解説: Expedition 33 - Act III. マエル
第 33 遠征隊はモノリス頂上でルノワールとペイントレスを撃破し、数十年来のルミエール市民の悲願であるゴマージュの停止を成し遂げた。ルミエールへの凱旋後、アリシアから託された手紙によってこの世界の構造が明かされる。この世界は現実世界の画家アリーン・デサンドルが、火事で失った息子の悲しみから逃れるために描いた画布の中の世界であり、倒した「ペイントレス」は画布に没入し続けていたアリーン本人、白髪のキュレーターは妻を引き戻そうと画布に介入していた現実世界の夫ルノワール、画布のヴェルソはアリーンが亡き息子から描き直した複製、そしてマエル自身が、火傷で顔と声を失った現実世界の末娘アリシアが画布に入った姿だった。モノリスの数字は死の宣告ではなく、衰弱するアリーンが「これだけしか守れない」と市民に告げる警告だった。ヴェルソが真実の手紙を海に捨てた瞬間、ペイントレスの庇護を失った画布世界は崩壊し、ルミエール市民は全員霧散した。
エピローグでは現実世界の屋敷で目覚めたアリシアが姉クレアから両親の闘争と画布世界の状況を告げられるが、アリシアは再び画布に踏み込んだ際にアリーンのクロマに飲み込まれて記憶を失い、そのまま画布の中で「マエル」として 16 年を生き直してきた。Act III は、その外装が剥がれ、画家としての能力とデサンドル家の記憶を取り戻した白髪のマエルが、廃墟のルミエールに立つ場面から始まる。
Table of Contents
- 1. ルミエール
- 2. 史上最高の遠征隊
- 2.1. 仲間との再対面
- 2.2. 新しい遠征の発足
- 2.2.1. マエル
- 2.2.2. ルネ
- 2.2.3. シエル
- 2.2.4. エスキエ
- 2.2.5. モノコ
- 2.2.6. 史上最高の遠征隊をつくる
- 3. 最後のキャンプ
- 3.1. 入水自殺の真実
- 3.2. 涙の音を聞き分ける友
- 3.3. ウルリエの奪還
- 3.4. 三つのサブクエスト
- 3.4.1. シエル: 親密度 6
- 3.4.2. シエル: 親密度最高
- 3.4.3. ルネ
- 3.4.4. モノコ: 親密度 5
- 3.4.5. モノコ
- 3.4.6. エスキエ: 親密度 5
- 3.4.7. エスキエ: 親密度 6
- 3.4.8. エスキエ: 親密度最大
- 3.4.9. マエル
- 3.4.10. 仲間の様子を見る
- 4. シレーヌのドレス
- -
- 4.0.1. ルネ: 親密度 6
- 4.0.2. ルネ: 親密度最高
- -
- 5. 聖なる川
- 6. リーチャー
- 6.1. 緑のオルフラン
- 6.2. アリシアとの対面
- 6.3. リーチャー後のキャンプ
- 6.3.1. マエル: 親密度 6
- 6.3.2. マエル: 親密度最高
- 7. ルミエール
- 8. マエルとして戦う
1.
ルミエール
人々がゴマージュで霧散した後のルミエールに、白髪のマエルが現われる。前章のエピローグで、マエルが画布の世界に入ったときにアリーヌのクロマに飲み込まれて記憶を失ったことが語られた。しかしここで、アリーヌが描いた外装のクロマがゴマージュによって剥がれ、画家としての能力やデサンデル家の記憶と共に本来のマエルの姿に戻ったことを描写している。ここまでの物語でずっと「マエル」として生きてきた彼女は、画布世界の住人のマエルであると同時に、画家アリシア・デサンドルとして画布の中に立っている。
マエルはルミエールの廃墟を歩き、BOULANGERIE の看板を見つける。これはヴェルソがルミエールにいた頃に住んでいた場所。物語中盤でのヴェルソとの会話を覚えているプレーヤーは、マエルがこの看板を頼りにヴェルソを探していることを察する。マエルはその近くの広場にヴェルソが一人佇んでいるのを見つけ、静かに横に座る。
1.1.
二人の再会
マエルとヴェルソの再会の会話で、これまで両者が抱えてきた秘密と誤解が整理される。マエルは、現実世界のデサンドル家の末娘であり、火事でヴェルソを失った張本人であるという自分の本当の出自を思い出している。ヴェルソもまた、自分が真のヴェルソではなく、母アリーンが息子の記憶を元に画布の中に描いたコピーであることを、もはや隠さない。しかし、マエルは「あなたはあなた」「わたしはまだマエル」と応答し、二人とも自分たちの存在の偽性を引き受けつつも、その上で互いを互いとして認め合う。
この会話の中でマエルは初めて「わたしが母さんの話を聞いていたら、作家たちを信じていなかったら、ヴェルソはまだ生きている」と罪責感を口にする。火事は、アリシアが幼かった頃、両親が警告していた作家たちの危険を信じず、彼らに何らかの形で利用されてしまったことに端を発しており、ヴェルソはその結果として妹を救うために命を落とした。マエルは長年その事実を背負って生きており、画布世界に逃避した動機の中核にこの罪責感が据えられていたことが、彼女自身の言葉として表れる。そしてマエルの「思い出すのを助けてくれたら良かったのに」という言葉は、ヴェルソが手紙を捨てたことを知っているようにも取れる。いずれにせよ、ヴェルソが隠していたことは一往復の謝罪で清算される。両者は互いの罪責を認め合い、それでもなお共に立っている関係を選び直す。
しかしここで二人の対立が浮上する。ヴェルソは画布世界の存在そのものが母アリーンの病理の原因で、現実のデサンドル家を引き裂いてきた根源であり、消滅させるべきだと考えている。一方、マエルは、彼女にとって画布世界は単なる母親の悲嘆の容器ではなく、自分が 16 年間生きた現実であり、ギュスターヴもルネもシエルも、彼らの愛も笑いも痛みも、本物だった。この主観的真実と存在論的偽性の対立こそが Act III 全体を支配する争点の根本となる。
マエルは画布世界を再構築する計画をヴェルソに告げる。彼女はエピローグで姉クレアとキャンバスを巧妙に隠しており、母が再びこの世界に戻っている道を塞いでいる。ゆえに父が画布世界を破壊する理由はもはや存在しない。そして、画布のルノワールは母さんが悪く描いていて実物はもっと理性的な対話ができ、何より私に弱いから願いを聞いてくれると楽観的でいる。
1.2.
父との対峙
広場で待ち受けるキュレーターが巨大な筆を大きく一振りすると真のルノワールの姿に戻る。これは遠征隊が戦った画布のルノワールとは異なる、現実の画家としてのルノワール・デサンドルの姿である。彼はマエルを「アリシア」と呼び、無事を喜ぶ。しかしその直後の対話が、マエルの希望的観測を完全に裏切ることになる。
ルノワールはまず、ヴェルソに対して意外な敬意を示す。ルノワールは画布のヴェルソを単なる消去対象として見ているのではなく、妻が描いた偉大な作品として認識し、その存在自体がヴェルソ本人に与えた苦痛に対して謝罪している。マエルが先ほどヴェルソに告げた「実際のルノワールはもっと思いやりがある」という観測は、表面的には正しい。
しかし、ルノワールはマエルに画布世界の完全消去を改めて告げる。母を画布から引き剥がしただけでは不十分であり、画布そのものを破壊しなければ家族は完全には救えない。「生きている者のために、死んだ者は手放さなければならない」というルノワールの倫理の核心は、画布世界の完全消去を愛による救済として要求する。母が病から戻れない今こそ根本解決の最後の機会であり、画布の中に長く留まる娘自身も同じ病に冒される前に連れ帰らねばならない、と判断している。
しかしマエルにとって、火傷を負った現実の自分の人生よりも、画布で築いた 16 年の方がはるかに本物の人生である。父の「生きている者のために」という倫理に従えば、彼女自身が手放される側に分類される。懇願は退けられ、ルノワールが杖を振るうと衝撃波がルミエールを包み始める。ヴェルソが霧散しかけるが、マエルが画家としての力を初めて自覚的に行使して抹消を止める。そこに現われたエスキエとモノコと共に広場から離脱する。
このムービーパートにより Act III が思いやりに満ちた父の愛と、画布の住人を救おうとする娘の愛という対立構造が確定する。この章は両者が同じ画布世界を巡って正反対の結論を導き出す倫理的衝突として展開して行く。
会話の書き起こし
ヴェルソ「アリシア?」マエル「“マエル” の方がいいかな。」ヴェルソ「俺もだ。だが、俺は本当はヴェルソじゃないし、きみは本当はマエルじゃないだろう?」マエル「うん、あなたはヴェルソじゃない。見た目も声もそっくりだけど、あなたはあなた。わたしはまだマエルだけど。」立ち上がるヴェルソ。マエル「思い出すのを助けてくれたら良かったのに。」ヴェルソ「ああ。俺は… そうしたかった… だが… すまない。」マエル「こっちこそ。わたしが母さんの話を聞いていたら… 作家たちを信じていなかったら、ヴェルソはまだ生きていて、あなたは…」ヴェルソ「存在しなかっただろう。」マエル「板挟みになっていなかっただろうね。母さんはひどいことをした。ヴェルソのキャンバスにあなたを描いて、彼の記憶を与えて。火事が奪ったのはわたしだけだと偽って。だけど、あなたがいてくれて嬉しいよ。」ヴェルソ「きみの父親には全員を消す権利があった。こっちの方がマシだ。」マエル「マシって誰にとって?ヴェルソなら、自分のキャンバスが消えることを絶対に望まない。彼はエスキエも、ジェストラルもグランディスも愛してた。」ヴェルソ「それが俺の… 俺たちの母親を殺し、ひどく長い間、見せかけの世界に留めていた。見せかけの家族とともに。」マエル「見せかけじゃない。違う… あなたは… 私にとって…」マエル「父さんはここにいる。ルミエールを直すのを手伝ってくれる。」ヴェルソ「そうだろうか。」マエル「母さんは父さんを実物よりもかなり悪く描いていた。あなたの知っているルノワールよりもずっと思いやりがあるよ。」ヴェルソ「だな。」
マエルはペイントレスとしての記憶を取り戻した。ヴェルソ「みんなを消したのは、君の父親だ。なのに、すべてを描き直すのを手伝うだろうか。」マエル「ここに入る前にキャンバスを隠したの。だから母さんは二度と戻ってこられない。もうキャンバスを消す必要なんてないの。」ヴェルソ「彼は君に帰ってほしがるだろう。」マエル「わたしは母さんみたいに不安定じゃない。このキャンバスにいる時間も、そんなに長くない。それに、父さんは私に弱いから、聞いてくれるよ。」ヴェルソ「ふむ。」
広場に大きな筆を持ったキュレーターが立っている。筆を振ると花びらに囲まれルノワールが現われる。マエル「父さん!」ルノワール「アリシア。無事でよかった。家にいろと言わなかったか?」マエル「厳密に言えば、体は家にあるよ。」じろりとヴェルソを見るルノワール「アリーンの最高傑作だ。お前にひどい痛みをもたらし、後悔している。アリーンがしたことは道義に反していた。何よりお前には。どうかデサンドル一家を許してくれ。償いとして忘却を提案するのは不条理に思われるだろう。だが恐らく、それが我々の両方が望む結果だ。」マエル「え…」ルノワール「お前を誇りに思うよ。母親をキャンバスから引き出すのは簡単なことではなかった。だがキャンバスを消してしまえば、もう何の心配もない。」マエル「だけど母さんはもう家にいる、なんで…」ルノワール「分かるだろう。ヴェルソが描いたキャンバスはあの子の魂の一部を抱え込んでいる。母親は絶対に手放そうとしない。」マエル「違う。」ルノワール「生きている者のために、死んだ者は手放さなければならない。」マエル「やだ、父さん、ねえ、キャンバスは隠し…」ルノワール「彼女は必ず見つける。これが唯一のチャンスなんだ。彼女がキャンバスに長く潜りすぎて病み、戻ってこられない間に。」マエル「でも… 嫌… 父さん。父さん、お願い。ヴェルソのキャンバスはこれだけなの。わたしたちに残された最後のヴェルソを奪わないで。ここが私の家なの!父さんに決める…」ルノワール「お前の家?母親にあんなことがあったのに、留まりたいのか?」マエル「分かるでしょ。外の世界のわたしの人生は、ないも同然だって。」ルノワール「アリシア。このままでは死んでしまう。既にここに留まれる限度を超えているんだ。」マエル「でも…」ルノワール「駄目だ。いいか、駄目だと言ったんだ。娘の命を危険にさらすことはしない。アリシア。」アリシア「私は母さんとは違う。ここにいても自分を見失ったりしない!」ルノワール「いいや、失うさ。そして私は二度とこんなのは御免だ。」ルノワールが杖を地面に突き立てると、衝撃波が周囲を包み世界を破壊して行く。マエル「父さん、何を…」ルノワール「家に帰る時間だ。」ヴェルソがクロマに覆われ霧散しかける。しかしアリシアが力 (描画) を使って抹消を止める。エスキエ「友よ!」モノコ「乗れ!」マエル「ヴェルソ、来て。ほら!」次々と生まれる大型ネヴロン。周囲には花びらのようなクロマが散ってる。マエル「みんなが見える…」集めたクロマを胸にマエルはエスキエに乗る。
2.
史上最高の遠征隊
ルミエールから逃れた二人のキャンプでは、マエルはクロマを制御しようとするが、画家としての力はまだおぼつかない。この章から本作におけるペイントレスという語は、母アリーン個人の呼称ではなく、本来の「画家」を指す名前で使われるようになり、画布の世界で命の創造と消滅を操る者と再定義される。ここで、シレーヌは母アリーンの「脅威をもてあそぶ女」、ヴィサージュは兄ヴェルソの「嘘で真実を守る男」として、アクソンがルノワールによって描かれたものであることが明かされ、ヴェルソは「絵は本物に見えるものを描くことじゃない、本質を描くことだ」と助言を与える。マエルはそれを手がかりにメンバーの本質を捉え、シエルとルネの復活に成功する。前章終盤で抹消されたパーティメンバーが、画家としての娘の手で再び形を取り戻す。
2.1.
仲間との再対面
しかし復活と和解は同義ではない。ルネは、真実を知りながら仲間を欺き続けた行動は裏切り以外の何物でもないとヴェルソに激しい怒りをぶつける。ルネは「母を救うために人々を犠牲にする」という二項対立そのものが間違っていると反論し、ヴェルソが信頼して真実を共有していれば、第三の道も見つかったかもしれないと告げる。これは、アリシアの手紙に書かれていた、ゼロサムの病をヴェルソもまた継承しているという指摘である。ヴェルソは反論せず受け止めた上で、亡くした人たちを甦らせるために何でもすると確約する。
シエルの反応はルネとは正反対である。画布世界の存在論が露呈したことで、シエルにとって死は「永続的な喪失」から「再会の可能性」へと意味が変わった。彼女は怒りを既に自分の中で昇華しており、物語中盤で示した死生観が再会の希望へとさらに更新される。ただし彼女は感傷的になるのではなく「ピエールを甦らせるのを手伝う限りは」と明確に取引化し、希望を希望のまま宙づりにせず、義務として固定する。
マエルは父ルノワールがまだ画布世界を消去していない理由を「母との戦いで弱っているから」と分析するが、ヴェルソは再び大規模に崩壊が起きたら今度はマエルがモノリスに幽閉される危険を語る。ヴェルソは、画布世界をめぐる戦いを終わらせる唯一の方法は、マエルが画布から去って「家に帰る」ことだと提案する。これは、ルノワールに画布世界を消去させることを意味する。マエルはこれを受け入れない。
2.2.
新しい遠征の発足
ペイントレスとしての能力を取り戻したマエルだが、ルミエール市民を全員復活させるには大量の純粋なクロマが必要。そのほとんどは父ルノワールの支配下にある。しかし、ネヴロンに殺された遠征隊のクロマは遺骸に残っているという事実を生前のギュスターヴが発見しており、解決の糸口として浮上する。遺骸のクロマは古く純粋なものではないが、当面の目的として遺骸からクロマを回収することとなった。
この計画の意義は重層的である。第一に、ギュスターヴの生前の発見が、彼自身を含む数十年間のすべての遠征隊の死を意味のあるものへと遡及的に転換する。彼らはペイントレス討伐の過程で失敗したのではなく、ルミエールを再構築するためのクロマを温存する入れ物として死の意味を変えた。前章の終盤で後に続く者たちが抹消され空転していた遠征隊の合い言葉が、ここで新しい意味を獲得して再起動する。第二に、旧来の遠征隊はペイントレスを倒すために大陸へ出ていったが、新しい遠征隊はマエルというペイントレスが同行して大陸を出て行く。目的は破壊から創造へ、遠征隊の歴史的な反転である。
マエルとシエル、ルネの会話は静かな調子で展開する。マエルは「外の世界の家族」と「画布の家族」の両方の記憶を持つ違和感を語る。シエルが「本当の家族が見つかったからもう孤児じゃない」と慰めるのに対して、マエルは現実の家族への愛と、画布の家族への愛をどちらも本物として並列に保持することを選ぶ。ギュスターヴもエマも、代わる代わる面倒を見てくれたみんなも等しく自分の家族であると。その言葉を聞いたシエルはすこし微笑んだ顔をする。
シエルの「長い時間の中で初めて希望が持てた」という一言がこのキャンプ全体の感情的な総括となる。32 歳までしか生きられない宿命を抱えていた彼女が、画家による世界の再構築という前例のない可能性の前で、初めて未来に希望を持つ。前章まで遠征隊を駆動していた死の覚悟が、本章では生の可能性へと裏返り、第 33 遠征隊は各地を廻ってクロマを回収する。
パーティはかつて訪れた各地を巡り、ネヴロンに殺された遠征隊員たちの遺骸を次々発見し、そこからクロマを抽出して行く。この遠征はムービーで一気に進行し、プレーヤーは傍観者としてモンタージュ的に見守るだけである。ここはプレイヤー操作で再訪したかった場面でもあるが、これまで隅々まで探索し尽くした地域を改めて巡回コンテンツに仕立て直すのは開発リソースの観点で割に合わなかったのだろう。物語の側で解釈すれば、ルノワール戦までの時計が既に動き始めている中で第 33 遠征隊の遠征のテンポを緩めず、破壊から創造への転換のトーンを薄めないための、必要な省略として受け取るのが収まりが良い。
キャンプでの会話の書き起こし
クロマの制御を練習するマエル。マエル「父さんはあんなに簡単にやってたのに。どうしてうまくいかないんだろう?」モノコ「仕方ない。自分がペイントレスだと思い出してまだ一日しか経っていないんだ。」ここからペイントレスとは画家の意味を持つ。エスキエ「君ならできる!」ヴェルソ「彼女たちを思い出せ。絵は本物に見えるものを描くことじゃない。本質を描くことだ。」マエルの手を取る。ヴェルソ「彼女たちという人間の真実を。きみの父親がアクソンを創ったんだな?」モノコ「脅威をもてあそぶ女。嘘で真実を守りし男。」ヴェルソ「きみの母親と… 兄の本質だ。」マエルが剣を一振りすると、クロマの中からシエルとルネが現われる。ルネ「どうやって…」シエル「あたしたち、抹消されたのに…」ルネ「マエル… その髪は?」マエル「何から話せばいいかな。」
ルネ「あなたは彼女の娘だったのね。そしてペイントレスでもある。」エスキエ「かなりクールだよな?」ルネ「それに貴方。ずっと知っていたのね。この臆病者。私たちを裏切った。私たちは貴方を信じていたのに貴方は…」シエル「あんたは元に戻せるんでしょ?あたしたちが失った全員を。」マエル「わたし… うん。けどクロマが要るし、ここのクロマは全部、父さんの手の内にある。」ルネ「いいえ。すべてではないわ。ネヴロンに殺された遠征隊員たち。ギュスターヴが気付いたの。彼らの亡骸にはクロマが残っていた。彼らは消散しなかった。抹消のように。」マエル「うーん。古いし、純粋なクロマじゃない。二人を甦らせたようにはいかないだろうけど… 別の方法で使えるはず。」モノコ「史上最高の遠征に向かうときが来たな。」
2.2.1. マエル
「父さんが全部消しちゃう前に、キャンバスから追い出さないと。」「まだ消していないのが驚きだ。」「母さんと戦って弱っているんだよ。だからわたしたちを追ってこないのかも。でも時間はあんまりない。」「きみが父親と戦い続けていたら、再びこの世界が壊れる危険がある。また崩壊が起き、今回はきみがモノリスの中に閉じ込められるかもしれない。」「他の方法は?」「きみが… 家に帰るべきかもな。」「ヴェルソ…」「きみたちは戦い続けているが、やっているのは同じことだ。」「違う。」「アリーンは息子を、ルノワールはきみとアリーンを取り戻したがっている。そしてきみはギュスターヴを。俺たちが壊すべき輪廻は抹消じゃなく、きみたち家族の悲しみの連鎖だ。」「…」「俺たちの世界は、きみたち家族の悲しみという重荷を背負っている。」
2.2.2. ルネ
「ルネ…」「貴方を信じたのは間違いだった。」「なら、きみが俺の立場だったらどうしていた?」「私なら仲間を裏切らない。大事な人たち全員に、貴方たちは消されそうだと警告する。真実を伝えるわ。乗り越えてきたことを考えれば、私たちはそうされるに値していた。」「きみなら母親より遠征隊を選ぶのか?」「それは貴方の問題でしょう。その二項対立は間違っている。二者択一の状況ではなかった。他の解決策だってあり得たのよ、貴方が私たちを信じて頼ってくれてさえいれば。」「真実を知ってもなお、俺が母親をキャンバスから追い出すのに手を貸してくれたか?」「…」「彼女を救ったことに対して謝罪はしない。だが、きみの信頼を裏切ったことは申し訳ない。全員を甦らせるために手伝えることは、何でもするよ。」「どうかしらね…」「…」
2.2.3. シエル
「やめてよ。」「…」「謝罪なんて要らない。あんたは自分がしなくちゃならないと思ったことをやった。もちろん間違っていたけど… 仕方ないね。」「もっと怒っているかと思った。」「怒ってたよ。もう忘れた。」「…」「この世界について知っていたことは、全部間違いだった。だから?どうでもいいよ。だって死はもう死じゃない。また旦那に会えるってことでしょ。」「シエル…」「ちょっとやめてよ。あたしは旦那を取り戻すためなら、迷わずあんたを犠牲にする。だから… 分かるよ。もう気にしてない。」「ありがとう。」「あんたがピエールを甦らせるのを手伝ってくれる限りはね。貸しだよ。」「了解だ。」
2.2.4. エスキエ
「おやおや、みーんなお前にプンプンだ。」「お前は?」「エスキエはシクシクもオラオラもギンギンもできる!だがプンプンにはならない。悪いことはプンプンしているときに起こる。」「ああ、そうだな。」「だが、お前にプンプンすることは絶対にない。」
2.2.5. モノコ
「だから言っただろうとは言わないが、実際… オレは言ったはずだ。」「協力に感謝するよ。」「それだけの価値はあったか?」「…」「これからどうするんだ?」「信頼を取り戻すために全力を尽くす。」「かなり険しい道のりだな。」
2.2.6. 史上最高の遠征隊をつくる
シエル「いい髪型じゃん。」マエル「ああうん、まあね。」ルネ「外に別の世界があるなんて信じられないわ。私が絶対に見ることのない世界。ごめん。わたし… 記憶が… 知ってたらみんなに伝えて…」ルネ「謝らないで。貴方もだまされていた。私たちと共に生きた、私たち側の人間よ。同時に彼ら側の人間であるとしてもね。」マエル「すごく変な感じ。二つあるの。子どもの時の記憶も、家も、ルミエールも。」シエル「あんたはもう孤児じゃない。家族が見つかったでしょ。あの人たちと一緒にいたくないの?」マエル「家族のことは愛している。でも… みんないなくなった。いろんな形で。それに、みんなもわたしの家族だよ。ギュスターヴもエマもそう。あのときは分からなかったけど、代わる代わるわたしの面倒を見てくれた家族たちみんな…」シエル「マエル。」ルネ「頭が混乱する話ね。」シエル「だね。けど長い時間の中で初めて希望が持てた。」
3.
最後のキャンプ
各地から過去の遠征隊のクロマを回収して帰還したパーティは、ルノワールとの最終決戦に向けてキャンプで一夜を過ごす。誰もが明日の死を覚悟していたモノリス前のキャンプとは対照的に、この夜は誰もが翌日に世界を取り戻す可能性を抱えている。
3.1.
入水自殺の真実
ヴェルソはシエルを湖に連れ出して泳ぎを教えるが、その過程でシエルは水嫌いの真の理由を告白する。ピエールを失った後、彼女は入水自殺を試みて気がついたら波止場で目覚めていたこと、その時に妊娠したことに気付かず入水で子を亡くしたことを告げる。Act II 中盤の「枯れた花もいいものだよ」という背景には、夫を追って未生の子をも巻き添えにしたという深い罪責感が横たわっている。
「ピエールにどう言えばいいか。あたしたちの子どもは死んでしまったなんて。生きていたら 6 歳だった。」マエルが死者を蘇生できる現実を前にして、シエルは蘇生後の説明責任という新しい重みに直面する。ヴェルソもまた、自身が家族に対して同じ暗い思想を抱えていた経験を打ち明け、不死の絶望と入水の絶望が等価に並べられる。そしてヴェルソは「キャンバスにヴェルソが描いたある生き物は、暗い考えに捕らわれたときはいつも人を助けている」とエスキエの存在を示唆する。
3.2.
涙の音を聞き分ける友
シエルが自らエスキエに歩み寄り、洞窟での出会いの前にシエルと会っていることを確認する。「あんたがあのとき、あたしを助けた。でもどうやって?」「君の涙の音が聞こえた」海の真ん中で泳ぐのをやめたシエルを波止場まで運んだのはエスキエだった。幼少期のヴェルソが描いた「悲しむ人を見つけて助ける生き物」というエスキエの本質が、ここで遡及的に開示される。
エスキエの「あのとき君は誰かを探していた。見つかったのか?」「私も石をなくしたときは悲しい。だが必ず探し当てる。君もまた見つけ出せるだろう」石 (ピエール) を失ったものが石 (ピエール) を取り戻すという、フランス語の語呂を貫通する慰めが個々で成立する。Act II モノリス前夜にエスキエが「ソリアが恋しい」と漏らしていたが、ようやくここで互いに同じ運命を抱えていることを確認し合う。
3.3.
ウルリエの奪還
ヴェルソは、エスキエにソリアを隠していた理由を問い詰められ、エスキエが飛べると分かればルミエールに返りたがると思ったからと答える。エスキエはヴェルソのことを「本当は意地悪じゃないのに物を隠す意地悪」なフランソワそっくりだと評する。ここでエスキエは、フランソワがペットの岩のウルリエ (Urrie) を持っていることを思い出す。エスキエはキャンプで見つけた石を使って、フランソワの上にクレアが乗っているフィギュアを作り、それと交換してもらおうと画策する。
ウルリエを返してもらい、洞窟を出るときに遠くから聞こえるフランソワの泣き声は、マエルの姉でフランソワの友だちだったクレアの不在の重みを物語る。キャンプに戻り、ヴェルソが「おまえも本物のヴェルソが恋しいか?」と問うと、エスキエは「お前は友だ。もう一人のヴェルソも友だ。お前たちは… いとこだよ。同じ同じ、けどそれぞれ違う」と答える。エスキエは画布のヴェルソが「真のヴェルソの代替物」ではなく独立した存在だと承認している。
ウルリエによってエスキエの潜水能力がアンロックされ、海に沈んだクロマを回収できるようになる。
3.4.
三つのサブクエスト
このキャンプの会話から三つのサブクエストが発生する。それぞれが、ルミエールへの最終突入の前に自分自身の死者を取り戻す機会として配置されている。ゲーム構成上も、これらのクエストによりグラディエントアタックがすべてアンロックされるため、ルミエールに向かう前にクリアしておきたい。
Scirene's Dress - ルネは、それまで一切話題に出さなかった第 46 遠征隊についてヴェルソに尋ねる。彼女の両親が参加し、13 年前に出発した遠征隊である。ヴェルソは、その遠征隊に同行したことはないが、シレーヌの島のはずれ「シレーヌのドレス」で痕跡を見たと告げ、そこに連れて行くことを約束する。
Sacred River - モノコが「ノコを甦らせよう」と申し出る。ジェストラルには聖なる川という蘇生の場所があり、順番待ちがあるが、モノコはそれを抜かすことを企てる。
The Reacher ーマエルは Act II の最後にヴェルソが捨てたアリシアからの手紙を見つけており、火傷の跡を引き受けて画布で生まれた自分の姿であるアリシアに直接会いたいと申し出る。ヴェルソは強く反対するが、マエルは押し切る。アリシアは三体目のアクソン「リーチャー」(The Reacher) のいる山の頂にいる。画布のマエルと本来あるべきアリシアを直接対峙させるこのサブクエストは、アリシアの最後の願いを叶えるイベントとなる。
このキャンプと三つのサブクエストは、ルノワールとの最終決戦の前に、各人が自分の死者と決着をつける必要があるという物語的論理である。マエルが世界全体を再構築する画家になる前に、まず各人の個人的な蘇生と再会が完了していなければならない。第 33 遠征隊の「最後の遠征」は、もはやペイントレスを倒す使命ではなく、各人が自分自身の死者と向き合うための私的な巡礼として、ルミエール突入の前夜に終わる。
キャンプでの会話
3.4.1. シエル: 親密度 6
「普通はこんな緊張しないんだけどさ… あー、緊張する。」「ああ、そのようだ。」「前も無関心だったわけじゃないけど、任務に集中してたんだよね。でも今は…」「個人的なことになったからな。」「…」
ヴェルソは確信を持ってシエルに近付く。「エスキエと泳ぎに行くが、きみも来るか?」「エスキエにそそのかされた?」「当然だ。」「エスキエは大した策略家だね!いつもあたしを水に引っ張り込もうとする。」「あいつから、きみがカナヅチだと聞いた。」チッというマエルの舌打ち「エスキエの奴…」「水の上を移動しているとき、きみはいつも不安げだ。泳ぎを学んだ方が良い。そうすれば、きみが水中に落ちたとき、俺は助けに飛び込んで服をびしょ濡れにせずに済む。」「なんて優しい人。」「俺は仲間を大切にするが、湿った服を着て喜ぶ人はいないさ。」「やけに具体的な例を挙げるじゃん。いい考えだとは思うけどね。」「そうだろう。着替えたら湖のところで待ち合わせだ。」「了解。」ヴェルソとシエルは着替える。ヴェルソは、モノコの鞄に密かに水着を入れていることを明らかにする。そして女性用の水着も、念のため。ずる賢いヴェルソ。
「言っとくけど、泳ぎ方は知ってるよ。あたし島育ちだもん。ただ… 泳ぐことに嫌悪感があるだけ。」「ああ、それなら手を貸せる。俺はキノコに嫌悪感があったが、克服した。」「へえ、ならその秘密を教えてよ。」「浴び続けるんだ。避ける方が嫌になるくらいな。エスキエに山ほどキノコを食わされたんだ。最初の数回は死んだが、今は免疫がついた。」「これが心を動かす物語だと思うわけ?」「さらに、俺は学校で泳ぎのリーダーだった。」「それって感心するとこ?100年前は他の子どもと泳いでいたんだ~って?」「俺は今でも泳ぎがうまい。泳ぎは身についたら忘れないものだ。ほら、手伝うよ。問題なのは恐怖だ。恐れるものもパニックになる理由もないと、きみの心と体に理解させる必要がある。」「分かったよ。ああ、なんて賢くて腕のいい泳ぎのリーダー。最初はどうすればいい?」「少しの間、水の中に座っているだけでいい。落ち着いたら、もう少し深いところへ行く。その後は、さらにもう少し深いところへ。あそこの島に歩きにたどり着いたら完了だ。」「…」シエルは勇気をかき集め、水の中に入る。彼女はパニックに貼るが、その恐怖に打ち勝つのにヴェルソが手を貸す。彼女は落ち着き始める。… しばらくして、彼女はなんとか島へ泳ぎつく。「やった!うまくいくなんて信じられない!ありがとう。」「俺を疑っていたが…」「あんたは確かに泳ぐのも教えるのも上手だね。」「さて、泳いで戻れるかな。」「え、今回は応援の激励はないの?」「つまり、さっきの話は応援になっていたんだな。」「まあ… ちょっとはね。」「ところで、今の気分は冒険的かな?ここにもう少し留まるのはどうさ?」「あ。ヴェルソ…」「どうした。」「残念だけど、状況が変わったの。マエルがピエールを甦らせてくれる。ごめん。」「ああ。いや、そうだな、もちろんだ。分かるよ、気にするな。」「今夜はここで過ごすべきだとは思うけど。」「そうなのか?」「あんたと一緒に過ごした時間は、あたしにとって特別だった。最後にもう一度だけ、それを記念して。」「そうだな、記念して。」「他に泳ぎを見せてよ。」「俺のテクニックは素晴らしいぞ。」ヴェルソとシエルは島に留まる。二人は一緒に最後の夜を過ごす。とても情熱的な夜だ。シエルとヴェルソは忘れられない経験をする。親密度アップ 6. 二人は島で数時間を過ごし、泳いで戻る。二人は疲れ切っているため、泳ぐのが大変だ。
3.4.2. シエル: 親密度最高
シエルと話をしたくてたまらないヴェルソは、彼女に近付く。「教えてくれたことがなかったが… なぜ農業から学校の運営に進んだ?」「え、分かるでしょ?」「俺はきみほど賢くないからな、説明してもらえると助かる。」「あたしの方が賢いって認められて偉い偉い。ピエールは… 昔ボランティアで、学校のことも似船の操縦方法や自然で生き延びる方法を教えてたんだ。彼が死んだ後、あたしは… ひどい状態だった。学校にいても気分が悪かったけど、少なくとも彼の存在を感じられた。子どもたちから彼の話を聞いて、彼の仕事を続けて。」「ふむ。なるほどな。」「あんたの母親の取った行動の理由が、あたしには理解できる。」「…」「息子を、ヴェルソの存在を身近に感じていたかったんだよ。」「可能なら、きみもピエールのコピーを作っていたということか?本物ではないとしりながら?」「…」「いま聞かれたら、答えはノーだね。そのせいであんたがどれだけ苦しんでいるか見てきたから、他の人にも背負わせたくない。だけどあの頃に聞かれていたら…」「…」「彼とまた会うためなら、彼の声を聞くためなら、彼の温度を感じるためなら、なんでもやたっと思う。毎日、喪失感があったの。彼がいた場所が空白になったような。彼が座っていた椅子はへこんでて、彼の靴は空っぽで、彼の上着の中には何もない。… なんであたしが水嫌いか知りたい?」「…」「入水しようとしたの。」「なんだって?」「ピエールを失って、あたしは… ルミエールから泳いで離れようとした。力の続く限り、波に運ばれるままに泳いだ。もう泳げなくなるまで。」「…」「けど… 次の日に目が覚めたら、ルミエールの波止場にいた。あたしは生きていた… なんでかは分からない。それから、あたしは気付いていなかったけど… 病院で… 妊娠しているって言われた。けど… 子どもは亡くなっていた。」「シエル…」「心の底から、マエルにはみんなを、ピエールを甦らせてほしい。だけど、ピエールにどう言えばいいか。あたしたちの子どもは死んでしまったなんて。生きていたら6歳だった。」「本当に気の毒に思う。」「“暗くて個人的”、でしょ?」「俺も… 以前は同じような考えを持っていた。方法は入水ではなかったが… 分かるだろう。そうすれば、みんなにとって多くの問題が解決するだろうと。」「ヴェルソ…」「それも一つの選択だ。他の選択と同じように。」「そうだね。」「だが、キャンバスにヴェルソが描いたある生き物は、暗い考えに囚われたときにはいつも人を助けている。」「それって…」「ああ、あいつだ。…」「…」シエルは彼女の最も暗い秘密をヴェルソに打ち明ける。悲しみと暗い考えに囚われていると… 二人のつながりは深まる。親密度アップ最大. ヴェルソとシエルは、一緒に星を眺めて時間を過ごす。二人の親友は、沈黙を楽しむことができる。シエルは宵の明星からひらめきを得る。そして時間はあっという間に過ぎた。
「マエルに甦らせてほしい特別な人、いる?あんたって100年くらい生きてるんでしょ。会いたい人はいる?」「ああ、一人… それから、共に旅をした隊員たち。彼らに伝えられたらいいな。俺たちは… やり遂げたと。」「うん」「それから説明したい。機会がなく説明できなかったことを。」
3.4.3. ルネ
「彼女を見ていると、奇妙な気分だわ。」「マエルのことか?」「彼女はこの世界を作り変える力を持っている。彼女はペイントレスだった。だけど私たちのマエルでもある。」「ああ。彼女は俺たちのマエルだ。」
ヴェルソはルネに近付く。彼女は思うところがあるようだ。「他の遠征隊と旅をしたと言っていたわね?」「ああ、いくつかの遠征隊と。」「46 とは?」「46?いいや。なぜだ?」「ああ。なんでもない。ただ… ひょっとしてと…」「深刻な話のようだな。いつものきみはもっと雄弁だ。」「そう?」「すまない。今なんて?」「わたしの両親。二人は、その…」「彼らは第46遠征隊だったのか?」「…」「俺は彼らと旅はしていないが、そうだな… 痕跡は見つけた。」「そうなの?」「ああ。シレーヌの島だ。」「ああ。」「見せてあげよう。」「本当に?」「だが… あまり期待はしないでくれ。行こう。遠くはない。特に今はエスキエが飛べるからな。」「いいえ、駄目よ。今の私たちに寄り道している時間はない。」「ふむ。まあ、気が変わったら… いつでも言ってくれ。シレーヌの島のはずれだ。遠くない。」「ありがとう。」ヴェルソはルネに、彼女の両親が所属した第46遠征隊を見つけた場所を案内すると約束した。シレーヌの島にある場所で、シレーヌのコロシアムから遠くない。
3.4.4. モノコ: 親密度 5
「それで、どうやって彼女らの信頼を取り戻すつもりなんだ?」「お前、今の状況を楽しんでいるな?」「オシャレな髪と魅力はもう当てにならない。なら次の計画は?」「…」「まあ、とりあえずまだ会話はしてくれる。まずはそこだな!」
ヴェルソは、考え込んでいる様子のモノコに近付く。モノコは、ペイントレスがキャンバスから追放された後に起きたことについて考えている。「…」「大丈夫か?」「どんな気分なんだ?長い時を経て目標を達成するというのは。」「…」「結局のところ俺はタダのジェストラルで、いつもオマエを支えていたが、それでも…」「決闘をすれば気分が良くなるだろうか?」「今日はいい。人間を好きになるべきじゃないのは分かっている。人間は儚い生き物だ。現われてはすぐに消え、消えてしまうと二度と戻らない。それでも… オレは人間の悲しみを共有する。人間の喜びを共有する。」「ヴェルソはキャンバスの外でお前を知っていたからだ。そして俺は、中でのお前を知っている。お前は最も忠実な友だ。絶対に“ただの”ジェストラルではない。」「10年前、グランディスのためだと自分に言い聞かせてオレはオマエから離れた。だが本当は、遠征隊がどんどん死んでいくのを見ていられなかった。」「ああ… 分かるよ。」「なのにオレはまたオマエとこうしている。オレが忠実なのは、そういう性質だからか?それともヴェルソがオレをそう描いたからか?」「もう十分俺をボコボコにしてきたのだから、そういう性質だと分かっているだろう。」「それは確かに。」「今後はあまり自惚れるなよ。」「昔に戻りたいと思うときがあるよ。クレア、アリーン、そしてルノワールと遊んでいたあの頃に。オレたちの誰にも、悪いことは起きない気がしていた。」「楽しいときは永遠に続かない。」「悪い時は随分とくつろいでいくようだが。」「まあ、悪い時が去って行くかは俺たち次第だ。あの古き良き時代のように、ネヴロン狩りに行くか?その間は嘆かずに済む。」「それは… 心が温まるだろうな。」「では、奴らを真っ二つにしに行こう。」士気を上げるために体の痛みに耐えることを厭わないヴェルソに、モノコは感心する。そしてヴェルソは、逆の立場ならモノコも同じことをしてくれると知っている。親密度アップ. 二人は古き良き時代と同じように、真夜中に醜態のネヴロンと戦う。それから、仲間のところへ戻る。「…」「…」
3.4.5. モノコ
「美しき夕べだ。空の色に、星々の輝き。今夜は希望に満ちている。」「そうなのか。」「ノコを甦らせよう。」「お前は状況が落ち着くまで待ちたがっているのかと。」「明日どれほど時間の猶予があるか分からない。ああ、ノコに今日を贈らせてくれ。聖なる川に向かうだけだ。駅の近くだ。遠くない。」「ゴルグラは喜ばないだろうな。お前がまた順番を抜かして。」「ゴルグラには後で話すさ。お前は前にも一度、ノコを甦らせる手伝いをしてくれた。今回も頼めるか、友よ?」「いつだって手伝うさ。」ヴェルソはノコを甦らせるとモノコに約束した。聖なる川は北にあり、モノコの駅から遠くない。
3.4.6. エスキエ: 親密度 5
「怒ったルノワールは怖い。」「俺の父と大差ないと思うが。」「いとこだからな。」
ヴェルソはエスキエに重要な話をするために近付く。「お前がシエルにワインのことを話すとはな。」「ああー。その。彼女はとても説得力があるんだ。」「まあな。」「それに!彼女に笑いかけられると、心が温かくフワフワする。」「つまりお前は笑い掛けられてバラしたのか?大した秘密の守り人だ。」「おや、私は秘密の守り人と言うよりワインの守り人だと思っていた。」「どのみちお役目を立派に果たしたな。ワインはほとんど残っていない。」「お前は分かってくれると思っていた。本当のことを言え。彼女に笑い掛けられると、お前も心が温かくフワフワするだろう。」「何、いいや、それは… それは違…」「暑いのか?顔が少し赤いぞ。あ、そうだ、それに彼女は本当に素晴らしい岩を見せてくれた!」「岩一つと引き換えに、彼女に俺の最高のワインをやったのか?さぞ特別な岩なんだろうな。名前は?ああ、この岩はまだ自己紹介してくれていないんだ。だから呼び名も、特別な力が何かも分からない。」「なるほど。」「おお、だがルネが調べるのを手伝ってくれている。彼女は岩について詳しいぞ!」「無論、愛好家だよ。」「ルネは本当に物知りだ。彼女と話しているとすごく楽しい。彼女はとても好奇心旺盛で、夢中になってくれる。初めて会ったときのお前そっくりだよ。お前にはたくさん質問されたな。私のことやお前のこと、お前の…」「お前、ルネとも話しているのか?」「ああ。なぜ?お前はずっと彼女と話してる。お前たちはいーっつも話している。」「ああ、まあ…」「それに、彼女が物事に夢中になるのがお前も好きだろう。」「それは違… いったい何を言って… いや、忘れろ、話が脱線して…」「動揺しているようだ。」「動揺していない…」「ハグしようか?」「頼む。」「わーい!」「エスキエのハグを拒否できる奴はいないさ。」ルネとシエルをどう思うかという話題をエスキエがやめてくれて、ヴェルソは安堵する。そして自分のことをよく分かってくれているエスキエに、ひそかに感動する。親密度アップ. その後、二人は長すぎるくらいしっかりと抱きしめあい、仲間のところへ戻る。
3.4.7. エスキエ: 親密度 6
「…」「…」「…」「浮かない顔だな…」「なぜソリアを隠していたんだ?」「ああ、いや、俺は… お前が飛べると分かれば、彼女らはルミエールに連れて帰ってもらいたがるのではないかと思ったんだ。」「それは意地悪だ。お前は時々、すごく意地悪になる。むむ。だが意地悪であることは必ずしも意地悪なことじゃない。」「ああ、ええと、そうだな。」「んー。お前はフランソワそっくりだ。」「それを効いたら、彼は嫌がるだろうな。」「おおっ。おおおー!それにフランソワはお前そっくりだ!」「つまり?」「うんうんうん!本当は意地悪じゃないのに物を隠す意地悪なやつ!ヴェルソ、ヴェルソ、思い出したぞーっ!!!」「おっと、落ち着け。何を思いだした?」「ウルリエを失くした場所だ!」「ウルリエ。そうか。ああ、どれがウルリエだったか、もう一度聞いても?」「ウルリエは私が泳ぐのを手伝ってくれる!」「ああ、そうだった。それで、ウルリエはどこに?」「フランソワの洞窟に置いてきた!」「なるほど。ふむ。戦わないとフランソワはウルリエを渡さないだろうな。」「ああ、むしろ戦いたくない。前回、彼はちょーう怒っていたんだ!お前がセレナーデを演奏したらどうかな?彼とクレアは四六時ちゅーう歌ってた。すごく幸せそうだったな。それに、お前の声は本当に素敵だ。」「どうも。だが果たしてフランソワが俺の歌声を聞きたがるかな。」「おやおやおや!なら彼と踊るのは?お前は素晴らしい踊り手じゃないか。」「フランソワは踊れるのか??彼が動くところを見たことがない。時々、頭は少し動かしているようだが… ともかく、なんとか交換してもらえるかもしれない。彼が好きなものは?花か?果物?光るもの?」「ううううーん。分かった!彼と交換できるのは… …別の岩だ。」「なぜ別の岩を欲しがるんだ?」「もっといい岩だからだ!」「もっといい、とは… どう?」「フランソワそっくりの岩にするんだ!そしててっぺんに小さなクレアを描く!」「分かった。そうしよう。」「最悪、うまくいかずに彼と戦うことになる。」「ああ、ありがたいね。」「おおっと、あそこにあるあの岩はどうだ!」「ジャジャーン!まさに彼そっくりじゃないか?フランソワがそばにいるようにすら感じる。よし、準備はできた!」「何、今から行くのか?」「うんうんうん!時間はかからないさ、なんたって私は飛べる!フランソワに会いに行こう!」
エスキエの隠れ家: フランソワ「戻ったか」エスキエ「フランフラン!」「その呼び方はやめろ。」「ウルリエを持っていたんだな!なぜ言ってくれなかった?」「証拠はあるのか?」ヴェルソ「取引しよう。この、ええと… お前を模した素敵な彫像とウルリエを交換だ。」「それがわしだと!?」エスキエ「きみの本質を見事に捉えていると思うよ。」「フン。話にならん。ウルリエが欲しくば、奪ってみせろ。」フランソワとの戦闘後、ウルリエを受け取る「もういい、結構結構。そら。チェッ!岩を持って立ち去れ!」「ああーっ!ウルリエ!会いたかったよ!ありがとう、フランフラン!」「さっきの岩を置いていっても構わんが。」「ああ、フランソワ…」「…」洞窟を出ようとする遠征隊の耳には、遠くからフランソワの激しい泣き声が届く。フランソワ[劇的なむせび泣き] ヴェルソ「本当に彼女が恋しいんだな…」
キャンプに戻り、エスキエは新しい岩のウリエルを飲み込む。「ウルリエがある今なら、水中を冒険できるぞ!ヴェルソ、お前は最高だ。」「矢買うに立ててよかったよ。」「役に立ったどころじゃない!お前は最も賢く最も素早く最も面白く最高に最強で最もフワフワで…」「最もフワフワ??」「お前は最もフワフワな心を持っている。」「ありがとう、でいいのかな。」「どういたしまして!」この素晴らしい冒険を通して、ヴェルソとエスキエの絆はますます強くなった。親密度アップ. 二人は仲間のところへ戻る前に、もう少しだけ雑談をする。
3.4.8. エスキエ: 親密度最大
「フランソワは本当にクレアを恋しがっているんだな。」「うん。毎日待っているんだ。彼女がいなくなってから、歌うのをやめてしまった。だが大丈夫。彼女はきっと戻ってきて、フランソワはまたハッピーになる!」「本当にそう思うか?」「二人は親友だ。何世紀も過ぎたが、彼女がフランソワを置いていくはずがない。お前が決して私を置いていかないように。」「ふむ。お前は… ヴェルソが恋しいか?つまり、お前のヴェルソ、本物のヴェルソのことだ。」「…」「いや、恋しいに決まっているな。すまない、なぜこんなバカなことを聞いたのか。」「ただ… お前は俺といるとき、彼のことに触れないから。」「だってお前を悲しませてしまう。」「そのせいで… 困っているか?俺は彼ではないから。」「お前は友だ。もう一人のヴェルソも友だ。お前たちは… いとこだよ。同じ同じ、けどそれぞれ違う。それで私が困ることがあるかな?」「エスキエ、俺は… ありがとう、友よ。」「ささ、永遠に冒険を続けよう!」エスキエ [満足げな音] エスキエは言葉でヴェルソの心を動かした。ヴェルソとエスキエの絆は今や永遠に壊れないものとなった。親密度アップ. エスキエの言葉はヴェルソの想像力を刺激し、新たなスキルをもたらす。二人は次にどんな冒険へ行きたいか、話に花を咲かせる。それから、仲間のところへ戻る。
「海中を探索しよう!」「海中に何があるか怖くないのか?」「海の石も私の友人だよ。」
3.4.9. マエル
「マエル…」「家に帰れって言われるのはホントうんざり。だから言わないでよ。」「分かった。お望み通りに。」「みんなは私を頼りにしている。見捨てたりしない。あなたのこともね。」
マエルは湖のそばで話をしようとヴェルソを誘う。二人は一緒に歩いていく。「…」「…」「手紙を見つけたよ。」「なに?」「アリシアからの手紙。」「…」「彼女と会って話して、理解しなくちゃ。」「理解するとは?」「どうして母さんが…」「彼女の傷を残していたか?駄目だ。彼女の心に干渉するな。彼女はそんなことを必要としていないし、きみに答えをくれることもない。」「彼女はずっとわたしのところへ来てた。わたしに会いたがっているよ。」「彼女をそっとしておいてくれ。頼む。」「ヴェルソ。あなたがやっていることは彼女のためにならない。あなたはもう、彼女の世界を壊したでしょ。わたしなら助けられるかも。彼女にはわたしに借りがなくても… わたしには借りがある。」「…」「あなたの彼女への借りについては置いといて。あなたも彼女に会いたくない?」「会いたいさ。だが、彼女が俺に会いたがらない。こうなる前からね。」「なら、彼女に放り出されたらそっとしておけばいい。」「…」「それは同意?」「…」「よかった。彼女はどこにいるの?」「どうしてもと言うなら… お気に入りの場所がある。モノリスのそばにある山の頂上だ。そこには三体目のアクソンがいる。」「ああ。あのアクソン… 登山するってことね。」ヴェルソは彼の妹の元へマエルを連れて行くと約束した。妹の居場所は十中八九、最後のアクソンがいる島の巨塔だ。モノリスの近くにある。
3.4.10. 仲間の様子を見る
シエルはエスキエに大事な話をするために近付く。「エスキエ?」「ん?」「…」「お困りかな、友よ。」「初めて会ったとき言ってた “カナヅチの友” ってどういう意味?」「んん?そんなことは言っていないぞ。」「あたしははっきり覚えているよ。」「ああ、二度目にあったときのことか。」「え?」「洞窟で、だった。」「ごめん、あたし… かなり混乱してる。」「そうだな、私もだ。楽しいな。」「“二回目” ってどういうこと?」「初めては一回目という意味で、二回目は再びということだ。」「ええと。うん、それは分かる。つまりあたしは… あんたと初めて会ったとき、泳いでた?」「ああ。その後、海の真ん中で泳ぐのをやめた。あれは危なかった!」「あんただったんだ。あんたがあのとき、あたしを助けた。待ってよ、でもどうやって?」「君の涙の音が聞こえた。」「そんなに遠くから?」「聞こえたから、私は行ったんだ。」「へえ。なるほどね。」「ほほほ。」「あたしは… ええと… ありがとう…」「また泣いている。君は泣くのが好きなんだな。」「みたいだね。」「ヴェルソも泣くのが好きなんだよ。」「うん、知ってる…」「ハハハ。」「あのとき君は誰かを探していた。見つかったのか?」「んー、ううん。けどすぐ見つかるといいな。」「ふむむ。うん。私も石をなくしたときは悲しい。だが必ず探し当てる。君もまた見つけ出せるだろう。」「友よ、あんたって最高だね。」シエルとエスキエは長い時を一緒に過ごすうちに、確固たる友情を築いた。
4.
シレーヌのドレス
シレーヌの島の反対側、エスキエの飛行能力でしかアクセスできない場所に、楽屋裏を示唆する「シレーヌのドレス」がある。入口の巨大な装飾門は物理的な力では開かず、ルネがギターを演奏することで開く。両親が「浮ついている」と切り捨てた音楽が、両親の場所に行き着く鍵になっていることを描写している。
クロマティック・グリッサンド戦の後に拾うジャーナルに、ルネの母ブリジット (Brigitte) の死が記されている。彼女は 4 日間昼夜問わずネヴロンを抑えて仲間を守り、深手を負って死んだ。死の間際に発した「娘のルネが仕事を終わらせてくれる」という言葉を、ルネは信頼の表明ではなく代役指名として受け取る。4 歳から研究助手として育てられ、自分自身の声と両親の声の境界を持てないまま 32 年を歩んできた彼女にとって、この一言は娘を遺志継承として位置づける呪縛そのものと感じられた。ヴェルソはキャンプで「きみの両親は死んだ。その声は彼らのものではなく、きみのものだ」と、彼女に死者の声と自分の声を区別するように助言する。芸術家の家系に生まれ音楽家を志した息子と、研究者の家系に生まれ研究者を継いだ娘が、ここで親の声に支配されてきた者同士として並ぶ。
キャンプでは、ルネが密かに歌を書いていた。両親に否定された音楽を、彼女は隠れて自分のために書き始めていた。ヴェルソの助言が彼女の内的実践として既に発芽していた。Act II モノリス前夜に冗談で口にされた「第33遠征隊楽団」がここで結成され、二人はピアノとギターで何時間も作曲を続ける。そしてルネは「マエルが私のために外の世界を描くと言ってくれた。絵の中の絵、ということね」と、画布が保存された世界で実現する世界像を予告する。両親が見られなかった世界、自分の声で生きる人生を、彼女は画布の中に描き直された形で受け取る希望を持ち始める。
なお、ブリジッドの死因は大けがによる感染症である。第 46 遠征隊ジャーナルの日本語訳 🇯🇵 は「ブリジッドがついに、奴の影響に屈した。」とだけ伝えていたが、英語 🇬🇧 で “Brigitte finally succumbed to her infection.”、フランス語 🇫🇷 では «Brigitte a fini par succomber à son infection.» となっており、どちらの言語圏でもこのケースは医学的に裂傷が化膿して敗血症などで死んだと読む方が自然。infection の「影響」は、呪いや精神崩壊、ゾンビ化のような内的な浸食が進むケースの意味になり、グリッサンドの攻撃や一般のネヴロンの通念とは異なる。
会話の書き起こし
「第46遠征隊はすぐ近くだ。」「ここ?」「ああ。だが、たどり着くのは厄介かもしれない。」「厄介じゃないときがあった?」
… 門はびくともしない。ヴェルソによると、この扉の先には第46遠征隊の痕跡がある。ルネの両親がいた遠征隊だ。周りを見渡す。周りに扉を開くのに役に立ちそうなものは何もない。ルネは扉を調べる。試してみるべきかもしれない… バレエを踊る。ルネは簡単なバレエのヴァリエーションを優雅かつ上品に踊る。門はびくともしない。扉は開かない。ルネはばつの悪い思いをする。音楽を演奏する。ルネはギターを召喚する。彼女の指はためらうが、目を閉じ、切望の曲を演奏する。扉は音楽に共鳴する。悲しげな笑みを浮かべて、ルネは完全にメロディに没頭する。谷が弦の音に合わせて踊る。最後に響いた音が消えて静まり返ると、門が開く。
「彼らは…」「私の両親じゃない。アメリとクリストフね。よく我が家で夕食を共にした。」「お悔やみを。」「いい人たちだった。[咳払い] 彼らの記録はこのあたりにあるはずよ。」
クロマティック・グリッサンド戦後、第46遠征隊のジャーナルを見つける。「第46遠征隊、アネリ ブリジッドがついに、奴の影響に屈した。彼女は4日間、昼夜問わずあの忌々しいネヴロンを抑え、私たちを救ってくれた。けれど、そのせいで深手を負ってしまった。終わりが近付くにつれ、彼女は平穏を感じているようだったと言ってもいい。彼女は言った。自分の娘のルネが仕事を終わらせてくれるから、心配はいらないと…」ルネ「…」ヴェルソ「大丈夫か?」「キャンプへ戻りましょう。」
4.0.1. ルネ: 親密度 6
キャンプに着くと、ヴェルソはルネが気掛かりなことをたくさん抱えていると気付く。彼は仲間たちから離れた場所で話そうと、彼女を誘う。「…」「…」「生涯、私たちはペイントレスに関わることしかやってこなかった。耳元でずっとささやきが聞こえていた。この不安、この責任。とにかく、ずっと。ずっと… いつも、必ず。安らぎを感じたことは一度もなかった。眠っているときでさえも… そこにある。まるで絶対に吐き出せない息のように。」「かなりの重圧だな。」「母の最後の言葉も── “仕事を終わらせて”。」「それだけ君を信じていたということでもある。」「それも一つの見方ね。」「では、別の見方は?」「二人にとって私の価値は、娘ではなく、代役でしかない。自分たちの遺志を継がせるものなの。」「本当にそう思うのか?」「二人はいつも言っていた。勝負の最後に意味があるのは、努力ではなく結果だと。」「そんなにも嫌がるなら、なぜ両親の仕事を続ける?」「分からない。頭の中ではまだ二人の声が聞こえているからかも?逃げたところで聞こえなくはならないでしょうね。」「きみの両親は死んだ。その声は彼らのものではなく、きみのものだ。」「たとえ両親が生きていたとしても、きみの頭の中の声、きみが耳を傾ける声は、きみ自身のものであるべきだ。」「… 貴方は自分の声に耳を傾けられている?」「段々とね。見分けにくいときもあるが。」「そうね。」二人は同情的な笑みを交わす。二人は互いのことを分かっている。親密度アップ. ルネは衝動的にヴェルソの頬にキスをする。不意を突かれたヴェルソは、問いかけるようなまなざしで笑いかける。笑いながら、二人は仲間のところへ戻る。
4.0.2. ルネ: 親密度最高
ルネはノートに書き込んでいるルネに近付く。今回は何を書いているんだ?ネヴロンの記録か?」「いいえ。」「違う?なら “アクソンについての仮説”?それとも "動植物に関する見解”?」「当ててみて。」「ふーむ。さっきモノコに質問していたな。では “ジェストラルの行動に関する論説” か?」「ああ、かなり近い。」「俺のことだろう。 “ヴェルソ・デサンドルの奇妙でボロボロな人生” (The strange and tattered life of Verso Dessendre)。」「かなり長い物語ね。」「まあね。」「本当に?」「頼むよ。笑っているからにはいいものなんだろう。」「まあ、どうしてもと言うなら。歌を書いているの。」「歌?」「両親は音楽なんて浮ついていると言っていたけど、ね。“耳を貸すべきは自分自身の声”。空いた時間を少し自分本位に使ってみることにした。私たちの問題はまだ解決しないでしょうし。」「きみの歌を聞かせてくれ。」「うーん。どうかしら。もう遅いし、貴方はシエルと会うんじゃない?」「…」「嬉しいわ。彼女が幸せを… 少なくとも楽しみを見つけられて。でも、きっと素敵だったでしょうね。もし…」「…」「オーケー、演奏してあげる。でも笑ったり、生意気なコメントはしたりはしないで。」「ルネ…」「それじゃ、ピアノを出して。この部分の意見が聞きたいの…」ヴェルソとルネの絆は非常に強い。親密度アップ. 共に何時間も過ごし、作曲や演奏をする。キャンプに戻ったとき、両者の心ははるかに軽くなっていた。ルネは世界と自分自身をより理解できるようになる。
「これが終わったら、貴方はどうするの?ルミエールで貴方が “普通の” 生活をしているところが想像できない。」「ああ、もう町で暮らせる気がしないな。分からないが。きみは?」「そうね。私たちはこのキャンバスから出られない。だから優しいマエルは、私のために外の世界を描くと言ってくれた。それなら私にも見える。」「つまり…」「絵の中の絵、ということね。」
5.
聖なる川
血気盛んでよく死ぬジェストラル族が生まれ変わることはここまでのストーリーで何度か何度か知る機会がある。モノコの駅の近くに聖なる川 (Sacred River) という場所があり、死んだジェストラルがここで生まれ変わりのための順番待ちをしている。この画布世界にはもう新たな描き込みを行う創造主はいないが、真の創造主であるヴェルソ・デサンドルが生前に描いた、生者の世界へ生まれ直すという儀礼の空間が今でも機能しているのだろう。
生まれ直した子どもの守り手の数が常に不足しているため、列に並ぶ全員がすぐに蘇生されるわけではない。蘇生の流れを決める役を担うのが族長ゴルグラである。ノコの蘇生を頼む際にモノコが「ゴルグラには後で話す」と漏らしたのは、彼が順番抜かしを企てているからに他ならない。
聖なる川に到達した一行が光るピンクのジェストラルに話しかけると、ノコの蘇生が始まりかけたところでゴルグラが介入し、戦闘が発生する。ヴェルソとモノコの二人の限定戦闘である。しかし、戦闘に勝って蘇生されたノコは、モノコや遠征隊の仲間たちとの記憶を一切持たない状態で戻ってくる。ノコは再適応のためジェストラル村へ送られる。パーティはジェストラル村でノコに会うことができるが、モノコのことも完全に忘れており、かつての関係はもう取り戻せないことにモノコは悲しむ。
6.
リーチャー
リーチャーは大陸北西部にそびえる、塔のような巨大なアクソンがいる領域。Act III では純粋なクロマを得るために二体のアクソンを倒す必要があったが、リーチャーは高い山に登らなければならないため候補に上がらなかった。ストーリー上で明かされているように、画布のアクソンはルノワールがデサンドル家の人物像をそれぞれ自分の解釈で描いた像である。ヴィサージュ (Visages) は「嘘で真実を守る者」のヴェルソ、シレーヌ (Siréne) は「脅威を弄ぶ女」の母アリーヌ、リーチャー (The Reacher) は「空を掴む女」の妹アリシアの本質を描いている。旧ルミエールで討伐されていた、背中に小さな街を背負ったアクソンのホーラー (The Hauler) は姉クレアに相当する。
書き起こし
パーティが入口で巨大化したアクソンを見上げながら。ルネ「またアクソンね。どうやってここまで大きく?」ヴェルソ「昔はここまで大きくはなかった。だが、星々に手を伸ばそうと躍起になってから…」マエル「父さんと父さんの比喩だよ。」ヴェルソ「比喩?」マエル「父さんは意味のない絵は描かなかった。すべてのものには層が必要なの。意味と目的が重なってなくちゃいけない。すべてのものに教訓があるの。」ヴェルソ「ふむ。」ルネ「この教訓は?」マエル「希望。」ヴェルソ「アリシ… 俺の妹は一番上にいる。」マエル「めまいがする。それも父さんにはお見通し。」
6.1.
緑のオルフラン
塔の途中で遭遇する緑のオルフラン (Green Orphelin) は、他のオルフランと違って敵性がなく、また白いネヴロンとも違っている。創作作業に没頭し、敵意をみせず、マエルに手製の羽を贈ろうとする。しかし、マエルの「飛ぶのは怖いよ」という意図を察すると残念そうに引っ込める。実際には、マエルはここでは「目まい」と表現している。これは、入口のムービーでマエルがリーチャーを見上なら「目まいがする。それも父さんにはお見通し。」と言ったことに通じている。
この緑のオルフランは父ルノワールを象徴する像としてこの塔に配置されている。父ルノワールは娘のアリシア (マエル) に飛翔の手段を与えようとする善意の人物だが、その過大な期待が娘の恐怖や望みを考慮しない一方的な押しつけになっていた、ということをこのシーンと会話が示唆している。そしてこの像が画家ではなく創作者 (=芸術家) として描かれていることが、父ルノワールは娘アリシアに高く飛んでほしいというメッセージと同時に、娘には創作者としての没頭する父親の姿として見てほしいという心情を表している。
マエルは、デサンドル家の三人兄弟の中で自分が常に比較され劣位に置かれた末っ子であったことを語る。これはエピローグでクレアがアリシアに向けた冷淡な扱いの根にある関係性であり、彼女が画布の世界に逃避した動機の一つでもある。ヴェルソはルノワールがアリシア (マエル) のことを「希望の星」(secrète étoile) と呼び、愛していたが、その愛を娘に伝えることができないままだったと明かす。緑のオルフランが言葉を持たずに手製の羽だけを差し出す様子は、まさにこの父娘関係の構造のぎくしゃくさを表している。
書き起こし
帽子を被った緑のオルフラン (Green Orphelin) が創作作業に没頭している。敵意はなさそうに見える。パーティに気付くと、マエルに手製の羽をわたそうする。マエル「目まい、覚えてる?」残念そうに羽を引っ込めるネヴロン。周囲を見回しながらマエル「あの人は善意でやってるけど… 方法は…」ルネ「貴方の父親のこと?」マエル「わたしは末っ子だから、そのせいでいいことなんかなかった。」ルネ「ああ、分かるわ。」シエル「あたし一人っ子。」マエル「一番上のクレアは、すごく… 完璧。本当に頭がよくて才能があって。父さんもお気に入りで、自慢に思ってた。ヴェルソは… いつも父さんを笑わせていた。二人だけに通じる冗談がたくさんあった。わたしは違う…」ヴェルソ「その通りだ。本当のお気に入りはきみだよ。あいつは “秘密の星” だと呼んでいたが、当の本人は恥ずかしがりで内気すぎて、分かっていない。」マエル「だとしても、わたしは今ここで状況をどんどんめちゃくちゃにしている。」ヴェルソ「奴はただ、君にも羽ばたいてほしいんだよ。」
このオルフランは他と違う。邪魔をせず、創作に夢中になっている。ルネ「この発明品… ギュスターヴは見たがったでしょうね。」
6.2.
アリシアとの対面
山の頂では、画布のアリシアがキャンバスに向かって巨大なリーチャーの顔を描いている。ヴェルソはアリシアの手紙を渡すが、アリシアは手紙を捨てる。この手紙は Act II 終盤でヴェルソが海に捨てたが、その後にマエルによって拾われ、またヴェルソに返されたのだろう。その手紙を、アリシアは既に取り返しの付かない過去のものとして扱う。彼女は手紙の中で兄に第三の道を託したが、兄は後戻りできないところまで手紙を読まず、画布の世界は崩壊した。今となってはこの手紙はもう機能しない。アリシアの手紙の捨て方が冷たく見えたのは、手紙を読まなかったヴェルソを責める気持ちを示唆している。
アリシアが力を使い、世界がモノクロになりマエルとアリシアだけが動ける時間が訪れる。テーブルに置かれたアリシアの仮面は、Act II のモノリス前夜のキャンプでヴェルソが外して以来、外されたままになっている。マエルはその仮面を静かに手に取る。マエルはアリシアが自分を責めていると感じるが、アリシアは少し笑ったような顔を返す。
そしてアリシアはアクソン「リーチャー」を引き寄せ、その中に入ってマエルに片目の人形を見せる。その人形こそが、父ルノワールが娘の本質として描いた像、星に手を伸ばす片目の少女の「真のアクソン」である。Reacher という英語名が示す「手を伸ばす者」とは、失われた目で見えない星に手を伸ばし続ける娘の像である。父は娘の傷 (失われた目) を肯定したまま、それでも空をつかもうとする力を持つ存在として彼女を描いた。
アリシアは静かに剣を出し、マエルもこれに応じる。この決闘は、アリーンの記憶から生み出された「描かれた存在」から自らの主体性を取り戻すものとなる。アリシアはこの苦悩に満ちた生に終止符を打ち「友好的な」形で自らの存在を終えることを望んでいる。決闘の後、アリシアは新たな始まりを拒み、マエルに自身の存在を終わらせてほしいと頼む。マエルはその願いを叶える。
ヴェルソが掴んだのはアリシアの霧散したクロマだけだった。崩れ落ちるヴェルソの肩をシエルが抱く。
アリシアとの対面時の書き起こし
ネヴロンの前で絵を描いている画布のアリシア。マエル「こんにちは。」ゆっくりアリシアに近付くヴェルソ「アリシア。きみの手紙…」アリシアは受け取った手紙を捨てる。アリシアが力を使い、マエルとアリシアだけが動けるモノクロの世界となる。テーブルに置かれたアリシアのマスクを手に取りながらマエル「彼女はわたしを責めてるんでしょ?あんまりだよね…」少し笑ったような顔をするアリシア。アリシアが立ち上がり、アクソン “リーチャー” を引き寄せ、中に入るよう促す。その中には片目の人形 (アリシアの失われた目を表す) がいる。マエル「ああ。あなたは本物のアクソンだね。彼女は父さんが描いたって分かってるよね?」軽くうなずくアリシア。マエル「だから何を意味しているかも分かってる。あなたは… ここにいたいの?アクソンと一緒に。」静かに剣を取るアリシアとマエル。同じ技を使う二人の戦闘となる。
マエルが勝利する。アリシアは人形の方を見て剣を収める。アリシアが最後に振り返って人形を見て 外に出る。マエル「多分… これは… 父さんの期待を表している。わたしたちへの。」顔を見合わせる両者。マエル「わたしへの。」マエルがアクソンに手を向けて「行って。あなたの空を手に入れて。」と言うと、巨大なアクソンはその場を離れる。マエルが再び時間を動かし始める。マエル「わたしたちには羽ばたく権利がある。新しい始まりをあなたにあげる。」アリシアの胸にゆっくり手を当てるマエル。ヴェルソ「アリシア…」アリシア「家族のもとへ行かせて。」霧散するアリシア。ヴェルソ「待て─── マエル…!」駆け寄るヴェルソがつかんだのは、霧散した花びらだけだった。崩れ落ちるヴェルソ。近付いて肩を抱くシエル。
6.3.
リーチャー後のキャンプ
その夜のキャンプでヴェルソは誰とも話さず、一人湖のそばに立っている。マエルが歩み寄る。ヴェルソは怒りを隠さない。「別れを言えなかった。俺に彼女を説得するチャンスをくれなかった。」「きみたち画家は自分の思うままに行動し、残った者への影響を気に掛けない。」この世界での、画家として死者を消去する力を持つ者と、消去された死者を悼む者の間に走る根本的な非対称性がむき出しになる。
マエルの応答も誠実である。「彼女は自分の望みを分かっていた。話をして決心をにぶらせられたはずだと彼女を否定するのは間違いだと思う。」アリシアの抹消は彼女自身の意思であり、それを尊重することが妹を真に尊重することだと。しかしマエルは最後にヴェルソの言葉を受け止める。「あなたのことを考えるべきだった。お別れを言う時間を上げるべきだった。本当にごめんなさい。」Act III で初めて、マエルが画家としての自分の力の代価を受け入れる描写であり、画家の暴力性を自覚した上で人間関係を維持する責任を引き受ける覚悟を描写している。
マエルがモノリスを見つめているところにヴェルソが訪れる。ここでクレアとヴェルソの過去三回の
マエルは決定的な問いをする。「ホントはギュスターヴを助けられたのに、ルノワールを止めなかったの?」長い沈黙と深い呼吸の後、ヴェルソは「そうだ」と肯定し、その理由について、ギュスターヴが生きていれば、画布世界の真相を知った後にマエルが画布存続側に傾く可能性が高すぎた、と語る。ヴェルソは、旧ルミエールでも、屋敷の扉を開けさせるために途中からマエルを一人で行かせている。しかしギュスターヴを見殺しにしたのは、マエルが彼女の計り知らないうちに意思決定を曲げさせるための謀略で、それとは比べものにならない汚い一手である。しかし、マエルの「ありがと。ホントのこと言ってくれて」と応えは、この旅を通した彼女の倫理的成熟、そしてアリシアを通じた「家族は複雑だよ」という意味への理解を示している。怒りでも糾弾でもなく、嘘の終わりへの感謝。Act II 全編を通じて嘘の上に気付かれていた二人の関係が、ここでようやく真実の上に建て直される。
しばらくの沈黙の後、マエルは話題を変えるように、何も書かれていないモノリスは味気ない、とつぶやく。ヴェルソが今の君なら何でも描けると返すと、マエルは “父さん、家に帰れ” (Papa, Va T'en) はどう? と提案する。思わず吹き出すヴェルソ。Va T'en はフランス語で「出て行け」「消え失せろ」というような、家族間で発するには相当強い拒絶の言葉。子が親に対して使うとなればなおさらのこと。母アリーンがモノリスに描いてきたのは画布世界への切実な警告だったが、そのモノリスが娘から父への個人的な警告に使われるというコミカルな様子を描いている。この描写は、このイベントでのマエルとヴェルソのやりとり ── アリシアの抹消、ギュスターヴの犠牲 ── という極めて重い結果を引きずらないようにうまく着地させている。
これ以降、キャンプやワールドマップからは “PAPA, VA T'EN” と描かれたモノリスが見られるようになる。
キャンプでの会話の書き起こし
6.3.1. マエル: 親密度 6
キャンプで、ヴェルソは誰とも話したがらない。彼は湖のそばに一人で立っている。しばらくてい、決心したマエルが話しかけに行く。「…」「…」「…」「ごめん。」「…」「彼女の望みだったの。わたしは、わたしたちは、彼女に大きな借りがある。」「…」「わたしは彼女の願いを引き受けた。あなたにもルノワールにもできなかったことなの。母さんにもね。」「… 別れを言えなかった。きみは待たなかった。俺に彼女を説得するチャンスをくれなかった。」「彼女は自分の望みを分かっていた。彼女の気持ちを変えることはできなかったよ。」「彼女はきみとは違う。きみは分かっていない。俺の方が彼女のことをよく知っている。だが、きみは俺に試みるチャンスすらくれなかった。ただ彼女を消した。」「ヴェルソ…」「きょうだいを二人失くしたなら、きみにも分かるだろう。喪失感と、別れを告げられなかったことをどう感じるか。」「…」「きみたち画家は自分の思うままに行動し、残った者への影響を気に掛けない。」「わたしは気に掛けてるよ。あなたが傷ついてるのは分かるけど、あの決断をしたのは私じゃない。彼女だよ。話をして決心を鈍らせることができたはずだからってだけで彼女を否定していたら、間違ってたと思う。」「彼女は俺にとっての最後の家族だった。今はもう誰もいない。」「わたしが、わたしたちがいるよ。」「マエル。俺には心の準備ができていなかった。」「分からないよ。父さんを解放したときには覚悟ができていたでしょ。あなたは父さんがキャンバスと、そこにいるみんなを消すと分かってた。それと同じじゃないの?」「違う。同じじゃない。なぜ彼女にあんなことをした?」「理由は分かるでしょ。」「…」「けど、あなたの言う通り。あなたのことを考えるべきだった。お別れを言う時間をあげるべきだった。本当にごめんなさい、ヴェルソ。」静かに泣くヴェルソ「… 少なくとも、彼女はもう自由だ。」不満を抱えていたが、ヴェルソはマエルの言葉を理解している。彼はマエルが正直に打ち明けてくれることに感謝する。そしてマエルは、ヴェルソに心から共感する。マエルとヴェルソは互いに親近感を抱いている。親密度アップ. しばし二人は黙って座っている。今回は、マエルがヴェルソを慰めている。二人は仲間のところへ戻る。
6.3.2. マエル: 親密度最高
ヴェルソは、一人でもノリスを見つめているマエルに近付く。「…」「…」「母さんやあの数字がないモノリスって、変な感じ。」「からっぽに感じるな。」「うん。母さんが見えないとちょっと寂しいかも。母さんは今頃なにしてるんだろ。すごく怒ってるだろうな。」「ああ。」「クレアも喜ばないだろうな。あの二人、お互いに腹を立ててるかも。まあ、クレアはあんまり家にいないだろうけど。クレアのことだから、作家たちを追求しているかも… 火事の責任について。」「クレアらしい。」「うん… 家にいるとき、クレアの姿をめったに見なかった。クレアはヴェルソが死んだことに、かなり被害者意識を持ってた。まあ、家族みんなそうだったけどね。」「彼女とは三回会ったよ。」「そうなの?」「最初は崩壊の直後、第0遠征隊と一緒にいた時だ。結界のところで止められた。」「なら、全部聞いてたんだ?」「ああ。俺たちが引き返そうとしないと、殺そうとしてきた。」「クレア。」「数年後、会いに来て勧誘された。その次に会ったのは、今から16年前だ…」「…」「きみを見守るように言われた。彼女の戦いから離れてここにいる方が、きみにとって安全だと感じたんだろう。」「待って、じゃああなたはずっとわたしを見てたの?」「遠くから。たまに隠れてルミエールへ戻っていた。」「… つまりあなたも、私の居場所を知ってて放っておいたんだ。」「きみを連れて行くことはできなかったんだ。だが気を配ろうとはした。きみがルミエールを出たときには、そばにいた。本当に危険なネヴロンは通り道からすべて排除したし、浜辺ではきみを連れ出して…」「… でも、ルノワールが他の隊員を殺すのを止めなかったよね。みんなを助けなかった。」「救うには人数が多すぎたんだ。」「… 聞きたいことがあるの…」「なんだ?」「ウソはつかないで。いい?」「きみに嘘をついてももう意味が無い。」「崖で… ギュスターヴを… …」「どうした?」「ホントはギュスターヴを助けられたのに、ルノワールを止めなかったの?」長い沈黙と深い呼吸の後「そうだ。(真実)」「…」「すまない。」「なんで?」「俺は恐れたんだ。キャンバスの真相を知ったとき、彼が一緒にいたら… きみは母さんを家へ帰す手伝いをしてくれないだろうと。」「だからギュズターヴを死なせたんだ。」「そうだ。」「…」「もっと早く、きみにすべてを伝えるべきだった。だが… 俺にはリスクを冒せなかった。」「…」「ありがと。ホントのこと言ってくれて。」深く呼吸をするヴェルソ「…」「…」「うん、数字がないと味気ないよね。」「きみはペイントレスだ。何でも描ける。」「“父さん、家に帰れ” (Papa, Va T'en) はどう?」「グッとくるな。」「よし、描きに行こう!」マエルとヴェルソの絆は今や確固たるものだ。真実で築かれた絆だ。親密度アップ. 二人はモノリスへ向かい、マエルはモノリスに手を加える。父親へのメッセージだ。この冒険のおかげで、マエルは自身の画家としての一面をより理解できるようになった。二人はキャンプにいる仲間のところへ戻る。
マエル「ここのところ詩を聞かないけど?」ヴェルソ「最近はあまり思いつかなくてね。」マエル「ワインが役に立つかも。エスキエがもっと持ってないか見に行こ。」
7.
ルミエール
7.1.
不完全な遠征隊の帰還
パーティは、集めたクロマで復活させた過去の遠征隊員たちと共にルミエールへ突入する。古くて純粋ではないクロマのために完全な復活ではないが、ルノワールの作り出したネヴロンの一部を押さえ込んでマエルたちが先に進む助けになっている。
突入の途中、一行はピアノの前に座って演奏に没頭している「顔のない少年」を見かける。特に話しかけるイベントもないため一瞥して終わる。これはエンディングのあるシーンの予告であるが、この時点ではまだプレーヤーが気付くことはない。そのオペラハウスの前の海に第 60 遠征隊のジャーナルが浮かんでいるのが見つかる。彼らはモノリスの内部まで到達して真実を知り、引き返そうとしたがルミエールに帰還する直前で全滅した。
7.2.
父との対峙
このゲームはエンディングルートが 2 つあり、両方のエンディングを見るにはもう一周する必要がある。この世界の構造をすべて知った後にもう一度それぞれのシーンの真の意味を見てみるのも興味深いが、そこまでしたくないプレーヤーは、ルノワール戦の直線にある「ねじれ塔の通路」セーブポイントで別のセーブデータで保存して再開可能にしておこう。
ねじれ塔の通路でルノワールと対峙する。ルノワールはかつて画布に没頭して死にかけ、そのときアリーヌに救われたという過去を明かす。彼が画布を消去しようとする動機は、冷酷な合理主義ではなく、画布の魅力を経験者として知っている者の切実な予防策だった。脇から差し挟まれるシエルとルネの言葉「悲しみは不可逆の選択を導くこと、自分の声は親の声であってはならないこと」が、本作の倫理の中軸を父娘の対話の枠内で言語化する。
マエルが反論で漏らす「火事の後、ヴェルソの死が自分のせいで、現実世界では喜びを見つけられなかった」という告白が、彼女が画布に逃避した真の動機として露呈する。ルノワールはキュレーターの姿に変身して戦闘に突入する。
前半戦の終盤、ルノワールがアクソンを呼び出して回復し続ける窮地で、母アリーンが画布へ戻ってくる。彼女はモノリスの巨人となりシレーヌを撃破してルノワールの回復経路を断つ。アリーヌは自分の体が衰弱して命を落としかねないリスクを引き受けてまでして画布に戻り、娘の選択の自由を守るために夫と戦う。彼女は画布の維持そのものを主張しているのではなく、娘が画布の運命を娘自身で決める権利を主張している。ルノワールの「死ぬ気か」という叫びも、敵への罵倒ではなく夫として妻の命を案じる悲鳴である。マエルの両親は依然として対立しているが、その対立は娘の自立を巡る成熟した夫婦の意見の相違である。
戦闘が終わると、ルノワールは現実世界のアトリエで嘆くアリーヌの姿を見せる。目の周りに画家の青ペイントがあり、魂は画布の中にいる。彼は娘を画布から取り戻したいのではなく、娘が妻と同じ「生きる屍」になることに耐えられないのだと述べる。ルノワールが画布を消去する動機は、家族を喪失から守れなかった夫としての自己嫌悪だった。同時に、この映像はマエルを画布の世界に留まらせることで起きる現実世界でのアリシアの悲劇をヴェルソに突きつけている。
ルノワールは、マエルなりの倫理よりも、マエルの存在そのものに対する救済を考えていたが、マエルが「父さんも失いたくない、置き去りにしない、もう少しだけ」と最終的に帰る意思があることを告げると、娘を信じる選択を取った。「明かりを付けておこう」「互いに手を離すな」という言葉を残して、ルノワールは画布の世界から去った。
書き起こし
父ルノワールに近寄るマエル。マエル「お父さん。」ルノワール「アリシア。」マエル「お願い。ただ分かってほしいの。このキャンバスがわたしにとってどんな意味を持つか…」ルノワール「分かっている。分かっているとも。このキャンバスがどれほど強力で魅力的か。自らの心や魂を注いだ世界に、どれほど深い愛着を持ち得るか。私は夢中になったあまり、死ぬところだった。」マエル「だからって、ヴェルソのキャンバスを消さなくてもいいでしょ!」ルノワール「娘よ (child)、私が望んでいると思うのか?あれほどの悲しみに耐えてきて、あの子の魂の最後の欠片を壊したがっていると本当に思うのか?」マエル「ならやめて。やめてよ。」ルノワール「人生は残酷な選択を強い続ける。私たちは、やるべきことをやる。」シエル「悲しみって、よく目をくらませるよね。それで二度と取り消せない選択肢をさせる。」シエルに向きなおすルノワール「お前は二人のために胸を痛めている。」シエル「あたしは大勢のために胸を痛めてんの。」ルネ「両親の選択は、子どもに消せない痕を残す。だけど結局のところ、頭の中の声は自分の声でなくてはいけない。子どものために、子どもの人生に境界を作ることはできない。」マエル「火事の後… 父さんはわたしに人生の新しい喜びを見つけて欲しがった。だから頑張った。けどダメだった。ムリだったの。ヴェルソはわたしのせいで死んだ。なのに喜びなんて見つけられない。」ルノワール「娘よ、状況は良くなる。本当だ。だが、このままではムリだ。お前の友だちたちは真実を言っている。そしてそれでは何も変わらない。私を憎んでいい。だが、私は成すべき選択をする。父として、お前の面倒を見なければならない。お前が自分の面倒を見られないのなら、なおさら。」マエル「いつまでも赤ちゃん扱い。」ルノワール「違う。我らの人生で最悪の日の影が、お前を窒息させ、お前をも奪おうとしている。そういう扱いだ。」声を荒げるルノアール。ルノアール「もういい。もういいと言ったのだ。」静かに剣を出すマエル。戦う意思を固めるパーティ。ルノアールが杖を突くと、クロマの舞う場所に転送され、ルノワールはキュレーターの姿になって剣を振り出す。
第一戦が終了間際になると、ルノワールは空にアクソンを描き始める。ルノワール「我々は状況をあるがままに受け入れなければならない。自らが望むようにではなく。」遠景にシレーヌとヴィサージュが現われ、シレーヌによってルノワールの体力が全回復する。ルノワール「この愚行をやめろ。家へ帰る時だ。」モノコ「試練は大好きだが、イライラしてきたぞ。」ルネ「クソッタレ。再生し続けてるわ。」シエル「まずはアクソンを集中的に狙う?」マエル [息を飲む]
パーティの背後に大きな入口が現われる。ヴェルソ「まさか!彼女には…」入口から衝撃と共に一人の女性が降り立つ。マエル「母さん…」ルノワール「アリーン、死ぬ気か!キャンバスに戻ってくるには早すぎるぞ!」アリーンは一瞬で消えると、モノリスの巨人となって遠景に立ちシレーヌを撃破する。
ルノワールとの第二戦が始まる。デサンドルのキャンバスを召喚するルノワール。ルノワール「どうしてそうも利己的になれる?アリーン!」ルノワールはキャンバスの中に入ると、キャンバスにはデサンドル一家の絵が浮かび上がる。光をまとって再びキャンバスから出てくるルノワール。
第二戦が終了間際になるとルノワールが力を解きはなつ。ルノワール「キャンバスを捨てろ。お前たちのどちらも死んでしまう。」しかしマエル「また今度! (Not this time!)」ルノワールを一閃に地面に突き刺しとどめを刺す。一瞬でクロマが霧散するルノワール・デサンドルの姿に戻る。
咳き込みながらよろよろと立ち上がるルノワール。ルノワール「皮肉な話だ。昔キャンバスで正気を失った私を救ったのは、お前の母親だった。彼女が… 私に教えた。」遠景にいるアリーンに向かうルノワール「この才能の安全な使い方を、太陽に近付きすぎることなく飛ぶ方法を。」ルノワールとアリーンは互いに手を伸ばす。ルノワール「私たちは… キャンバスに多くの世界を描いた。想像の限界を押し広げながら。そして彼女は、ここで過ごす日々には代償が伴うことを、決して忘れさせなかった。」役目を終えたアリーンが消える。ルノワール「だが… [咳] 今はこの有様だ。」マエル「なら母さんを信じて。母さんが今こうしているなら…」ルノワール「わたしは彼女が教えてくれたことを信じている。これは遊びではない!お前は自分が何を賭けているか分かっているつもりだが、分かっていない!」マエル「ちゃんと分かってるって!父さんは管理したいんでしょ。自分が何かしている気になりたいんでしょ。ヴェルソを助けられなかったから、私たちを助けたがってる。ムリだけどね。キャンバスを壊したところで私たちは前に進めない。感覚を取り戻させてくれる場所をわたしたちから奪うだけ。」ルノワール「67年だ。私はモノリスの中に67年囚われていた。だが残った。残ったのだ。なぜだから分かるか?なぜ私が彼女やお前を置いていけなかったか、分かるか?」
ルノワールが杖を突き立てると、入口が現われアリーンが屋敷のアトリエで嘆き悲しんでいる様子が映し出される。目の周りが青くペイントされているので、精神は画布の中に入っている。ルノワール「これが私が毎日見ているものだよ。」ヴェルソはそのアリーンに見入り、入口に近付こうとする。シエルがそれを心配そうに止める。ルノワール「生ける屍たちとこれ以上生活することはできない。火事の日から、私たち家族は崩壊した。キャンバスの中にいるアリーン。独りで戦うクレア。生ける幽霊のお前。」ルノワールと向かうマエルの後ろでゆっくりアリーンの入口に近づくヴェルソ。止めようとするシエル。ルノワール「ヴェルソの死で私たちは壊れた。私はそれを正したいのだ。正さなければならないのだ!私は… [咳] お前まで失うわけにはいかない。」マエル「分からないの?わたしにとってのみんなも同じなんだよ!どっちも失えない。わたしは失いすぎたの。父さん、ねえ。もうたくさん失ったんだよ。」ルノワール「私たちはどちらも多くを失った。」マエル「父さん。父さんも失いたくない。父さんをずっと置き去りにはしないよ。もう少しだけ。」ルノワール「お前を信じたい。だが…」マエル「信じて。」そのやりとりを背後から見つめるヴェルソ。うなずいてマエルを抱きしめるルノワール「お前のために明かりを付けておこう。お前に安らぎが見つかることを祈る。互いを手放すな (Hold on to each other)」。霧散して消えるルノワール。
7.3.
ヴェルソの決断
このシーン全体を通じて、画布のヴェルソはルノワールが見せたアリーヌの嘆きを静かに見入っている。画布のヴェルソにとって現実世界で嘆くこの女性は、自分を生み出した母 (死んだヴェルソ・デサンドルとは違う意味での) であり、自分は彼女の喪失処理の道具としてのみ存在している。一方で、この姿はマエルが画布の世界に残ったときの現実のアリシアの姿でもある。ヴェルソの様子がおかしいことに気付いたシエルは引き留めようとする。
ルノアールが去った瞬間、ヴェルソは「すまない」と告げて入口に飛び込む。自分自身の存在の根拠、そしてこの世界の存在の根拠と決着を付けるために、彼はこの画布世界を終わらせる覚悟を決める。結末を決めるのは、もはや父でも母でもなく、画布の中で生きてきた息子と娘の二人である。
7.4.
ヴェルソの欠片
ヴェルソが抜けた先には、日食の太陽が昇る荒涼とした空間が広がる。ここは画布世界の根幹、真のヴェルソ・デサンドルの魂の最後の欠片「顔のない少年」が何十年も絵を描き続けてきたメタ画布。エピソードでクレアが告げていた「画布はヴェルソの魂の欠片が書き続けることで維持されている」という言葉がここで姿を現す。ヴェルソは少年に近づき、もう絵を描くのをやめるように伝える。体が霧散し始めるヴェルソの後ろにマエルが現われる。
ヴェルソは、マエルが父との和解の場で嘘をついたことを突きつける。「もう少しだけ」と父に告げて画布の滞在を約束したとき、彼女の本心はもう画布を手放すつもりがなかった。父もそれを察しながら信じることを選んだ。あの譲歩は、娘の誠実さへの応答ではなく、娘の不誠実を承知の上での父としての祈りだった。
ルノワールの「互いを手放すな (Hold on to each other)」という言葉は、極限状態での家族の絆を保つことの重要性を示している。ここで彼は「兄ヴェルソ喪失の中での家族の絆」を意図しているが、マエルにとっての絆は画布の世界にもあることに、ルノワール自身は気付いていない。彼の物語での言動が何度も示唆したように、彼は画布の世界での出来事を潜在的に軽視している。そして、緑のオルフランでの会話の様子から、家族の中で自身の立ち位置に居心地の悪さを感じていたマエルにとって、この言葉は「画布の住人を一人も手放すな」と聞こえている。
少年が顔を上げてヴェルソの差し出した手を取ろうとしたまさにその時、マエルの剣が二人の間を断つ。自分が居続けるために画布の世界を残したいマエルと、自分を消すために画布の世界を抹消したいヴェルソ、二つの選択肢がプレーヤーに迫られる。
- ⇨ マエルとして戦う。
- ⇨ ヴェルソとして戦う。
書き起こし
アリーンの嘆く姿が映し出されている入口に近付くヴェルソ。ルネ「ヴェルソ…」ヴェルソ「すまない。」入口に飛び込むヴェルソ。
中は日食の太陽が昇る荒涼とした世界。中では今までの旅で見かけた顔のない少年が絵を描き続けている。ヴェルソ「やあ。」ゆっくり顔を上げる少年。ヴェルソ「絵を描くのは疲れただろう。」軽くうなずく少年。ヴェルソ「俺も疲れたよ…」体からクロマが霧散し始めるヴェルソ。背後にマエルが現われる。マエル「あれは… あっ。あなたはここにいられないはず。」ヴェルソ「母さんの贈り物だよ。」マエル「なんで入ったの?ここはあなたには危険だよ。」ヴェルソ「“状況をあるがままに見よ。自らが望むようにではなく”。」マエル「え?」ヴェルソ「君は嘘をついた。父親に。」うろたえるマエル「ちが、わたしは…」ヴェルソ「彼も分かっていた。だが信じることを望んだ。きみはここで死ぬだろう。出たらどうだ?いつでも戻ってこられる。」マエル「出た瞬間に、父さんがこのキャンバスを消しちゃうよ。」ヴェルソ「ここにきみの人生に見合うだけの価値はない。」マエル「どの人生?殻に閉じこもった、孤独な人生のこと?声も未来もない人生のこと?」ヴェルソ「きみはマエルだ。どこにいようとも。このキャンバスは必要ない。」マエル「だけど、わたしが望むものは全部ここにある。生きられるチャンスがあるんだよ、ヴェルソ。生きられるの。外では、わたしは存在するだけ。」ヴェルソ「“人生は残酷な選択を強い続ける”。」マエル「父さんの言葉を繰り返すのはやめて!」強い怒りを込めて言葉を止めるマエル。少年に近付くヴェルソ「絵を描くのをやめるときだ。」少年に手を差し伸べるヴェルソ。少年もその手を取ろうとする。その時、マエルの剣の一閃がその手を止めさせる。マエル「ヴェルソ… 父さんは “互いを手放すな” とも言っていた。」うなずき、マエルに向かうヴェルソ「残念だ。」剣を出すヴェルソ。向かい合うマエルとヴェルソ。キャンバスの運命を決めるときが来た。
8.
マエルとして戦う
8.1.
ヴェルソとの決闘
二人の決闘が始まる。マエルは画布の抹消はみんなのためにならないと訴え、ヴェルソもまた人は誰でも偽善者だと剣を振るう。
戦いが終わると、ヴェルソは膝を突き、体からクロマが霧散し始める。彼は顔のない少年を見ながらマエルに「彼にもう絵を描かせるな」と告げる。さらに地に伏した彼は、自分を消してくれるよう繰り返し嘆願する。「俺を消してくれ」「こんな人生は嫌だ」「助けてくれ」。マエルは「一緒に生きたかった、わたしたちから奪われたこの人生を」とすがるが、ヴェルソは静かに消える。背後では顔のない少年が、何事もなかったかのように絵を描き続けている。
マエルは消えた場所を見つめながら、しばらく動かない。やがて、誰にともなく問うように呟く。
「あなたがもし… 年を取ることができたら… 見つかるかな?…笑う理由が。」
書き起こし
マエル「ヴェルソ、やめて!こんなの、みんなのためじゃない!」ヴェルソ「俺たちはみんな偽善者だ。やっていることは同じだ。」戦闘が終わる。ヴェルソ「アリシア、頼む、彼にもう絵を描かせるな。」崩れ落ちるヴェルソ。体が霧散し始めている。マエル「やだ、ねえ、そんなこと言わないでよ。」何かの衝撃で倒れるヴェルソ「なあ、頼む、聞いてくれ。きみにしかできないんだ。きみならできるんだ。俺を消してくれ (upaint me)。消してくれ!」マエル「ヴェルソ…」ヴェルソ「頼む。こんな人生は嫌だ (I don't want this life)。」マエル「そんなこと言わないで。」ヴェルソ「こんな人生は… こんな人生は嫌だ…」マエル「わたしはただ… 一緒に生きたかったの。わたしたちから奪われたこの人生を。お願いだよ、ヴェルソ… お願い。」ヴェルソ「こんな人生は嫌だ… 助けてくれ… 助けて…」静かに消えるヴェルソ。少年は絵を描き続けている。
マエル「あなたがもし… 年を取ることができたら… 見つかるかな?…笑う理由が。」
8.2.
エピローグ - 絵を描く人生
遠景からルミエールが映し出される。モノリスにはもはや何の数字も書かれておらず、67 年にわたって市民の年齢を刻み続けた死の掲示板は、その役目を終えて沈黙している。ゴマージュから甦った人々がオペラハウスに集っていく。ホールの入口にはエスキエとモノコが並んで立ち、押しかける観客を抑えている。
マエルがギュスターヴの弟子の一人の手を引いてホールへと現われる。客席ではルネがマエルの姿を見つけ、隣に座るシエルにそっと知らせる。シエルの傍らには夫ピエールが座っており、シエルの失われた未来が画家の手で取り戻されている。やがてギュスターヴとソフィーが手をつないで会場に現われ、シエルの隣に並んで腰を下ろす。
ホールの灯が落ち、ステージに照明が降りた瞬間、世界は色彩を失いモノクロームに転じる。その光の中にはピアノを前にしたヴェルソが立っている。観客から拍手が湧き上がる。少し老け、髭を蓄えた彼のたたずまいは、どことなく彼の父ルノワールの面影を帯びている。
何かを思い詰めた顔をしているヴェルソは演奏を始めようとしない。そこで一瞬、ピアノの不協和音が響く。画面には、目の周りをペイントで縁取ったマエルの顔が大写しになる。火傷は見られないが右目は欠損しているように見える。
そしてヴェルソは、意を決したように鍵盤に指を下ろし、演奏を始める。
8.3.
マエルエンドの考察
このエピローグでは、物語で失われた愛が画家によって修復され、客席にはマエルを取り囲む幸せな風景として描かれている。表層的には間違いなくハッピーエンドである。しかしこの幸せは、ヴェルソという一人の囚禁を対価とした幸福であり、マエルの欺瞞の上に建てられていることをプレーヤーは既に知っている。周囲の誰も、自分たちが何の代価で生かされているかを知らされていない。客席の全員がマエルとの共依存の共同体として配置されている。
このエピローグの多くのショットが微妙に斜めに傾いた構図 (ダッチアングル) で撮られ、途中でモノクローム 4:3 比に変わるのは、プレーヤーにこの虚構の構造を潜在的に感じ取らせるためである。物語の冒頭から本作が描いてきた構造は、ペイントレスの役割が母アリーヌから娘のマエルへ踏襲されただけで寸分も動いていない。
ステージのヴェルソが少し年を取って見えるのは、ヴェルソとの決闘直後にマエルがつぶやいた願望が、画家の手として文字通り実現された結果である。しかしヴェルソは全く笑っていない。彼女の願いの前半「年齢を重ねさせる」は叶い、後半「笑う理由を見つける」は叶っていない。
ピアノに向かう彼の表情には、真実そのものではなく、しかし真実の手前の違和感が宿っている。自分はなぜここに立っているのか、なぜこれほど演奏に疲れているのか、なぜ観客席の妹を見ると説明できない悲しみを感じるのか。マエルは画布の中に彼を書き直したが、彼の意識の底には塗り直しても消しきれない疑問の影が存在している。彼は答えを持たないまま、自分の存在について何か重大な問いが立っていることだけを感じ取り、しかしその正体には届かない宙づりの状態でピアノの前に立っている。
善悪がはっきり分けられているなら、プレーヤーは安心して悪を糾弾できる。しかし、復活した友人たちとオペラハウスでピアノの演奏会という「兄が笑う理由」を用意したマエルの行動は、間違いなく本人の善意による。これは、この長い物語を通じて、母から息子へ、夫から妻へ行われてきたデサンドル家の「家族間の善意の暴力」をマエルもまた踏襲していることを表している。そして、プレーヤー自身が「仲間の家族を復活させてあげたい」とマエルルートを選んだのであれば、プレーヤーもまた善意でこの悲劇に荷担しているという構図を完成させている。
一つの推測として、マエルは自分が間違っていることにおそらく気付いている。客席のマエルの目にはどこかに空虚さがあり、彼女はこのすべてが茶番だと完全に分かっている。だが彼女は気にしない。彼女には兄がいる。兄がいる限り、彼女は兄の死の罪悪感から解放される。これは無自覚な悪よりはるかに重い。しかしプレーヤーは明にマエルを糾弾できない。この周到な設計がこのエピローグの真の恐ろしさである。
演奏を始めないヴェルソを映しながらマエルの目の周りに青ペイントが現われる描写は、この画布の世界の支配者がマエルであるということを、あらためてプレーヤーに示している。マエルは現実世界のアトリエで青ペイントをして画布を前に座っている。その現実のマエル像を、客席にいる彼女に重ねている。その表情はまるで「さあ、弾きなさい」と語りかけているようにも見える。マエルが支配する画布の中で、ヴェルソはピアノを弾き続ける。

