解説: Expedition 33 - Act I. ギュスターヴ
プロローグでは、海上の孤島都市ルミエールを舞台に、毎年大陸のペイントレスがモノリスに描く数字に達した市民が花びらのように霧散するゴマージュの様子が語られた。発明家ギュスターヴは恋人ソフィーを今年のゴマージュで失い、その悲嘆を抱えたまま、養妹マエル、第 33 遠征隊員とともに大陸へと出航した。Act I は、その先で遠征隊を待つ大陸の現実から始まる。
Table of Contents
1.
春の牧草地
1.1.
大陸到着と壊滅
Expedition 33 は大陸の暗き海岸 (Dark Shores) に到着した直後、浜辺で「白髪の男」の襲撃を受け、メンバーの大半がその場で殺される。ギュスターヴは大陸の浜辺で意識を取り戻す。彼は単独で春の牧草地 (Spring Meadows) を進み、初の実戦チュートリアルでランセリエ (Lancelier) との戦闘を経験する。
1.2.
ルネとの再会
春の牧草地を進む中で、全滅した Expedition 33 の現場に遭遇する。胸を貫かれたカトリーヌを目にしたギュスターヴは、隊の壊滅とマエルの行方不明に絶望し、その場で自殺しようとする。しかし、そこにルネが現われて思いとどまる。現われたポルティエ (Portier) と初のコンビ戦闘のあと、生き残った仲間がいる希望を持って、集合場所のインディゴの木に向かう。
ルネは著名な研究者の両親を持ち、ペイントレスの謎を解明することに人生を捧げてきた知性派。遠征のルート策定を担当しており、合理的・任務重視の姿勢を持つ。両親も過去の遠征に参加して消息を絶っており、その行方を知りたいという個人的動機も抱えている。
ルネが加入することで 2 人パーティとなり、戦闘の幅が広がる。ルネは属性魔法系のアタッカーで、蘇生や回復も行うパーティの主力。
1.3.
白いネヴロン: ジャール
トンネルを抜けると、白い非敵対的なネヴロンのジャール (Jar) と、第 81 遠征隊のジャーナルを発見する。遠征隊のジャーナルには「この白いネヴロンとコミュニケーションが取れていたが突然死んだ」という記録がある。
ジャールは光を求めるネヴロンで、「彼女」に光をもたらすために描かれた存在だと自らを語る。サイドクエストとして樹脂を持ってきて灯りを点けてやることができるが、渡すだけでは一時的にしか光らず完全な解決にはならないので、ジャールの持っている武器にフリーエイム (L2 で照準を定め R2 で発射) を当てて火を入れる必要がある。報酬として「ヒールティントの破片」を入手でき、後に回復アイテムの個数を増加できる。
ジャールの存在は、ペイントレスが単純な「悪」ではなく、何かを創造する意志を持つ存在であることを早い段階で示唆する重要な伏線。またこのような白い非敵対的ネヴロンはこの後も何度か現われ、物語のなかでのペイントレスが抹消だけではないを示唆してゆく。
ここで第 81 遠征隊の亡骸を見ながらギュスターヴは浜辺の襲撃を思い出す。ネヴロンに殺されるとクロマは亡骸に残り消えないが、浜辺では消えたものもいる。襲撃者の男はネヴロンではないとギュスターヴが気づく。これは重要な伏線。
1.4.
マエル捜索の手がかり
エリアボスのイヴェキ (Eveque) を倒し、インディゴの木にたどり着くと、遠征隊ではない何者かが残したメッセージを発見する。「マエルは奇妙なサンゴへ連れて行った、北へ向かい小屋の中の扉を探せ」という内容。ルネは罠を警戒し、プロトコル通り集合地点で 3 日間待つべきだと主張する。しかしギュスターヴはマエル救出を優先してすぐに向かうことを選ぶ。ルネも渋々同行する。
この場面がギュスターヴとルネの行動原理の違いを鮮明にしている。ギュスターヴは家族の感情と信念で動く行動は、ルネは論理と任務遂行を重視する合理主義者。どちらが正しいかは単純には決められないが、この判断がなければマエルは見つからなかった。
インディゴの木を進むと大陸のワールドマップに出る。
2.
浮遊する水
春の牧草地を抜けると大陸のワールドマップに出る。ここからは各エリアをつなぐフィールドを歩き回れるようになり、寄り道やサイドコンテンツも出現し始める。マップをまっすぐ進むと浮遊する水 (Flying Waters) エリアがある。海底を歩く幻想的なエリア。色鮮やかなサンゴや海洋生物の残骸の中を進む。
進入直後、ギュスターヴとルネは第 68 遠征隊のメンバーの遺体を発見する。沈んだ船と共に、過去の遠征隊がここまで到達していたことが分かる。ジャーナルも回収でき、過去の遠征の断片的な記録が蓄積されていく。
2.1.
ノコの小屋
浮遊する水の奥でノコ (Noco) の小屋を発見。小屋のドアを通ると屋敷 (The Manor) に転送される。
屋敷は広大で、大半のドアは施錠されている。開いている部屋の一つでマエルと再会。マエルが加入し 3 人パーティになる。
2.2.
キュレーター
マエル合流後、屋敷の出口を塞ぐ形でキュレーター (The Curator) が出現する。不気味な外見の存在で、この戦闘はジャンプ回避のチュートリアルを兼ねている — ドッジもパリィもできない「ジャンプフレア」攻撃が導入される。同時にマエルのスタンスシステム (Defensive / Offensive / Virtuose) のチュートリアルでもある。
戦闘後、キュレーターはマエルの誘いでキャンプに合流する。以降、キュレーターはキャンプにいる NPC として、武器強化・ピクトスのレベル上げ・ルミナカラーの使用といった育成機能を提供する。キュレーターの正体はこの時点では不明だが、ただの脇役ではないことは明らか。
2.3.
ノコとジェストラルの紹介
屋敷から浮遊する水に戻ると、ジェストラルのノコと会話イベントが発生する。ノコはルネが初めて出会う本物のジェストラルで、ルネは目を輝かせて興奮する。ルネの両親は研究者で、文献上の知識としてジェストラルを知ってはいたが、実物を見るのは初めて。普段は冷静で任務重視のルネが、学者としての純粋な好奇心を剥き出しにした瞬間であり、彼女の行動原理が「使命感」だけでなく「知への渇望」にも深く根ざしていることが伝わる場面。ノコはペイントレスのもとへ行くには更にもう一つ海を渡る必要があり、そのためには自分の村の族長ゴルグラ (Golgra) の助けが要ると教えてくれる。
ノコは最初に出会うジェストラル商人でもある。クロマと引き換えに商品を売り、さらに 1 対 1 の決闘に勝つと隠し商品がアンロックされる仕組みが導入される。
ジェストラル (Gestral) は大陸に棲む非人間の種族。ペイントレスの抹消の影響を受けない。独自の言語と文化を持ち、村を外部から隠すために迷路状の聖域を築くほどの知性と文明がある。大半は人間の言葉を話さないが、ノコやモノコのように話せる個体もいる。ルミエールの人間にとっては伝説的な存在だったが、大陸に渡った遠征隊にとっては商人として物資を提供してくれたり、旅の協力者になったりする実在の種族として関わることになる。
2.4.
白いネヴロン: ディミナー
浮遊する水を進んだところでディミナー (Demineur) という潜水ヘルメットを被った白いネヴロンに出会う。近くのダッシュ + ジャンプで到達可能な場所で「無傷の機雷」が入手でき、それを渡すと報酬としてルネの武器が手に入る。ジャールと同様に、すべてのネヴロンが敵ではないことが繰り返し示される。
2.5.
ルミエランの街並み
第 68 遠征隊の沈んだ船を過ぎ、サンゴの洞窟を抜けるとルミエランの街並み (Lumièran Streets) に出る。海底に沈んだルミエール風の街区で、かつてルミエールの人々がここまで来ていたことを暗示する不思議な場所。
ここでクロマティック・トルバドゥール (Chromatic Troubadour) を倒し、さらに奥の花畑でゴブル (Goblu) を撃破。ゴブル撃破後、マエルの悪夢のカットシーンが入る。マエルが何を見ているのかはこの時点では曖昧だが、彼女の内面に何か重大なものが潜んでいることが示唆される。この悪夢は後のストーリーで大きな意味を持つ伏線。悪夢の後、キャンプに自動転送される。先ほど屋敷を去ったキュレーターが約束通りキャンプに来ており、ここで武器、ルミナ、ティントのアップグレード機能が正式にアンロックされる。
3.
いにしえの聖域
いにしえの聖域 (Ancient Sanctuary) はジェストラルたちが自分たちの村を外部から隠すために作った迷路のような場所。分岐する道や仕掛けがあり、ジェストラルという種族が知性的で組織化された文明を持つ存在であることが実感として伝わってくるエリア。
3.1.
ジェストラルの村
いにしえの聖域を抜けてジェストラルの村 (Gestral Village) に到着。ジェストラル (Gestral) はペイントレスの抹消の影響を受けない非人間種族。独自の言語と文化を持ち、一部のジェストラルは人間の言葉も話せる。
村の中央にある族長の家に入ると村長のゴルグラ (Golgra) と面会できる。ゴルグラは 2 つの重要な情報を話す。
Expedition 33 の船を破壊した「白髪の男」が、過去にこのジェストラルの村も襲撃したことがある。つまり春の牧草地で遠征隊を壊滅させた謎の存在は、ジェストラルにとっても敵であり、大陸を横断的に活動している。
海を渡るにはエスキエ (Esquie) の助けが必要。エスキエは伝説的な存在で、会うには「偉大なる戦士」として認められなければならない。そのためにはジェストラルの「レジェンダリー・トーナメント」に勝利し合い言葉を得る必要がある。
レジェンダリートーナメントはパーティから一人を選択して挑むが、マエルで勝利するとマエルの武器「メダルウム」が入手できる。これはマエルの最強武器候補で、育成して末永く使える。トーナメント後でもゴルグラに挑戦して勝利することで入手できるが、ストーリー終盤クラスの強さなので、できればこの時点で勝利して入手しておきたい。なお、負けた場合には別の武器「ヘヴァソン」が手に入る。
3.2.
シエルの合流
トーナメントの最終戦の相手に第 33 遠征隊の生き残りのシエル (Sciel) が登場する。彼女はジェストラルの村にいた「よそ者 (Stranger)」で、トーナメントの対戦相手として戦った後、パーティーに加入する。これで 4 人目のメンバー。
シエルは第 33 遠征隊のメンバーで、浜辺の襲撃を生き延びてここまでたどり着いた。温かく包容力のある性格で、チームの精神的支柱となって行く人物。夫と子供を失った過去を抱えており、それが自分の体を犠牲にしてでも他者を支えようとする行動原理につながっている。
彼女は戦闘面で Sun/Moon のカードシステムを持つ。スキル使用時に Sun または Moon のカードが付与され、カードの組み合わせによって次のスキルの効果が変化する。バッファー兼ヒーラーの役割を担いやすいが、攻撃もこなせる柔軟なキャラ。
3.3.
合い言葉の取得
トーナメントに勝利してゴルグラに報告すると、エスキエの隠れ家に入るための合い言葉 "Get outta my way!" (道を空けろ!) を教えてもらえる。この合い言葉の脱力感はエスキエのキャラクターを予言している。
3.4.
屋敷との接続
村の中に "Turn Back" (引き返せ) と書かれた看板のある道があり、その先にジェストラルの作業員が立っている扉がある。この扉を通ると屋敷のキッチンに転送される。
キッチンの正面の扉は施錠されているが、部屋の中にある 3 つのオブジェクト —— 窓際のテーブルの小さな燭台、壁に掛かったフライパン (中央のもの)、隅の高い台の上の胸像 —— をそれぞれ操作すると、樽の横のトラップドアが開く。地下に降りると Shape of Energy と、壁の箱を壊して這って入った先にマエルの Rebellious Haircut がある。さらに階段を上るとキッチンの施錠されていたドアを内側から開けられ、ショートカットが繋がる。
この構造は屋敷というものの本質を物語っている。屋敷は大陸の各所にドアが点在しており、一つの巨大な屋敷の異なる部屋にそれぞれ繋がっている。浮遊する水のノコの小屋から入った時はエントリーホールとダイニングだったが、ジェストラルの村からはキッチンに出る。今後も大陸の各所から新しいドアが見つかるたびに屋敷の未踏の部屋が解放されていき、一つの屋敷の全容が徐々に明らかになる。屋敷が誰の家なのか、なぜ大陸中に繋がっているのかは、ストーリー後半で明かされる重大な謎の一つ。
3.5.
マエルの悪夢 (再び)
ジェストラルの村を出てキャンプで一泊すると、夜にマエルが再び悪夢を見る。浜辺で遠征隊を壊滅させた「白髪の男」と、アリシアと呼ばれる「仮面を着けた女」が登場する。浮遊する水の後にも悪夢のカットシーンがあったが、ここでさらに情報が追加される。この白髪の男と娘が何者なのかはまだ明かされないが、マエルの出自にかかわる重大な伏線として蓄積されてゆく。
4.
エスキエの隠れ家
エスキエの隠れ家 (Esquie's Nest) の入口にいるジェストラルの門番サンニーソ (Sunniso) に合い言葉「道を空けろ!」と叫ぶとサンニーソが動揺する。ゴルグラはサンニーソに合い言葉を教えていなかったらしい。コミカルなやり取りの後、通してもらえる。
洞窟を進むと広大な地底空間に出る。ランタンが灯る開けた場所の左側に飛び降りるとペタンク (Petank)、右側に飛び降りると物のまね師 (Mime) と青いキノコがある。青いキノコはジェストラルの村のカラトムに頼まれたクエストアイテムである。ストーリーが進行し Act II に入ると渡せなくなるので、洞窟を出たら村にも寄ろう。
4.1.
エスキエとの対面
洞窟の奥、階段状の広場を上った先でエスキエと初対面する。エスキエは、ルミエールの子供たちが寝物語で聞いて育った伝説上の存在。空を飛び、海を潜り、世界最強の力を持つとされるが、実際に会ったエスキエはその伝説とは著しくかけ離れている。陽気で怠惰で、岩に名前をつけてペットと呼び、宿敵と称するフランソワ (François) との確執も岩の取り合い。パーティの面々が期待していた「偉大な救世主」とは程遠い。終盤では腹にワインを隠し持っているという設定もある。この世界では、物語や伝説が語るほど物事は単純ではなく、実態は常にもっと複雑で、もっと人間臭い (エスキエは人間ではないが)。
エスキエがパーティと初対面する場面で、シエルに向かって「また会ったね、カナヅチ (Couler comme une pierre / Sink Like a Stone) の友よ」と呼びかけ、シエルは困惑した顔をする。この一言には複数の情報が含まれている。第一に、シエルとエスキエは過去にどこかで出会ってることを示唆している。第二に、エスキエが隠れ家に引きこもっているように見えて実は大陸の状況をそれなりに把握している (少なくとも人間と接触する機会があった)。第三に、シエルが泳げないという個人的な弱点をエスキエが無邪気に暴露してしまう、エスキエの空気を読まない天然さを描いている。
シエルが困惑しているのは、自分がカナヅチであることをパーティの前でいきなりばらされたからだろう。自己犠牲的で他者を支える側に徹するシエルにとって、自分の弱さを晒されるのは居心地が悪い。この場面は軽いユーモアに見えるが、シエルの「弱さを見せまいとする」性格と、エスキエの「悪意なく全部言ってしまう」性格の対比が端的に表れている。
エスキエは、海を泳いで渡るには大切なペットのフローリー (Florrie) が必要だと伝え、そのフローリーは宿敵フランソワに盗まれていて取り返してほしいと頼む。
4.2.
フランソワ戦とフローリーの顛末
エスキエが取り返してほしいと訴えるペットとはフロリーと名付けた岩のこと。フランソワは亀の形をした岩で、5 枚のシールドを持ち、即死級の魔法攻撃を繰り出してくる。回避とパリィが必須な厳しい戦いを強いられる。
宿敵フランソワを倒して岩を持ち帰ると、エスキエはそれが本物のフローリーではないと言う。またここではエスキエから「親友ヴェルソといつも飛び回っていた」とヴェルソの名前が出る。これは後のストーリーへの伏線。この一連のやり取りは表面的にはコミカルだが、エスキエにとって岩が単なる無機物ではなく、かけがえのない存在であるという感覚は後に意味を持ってくる。エスキエが何者で、なぜ岩を友と呼ぶのかは後に明らかになる。
結局、フランソワからフローリーは岩波の崖 (Stone Wave Cliffs) にあると言われ、エスキエはパーティに同行することになる。彼が仲間になる理由は明確な契約や恩義ではなく、もっと曖昧で気まぐれな動機。それ自体がエスキエというキャラクターの本質を表している。エスキエは移動手段であると同時にキャラクターであり、パーティの感情的な力学にも影響を与えていく。
これ以降、大陸マップ上の岩場をエスキエに乗って突破できるようになり、それまで見えていたが行けなかったいくつかの場所への寄り道が可能になる。ストーリーの本筋は北の「岩波の崖」へ向かう。
4.3.
エスキエと合流
洞窟を出た後のキャンプでは、エスキエとの会話の端々から、エスキエがかつて人間の友人を持っていたことが示唆される。一方、マエルの前にはこの夜も白髪の男と娘の幻影が現れる。ルミエールに居場所を感じなかった理由、3 歳で孤児になった経緯、そしてこの白髪の男女 —— すべてが一つの答えに向かって収束しつつあるが、まだ核心には届かない。そしてルネは、何世紀もの記憶を持つ伝説の生物が目の前にいるのだから、研究者として黙っていられるはずがない。期待通りエスキエへの質問攻めを実行に移している。
このキャンプでは、エスキエの合流がもたらす希望、その裏にある喪失の歴史、マエルの悪夢が示すまだ見えない物語の核心、そしてルネの知的探究が、ペイントレスの謎の解明に向けて動き始めることを感じさせる。旅は前に進んでいるが、答えに近づくほど新たな問いが増えていく段階にある。
4.3.1.
白いネヴロン: 小さなブルジョン
小さなブルジョン (Small Bourgeon) は、大きなブルジョンの死骸の下に佇む白い小さなネヴロンが住む場所。この小さなブルジョンは「大きくなってご主人様 (Mistress=ペイントレス) に会いたい」と語り、そのために同族のブルジョンの皮を求める。皮を与えてエリアを出入りすると、小さかったブルジョンは巨大に成長し、お礼として「ルミナのカラー」を吐き出してくれる。ジャールが「光をもたらすため」に描かれ光を求めていたように、このブルジョンもペイントレスに描かれた存在として「女主人のもとへ行きたい」という一途な願いを持っている。敵として戦うブルジョンと同じ種でありながら、白い個体は敵意を持たず、ただペイントレスへの帰属意識だけで生きている。ペイントレスが単なる破壊者ではなく、自分を慕う被造物を持つ「創造者」としての側面を持つことが、ここでも繰り返し補強されている。
4.4.
岩波の崖
岩波の崖 (Stone Wave Cliffs) は海に面した断崖と潮の洞窟で構成されたエリアで、過去の遠征隊 (Expedition 78, 50, 56 など) のジャーナルや遺体が多数見つかる。ここまで辿り着いた遠征隊が過去に複数あったことが分かるが、いずれも帰還できなかった。ペイントレスの祠も存在し、大陸の住民 (あるいは過去の遠征者?) がペイントレスを崇拝していた形跡がある。
4.4.1.
廃墟の観覧車とエスキーの一撃
岩波の崖に入って最初に目に飛び込むのは、傾いた巨大な観覧車と、ベル・エポック風の瓦礫が浮遊する廃墟の光景。シエルはかつてのデートスポットだろうと軽口を叩くが、ギュスターヴはこれが第 50 遠征隊の遺構だろうと不自然な分析を口にする。ギュスターヴはソフィーを抹消で失ったばかりの男であり、恋愛的な文脈に踏み込む余裕がないのだろう。
そこにエスキエが飛来し、フローリーの気配を感じ取ったと告げる。飛べるなら自分で取りに来ればいいというマエルの至極もっともな指摘を「大変すぎる」と退けた直後、進路上の巨大ネヴロンを一撃で粉砕して飛び去ってしまう。パーティが呆然とする中でシエルが端的に「強いけど怠け者」と総括するこの場面は、圧倒的な力を持ちながら自分のためには使わず無意識に振るうというエスキエの本質を最も簡潔かつコメディに示した瞬間であり、同時に「伝説は実態と一致しないが、伝説以上の何かが別の形で存在している」というこの作品の反復的なテーマが、ここでもまた軽妙に奏でられている。
4.5.
謎の少年
岩波の崖で顔のない少年が姿を見せる。この幼い少年はこれまでのエリアにも散発的に現れており、話しかけると意味深だが断片的な言葉を残して沈黙する。正体はこの時点では不明だが、ストーリー後半で重要な意味を持つ存在。
4.5.1.
白いネヴロン: エクスギャ
白いネヴロンのエクスギャ (Hexga) が崖に埋まっており、近くの洞窟から岩の結晶を 3 つ集めて渡すサイドクエストがある。ジャール、ディミナー、小さなブルジョンに続く 4 体目の白いネヴロンで、いずれもペイントレスに描かれた存在が助けを求め、応えると報酬をくれるという同じ構造を繰り返している。
4.6.
白髪の男の襲撃とギュスターヴの死
岩波の崖の奥でエリアボス「ランプマスター (Lampmaster)」を倒してフローリー (エスキエのペットの大切な岩) を回収。これによりエスキエは海を泳いで渡る能力を獲得し、ワールドマップ上で水域を越えられるようになる。
エスキエと共に出発しようとした矢先、白髪の男が背後からギュスターヴを襲撃する。
白髪の男との戦闘が発生するが、ギュスターヴはダメージを耐えることができない。数回の攻撃のあと、義手の残存エネルギーすべて打ち込み、「後に続く者たちのため、そうだろ? (For those who come after… right?)」とマエルに最後の言葉を残して命を落とす。
4.7.
「よそ者」の介入
白髪の男はギュスターヴを倒した後、マエルも殺そうとするが、ここで「よそ者」が介入し、白髪の男を食い止める。彼は白髪の男と因縁のある古い知り合いのように会話するが、彼らの関係は続く Act II の冒頭で明かされる。いずれにせよ、残ったパーティはこのよそ者の助けで逃げ延びることができる。
4.8.
ギュスターヴの死が意味するもの
Expedition 33 の主人公がストーリー半ばで突然殺される展開は、しばしば FF7 のエアリスの喪失と比較される。
ルミナ・コンバーターの継承: ギュスターヴの義手、ジャーナル、そしてルミナ・コンバーターはヴェルソが回収し、キャンプに居た残りのメンバーに届けられた。ギュスターヴの発明が遠征の命脈であるという設定がここで効いてくる —— 彼自身は死んでも、彼の技術は遠征を可能にし続ける。「あとに続く者たちのために」という言葉は文字通り実現される。
マエルの変容: ギュスターヴはマエルにとって兄であり父親代わりだった。この喪失がマエルを「守られる少女」から「自分で戦う決意をした人間」へ変えていく起点となる。Act II 以降の彼女の行動原理は、ギュスターヴの死を無駄にしないという誓いによって駆動される。
ルノワールの異常性: 過去 32 回の遠征をすべて壊滅させてきたのがこの男一人だったという事実が、ここで明らかになる。不老不死であり、ペイントレスを守ることに全てを捧げている。なぜペイントレスを守るのかは、Act II でヴェルソの口から語られることになる。