在であることや、ペイントレスの息子であることといった、語れば正気を疑われる核心だけである。大陸の地理に通じすぎていること、そしてエスキエやモノコ、ジェストラルたちが初めから彼を知っていることは、その素性を指し示す静かな手がかりとなっている。
崩壊から 67 年、長い歳月を画布に生き、幾度となく仲間の死と喪失を見送ってきた彼は、どこか倦み疲れた歴戦の戦士として一行を導く。とりわけマエルに対しては、それと知られぬまま実の妹を見守る兄として接している。なお、キャンプでの「救えなかった」という詫びは、後の場面で実はギュスターヴを救えたのに救わなかったのだとマエルに明かされる。
16.10.6.
モノコ
モノコをはじめとするジェストラルは、幼い日の現実のヴェルソが遊び相手として画布に描いた存在であり、それゆえルノワールによる抹消の影響を受けない。モノコという名は、デサンドル家の飼い犬「モノコ三世」にちなんでいる。一方、彼に人間の言葉を教え、長きにわたり連れ立って大陸を旅してきた相手は画布のヴェルソである。画布のヴェルソはモノコを「物心ついた頃からの友」と呼ぶが、アリーンによって描かれた画布のヴェルソには「物心ついた頃」は存在しないはずで、実際に彼らが会ったのがいつ頃かは作中では明示されていない。
ジェストラルは戦うことに無上の喜びを見出しそれに生涯を懸ける種族である。ヴェルソから人語を学んだモノコは、その中でも人間の言葉を操れる数少ない個体で、年嵩で博識、弁も立つ。だが、その理知的な物腰の裏には、同族と変わらぬ戦いへの渇望が潜んでいる。
かつて画布のヴェルソと共に遠征隊に随行していたモノコだが、遠征隊との関わりから身を引いて遠く離れたモノコの駅でグランディスらと共に暮らすようになったのは、遠征隊員たちが次々と死んでゆくのに耐えられなくなったからだと、ヴェルソとの会話で打ち明けている。
崩壊のとき、行方不明のジェストラルを探し連れ戻す役目を担っていたノコは、幼いモノコを見つけて引き取り、育て上げた。ジェストラルは死ぬと聖なる川で生まれ変わるが、再生した者を導く大人が足りないため順番待ちの列に並ぶ。モノリス歴 43 年頃にノコが世を去ったとき、モノコは師を列に並ばせることに耐えられず、順番を飛ばそうとした。これが長ゴルグラの逆鱗に触れ、以来モノコはジェストラルの村を離れた。モノコはこの物語の中でも再び再生の順番飛ばしを行っている。














