解説: Expedition 33 - Act II. ヴェルソ
Act I は、上陸直後の浜辺で白髪の男の襲撃を受けて第 33 遠征隊が壊滅するところから始まった。生き残ったギュスターヴは、合流したルネ、屋敷で再会したマエル、ジェストラル村で加わったシエル、伝説の生物エスキエとともにパーティを再編成し、ペイントレス討伐を目指して大陸を進む。道中、敵対的でない白いネヴロン、不気味なキュレーター、大陸各地に繋がる謎の屋敷、マエルが繰り返し見る「白髪の男と仮面の少女」の悪夢といった、当初提示された物語の前提を揺るがす伏線が積み重なる。やがて再び現れた白髪の男にギュスターヴが殺害され、絶望に陥ったパーティを謎の男「よそ者」が救出したところで Act I は幕を下ろした。Act II は、その「よそ者」であるヴェルソがキャンプを訪れるところから始まる。
Table of Contents
- 1. キャンプ
- 2. 忘れ去られた戦場
- 2.1. 弔いの場所へ
- 2.2. 消えゆく女
- 2.3. 古い橋での衝突
- 2.4. 赤い葉の木の下で
- 2.5. 「忘れられた戦場」後のキャンプ
- 2.5.1. シエル: 親密度 1
- 2.5.2. ルネ: 親密度 1
- 2.5.3. マエル
- 2.5.4. エスキエ: 親密度 2
- 2.5.5. ルネとシエル
- 2.5.6. マエルとルネ
- 2.5.7. ヴェルソとマエル
- 3. モノコの駅
- 3.1. モノコとの再会
- 3.2. ノコとの再会
- 3.3. 「モノコの駅」後のキャンプ
- 3.3.1. ノコ
- 3.3.2. モノコ
- 3.3.3. マエル
- 3.3.4. ルネ
- 3.3.5. エスキエ
- 3.3.6. シエル
- 3.3.7. ヴェルソの魔法
- 3.3.8. 仲間の様子を確認する
- 4. 旧ルミエール
- 4.1. パーティの分断
- 4.2. ルノワールとの対峙
- 4.3. 「旧ルミエール」後のキャンプの会話
- 4.3.1. シエル
- 4.3.2. ルネ
- 4.3.3. マエル
- 4.3.4. モノコ
- 4.3.5. エスキエ
- 4.3.6. 仲間の様子を確認する
- 5. ヴィサージュ
- 5.1. ヴィサージュという場所
- 5.2. 「ヴィサージュ」後のキャンプ
- 5.2.1. シエル
- 5.2.2. ルネ
- 5.2.3. マエル
- 5.2.4. モノコ
- 5.2.5. エスキエ
- 5.2.6. 仲間の様子を確認する
- 6. シレーヌ
- 6.1. シレーヌという場所
- 6.2. 「シレーヌ」後のキャンプ
- 6.2.1. シエル
- 6.2.2. ルネ
- 6.2.3. マエル
- 6.2.4. モノコ
- 6.2.5. エスキエ
- 6.2.6. 眠る
- 6.2.7. ワールドマップに戻った後
- 7. モノリス
- 8. ルミエールへの凱旋
- 9. EPILOGUE. アリシア
- 10. ここまでの世界の真相
1.
キャンプ
キャンプで泣き崩れるマエル。ギュスターヴを失ったパーティは失意に打ちひしがれている。
1.1.
ヴェルソの合流
たき火で休んでいると、崖で現われた「よそ者」がキャンプを訪れ、ギュスターヴを救えなかったことを詫びる。彼はギュスターヴの義手を渡し、モノリスへ行くなら石切り場を抜けると良いと助言する。そしてストーリー上で重要ないくつかの情報を話し始める。
自分が 67 年前に出発した第 0 遠征隊 (Expedition Zero) の隊員であること。第 0 遠征隊の一部はなぜか歳を取らず抹消の影響も受けていないこと。崖に居た白髪の男もその一人で、名をルノワール (Renoir) と言うこと。ルノワールは第 0 遠征隊の司令官だったこと。彼は自分の不死をペイントレスによるものだと信じており、ペイントレスが死ぬと自分も死ぬと考えていることを明かす。
よそ者は自分の名前をヴェルソ (Verso) と名乗る。エスキエと最初に会ったときに「親友ヴェルソと空を飛び回っていた」と名前だけ出ていた人物がここで登場する。ヴェルソがなぜルノワールと戦えるのか、なぜ遠征隊を助けるのか —— この時点では謎だが、彼はパーティに参加することを申し出る。
1.2.
マエルの決意
この話を聞いていたマエルは「つまりルノワールを殺したいなら、先にペイントレスを殺さなくちゃいけない」とつぶやく。Act I までのマエルにとって、ペイントレス討伐は他人の大義であり、遠征への参加は居場所のないルミエールから出るための口実に過ぎなかった。だがギュスターヴの死により、マエルはペイントレス討伐を兄の仇を討つためと再定義した。遠征に最も動機の薄かったマエルが、最も私的で切実な理由によって遠征の目的を得た瞬間であり、また守られる立場から復讐の覚悟を決めた心理変化がここで起きている。
1.3.
理性への逃避
キャンプに戻ったルネは、黙り込んでいたのが一転して早口になる。ルミナ・コンバーターは失われた、だが次の遠征隊はもっと多くを持ってくるはずだ、だから北を目指してジャーナルを書き残さねば、…。理屈は通っているが、やっていることは「次の誰か」に話を移してギュスターヴの死から目をそらすことで、シエルに「ねえ、ちょっと」と止められる。同じ場面でシエルは、マエルには何も言わずにそばにいるだけだった。シエルは常に、相手によって止めるか、黙って寄り添うかを適切に使い分けている。
ところが、ヴェルソの話を聞いたルネは打って変わって 67 年分の未知を前に質問攻めにしようと待ち構える。悲嘆 → 理性への逃避 → 知的探究への転換という一連の動きがいかにも彼女らしく描かれている。理解することは、ルネにとって世界と関わる手立てであると同時に、感情を抑制する手立てでもあるのだろう。それは冷たさとは違う。シエルの前で見せた動揺こそが、普段の冷静さがルネの努力の産物であることをうかがわせる。
1.4.
親友の秘密
ヴェルソはエスキエと二人きりで会話する。67 年来の親友同士の再会は自然で温かいが、その中にエスキエの「ああ、内緒にしている!約束したからな」という一言が混じる。エスキエは秘密を守っているつもりだが、「秘密がある」こと自体を無邪気に口にしてしまうのがエスキエらしい。ヴェルソが遠征隊にまだ明かしていない情報が複数あることは既にプレイヤーに示唆されているが、エスキエもその一部を担っている共犯者であるという構図がここで浮かび上がる。エスキエがパーティに合流した気まぐれな動機も、実はヴェルソとの関係を前提に読み直す必要があるかもしれない。
この会話は Act II から導入される絆レベルシステムの最初の一歩でもある。ヴェルソがキャンプで仲間と時間を過ごすことで関係が深まり、会話イベントやグラディエント・スキルがアンロックされていく。これは単なるシステム上の機能のみならず、エスキエとの絆はヴェルソの過去と秘密に、ルネやシエルとの絆はそれぞれの喪失と信頼に、プレーヤーを Expedition 33 のストーリーに深く繋げてゆく。
1.5.
引き継がれる意志
翌朝、ヴェルソはマエルを励まそうと近付くが、ありきたりの言葉をかけることを見透かされて拒絶される。一人にしてくれという拒絶は、ヴェルソ個人への敵意というより、どこにも居場所がないと潜在的に感じている彼女が、ギュスターヴ以外の誰にもこの痛みを触らせたくないという防御反応のように見える。ヴェルソはギュスターヴのジャーナルを置いて静かに立ち去る。そしてこのジャーナルの受け渡しが、ゲームプレイ上の「マエルがジャーナルを引き継ぐ」に物語に繋げる。以降、この遠征の旅はマエルの言葉として綴られる。
2.
忘れ去られた戦場
ギュスターヴを失ったとはいえ、遠征隊の目的は変わらない。モノリスへ向かうパーティはヴェルソの助言で石切り場を抜ける経路を取るため忘れ去られた戦場 (Forgotten Battlefield) へと足を踏み入れる。ギュスターヴを失った直後の重い静けさと、得体の知れない新たな同行者への警戒を抱えたまま、過去の遠征隊が屍を残したであろうこの古戦場での旅路が始まる。
2.1.
弔いの場所へ
忘れ去られた戦場に足を踏み入れると、マエルがギュスターヴの義手を埋葬しようと口にする。ルネは先を急ぐべきだと渋るが、ヴェルソは石切り場を抜けた先に良い場所があると提案する。だが進もうとした矢先にシャリエ (Chalier) が襲いかかり戦闘となる。この戦闘はグラディエント・アタックという新しい攻撃のチュートリアルを兼ねていて、画面が暗転する特殊攻撃に対して R2 でグラディエント・カウンターを行うことができる。
このやりとりは、仲間の死を弔うことすらもこの世界では容易に叶えられないことを描いている。この場所は、過去の遠征隊が戦い、死に、そして忘れ去られた場所の一つであり、ギュスターヴもまたその連鎖の一人に過ぎないという残酷な事実が「忘れ去られた戦場」というエリア全体の荒涼とした景観に刻まれている。
2.2.
消えゆく女
このステージの途中に「消えゆく女」が立っている。マエル以外を操作キャラにしていると「立ち去りなさい」と相手にされないが、マエルで話しかけると、マエルの出自を知っているような非常に具体的な口ぶりで話し始める。これまで散発的に現われていた「消えゆく少年」の抽象的な言葉とは対照的。この女性が何者はこの Act II の後に明かされる。
消えゆく女の会話
消えゆく女「目覚めたの?へえ。驚き。じゅうぶんに回復してる?もしそうなら、手を貸して。やることがたくさんあるの。」マエル「あなたは誰?手伝うって何を?」「[ため息] ダメみたいね。残念。もっと重要なことのために戻ってきたかった。なのにわたしは… こんなことに時間をとられてる。」「重要なことって?」「復讐。私はこの争いを完全に解決する。今はこんなことをしている場合じゃない。あなたは関わらないのが一番かもね。以前起きたことを考えれば… お友達と遊んでなさい。わたしが対処する。」女性は黙り込んだ。
2.3.
古い橋での衝突
線上には見渡す限り亡骸が横たわっている。古い橋の上でヴェルソが声をかけたとき、マエルの感情が堰を切ったようにあふれ出す。ルミエールを出てからこのかた、マエルが目にしてきたのは仲間の死ばかり。挙げ句に養兄が自分を庇って死んだことは、志願の動機と覚悟が希薄な 16 歳の少女には重すぎた。やり場のない怒りは「ギュスターヴが死んだのに、よくなんでもない顔で進めるね!」とルネとシエルにも向かう。
二人が両親や夫の死を経験していることは、これまでのストーリーで何度か示唆している。だが、彼女たちが「なんでもない顔」の下で喪失をやり過ごしているのを、マエルは知らない。ヴェルソに至っては 67 年間、多くの遠征者たちが死んでいくのを見続けてきた。全員が喪失の経験者であり、マエルだけが初めて、16 歳で、しかも自分を庇った養兄の死という罪悪感を背負った状態で、悲しみ方そのもののやり場をまだ知らない。
かつて大きな喪失をくぐってきたシエルは、昔の自分を思い出すようにマエルの肩をやさしく取り「あたしたちは進み続けなくちゃいけない」と告げる。だがマエルの表情は納得していない。頭では分かっても感情が追いつかない。その不一致こそが 16 歳のリアリズムであり、この痛みの消化には言葉ではなく時間が必要だということを、シエル自身が一番よく知っている。
この直後、エリアボスのデュアリステ (Dualliste) の襲撃に会い、橋が崩壊してパーティは谷底へ落下する。谷底は地上よりひどい血の海と死骸の山。怪我を負ったマエルをルネが回復する。
デュアリステ撃破後、ルネは周囲を指しながら「これが私たちが戦っている理由よ」とマエルに話しかける。マエルの態度にわずかな変化が生じる。納得はしていないが、大陸はマエルに立ち止まる猶予を与えず、その容赦のなさが皮肉にもマエルに「進み続けなくちゃいけない」ことを体で理解させる。言葉では届かなかったものが、共に戦うという行為を通じて、まだ不完全ながらもマエルの身体に刻まれ始める。
2.4.
赤い葉の木の下で
エリアの最も奥、赤い葉の木が立つ場所でカットシーンが入り、マエルがギュスターヴの義手を置いて弔う。残されたのは義手だけ。一人一人が最後の別れの言葉を口にする。「また、来世で (See you, in the next life)」というマエルの言葉は、マエルとソフィーが港で最後に交わした言葉でもある。ヴェルソが提案した場所でギュスターヴを埋葬するという描写は、Act II での主人公の交代を象徴的に描いている。
なお、ここに立っている墓標に巻かれている腕章の番号には 0、65、57、46 が確認できる (特に 46 が多い)。フォトモードにして正面から寄ると確認しやすい。
2.5.
「忘れられた戦場」後のキャンプ
これまでモノリスを目指していた遠征隊に対し、ヴェルソは新たな経路を提案する。まずモノコの駅に寄って旧友を仲間に引き入れた上で、旧ルミエールに眠るペイントレスの心臓を破壊して結界を解除してモノリスに到達するという作戦である。第 58 遠征隊と共に旧ルミエールを発見したが、彼らはルノワールに殺されたという挿話で、マエルがその名前に反応してヴェルソへ視線を向ける。
マエルはルネに忘れられた戦場での振る舞いを遅れて謝罪し、ルネは痛みや恐怖や罪悪感を「使い」、燃やして前進の原動力に変換するという自分の流儀を語る。だが続けて彼女は「実は自分が何をしているか分かっていない」と漏らす。分析的な手続きで自我を保ってきた彼女自身も、その手続きが本当に機能しているかは知らないでいる。キャンプ終盤では、シエルとルネが過去の遠征隊の抹消後、互いに知らぬ者同士として「ねじれ塔」で出会い慰め合った夜を回想する。二人が第 33 遠征隊として公的に編成される以前から、それぞれの喪失を抱えて無言で寄り添う関係を築いていたことを明かしている。最後に、マエルがヴェルソに良い埋葬場所を教えてくれたことへのお礼を述べ、第 33 遠征隊の腕章を渡すことで形式的にも隊が再編成される。
総じてこのキャンプは、否が応でも人の死を踏み越えなければならない「忘れられた戦場」を抜けることで、ギュスターヴの死によってばらばらになりかけていた遠征隊がもう一度一つに結び直される様子が描かれている。この第 33 遠征隊が、単に任務を遂行する隊ではなく、互いの喪失を抱え合いながら進む集団であることがここで再定義される。
キャンプでの会話
ヴェルソ「…2時間ほどで大きな湖がある。そこは絶対に行くべきじゃない。そこはまるで… 右に曲がった後、数時間進んだら、止まって休息と食事を取り、そこから、北にあるモノコの駅へ向かおう。」ルネ「どうして?」ヴェルソ「旧友を仲間に入れるためだ。必要な戦力だよ。俺たちの次の目的は、ペイントレスの心臓を奪うことだからな。」シエル「彼女の心臓を?」ヴェルソ「ああ。ペイントレスのところまで歩くことはできない。そこのクロマは濃すぎて、近付く者をすべて消し去る。だが心臓を壊せば、結界は消えるだろう。」ルネ「分かったわ。それで、心臓はどこに?どんな見た目なの?」ヴェルソ「どんな見た目?それは知らない。だが、旧ルミエールの中心のどこかにある。」シエル「あんた、旧ルミエールを見つけたの?」ヴェルソ「ああ。」ルネ「なら真実だったのね。崩壊の前、ルミエールは大陸の巨大な都市の一部だったというのは。」ヴェルソ「俺は多くの遠征隊と旅をしてきた。旧ルミエールを見つけたのは、第58遠征隊との時だ。だが彼らはルノワールに殺され、それ以上先へ行けなかった。」ルノワールという言葉に反応してヴェルソを見るマエル。ヴェルソ「だから俺が知っているのはここまでだ。」ルネ「分かったわ。モノコの駅へ行きましょう。それから、ペイントレスの心臓を奪う。」
2.5.1. シエル: 親密度 1
「モノコの駅ってどんくらい山を登るの?行きって見れる?」「あまり高くはないが、たいていは雪が積もっている。」「へえ、いいね!」「ああ、そうか、ルミエールには雪が降らないんだったな。」「そ、本か絵の中だけ。ジェストラルくらい現実味がないよ!」「それに同じくらい楽しいぞ。同じくらい命取りになるときもあるが。」へえ、ホント?あたしの旦那は行きに夢中だった。早く見たいよ。」「すぐに見れるさ。」
ヴェルソは話ができそうなシエルに近付く。「きみは他の者よりストレスを感じていないようだ。」「それがあんたの結論?あたしたちをじっくり観察した上で?」「ああ。」「時間をもっと有効に使いなよ。他人のストレスレベルを分析するんじゃなくてさ。」「仲間を理解するのも大事だよ。」「自分のことをあんまり語らない謎のよそ者が言う?」「こうやって謎を減らそうとしているのだと思ってくれ。」「へえ、こうやってねえ?」「交換しよう。物語には物語を。至って公平だと思うが。」「そうだね。いろいろ聞かせてくれるなら語ってあげる。」「…」「お先にどうぞ。」「不思議な脅威や謎といった、変わったものはどうかな?」「個人的な話とはちょっと違う感じ?あんまりお互いをしれそうにないね。取引する価値があるとは思えない。ダメ、暗くて物悲しいのを聞かせて。それと個人的なヤツね。」「前置きなしに重い話題か?」「共有するって言うならね。」「物語には物語を返してくれるんだろうな?」「どうかな?」シエルも共有すべきかどうかについて、ヴェルソとシエルは数分議論した。シエルは曖昧な態度のヴェルソをからかい続ける。ヴェルソとシエルの関係は少しだけ深まる。親密度アップ. 二人は仲間のところへ戻る。
2.5.2. ルネ: 親密度 1
「貴方の一番旧知の友人はジェストラルなの?」「ああ。物心がついた頃からの友だ。」「ギュスターヴは喜んだでしょうね。」「なぜ?彼もジェストラルが好きだったのか?」「彼が好むのは “何十年も続けられる友情” の方ね。ルミエールでは、そんなに長く友人関係を楽しめないから。」
ルネはたき火のそばを通りかかったヴェルソを呼びとめる。「貴方はなぜ私たちに味方するの?」「選択肢があまりないからだ。きみも気付いているとは思うが。」「前回の遠征隊は?彼らにも手を貸したの?それでも彼らは失敗した?」「ひどい訊き方だ。きみはいつもこんな風に人を尋問するのか?」「現状を考えれば、私たちに社交辞令は必要ないと思うのだけれど。」「味方というのは常にギブ・アンド・テイクだ。会話もそうだろう。信頼は双方向だろう。違うか?」「分かった。誠意の証として、ルミナの使い方を貴方に教え…」「不要だ。もう分かった。」「飲み込みが早くない?」「だが、その姿勢には感謝する。ありがとう。」「ふん。信頼は双方好悪で働くものよ。」「分かった。誠意の証として… 質問に三つ答えよう。慎重に考えてくれ。」「三つだけ?」「誰かさんは少し欲張りだな。」「3つの質問に3つ細くで聞かせてちょうだい。」「きみは本当に押しが強い。」「妥当だと思う。」「分かった。それでいい。」「ふむ。」ルネはしばらくの間、ヴェルソを質問攻めにする。ヴェルソの態度ははっきりしない。それがルネを怒らせ、さらにはとどまるところを知らない好奇心をかきたてる。不本意ながらルネは興味をそそられ、ヴェルソも同様だった。親密度アップ. 尋問が終わると、二人は仲間のところへ戻る。
2.5.3. マエル
「なんでモノコは他のジェストラルと離れて暮らしているの?」「あいつは “探し屋” なんだ。崩壊後に行方不明になったジェストラルを捜して旅をしている。」「行方不明のジェストラル。」「ああ。それと、ゴルグラを怒らせたからだな。」
2.5.4. エスキエ: 親密度 2
「悲しかったな。」「ああ。」「お前は悲しんでいた。」「いや… ああ。」「ジュリーのことを考えていたのか?」「彼女のことだけではないが、そうだ。」「ハグしようか?」「うん。」
「彼女を見ていると、誰かを思い出す…」「誰だ?マエルか?」「うむうむ。彼女に前に会ったことがあるかな??」「お前はシエルも知っていると思っていたじゃないか。」「おや、だが知っているぞ!待てよ、知っているかな?」「お前に知らない奴はいないような気がすることがあるよ。」「お前たちはみーんないとこだからな!同じ同じ、だけど違う。」「そうだな。だからかもな。」「ふーむ。うん、そうだそうだ。ピカーン!ヴェルソがヴェルソのいとこであるように、マエルはマエルのいとこだ!おお~、そうだ!そうなんだ。お前はとってもすごく賢いな!」「ああ。賢人ヴェルソだ。」「おお、いい名だ。ほほほ、私は偉人エスキエかな?いやいや、待てよ、勇者エスキエはどうだ?うーん、違うな、やっぱり偉人エスキエの方がいい。」「お前の言うことは時々、意味が分からない。」「だから私たちは親友なんだろう。」エスキエとヴェルソはもう少し、お喋りを楽しむ。二人の絆はますます強まる。親密度アップ. 二人は仲間のところへ戻る前に、もう少しだけくだらない話をする。
2.5.5. ルネとシエル
シエル「何やってんの?」ルネ「緊急時対策よ。私たちが失敗したら、第32遠征隊には私たちの持つ情報すべてが必要になる。」「まあね。けどどうやって伝えんの?」「ジェストラルに協力を求めた。」「頭イイ。」「星々はなんて言っている?」「逆だよ。あたしから話しかけてんの。」「へえ?」「父さんと昔やってたんだ。恐いとき不安なとき、嬉しいときでもね。“星と共有しなさい” って父さんに言われた。“話しにくいことでも… 星々は分かってくれる”。」「素敵ね。」「父さんがいなくなった後、星に何度も話しかけた。」「覚えているわ。私たちが初めて会った夜、場所はねじれ塔だった。」「だね。抹消の後。」「貴方がいるとは思わなくて、驚いた。あの部屋のことを知っているのは私だけだと思っていたから。」「あの港にいたくなくてね。花びらだらけで最悪でしょ。だから塔に上った。」「論理的ではないけど本気で信じている自分もいたわ。両親と遠征隊は成功して、ペイントレスを止めることができたのだと。その後ペイントレスが目覚め、私は両親が帰ってこないことを知った。」「あの日慰めあえて、あたしはすごく助かったんだよね。けど、あんたはあたしを避け始めた。なんで?」「その… 貴方に原因はないの。私は… 多くの人との関わりを断った。」「オッケー。あたしは悪くないんだね。」「あの日。私は両親の失敗を知った。両親の仕事を終わらせることを託された私には余計なことに気を散らす余裕はなかった。」「友だちは余計なことじゃないでしょ。」「今ならそうだと分かる。」「今のあたしたちは余命一年で荒野のど真ん中にいる。友情を気付くのにピッタリじゃない?」「そうね、ワインがあればありがたいけど。」「友だち作りは喉が渇く仕事だからね。」
2.5.6. マエルとルネ
マエルは静かにルネへ近付く… ギュスターヴを埋葬する途中で取った自身の行動について、謝りたかった。「ねえ…」「ああ…」「ええと… わたし、その… さっきのは…」「いいの。」「わたしはただ… …」「私も彼に会いたいわ。」「… 辛いね。」「… 誰かを亡くすたびに痛みを感じるけれど… 私はいろんな向き合い方を試してきた。逃げたり、受け入れたり、区切りをつけたり。だけど私に必要なのは… 使うことだった。すべてを。」「どういう意味?」「私は… そうね。」「…」「[息を吐く] 感じるの… すべてを… それから、内側で燃やす。疲れたとき、絶望を感じたとき、全部投げ出したくなったとき… 痛みや恐怖、恥、罪悪感、怒りを使うの。そして前に進み続ける。自分が立ち止まらないようにする。」「ルネ…」「今でもそばに感じる気がするわ。私たちがなくした人たち全員… 一緒に歩んでいる。クロマを使うときは特にね。彼らの存在をそばに感じる。そして彼らが私に力をくれる。」「ギュスターヴを感じる?」「ええ、もちろん。」「わたしもギュスターヴがそばにいるって感じたい…」「貴方もクロマに親和性があるでしょう。試してみて。」「… …」「…」「自分がどうしたらいいか、どうやったら分かるの…?」「分からないわ。秘密を教えてあげようか。私は自分が何をしているかさっぱり分かっていない。他のみんなもでしょうね。」「へえ。ホント?」「私が言ったことは内緒よ。」「…」マエルとルネはさらに一緒に時間を過ごし、その時間はかけがえのないものとなっていた。
2.5.7. ヴェルソとマエル
独り佇むヴェルソに近付くマエル「ありがとう。すごく綺麗な場所だった。」「気に入ってもらえてよかった。俺もずっと、あそこに友人を埋めてきた。きみの言う通りだよ、お悔やみのことは。他に言葉が見つからないから言うしかない。だが、そこに慰めはない。」「うん。」「俺たちにできるのは彼らを忘れないことだけだ。」「そうだね。」笑い始めるマエル「ごめん。ただ… わたしたちは…」「悲しみの溺れている?」ヴェルソも苦笑いする。「なぜ遠征隊に参加した?つまり、抹消のせいで… 他の者が決心するのは分かる。だが、きみはまだ半分の年齢だ。」「ここにいる方が、あそこにいるよいいと思ったの。あの時は。」「自然なことだよ。望まない人生から逃げたくなるのはな。」「逃げる。うん。わたしは逃げたかった。だけどギュスターヴやみんなは… 本当に状況を変えたがっていた。」「人生を変えることも重要だよ。常に世界の問題を背負えるわけじゃない、だろう?そんなことをしたら、すぐに疲れてしまう。」「ギュスターヴなら言うかも。わたしたちの多くが気にかけなければ、みんなの負担は軽くなるはずだって。」「彼はいい奴そうだ。」戻ろうとするヴェルソ。
「待って。」遠征隊の腕章を取り出すマエル「わたしにはギュスターヴのがあるの。だからわたしのをあげる。わたしたち陽気な一団の正式なメンバーになりたいなら、要るでしょ。」「きみが “正式” を重視するとは。」マエルが手招きし、ヴェルソは左腕を出す。マエル「絶望的な遠征隊へようこそ。」「ありがとう。」
3.
モノコの駅
モノコの駅 (Monoco's Station) は雪深い山岳地帯にある。崩壊以前の名残をとどめる雪に埋もれた駅には、崩壊前に大陸を走っていた列車が朽ちており、温厚な種族グランディス (Grandis) たちが身を寄せ合って暮らしている。
グランディスはフランス語の「成長する/大人になる」であり、戦いを好み遊びに夢中なジェストラルが「子どもの世界」の表象であるのに対し、対話と知恵を差し出す賢者然としたグランディスは「大人の世界」の表象という対照で置かれている。
3.1.
モノコとの再会
ヴェルソの考えの第一段は、彼の古い友人でジェストラルのモノコ (Monoco) を仲間に引き入れること。ヴェルソとモノコは長年の付き合いで、久しぶりに会った二人のやり取りはすぐにそれを伺わせる。ヴェルソの「相変わらずノロいな、友よ」という軽口、モノコの「オマエの反射神経は変わらず鋭いな。認めよう」という返し。この気の置けない応酬は、ギュスターヴを失ったばかりのパーティの重い空気とは鮮やかな対照となる。エスキエが「親友ヴェルソ」と呼んだのと同じように、モノコもまたヴェルソの過去を共有する存在であり、パーティにとっては「得体の知れない新参が 67 年の時間の中で築いてきた関係の証拠」が次々と積み上げられてゆく。
モノコはジェストラルでありながら人間の言葉を流暢に話し、学者然とした態度の裏にはジェストラル特有の不器用で好戦的な本性を持つ。戦闘面では、いわゆる青魔道士 (Blue Mage) 系の特異なキャラで、ネヴロンを倒すことでそのネヴロンに変身する能力を獲得し、ベスティアル・ホイール (Bestial Wheel) で表示されているスキルが強化される仕組みを持つ。他のキャラとは完全に異なる戦闘システムを持っており戦術の幅が一段階広がる。
3.2.
ノコとの再会
ここで、ネヴロンの襲撃をモノコに伝えに来たノコと再会する。ノコはモノコの師匠であり息子でもある。Act I でギュスターヴの義手を気に入っていたノコは、パーティと再会して「あの変な腕の奴はどこだ?」と無邪気に問うが、マエルは答えられない。そしてヴェルソが話題を変えるように「ネヴロンが近づいている」という言葉に反応する。
スタラクトを倒したパーティに近付いたモノコは、その死骸から足を採取してスタラクトに変身する。モノコの変身能力は魔法のようなものではなく、ネヴロンの身体素材 (具体的には足) の物理的素材を使った能力のようだが、具体的な仕組みはヴェルソにも分からない。
ヴェルソは旧ルミエールへの同行を依頼し、モノコは即座にそれを拒否する。ヴェルソは小声でマエルを指さしながら「彼女が分からないのか?」と意味を共有しようとするが、モノコは「分かっている」と認めつつ、それはオマエにとっての唯一だと突き放す。この場面はヴェルソとモノコがマエルの正体を知っていることを示唆している。結局、ヴェルソが旧ルミエールに行けばたくさん戦えると話を切り替えると、モノコは即座に翻意して同行を承諾する。戦闘機会の総量だけで動くというジェストラル流の動機構造を端的に描写している場面であると同時に、ヴェルソの側もモノコを動かす方法を
ノコもこれに便乗し、旧ルミエールで貴重なお宝を集めて世界一の商人になるという商業的動機で同行を申し出る。最後にスタラクトの脅威が去ったことで駅にグランディスが現われて場面が閉じる。
モノコの駅の会話
ヴェルソ「モノコがここにいないということは…」上空からヴェルソに攻撃を試みるモノコとそれを軽々受け止めるヴェルソ「相変わらずノロいな、友よ。」モノコ「オマエの反射神経は変わらず鋭いな。認めよう。」エスキエ「モモ!」モノコ「エスキエ!またヴェルソに巻き込まれて旅を?ふむ。新しい友人か?」ルネ「私たちの言葉を喋れるのね。」ヴェルソ「時間を持て余していたからな。俺が教えたんだ。」モノコ「お嬢さん方。私と…」杖を振り回すが、鐘に頭を打つモノコ「ええと、決闘はいかがですか?」マエル「うん、確かにジェストラルだ。」ヴェルソ「モノコが “くつろいだ” 戦いで落ち着くまで、話をしようとしても無駄だ。だが気をつけろ。モノコの戦い方は… 少し変わっている。」モノコとパーティとの戦闘に入る。
シャリエに変身し大槍を振り回すモノコ。ルネ「ネヴロンになれるの!?」
戦いが終わってお互いに息を切らしていると、ノコが現われる。ノコ「ワーワーワーワー!ネヴロンだ!あ、よう!」モノコ「息子よ、邪魔をするな!オレはよそ者たちを倒すのに忙しいんだ。」マエル「ノコ?ここで何やってるの?」ノコ「エスキエがいるのに、とんだノロマだな!あ!変な腕の奴はどこだ?」顔を伏せるマエル。ヴェルソ「おい、ノコ、ネヴロンと言ったか?」ノコ「そうそう!スタラクトが近付いてるぞ!」モノコは逃げてるんだ。ほら、行くぞ!」モノコ「おっと。ふむ。スタラクトか。」
広場で暴れているスタラクト。モノコ「ヴェルソの友人たちよ。“名誉ある客人” へ、初戦の勝ちは譲ろう!キミたちの恐るべき才能でスタラクトを倒すのだ!」笑い合うパーティ。シエル「そうだね。」モノコはそのまま腰を下ろしてしまう。シエル「え。本気で言ってんの。」ヴェルソ「ああ、奴は本気だ。」さあ行こうかというジェスチャーをするヴェルソと、あきれながら歩き出すマエル。モノコにつぶやくヴェルソ「意気地なし。」モノコは追い払うような仕草でパーティを見送る。
スタラクトを倒した後、後ろから近付くモノコ「立派な友人を見つけたな、ヴェルソ。」ヴェルソ「うらやましいのか?」ヴェルソを一瞥してスタラクトに近付くモノコ。シエル「何やってんの?」モノコ「オレには… …足が要る。よし!」スタラクトに変身するモノコ。ヴェルソ「こいつはネヴロンの足を集めると変身できる。仕組みは聞くな。俺には理解できない。」元の姿に戻るモノコ「さて、心温まる良き戦いを済ませたところで。ご用はなんでしょうか?」ヴェルソ「俺たちは旧ルミエールへ向かっている。」モノコ「そうか、バイバイ。」ヴェルソ「おい、こら。おい!なあ、確かに俺たちは以前失敗した。だが… いいか、この能無し。彼女が分からないか?」小声でマエルを指さす。モノコ「もちろん分かっているが…」ヴェルソ「ならその意味も分かるだろう。俺たち唯一の勝ち目かもしれない。」モノコ「唯一なのはオマエにとってだけだ。不可能だ。オレは二度とオマエの仲間にはならん。」ヴェルソ「たくさん戦えるだろうがな。」モノコ「ああ、確かに。」ヴェルソ「そう、確かに。」モノコ「たくさん戦える。」ヴェルソ「その通りだ。」モノコ「なら仲間に入れてくれ。」ヴェルソ「いいぞ。」モノコ「いいぞ。」ヴェルソ「よし。」モノコ「いいぞ。」ヴェルソ「もういい。」マエル「ノコも行くって。」ヴェルソ「来るのか?」ノコ「これまで旧ルミエールに要った商人はそう多くない!貴重なピカピカのお宝が山ほどあるはずだ。そうしたらオレは── 誰もが認める、世界一の商人になるのだ!」モノコ「責任を負う親として言うが、最高の案だ。オレたちを行かせてくれ。旧ルミエールに。」
ノコ「おっと、あのグランディスめ、スタラクトがいなくなったから出てきたな!話してみろよ、ジェストラルよりイケてるぞ。旧ルミエールに行きたいなら、この出口から出て北に向かえよ。」
3.3.
「モノコの駅」後のキャンプ
モノコの駅前後のキャンプは、ヴェルソを中心とする新しいパーティの人間関係が本格的に動き始める。絆レベルシステムが本格的に機能し始めて、ヴェルソと仲間との会話が各キャラの深遠を綴る物語の重要な核となる。
ノコとヴェルソの会話では、かつて「史上最高の冒険者」だったノコが商人に転じた理由が語られ、「ずっと変わらないのは最悪だ」という一言が 67 年間不死を生きるヴェルソの胸にも刺さる。モノコとヴェルソは山での冒険やエスキエへの無謀な決闘など過去の武勇伝を語り合い、気の置けない旧友同士の空気が二人の間にもたらされる。
一方、マエルとの関係は、湖畔で石を投げるという行為を通じて少しずつ距離を縮めていく。「帰ってこないと知りながら送り出す」と石を遠征隊に喩えて投げる様子は、16 歳の少女が遠征の本質を自分の言葉で咀嚼し始めていることを表している。ヴェルソと互いの書きものを交換するという約束は、先日の拒絶からの二人の関わりが、ようやく双方向になったことを表している。
ルネはヴェルソに崩壊後の歴史やルミエールを離れた理由を問いただす。ヴェルソは崩壊後、シールドドームの建設など、ルミエールで再建を手伝っていた。最初の第 0 遠征隊が結成されたとき、まだペイントレスについて何も分かっておらず、行方不明者の捜索を目的としていた。ヴェルソたちも母親を探すためにそれに参加した。しかし隊員らは不死のヴェルソらを何か隠し事をして誘導していると思い、モノリスへ向かう途中で裏切られ、逃げ延びた。それでルミエールへ帰る気は失ったと過去の遠征者との断絶を語る。ルネは研究者として情報を得ると同時に、この男が何を語り何を隠すかを選別してることにも気づき始めている。しかし、あまり私的なことは話さないルネがヴィエノワズリー (Viennoiserie; 菓子パン) を恋しがっていることを明かし、ヴェルソもそれに賛同する。
ヴェルソがもらった第 33 遠征隊の腕章をうらやましがるエスキエには腕章の代わりに頭飾りを作ってやり、シエルはモノコとヴェルソの騒がしい友情を眺めながら「適度の定義が違う」と軽く釘を刺す。
ノコはヴェルソに「オマエの小屋にプレゼントを置いてきたが受け取ったか?」と尋ねる。ヴェルソは意図を掴みかねて手紙しかなかったと答えるが、ノコはいずれ分かると言う。おそらくこの小屋とは、いにしえの聖域のものまね師の近くにあった小屋だろう (パーティはここでリバイブティントを拾っている)。小屋の中はかまどや本など、ジェストラルではなく人間の生活した跡が見られる。机の上にはヘンリー・ホワイトの詩集 “The Poetical Works and Remains of Henry Kirke White” (1852) やヴィクトリア朝時代の健康指南書 “The Family Gymnasium” などの本が見られるが、同じ本が重複しているため、単に風景として置かれたものだろう。
会話に出てくるパタト (Patate) とはフランス語でジャガイモのこと。転じて「間抜け」や「のろま」、または親しみを込めてからかう言葉として使われている (サカパタト (Sakapatate) はジャガイモ袋 (sac à patate) から転じて「ぶかぶかの服」や「だらしない見た目」の意味を持つ)。
ギュスターヴを失った遠征隊の重い空気を察したモノコが、ヴェルソに「ヴェルソの魔法」を提案する。ヴェルソは身体を真っ二つにして上半身と下半身を個別に動かす「たまらなく痛いアレ」を披露する。最初は驚愕したマエル、ルネ、シエルもやがて好奇心へと移行し、痛みの有無、再生のメカニズム、二箇所に同時に存在できるのかといった質問を矢継ぎ早に投げる。これはパーティを案じるヴェルソの心境の他にヴェルソの不死が脅威ではないことをパーティ内に印象づけている。モノコはヴェルソの身体を張った励ましにいささか引いている。
全体として、Act I ではギュスターヴのもとで一つにまとまっていたパーティが、ヴェルソという新しい中心の上で関係を結び直す過渡期の夜が、このキャンプで語られている。
キャンプでの会話
3.3.1. ノコ
「おれのプレゼントは受け取ったか?」「なんの話だ?」「オマエの小屋に置いてきたヤツだよ!オマエのために特別に、いにしえの聖域を通ってきたんだぞ。」「ああ、お前からのメモは見たが… プレゼントはなかった。なんだったんだ?」「ふん!時間がたてば分かる。けど超クールなものだ。」「やれやれ。礼を言っておくよ。」
「俺のお気に入りのパタト、調子はどうだ?」「ふん、おれのお気に入りの非パタト、調子はどうだ?」「おや、俺はまだお気に入りなのか?お前はマエルがずいぶんとお気に入りじゃないか。」「おお~、ヤキモチか?マエルと友達になってくれって頼んできたのはオマエだろ!」「そうだな。」「それじゃあ教えてくれ。パタトから非パタトへ。なぜ付いてくるんだ?冗談は抜きに。」「当然だろ。史上最高の商人になるには、お宝を見つけなくちゃいけない。」「嘘をつくな。これはモノコには言うなよ。オマエは今も昔も、史上最高の冒険者だ。そしてお前は、外で多くのジェストラルが死んだことを知っている。なぜ商人に?なぜ旧ルミエールへ行く?」「別に。」「別に?」「冒険者は他にたくさんいる。史上最高だからって、ずっとそうしてたいわけじゃない。」「そうなのか?」「分かるだろ。ずっと変わらないのは最悪だ。」「ふーむ、確かに。」「な?」「分かった分かった。」「それに、モノコを厄介ごとから遠ざけておきたい。」「モノコはもう大人だ。お前がパタトになる番だ。」「へっ。」「饒舌な説明をどうも。」[お茶目な笑い]
3.3.2. モノコ
「ゴルグラはまだオレに怒っているだろうか。」「どう思う?」「うーん。まあ、ゴルグラはノコが店を始めるのを手伝ったし…」「ああ。だがゴルグラに逆らうのはノコの考えではなかっただろう?」「ノコならオレのために同じことをしたはずだ。」「ノコならまずゴルグラを味方に付けていただろな。」「フン。十年も前の話だぞ!ゴルグラは水に流すべきだ。」
「強くなったな。」「まあ、ここ数年は山に隠れていなかったからな。」「ペルランに真っ二つにされたお前が泣きながらオレに助けを求めてきた、あの山か?」「そう、スタラクトにぺちゃんこにされたお前を俺が逃がしてやった、あの山だ。」「ケンカ売ってるのか?」「ジェストラルと違って俺には睡眠が必要だ。だから遠慮しておく。」「腰抜け。」「認めるよ、お前が怖い。」「よし、少なくとも賢くなったな。」「昔一緒にした小旅行が恋しいな。」「ふん…」「ああ、お前も同じ気持ちだろう。」「初めてデュアリステと戦ったときを覚えているか?」「もちろん。かなり痛めつけられた。」「赤い木の島まで泳ごうとして、一度オマエがあの蛇に食べられたことは?」「ああ、不死なら蛇の腹の中で生活できる。肉を切り分けて出口を作るのは悪夢だったが。」「お前がエスキエに決闘を、あー、挑んだときのことは覚えているか?」「誰かさんは、エスキエが世界最強の生き物だというのを都合よく忘れていた。楽しかったな。ああ、そういえばあのときは…」モノコとヴェルソは、気心が知れているからこその態度に戻る。親密度アップ.「確かに楽しかった。」二人は仲間のところへ戻る前に、もう少しだけ自慢しあいを続ける。
3.3.3. マエル
「グランディスってすごく穏やかだよね。モノコがいない間、誰が守るの?」「自分たちの面倒は自分たちで見られるさ。」「本当に?」「彼らには鐘がある。大丈夫だ。」「鐘が何の役に立つの?」「鳴らすと、ネヴロンが逃げ出す。ただし… 全員ではなく、耳があるネヴロンにしか効かないが。」「うーん、やっぱり心配。」「ああ、実は俺もだ。」
ヴェルソは、湖のそばで石を投げるマエルに合流する。「また石を投げているのか?」「うん。やってみたら?」「俺たちが湖に石を投げ込んでいたら、エスキエは震え上がるだろうな。」「もしくは… 超喜ぶだろうね。わたしたちは石をちょっとした楽しい空の旅に送り出しているわけだから!」「つまり、あれらは小さな石の遠征隊だと?」「その通り!」「なら、きみはルミエールというわけか?」「うーん、そうかもね。わたしは彼らを旅に送り出して、遠くから見守ってる。次から次に石を送り出す。絶対に… 帰ってこないことを知りながら。」「詩人だな。だが、16歳にしては暗い。」「まあ、現実は暗いものでしょ。」「きみがいつもノートに書いているのはそれか?暗い詩?」「暗いヤツだけじゃないよ。」「…」「なによ、そっちは何書いてるの?太陽とか虹ってタイプには見えないけど。」「モノコに使う詩的な悪口がほとんどだな。今はあいつをフクロウの尻になぞらえているところだ。」「…」「実際、ものを書くのは俺にとってカタルシスがある。頭の中から考えを取り出して紙に書くと… 自分の感情をはっきりさせるのに役立つ。」「見てもいい?」「きみのを見せてくれるなら。」「えーっ、わたしのはちょっと個人的なものだから。」「俺のもそうだよ。」「でもさ、ホントは誰かに読んでもらいたいでしょ。」「…」「分かった。きみのを読ませてくれるなら、俺のを読ませよう。」「ううーん。」「いいよ、取引成立!」「だがお手柔らかにたのむよ。」「それは約束できないかな。」マエルとヴェルソは互いに親近感を抱いている。親密度アップ. マエルとヴェルソは一緒に時間を過ごす。マエルはヴェルソの書きものにかなり批判的だ。マエルがヴェルソをからかい終えた後、二人は仲間のところへ戻る。
3.3.4. ルネ
「脚ですって?本当に?」「大丈夫だ、あいつは人間の脚には興味がない。」「… あの鐘は?」「グランディスからの贈り物だ。」「素晴らしい。私たちも似たようなことができるかしら…」「俺なら剣にこだわるが。ネヴロンに変わりたいとはあまり思わない。」「これをピクトスと組み合わせれば、戦闘でネヴロンの能力を選択して使うことも…」「オーケー、忙しそうだ。今は失礼しよう。」
ルネに近づいたヴェルソは、彼女がさらに質問したがっている様子を見て取る。「ずっと疑問だった。貴方はなぜ独りで大陸に留まり、ルミエールに戻らなかったの?」「戻ったよ。」「ふむ。」「戻って、再建を手伝った。」「へえ。」「崩壊後… 俺たちには何もなかった。食べるものも、寝る場所もな。」「状況は混沌としていたでしょうね。」「世界の終わりほど、人間の本性を引き出せるものはない。あの頃が恋しいと言っても良いくらいだ。」「ドームシールドは知っているな?俺と父が手伝って建てたんだ。」「ああ。では、なぜ去ったの?」「初期の遠征隊だ。捜索救助を目的としていた。当時はペイントレスについて知らず、俺たちはただ大事な者たちを見つけ出そうとしていた。例えば、俺は母親を。」「なるほど。」「だけど今回、貴方は戻らなかった。」「誰も俺を信じなかった。俺は疑わしいようだな?」「かもね。」「彼らは俺が隠し事をしていると思ったのだろう。モノリスへの道すがら、俺は裏切られた。逃げ出すのがやっとだったよ。それで故郷へ戻りたい気持ちが消えた気がする。」「ふむ。」「きみはどうだ?故郷が恋しいか?」「私は生涯をかけてペイントレスとモノリスについて研究してきた。私がいるべき場所は、ここよ。」「ずいぶん遠回りな言い方で回答を避けたな。」「ええ、恋しいものはある。」「きみは実に鮮やかに表現する。」「どうしても知りたいというのなら、私が本当に恋しいのはヴィエノワズリーよ。」「ああ、いい答えだ。それは俺も恋しい。」「…」「…」「…」「なんだ?」「楽しい会話だったわ。」「光栄だ。」ヴェルソと一緒にいて落ち着くようになったルネは、ヴェルソが実用的な情報を共有してくれることに感謝する。親密度アップ. ルネはヴェルソが共有した情報を振り返り、物思いにふける。無視された気分になったヴェルソは、仲間のところへ戻る。
3.3.5. エスキエ
「よし、モモはモモでノノはノノだ。」「ああ…」「それから、ルル、マエマエ、シエシエ…」「あー… 彼女らがそれを気に入るかどうかは…」「お前はヴェルヴェルが嫌なのか?」「ああ。」[ブーと唇を鳴らす]
ヴェルソは、腕章を熱心に見つめてくるエスキエに近づく。「その腕章はいい感じだ。」「ああ。正式に加入してしまったわけだ。俺たちは今や “絶望的な遠征隊” の一員だよ。」[ブーッと小さく唇を鳴らす]「どうした?」[憤慨した息遣い]「お前も腕章が欲しいのか?」「どうかな?」「お前の腕はないようなものじゃないか。」「違う!どのみち、頭飾りは欲し…」「お前の頭はデカすぎる。かなりの布が必…」「私の脳は大きい。」「分かったよ、デカ脳殿。何ができるかやってみよう。」「これで満足か?」「おおおおおお~っこれは史上最高だ!」エスキエはいつもよりさらに興奮している。ヴェルソはエスキエに過去最高の贈り物をした。エスキエは感極まっている。親密度アップ. 仲間のところへ戻る前に、エスキエは少しの間、腕章を着けて踊り回る。
3.3.6. シエル
「モノコ、楽しそう。」「そうだな。」「あんたたち、一緒にいろんな騒ぎを起こしてきたんでしょ。」「お見通しか。」「それで今度は、あたしたちも巻き込むんだ?」「適度なレベルでな。」「ふん。ジェストラルとはしばらく一緒に過ごしていたけど、“適度” の定義があたしたちとは違う気がするんだよね。」「あー、当てようか、きみは彼らのアリーナに行ったな?」「当然、チャンピオンとして君臨したよ。」「だろうな。」
3.3.7. ヴェルソの魔法
モノコとヴェルソの会話「いいか。俺はスタラクトを完膚なきまでに打ちのめしたことがある。二発で大ダメージを与えて、塵一つ残らなかった。それから、巨大なペルランに襲撃された。厳しい戦いだったが、オレは問題なく倒した。」「ペルランは弱い。俺なら目隠ししていても勝てる。」たき火の方を見て「この遠征隊は陰気くさいな。」「彼女らは多くの友人を失い、さらに一人埋葬したばかりだ。悲しみは簡単には癒えない。」「ちょっとした “ヴェルソの魔法” で雰囲気を明るくしたらどうだ。」「たまらなく痛いアレのことか?」モノコに肩を叩かれるヴェルソ「分かった分かった、やってみよう。」
ヴェルソ「やあ。」マエル「後にして。いま忙しいの。」ヴェルソ「やあ。」ルネ「あらヴェルソ、そこにいたのね。どう… ああ!なんてこと!」シエル「うそ… うわ…」マエル「なにそれ…」ヴェルソ「やあ。俺は話せる二本の脚だ。」ルネ「ヴェルソ??」ヴェルソ(上半身)「俺もヴェルソだ。」マエル「メチャクチャじゃん。」ルネ「待って。なぜ脚が話せるの?」ヴェルソ「すごいだろう。かなりの訓練が必要だった。」シエル「それ… 痛くないの?」ヴェルソ「うう… ハッハッハ!いいや、痛くない!」マエル「自分で自分を真っ二つにしたの?モノコにやってもらったの?」ルネ「上か下が生えてきて治るの?それとも上と下をくっつける必要が?ねえ、その過程を制御できる?」シエル「つまりあんたが真っ二つになったら同時に二箇所に存在できるってこと?上半身がここであたしらと話している間、下半身はモノコと偵察に行けるわけ?」ヴェルソ「ああ、見ての通り、上半身がネヴロン狩りに行っている間、下半身はここに残って料理を作ることができる。昔はよくやったよ…」ルネ「ねえ、少し… へえ!」ヴェルソ「ああ、俺の髪は…」モノコ「彼女らを笑わせるために、あんな痛みに耐えるなんて。ヴェルソ、入れ込みすぎてないか?」
3.3.8. 仲間の様子を確認する
星を眺めているマエル。シエルがマエルの隣に現われる。二人は少しの間、黙って空を見つめる。「もっと強くなれる戦い方を教えてくれる?」「もっと?」「あの白髪の奴には気づかないうちに攻撃されたの。やり返したい。それで、シエルは私が知っている中で最強の戦士だから。」「べた褒めじゃん。」「あいつは戻ってくる。やられる前にやっつけたい。」「気持ちの力は強いよ。上手く使いこなすべし。」「分かってる。」「オッケー、最初のレッスン。当たり前に聞こえるけど、見るべし。本気で見るんだよ。目は真実を教えてくれるけど、脳はウソをつくこともある。」「どういう意味?」「感情が認識を惑わすこともあんの。そのせいで、戦場で大切な細かいところを見落とす。間違ったものを、それか見たいものだけを見てしまう。」「分かった。」「物事そのままの姿を見なくちゃいけない。自分の思う姿じゃなくてね。標的を見な。そうしたら、標的のことが理解できる。そいつらがどう動き、考え、反応するか。そうしたら予想して対応できる。」「ふむ。」「戦場では、自分と、武器と、敵。理解しなくちゃいけないのは、この三つだけ。弱点は誰にでもあんの。だから毎日自問する。あたしの弱点は?奴らの弱点は?分かる?」「もっと… 技術的なレッスンになるかと思ってた。」「…」マエルとシエルは、さらに一緒に時間を過ごす。
4.
旧ルミエール
ヴェルソの作戦の第二弾は、旧ルミエールにあるペイントレスの心臓を破壊して彼女を無防備にすること。ペイントレスはモノリスの頂上に結界で守られており、心臓を破壊しなければそもそも接近できない。しかしその心臓が旧ルミエールの屋敷 (The Manor) の中にあるとヴェルソは知っていた。なぜそのようなことをヴェルソが知っているかは、このステージで明らかになるヴェルソの正体が示唆している。
4.1.
パーティの分断
旧ルミエール (Old Lumière) はプロローグで賑わっていたエミエールの街が元々あった場所。67 年前の崩壊で街そのものは海に投げ出されて孤島となり、現在は浮遊する瓦礫とネヴロンに満ちた廃墟となっている。そこに残されている亡骸は、遠征隊だけではなく旧住民のものも含まれている。
道を進むとパーティの行く手に建物が立ち塞がっている。いいところを見せようと調子に乗ったモノコは建物を破壊するが、勢いが余ってパーティも吹き飛ばしてしまい、分断させてしまう。「ごめん。失敗した。自慢したかっただけなんだ。」と泣きながら謝るモノコ。分断はされたが、両パーティとも、仲間は心臓のある旧ルミエールの中心に向かっているはずだと信じて進み始める。
4.1.1.
ルネ・シエル・モノコ
分断されたルネらは道中で消えゆく男 (Fading Man) と遭遇する。彼は「ネヴロンを作った彼女」が幼い頃に不死でないことに悲嘆したが、それは死への恐れではなく、一生かけてもすべての作品を鑑賞しきれない、世界の寓話は多すぎて集めきれず工房で命を吹き込むことができないことへの悲しみだった、と語る。
シエルは廃墟の中でフローリー (エスキエの岩) に似た石を見つけ、エスキエにプレゼントしようと笑顔で拾い上げてバッグにしまう。戦場を進む最中に仲間への贈り物のことを考えられる人間は多くない。彼女はパーティの中で「他者が何を必要としているか」を常に見ている。実は、この石は後にキャンプでエスキエに渡され、エスキエのサンゴ通行の能力がアンロックされる。このシーンでは、シエルの何気ない優しさを描画するとともに、それを物語を前に進めるシステムと上手くつなげている。
歩きながら、ルネとシエルがヴェルソの意図について話し合う。モノコに話を振ると「ヴェルソと初めて会ったのはいつ頃か覚えていない」「ヴェルソは多くの遠征隊と旅をしてきた」とだけ答える。ルネは巨大な剣に貫かれた巨人を見上げながら、ヴェルソを探して聞こうと道を進む。
ここでルネは過去にヴェルソと同行した第 58 遠征隊のジャーナルを発見をする。目の前の巨人、アクソン (Axon) についての記述の他に、ヴェルソに対する衝撃的な事実が書かれている。この内容がルネを動揺させ、二人は「マエルが危険にさらされている」と先を急ぐが、モノコは心配ないと落ち着いた様子。ジャーナルには、ヴェルソが彼女らに隠していた秘密が記されている。
4.1.2.
マエル・ヴェルソ・ノコ
マエルが目を覚ますと、ヴェルソは仲間は街の中心に向かっているだろうからそこで合流しようと提案する。マエルは、旧ルミエールの廃墟を俯瞰しながら「懐かしい感じがする」と話すが、「ああ、そうだな」と答えるヴェルソは何か重要な考えがあるような表情をしている。ヴェルソはマエルに「先に行け」と促し、二人は旧ルミエールの街路を進む。
道すがら、マエルはヴェルソにルミエールにいた頃にどこに住んでいたかを聞く。ヴェルソは、街の中心近くのパン屋「アンジェリケのブランジェリー」(Angelique's boulangerie) の上に住んでいたと答えるが、マエルは今は「マチルドのブランジェリー」(Machilde's -) という名前になっていると話す。
イースターエッグ経路の脇の排水管のようなところに檻の扉がある。これはルミエールの祭典でトークンと交換した「古びた鍵」を使って開けることができる (取り逃している場合は最終ステージで拾うことができる)。そこには 67 年前の崩壊でこの場所に逃げ隠れた旧ルミエール住人の遺骸と、彼女が残したジャーナルが落ちている。
途中、二体のシュヴァリエを倒した後、マエルが周りを見渡すとヴェルソの姿が消えていることに気付く。不審に思うが街の中心に向かうことは変わらないので先に進むマエル。ノコは、ヴェルソがノコやモノコを置いて逃げるのはいつものことだからそのうち戻ってくると楽観している。
4.2.
ルノワールとの対峙
マエルが大きな屋敷の前に着くと、正面の扉がゆっくり開き始める。扉の向こうには、キュレーターやこれまでに遭遇した「消えゆく人々」と同じ姿の女性が立っている。このとき、隠れていたヴェルソが屋敷に突入しようと試みるが、はじき返されてルノワールが姿を現す。ヴェルソの「思った通り、彼女のために扉を開いたな」というセリフは、マエルがこの屋敷と関係していること、ヴェルソでは屋敷に入れないこと、マエルを利用して屋敷に入ろうと最初から企てていたことを表している。扉の向こうに仮面の少女アリシアが現われ、ゆっくりと扉が閉まる。
目の前に現われたルノワールを倒そうとマエルが前に出ると、ルノワールはヴェルソが自分の息子であることを明かす。同時にルネとシエルも合流し、第 58 遠征隊のジャーナルからたどり着いた同じ事実をヴェルソにぶつける。ヴェルソが隠してきた秘密が敵と味方の両方から同時に暴かれる。ここでルノワールとの本格的な戦闘が始まる。浜辺や「岩波の崖」では一方的に殺されたが、今回はルノワールを倒し得る戦いとなる。
戦闘終了後、ルノワールの最後の一撃でノコが「壊れ」る。マエルがルノワールに斬りかかったそのとき、マエル以外の時間が止まり、屋敷の中からアリシア現われる。アリシアはマエルに火の海に囲まれた風景を見せて屋敷に戻る。時間が動き始めるとヴェルソの口から仮面の少女の名前アリシアが出る。
ルノワール戦での会話の書き起こし
ヴェルソ「思った通り、彼女のために扉を開いたな。」突入しようとしてはじき返される。「チッ!」ルノワール「本気か、ヴェルソ?これがお前の計画か?」扉が閉まる。「何度家族を傷つければ気が済む?」「やめてくれ。あんたに家族について説かれたくない。」「なぜ拒む?私がやっていることは、私たちのためなのだ。それでもお前は死に突き進みたがる。お前は間違った輪廻を止めようとしている。」「あんたは自分のことしか考えていない。」「確かに、そう考える方が楽だろうな。もし私が悪なら、私たちを裏切るのは容易だ。」マエル「ヴェルソ、どいて。そいつを殺してやる。」ルノワール (ヴェルソに向かい)「彼女に真実を明かしていないのか?息子よ。」ここでルネの放った雷撃がルノワールを襲う。ルネ「遅くなってごめんなさい。ちょっと読み物で忙しくて。伝えるつもりはあった?この男が、私たちの仲間を殺した男が、貴方の父親だと言うことを。」「家族の話題は好きじゃない。この件については後で話そう。きみたちには、これを切り抜けてほしい。」ここでルノワールとの戦闘に入る。
ルノワール「お前がこの家族を引き裂いている。」戦闘後、ヴェルソ「みんな無事か?」「モノコ?」「ノコが… 壊れた。」マエルがルノワールに斬りかかる。ルノワール「なぜ自分の正体を認めない?」ヴェルソがルノワールの剣を止めた瞬間、マエル以外の時間が止まる。屋敷の中から仮面の女が現われ、マエルに近づいて仮面を外し腕を握ると、周囲が火の海に囲まれた風景が見える。マエル「何を…」「あなたの… 名前を教えて。」何も言わず、火に包まれた屋敷に戻る仮面の女。ヴェルソ「クソッタレ!どこへ行った!ああ、ダメだ、ダメだ。アリシア!クソ!」[怒りの咆哮]」
4.3.
「旧ルミエール」後のキャンプの会話
ヴェルソがルノワールの息子であることが暴かれ、パーティは再び「この男を信じ続けるか」という選択を迫られる。ルネは情報を隠したことを非難し、シエルは実利的に信頼の継続を選び、マエルは「家族は複雑だよ」と自身の傷に重ねて赦す。三者三様の反応がヴェルソとの関係を模索する中で、同時にノコの死という新たな喪失がモノコを通じてパーティに影を落とす。「甦らせることはできるが、別のノコになる」というモノコの言葉は、失ったものは形だけ作り直しても同じではないというこの作品の根底にある問いを、ここで静かに提示している。
作戦面では、屋敷の消失によりヴェルソの計画が行き詰まるが、第 58 遠征隊のジャーナルを読んだルネがアクソンの心臓からモノリスの結界を突破する武器を作る作戦を提案。強大なアクソンとの戦闘にヴェルソは反対するが、ルネは「死ぬなら戦って死ぬ」と押し進める。モノコはその勇ましい鼓舞を称賛する。ヴェルソは、もしもの話として、アクソンが三体いてそのうち二体を倒さなければならないこと、一体は高い山の上にいて到達できないこと、西にいる一体は過去の遠征隊が弱らせているからそちらから倒すのが得策であることを話す。好戦的なシエルは東のアクソンから倒すのもいいと提案し、モノコに良い意気だと称賛される。
キャンプではアリシアという名前と素性が明かされ、マエルの悪夢の少女がヴェルソの妹であること、火事で顔と喉に火傷に遭い仮面をしていること、しかしアリシアがマエルに個別に接触している理由はヴェルソにも分からないことが判明し、マエルの出自をめぐる謎がさらに深まる。
それぞれの会話では、ヴェルソはシエルに崩壊後に髪が突然白くなったことを明かし、シエルがソフィーの言葉を引用して「子供を持たないことが子供への最善」というこの世界の残酷な答えを語り、ルネとヴェルソは不眠という共通点を通じて思いがけず研究者と不死者の孤独が交差し、マエルは自分の生い立ちを初めてヴェルソに語って「今はわたしたちがいるよ」と手を差し伸べる。パーティ全体がヴェルソの秘密と向き合い、それでも共に進む選択をしたこの夜は、ギュスターヴのもとで結ばれていた Act I の絆とは異なる、秘密と赦しを経た上での新しい信頼が形成され始めたことを示している。
シエルが旧ルミエールでデリエ (Dorrie) を見つけてきたことで、エスキエの「サンゴ礁通行」がアンロックされ、次の目的地「ヴィサージュ」と「シレーヌ」に進行できるようになる。また「遠征隊エスケープ」がアンロックされ、遠征隊の旗から大陸に脱出できるようになる。
「旧ルミエール」後のキャンプの会話
エスキエ「おおおデリエだ!ありがとう友よ!」
ルネ「説明してくれる?貴方の父親について」ヴェルソ「もう父親とは思っていない。」シエル「だとしても、なんで言ってくれなかったの?」ヴェルソ「個人的な話で、痛みを伴うからだ。それにきみたちには関係ない。奴とは何年も前に縁を切った。」ルネ「事実を隠すこともウソの一つよ。」ヴェルソ「俺はきみたちが知るべきことはすべて話し…」ルネ「それは私自身で決めたいわね。」シエル「あのさ、あたしたち、事情をわかり合えると思うんだよね。間違った方向へは導かれてはないわけだし。今は仲間でしょ。お互いを信用しないとうまくいかないって。」マエル「家族は… 複雑だよ。」
壊れたノコを抱きかかえたモノコが現われる。ルネ「物語では、ジェストラルは生まれ変わると。それは本当?ノコを甦らせられる?」モノコ「部分的には。ノコを甦らせることはできるが、すべては戻らない。きっと… 別のノコだ。キミたちが知っていたノコはもういない。」ヴェルソ「本当に… 本当に残念に思う、友よ。すべては… 無駄骨だった。ペイントレスの心臓はあの屋敷にあった。そして今や消えた。モノリスへたどり着く方法はない。」ルネ「第58 遠征隊は、貴方が別の方法を知っていると考えていたようだけど。」ヴェルソ「何だって?」ルネ「彼らと、その記録を見つけたの。」ヴェルソ「だからきみは… きみの言いたいことが俺の思っている通りなら隠していたわけじゃない。無理なんだ。」マエル「待ってよ、何の話してるの?」ルネ「私たちに手を貸せる人がまだいるの。」
パーティはキュレーターのいる場所へ移動する。ルネ「失礼。本当なの?貴方が結界を貫ける武器を作れるというのは。アクソンの何が必要なの?」キュレーター「アクソン。アクソン。」ルネ「必要なのは… 彼らの心臓?」ヴェルソ「いいか。この武器を作るには、膨大な量の純粋なクロマが要る。ネヴロンから得られる量よりはるかに多い。そう、アクソンからしか手に入らない。さっき言った通り、無理だ。不可能だよ。」マエル「なんで?アクソンって何?」ヴェルソ「モノリス周辺の島々に住む、巨大な生き物だ。ネヴロンよりもはるかに強く、危険性も桁違いだ。俺は死ねない。それでも、奴らは倒せなかった。」ルネ「でも、旧ルミエールで亡骸を一体見つけたわ。だから不可能ではない。」ヴェルソ「そいつの死因は知らないが、頼むから俺の話を聞いてくれ。犠牲を出さずに奴を倒せる可能性はゼロに近い。」ルネ「近いけれど、ゼロではない。どのみち死は訪れるのよ。そして遠征隊の一員として、私たちは死ぬなら戦って死ぬ。」モノコ「素晴らしい鼓舞だ。」ルネ「そうでしょ。」
ヴェルソ「それでは、もし… もありーんしもだが… アクソンと戦うのなら、賢くいこう。」シエル「どういうこと?」ヴェルソ「俺はアクソンと思いがけず出くわしたことが何度かある。モノリス周辺の島に三体いるんだ。そして十分な量のクロマを手に入れるには、心臓が最低でも二つ要る。一体が住んでいる山は標高が高すぎてたどり着けない。だからそいつ以外だ。始めるなら、モノリスの西にいる奴からだな。以前の遠征隊が既に弱らせている。申し分ないだろう?」ルネ「ええ、名案ね。可能性が最大限高まる。」シエル「それか、東にいる奴に挑戦するのもいいよね!」モノコ「ふーむ。いい意気だ。」シエル「どうも。」ヴェルソ「俺が言ったことを聞いていたのか?」
4.3.1. シエル
「あんたには何十年もあったのに、アクソンを倒したことはないんだ?」「彼らは少し頑丈でな。」私たちが勝つ可能性はゼロに近いんだっけ?」「きみが勝算を気にするとは意外だ。」「ルネとあたしには一年も残っていない。けどマエルは違うからね。」「ふむ。」
「お話の時間?」「ふーむ。考えさせてくれ。」「…」「…」「ほらほら、あんた60年以上生きてるんだから、物語なんて山ほどあるでしょ。」「テーマをくれ。自由すぎると逆に話せない。」「テーマなら挙げたでしょ。“暗くて個人的なヤツ”。」「分かった分かった、考えてみよう。」「よし、かなり個人的な物語を共有しよう。」「へえ。好奇心が超くすぐられるね。」「俺の髪についてだ。」「あんたの髪?ちょっと “暗く” て “個人的” そのまますぎない?」「おい、心からの秘密を共有しようとしているんだぞ。聞くのか聞かないのか、どっちだ?」「どうぞ。共有して。」「崩壊からしばらくたった後、俺の髪は真っ白に変わったんだ。まるで… 老人のように。」「…」「幸運にも、ジェストラルの村には髪を染める腕がとてもいい美容師がいる。」「運がいいね。」「だが、俺が行くと彼はいつも昼寝をしていて、彼の弟子が必ず状況を無茶苦茶にする。今回この髪が紫色にならなかったのは、運がよかった。」「ムラサキだったら面白いのに。」「それでは、きみの番だ。」「暗くも個人的とも言えなくない?」「白髪。年寄り。自分をさらけ出しているじゃないか。」「あんたがさらけ出したことなんて、自信過剰で予約を取るのが超ヘタクソってことだけじゃん。」「自信過剰?俺は… 俺は… アクセサリーをジャラジャラ着けるような人間じゃない。」「実はこのブレスレット、あたしの生徒が作ってくれたんだ。自分たちを忘れないでってね。二度と再会できないだろうから。」「そうとは限らない。」「あたしは楽観的だけど、現実的でもあんの。」「一番下の生徒は6歳。両親はその子が12になったら抹消される。本人は21歳までしか生きられないだろうね。両親が計算したんだよ。家族としては12年過ごせて、娘は21年の人生を生きられる。」「…」「あたしたちには選択するチャンスがある。子供を持つのが早ければ早いほど、一緒に過ごせる時間が増えて、子供の人生も長くなる。そして子供を持つのが遅いほど…」「…子供の人生が短くなる。」「その通り。」「だが、きみには子供がいない。」「そうだね。けどあたしには生徒がいる。友達のソフィーが一番的を射ていたね。言ってたよ、子供が本当に大好きだからこそ、子供のためにできる最善のことは… 子供を持たないことだって。」「…」「ね?暗くて個人的。」「ハードルが上がってしまった。」「次はもっといい話を持ってきてよね。」ヴェルソの話はかなり物足りなかったが、シエルはヴェルソのことを以前より少し理解する。親密度アップ. シエルとヴェルソは少し長すぎるほどからかいあった後、仲間のところへ戻る。
4.3.2. ルネ
「ルネ…」「うーん。」「分かった、後にしよう。」
「やあ、夜型仲間よ。」「夜型?」「きみが寝ているところを見たことがない。」「寝ているわよ。」「ふむ。」「睡眠は足りているの。」「何がきみを寝かせないんだ?」「何が私を寝かせてくれる?」「不眠症仲間として、共有しようじゃないか。」「ふーん。時々、考え事を止められないだけ。例えるなら… 気になる難問を解き終わるまで落ち着かない感じ。」「ほう。今の難問は?」「喋るネヴロン。個性や思考、感情を持っているようなネヴロンよ。彼らが言っていたことの意味を理解しようとしているの。そこには重要な謎がある。ああいったネヴロンをもっと見つけて話さなくては。」「俺も数体と話したことがある。無意味なことをまくしたてるばかりだ。俺はあまり期待しない。」「貴方は正しい質問をしなかったのかもしれない。」「まあ、確かに俺はきみほど知識が豊富じゃない。」「…」「それで貴方は?“夜型仲間” さん?なぜ眠れないの?」「きみと同じ、かな。」「本当に?貴方は脅迫的な心配性には見えない。」「つまり、きみは自分を脅迫的な心配性だと?」「ほら、私は話したでしょう。」「眠ってもあまり休めなくてね。昔はひどい夢を見ていた。だがどういうわけか、見なくなると余計に悪化した。今は… 息が詰まるような虚無だ。」「興味深い。つまり貴方は眠ることに不快感を覚えるの?痛みを?時間が過ぎるのを認識している?うーん、次に貴方が眠っているときに観察してみるべきね。」「まあ、ゾッとはしないが。」「その通り。科学だもの。」「つまり、俺はきみが眠っているところを見てもいいと?」「いいえ、それはゾッとする。」「そうだな。」ヴェルソに笑いかけられ、ルネは笑顔を返さずにはいられない。一緒にいると世界が少し輝きを増したように感じる。親密度アップ. 仲間のところへ戻る前に、ルネはどうしてもヴェルソに聞きたいことがいくつかある。ヴェルソの回答のおかげで、ルネのクロマに対する理解が深まる。
4.3.3. マエル
「アクソンと戦う覚悟はいいか?」「…」「聞くまでもなかったな。」
ヴェルソは、湖のそばに一人でいるマエルに近付く。「どうだった?きみのとっての、ルミエールでの暮らしは。」「悲しく孤独な孤児だったことを除けば、良かったよ。」「…」「まあ… 厳密に言えば、ルミエールではみんな孤児だけどね。」「両親が亡くなったのは、いくつの時だ?」「ええと… 3歳くらいかな?うん… 私が生まれたのは… 嬉しくないサプライズだった。両親は子供を欲しがってなかったんだ。抹消の直前ならなおさらね。」「ふーむ、なるほど、きみの誕生はかなり懸念を生じさせただろうな。」「懸念よりパニックっていう方が合ってるかも。それから両親が死んで、私は家から家へを転々とした。覚えていられないくらいたくさん。私は… ちょっと変な子だったと思う。」「俺もだ。」「そうなの?」「ああ。ピアノと絵の具セットに夢中だった。」「私はそれよりもちょっと厄介だったかな。しょっちゅう悪夢を見て、独り言を言って、いつも家から逃げ出してた。」「いや、それが変なら、俺たち全員が変だよ。実際、誰かの目から見れば、誰もが変な子じゃないかな。」「まあ、私は誰が見ても変な子だったけど。」「ギュスターヴから見ても?」「ある意味?だからあのきょうだいは、私を引き取ってくれた。他の誰も私を欲しがらなかったから。だけどギュスターヴもエマも昔は変な子だったと思う。だからわたしを気に入ったんだよ。」「ほら。誰もが変なんだよ。」「…」「ルミエールで好きだったことは?」「建物から建物へぶらぶらすること。誰も弟子にわたしを欲しがらなかったから、倉庫の使い走りをしていた。ある意味よかったよ。おかげで町のどこにでも行けたから、ルミエールのことに一番詳しいかも。」「へえ?お気に入りの場所は?」「空中庭園。ギュスターヴとよく行ったんだ。あなたはルミエールが恋しい?」「ああ、恋しい。場所だけでなく… あの頃のすべてがね。祭りに庭園、港で一晩中踊り明かすこと… こんなことになる… 前の話だ。だが、あの故郷はもうない。場所だけでなく、人も…」「今はわたしたちがいるよ。」「ああ。それに、きみには俺がいる。」「…」「ところで。一晩中踊り明かしたくないか?」「シエルに聞いてみなよ。」マエルはヴェルソに心を開き始めており、彼といるのが心地よくなってきている。ヴェルソにとってのマエルも同様だ。親密度アップ. マエルとヴェルソは過去の思い出を語りながら、一緒に時間を過ごす。それから仲間のところへ戻る。
4.3.4. モノコ
「残念だ、友よ。ノコを甦らせよう。」「ああ。」「俺はいつでもいける。遠慮なく言ってくれ。」「しかるべき時が来たらな。この件が落ち着いた後だ。」
ヴェルソは、ネヴロンの脚を慎重に掃除しているモノコへ近づく。「集めたネヴロンの脚を磨いているのか?」「ああ、綺麗じゃないか!?」「綺麗… とも言えなくもない。」「ふん。オマエの無関心さにはガッカリだ。」「ともかく、なぜ磨く必要がある?」「戦士は戦いに備えるものだ。そして戦闘は肉体と同じく精神も大切だ。」「精神ねえ。」「想像してみろ。オマエはネヴロンだ。そしてオレと会う。オレはオマエに向かって突進する。綺麗に磨かれたピカピカの、オマエの同胞の脚を振り回しながら!怖いだろう、ワッハッハ!」「確かに。オレでもフサフサの足をこん棒にする奴とは戦いたくないな。だが怖いというより、臭いから。」「その後はな。奴らの仲間に姿を変える!ハッハァ!恐怖、そして混乱だ!」「一体やれば勝ったも同然だ。残りは… ただ一掃する。「おっと、お前の言う通り、すっかり怖じ気づいたよ。」「試してみろ。変身できないとしても、敵は怖がるはずだ。なあ、綺麗じゃないか?そら、一本取っとけ。」「ふーむ、そうだな。威嚇要員はお前に任せる。ネヴロンが逃げるほど怖がらせたくない。そうなったら戦えないだろう。」「もっともだ。威嚇はオレが担当する。オマエは一層担当だ。」「一掃だって?ふーむ。よし、それなら… スタラクトを怖がらせに行きたくないか?時間がある。」「ええーと。うん、まあそれは確かに、かなり… 気分爽快だろうな。だが後でな。オレはこの脚を磨き終えなくちゃならん。まだあと20本はある。」「つれないな。よし、もう少し場所を空けさせろ。それと俺にも布を。この脚を敵の目をくらませるほど光らせて、悲鳴を上げさせてやろう!」[嬉しそうな唸り声] 二人でネヴロンの脚を磨きながら、モノコは熱狂的に戦いの歌を響かせる。そしてヴェルソを脅して一緒に歌わせ、二人はとても楽しげに声をそろえて歌う。親密度アップ. ルネが二人を静かにさせようとやってくるが、結局、脚磨きに参加する羽目になる。時間はかかったものの、作業を終わらせた三人は、他の仲間たちのところへ戻る。
4.3.5. エスキエ
「わたしは怒っている。」「エスキエ?」「わたしはひどく怒っている。」「ノコのことか?」「あれは意地悪だった。彼は気にかけているものだと!ルノワールらしくない!」「あいつは… [息を吐く] そうだな、相棒。俺も怒りを覚えるよ。」
「星は見えるか?」「星は空のリンゴだ。」「お前の感性は大好きだよ。」「おっほほー、あの星座はフランソワのようだ。」「不機嫌さが足りないな。もう少し気むずかしい感じが欲しい。」「彼は気むずかしくない、悲しんでいるだけだ。クレアが恋しいんだよ。」「ああ。」「昔のフランソワは “ワァーイ!” だった。だが今は、“ホホーゥ” だ。」「“ホホーゥ”?」「うん、親友たちがいないまま何世紀も過ぎると、“ホホーゥ” となるものだ。」「ああ。だが少なくとも、お前とある程度の、その、“ワァーイ”?は共有しただろう?」「そう!“ワァーイ” だ。昔、世界に私たち四人しかおらず、飛び回って冒険していた頃だ。」「お前はどうしてフランソワのように気難しくないんだ?」「今のわたしは気難しいさ。」「おや、そうなのか?」「わたしも “ホホーゥ” ではあるが、“ワァーイ!” でもある。つまり “ワァーイ” と “ホホーゥ” が釣り合っている。」「なら、今のお前は少し “ワァーホホーワァーホホー” といったところか。」「お前はわたしをよく分かっているな、ヴェルソ。」「俺自身は少し “ワァーホホーワァーホホー“ だよ。近頃の俺は少し “ワァーイ” よりも “ホホーゥ” が強いが。」「…」「なあ、あれは少しモノコに似ているな。」「おおーっ。それに目を細めてしわくちゃにして見れば、その隣のはノコのようだ…」ヴェルソとエスキエは有意義な交流を通して、絆を深める。親密度アップ. 二人は並んで星空を見上げ、星の形を似ても似つかないものにたとえて話す。エスキエの戯れ言はヴェルソにひらめきを与える。それから、仲間のところへ戻る。
4.3.6. 仲間の様子を確認する
マエル「それで、ルノワールといた仮面の人は、あなたの妹?」ヴェルソ「…」「考えたらすぐ分かる。」「彼女の名はアリシア。」「彼女はどうしちゃったの?ずっと仮面を着けていて、無言で、ずっと睨みつけてる。」「彼女は、その… 火事に遭ったんだ。遠い昔。顔と喉を負傷したから、その… ああ。」「ふーん。」「なんで… わたしに会いに来たのかな。」「さあな。きみから聞いて驚いたよ。彼女は以前、俺を助けてくれた。今回も助けてくれると思っていた。だが、異なる側を選んだようだ。“家族は複雑”、だろう?」「うん、まあね。」「腕章を返そうか?」「え?」「着けていると、詐欺師のように感じる。貰ったものではあるが…」「いいから着けといてよ。どっちに付くか選んだんでしょ?」「ああ。俺に腹を立てていないのか?」「不思議だけどね。隠し事は嫌いだけど… ギュスターヴはいつだって、疑わしきは罰せずだった。それに大事なのはあなたの行動。わたしは信じるよ。」「ありがとう。」
5.
ヴィサージュ
旧ルミエールで屋敷が消失し、ペイントレスの心臓を直接破壊する計画が頓挫したため、ルネがアクソンの心臓からモノリスの結界を貫く武器を鍛造させるという代替策を提案する。モノリス周辺にいる 3 体のアクソンのうち、武器を鍛造するには最低 2 体の心臓が必要であり、ヴェルソの提案に従い一行はまず西のヴィサージュに向かう。
5.1.
ヴィサージュという場所
ヴィサージュ (Visages; 顔) は、その名の通り浮遊する巨大な仮面が立ち並ぶ異様な島。紅葉に覆われた景観の中に、喜び・悲しみ・怒りという三つの感情に対応する谷 (Vale) が広がり、それぞれの奥に感情を象徴する仮面のボスが待つ。各谷の奥で巨大な顔がプレイヤーに感情に関する謎かけを出し、その場所の感情をそのまま認めることでボス戦に進む。感情を否定したりすり替えたりするのではなく、あるがままに受け入れることが求められるというのは、ルネの理性への逃避、マエルの怒りの爆発、シエルの笑顔の下の痛みという、ギュスターヴの死後に各メンバーが感情を直視することの難しさを描いてきた Act II の物語を表している。
谷を進むと仮面の守護者 (Mask Keeper; 別名 He Who Guards Truth With Lies) を名乗る正体不明の人物が現われ、ヴィサージュはこの先で待っていると述べる。また、先に三つの谷を進むのも自由とも述べる。ゲームプレイ上は、三つの谷の先のボスを倒しておくとアクソン本体がそれらの仮面を使えなくなり、戦闘が大幅に楽になるという設計。感情の処理を怠ることのツケがシステムレベルで表現されている。
中央の道を進むとヴィサージュと戦闘になる。ヴィサージュを倒すと闇の中から仮面の守護者が現われ、真のアクソンが仮面の守護者であることが明かされて再び戦闘となる。仮面の守護者を撃破後、パーティ全員にマスクを被せて偽りの感情の中で倒そうとする (モノコは元々仮面を持つため効いていない様子がやや滑稽に描かれている)。しかし、シエルは過去に喪失の悲しみや抹消の恐怖を受け入れており、守護者が操る「嘘や隠蔽の仮面」に屈しなかった。このシーンでは、シエルが真実と向き合う強さを持ち、自分を偽る必要がないキャラとして描かれている。シエルが守護者の仮面を倒し心臓を奪う。ヴェルソは消えゆく守護者の体を見ながら「今のはヴェルソだったな。ルノワール?」とつぶやく。ヴェルソはこのアクソンについて何かを知っている。
5.2.
「ヴィサージュ」後のキャンプ
パーティはキャンプに戻る。ルネがアクソンの心臓をキュレーターに渡そうとするが受け取らない。キュレーターに促されてマエルが心臓を渡す。このとき、マエルはキュレーターに一瞬ルノワールの影を見るが、この時点ではその理由は分からない。パーティが二つの心臓のうち一つ目を手に入れたことで、ペイントレスの結界を破るための武器鍛造が現実味を帯び始める。残る目標は東にいるもう一体のアクソン、シレーヌ (Sirène)。そしてその先にモノリスが待つ。
ヴィサージュで三つの感情の仮面と対峙した直後のキャンプは、パーティの各メンバーがそれぞれの仮面を少しずつ外し始める夜でもある。常に他者を支える側にいたシエルが、自分の内面をヴェルソに初めて深く開示する。シエルはヴェルソに「死は家に迎えてくれる友だち」という死生観を語り、失った夫や子供のいる場所への穏やかな受容を見せる。そしてその延長線上で、二人の関係は友人から一歩先へ進む。
マエルとヴェルソの会話では、ヴェルソがマエルの名前の意味「チーフ」「プリンス/プリンセス」を持ち出し、「望まれなかった子供」だと自認するマエルに対して、名前に込められた祝福を指摘する。そしてヴェルソは自分の夢がかつてピアノだったこと、コンサートホールでの演奏を恋しく思っていることを語り、マエルは「これが終わったらオペラハウスを直して演奏を聞かせて」と約束する。この約束は「明日がある」ことを前提とした言葉であり、忘れ去られた戦場で「どこに行っても死だけ」と叫んでいた少女が、未来を想像できるようになった様子を描いている。そして同時に、この物語の一つの結末とも繋がっている。夜の終わりにヴェルソがピクトスでピアノを召喚し、妹のアリシアに聞かせていた古い曲を弾く。マエルが「知ってる気がする」という一言は、二人の間にまだ明かされていない繋がりの存在をさりげなく、しかし決定的に示唆している。
エスキエは仮面のアクソンが空を飛べたことに嫉妬し (シレーヌを先に倒した場合は “あのクラゲたち” (=バレエ) に嫉妬し)、自分の岩を失くした経緯として「笑いすぎて自分を抑えられなかった」と告白する。モノコとヴェルソは互いの髪を切り合い「双子の誕生だ」とふざける。ノコを失った直後のモノコが、ヴェルソとの馬鹿げたやり取りの中に日常を取り戻そうとしている姿が、重い夜の会話の中で息を継ぐ余白を作っている。アクソンの一体を倒したことで遠征は前進したが、残るシレーヌ戦と、その先のモノリスに向けて、パーティの関係性はこの夜を境により深く、より複雑になっていく。
ヴィサージュ後の会話
5.2.1. シエル
「一体やって、残りは後一体。」「次はもっと手強い。」「…」
「きみはどんなときでも落ち着いているな。」「それって質問?」「見解だ。ルネは心配性で情熱的、マエルは神経質で熱心。だがきみは落ち着いている。」「別におかしくないでしょ?」「…」「あたしは… 死と一緒に長い道のりを歩いてきたからかな。」「どういうことだ?」「死はあたしを家に出迎えてくれる友だちなんだ。」「家?」「そう、家。そこに愛した人たちがみんないる。」「きみはあの世を信じているのか?」「どうかな。もしあの世があるなら、死んだ後にみんなに会える。ないなら、あたしも死んだみんなに加わるだけ。どっちみち一緒にいられる。」「その若さにしては興味深い死生観だ。」「だね、あたしはあんたほど年じゃないし。ながーい人生で積み上げてきた英知を共有してくれない?」「俺の英知を認めてくれるとは、優しいな。俺が賢いことを、モノコとの会話でたまに触れておいてくれないか?」「え、モノコの方が年上なんじゃないの?あとエスキエも。あんたじゃなくてあっちに話を聞くべきかもね。」「ぜひそうしてくれ。ネヴロンの脚や岩について価値があることが学べるはずだ。俺に提供できるのは、別の物語だけだよ。」「うーん。今夜はあまり物語の気分じゃないんだよね。」「ああ、せっかく真に暗く胸が痛むようなものを準備してきたのに。」「明日に取っておいて。今夜は他のことをしよ。」「案があるのか?」「場合によるね。今のあんたがどれだけ冒険したい気分か。」「ネヴロン狩りということか?」「…」「どうした?」「あんたがあたしの言葉の意味を理解するのを待ってる。」「あー。つまり… そういう冒険か。」「あんた、独りでいる時間が長すぎたんだね。最後に誰かを口説いたのはいつ?」「モノコを除いてか?確かに、随分前だ。」「それで?」「聞く必要があるか?」「…」シエルとヴェルソの絆は深まっている。親密度アップ. ヴェルソとシエルは一緒に時間を過ごす。仲間たちから離れて… ヴェルソとシエルは友人より少し進んだ関係になった。シエルは心を動かされる。
5.2.2. ルネ
「きみが正しかった。」「なんの話?」「アクソンを倒す可能性だ。“ゼロに近いがゼロではない”。」「“ゼロではない”。」
5.2.3. マエル
「あなたもルノワールの悪夢を見るの?」「ああ。奴は… 振り払いにくい。」「うん。」
「ルミエールでは、両親がきみの名前を付けたのか?」「うん、多分。なんで?」「“マエル” には “チーフ” や “プリンス” という意味がある。あるいは、“プリンセス” かな。」「何の話?」「きみの名前の裏にある意味だよ。」「へえ。なんでそんなこと考えたの?」「きみは自身が嬉しくないサプライズだったと言っただろう。だがきみの誕生は想定外だったとしても、祝福されていたと思う。きみの名前は、両親のきみへの気持ちを示している。きみがどんな人生を歩むか、夢見ていたことの表れだ。」「ふーん、“チーフ” ね。両親は私よりも大きな夢を見てたみたい。」「なぜ?きみはどんな夢を見ていたんだ?」「見ていない。」「きみは未来に何かを望んだに違いない。」「ううん。あの頃のわたしが望んだのはルミエールを出て行くことだけ。それから、抹消される前に世界を少しでも見たかった。」「ふむ、それは叶ったな。今の夢は?」「さあ… まだ探し中。そっちは?望みはあるの?」「望みか… 俺もまだ探しているところだと思う。」「それじゃ、昔の望みは?」「音楽だ。」「そうなの?」「そうなんだ。崩壊の前は音楽学校でピアノを学んでいた。大好きだったよ。コンサートホールでの演奏が心から懐かしい。明かりが落ちて部屋が静まりかえると、最初の音がホールに響き渡る。ただ… 没頭する。指を通して音楽を感じるんだ。演奏するたび、自分の心臓が音符の美しさで壊れそうになるのを感じる。」「素敵だね。」「とても恋しいよ。」「これが終わったらオペラハウスを直せるかも。そうしたら演奏を聞かせてよ。」「喜んで。」「初めて行くコンサートは、あなたのがいいな。それと安心して、満席になるようにするから。町のあちこちにポスターを貼ってあげる。」「無理のない範囲でな。よし、音楽を始めた方が良さそうだ。」マエルはヴェルソと指切りする。笑ってヴェルソは同意する。親密度アップ. マエルとヴェルソは、ヴェルソが最初にどの曲を演奏すべきか話し合い… 話し合いを通して、マエルはひらめきを得る。その後、仲間のところへ戻る。
5.2.4. モノコ
「この遠征隊についてはオマエが正しかったようだ。最高に印象的な集団だよ。」「彼女らが好きになってきたんだろう。」「どうかな。」「そうなんだな。」「…」
「モノコ。髪を切らせてくれ。」「冗談じゃない。」「整えるだけだ。今のお前はボサボサのモップだぞ。」「なんだって?オマエ、最近鏡は見たか?」「俺は問題ない。」「ほーう?」「そうイライラするな。ほら、かっこよくしてやろう。」「ならオマエの髪が先だ。」「分かったよ!」「…」「ふーむ、確かに見栄えがいい。よし、乗った!かっこよくしてくれ!」「ほぉ~、うん、確かに、かなり素敵だ。」「最高だな、双子の誕生だ。」ヴェルソとモノコはブロマンスの関係で固く結ばれている。どちらも絶対に認めないだろうが。親密度アップ. これまで通り、二人は仲間のところへ戻る前に、かっこいいのは誰かを長々と議論する。
5.2.5. エスキエ
「ふむ。その表情は分かるぞ。なぜそんなに機嫌が悪いんだ?」「あの仮面たち…」「奴らがどうした?」「…」「嫉妬しているのか?なぜ?」「私も飛べるはずなのに!」「なら、もう岩を失くすな。どうやって失くしたんだ。飲み込んでいないのか?」「時々… 笑いすぎるんだ。自分を抑えられなくて、それで…」「分かった、ふむ… なるほど… まあ… 押さえるのは難しいな。」
5.2.6. 仲間の様子を確認する
エスキエにもたれかかって星空を見ているマエル。ヴェルソ「演奏しても構わないか?」ピクトスでピアノを出すヴェルソ。曲を弾き終えたあと、マエル「なんて歌?知ってる気がする。」「ああ、古い歌だ。妹によく聞かせていた。」「他にも演奏してくれる?」「もちろん、俺たちには、ああ、一晩ある。よし、いいか?」「そっちは?」「いつでも。少しスペースが必要だろうが。よし。エスキエ?いいか?」
6.
シレーヌ
パーティはヴィサージュで一体のアクソンを倒してその心臓を手に入れた。しかし結界を貫く武器の鍛造にはもう一つのアクソンの心臓が必要となる。一行は東の海のシレーヌの島へ向かう。
6.1.
シレーヌという場所
ヴィサージュが「感情を直視する」試練だったのに対し、シレーヌ (Sirène) は「感情を操られる」試練。このステージのネヴロンは「魅了」を多用する。Sirène はフランス語でセイレーンと読み、ギリシャ神話で歌声で船乗りを誘惑し破滅させた海の魔物と同じ。このステージに足を踏み入れたときからシレーヌの奏でる美しくもの悲しい歌声が建物全体に響き渡っている。
建物は、まるで退廃的なオペラハウスか、あるいは神殿と劇場が融合したような空間。逆光の中にシルエットとして浮かぶ人影が踊るように佇んでいる。モノコは崩壊前に名湖のような様式の建物は存在しなかったと語り、シレーヌを「脅威をもてあそぶ者」と言う。その歌声がパーティの精神を侵食しようとする。様子のおかしいルネらをモノコが鐘を鳴らして正気を保たせる。普段は理性的なルネも、理性を迂回して感情を直接操作される攻撃には脆弱な様子が描かれている。
第 67 遠征隊が壁を爆薬で破壊してくれていたおかげでシレーヌの前にたどり着くことができる。シレーヌの直前でのマエルの「この踊り、絶対前にも見た」という呟きは、彼女がこの世界の深層と無自覚に繋がっていることを改めて示している。
途中にティスール (Tisseur) が布を織っている場所に出る。Tisseur はフランス語で布の織り手の意味だが、比喩的に “tisser une histoire” で物語を織る、"tisser des liens” で絆を織るのようにも使う。ここで描かれているティスールは、ベル・エポックのパリ・オペラ座を裏で支えていた裁縫・織物に従事する女性たちの象徴であり、表で踊るシレーヌと裏で織るティスールが芸術労働の分業を映している。
ティスールは攻撃性がなく、倒さずに進むこともできるが、その場合、シレーヌがターンごとにティスールを召喚してシールド×4 を付与するようになって大幅な苦戦を強いられる。白いネヴロンと同様に見逃したいところだが、どのみちシレーヌを撃破した時点で召喚されたティスールも消滅して耐・魅了 (Anti-Charm) のピクトやマエルの武器ティスウム (Tissenum) も手に入らなくなる。やはり先に倒しておくのがセオリーとなる。
シレーヌの前に立った各メンバーの前に、それぞれの最も深い喪失の幻影が現れる。ルネの前には消息を絶った両親が、シエルの前には死んだ夫と失った子供が、マエルの前にはギュスターヴが、モノコの前にはノコが。しかしヴェルソだけは喪失の幻影はない。67 年間で失った人間が多すぎるのか、あるいは不死者の精神構造がシレーヌの干渉を異なる形で受けているのか。いずれにせよ、シレーヌはヴェルソをじっと見て精神攻撃が効かないと思ったのか、全員の幻影をかき消して戦闘に入る。
戦闘終了後、シレーヌの声にルネ以外の全員が耳を押さえてうずくまる中で、ルネがシレーヌを討ち取る。ステージ入口ではルネが最も強く精神攻撃の影響を受けたが、それが感情を操る攻撃だと判明した時点で、理性による感情の制御に長けた彼女にはもう効かなかったのだろう。二体のアクソンが、パーティの中で最も対照的な二人の女性によってそれぞれ打ち倒される構図は、この作品における感情と理性の相補性を端的に描いている。
シレーヌでの会話
ルネ「ここの建築様式は全く違うみたいね。」モノコ「こういった場所は、崩壊前には存在しなかった。」シエル「綺麗… 現実じゃないみたい…」
ルネ「あれがアクソン?」モノコ「シレーヌだ。脅威をもてあそぶ者。」ヴェルソ「やれやれ。」ルネ「とても…」マエル「ルネ?どうしたの?」ルネ「わ… 分からない…」モノコ「奴が感情を操っているんだ!集中しろ。ここにいる理由を思い出せ。」モノコが鐘を鳴らす。モノコ「気をつけろ。脅威をもてあそぶ者と呼ばれている。だが奴が本当にもてあそぶのは、キミたちの頭だ。」ヴェルソ「素早く動こう。全員が正気を失う前にな。」
ヴェルソ「あまり長い時間、彼女を見るな。さもなくが気が狂う。そのせいで崖から飛び降りた奴がいたよ…」ルネ「…魅力的ね。」マエル「この踊り、覚えがある。ルミエールでこういうの教えてなかった?」シエル「どうかな。あたしは見たことないよ。」
マエル「あれ何?」ヴェルソ「ティスール。シレーヌの配下だ。」ルネ「つまり、作っているものは全部彼女のためなのね。」ヴェルソ「片付けた方がいい。シレーヌと戦うのに有利になるのは間違いない。」
ルネ「彼女は思っていたよりずっと気高い。」ヴェルソ「ルネ。大丈夫、だろうな?」マエル「この踊り、絶対前にも見た。」
6.2.
「シレーヌ」後のキャンプ
シレーヌ戦後のキャンプはモノリスへの最終突入を翌朝に控えた「最後の夜」にあたる。二体目のアクソンの心臓をキュレーターに渡し、マエルの武器「バリアブレイカー」を手に入れる。しかしそのときにマエルは再びアリシアを見て、それが屋敷で見た顔の陥没した女に変わる幻影を見る。
シエルとの会話では「枯れた花 (dead flowers) もいいものだよ」「失った時間に腹を立てる代わりに、一緒に過ごした時間に感謝することを学んだからね」と夫の喪失の果てにたどり着いた境地が語られる。ヴェルソとの関係はさらに深まるが、シエルの「今に集中しよう。今日、つまり今夜ってこと」という言葉は、明日の保証がない世界で「今」だけを選び取る彼女の死生観そのもの。
このヴェルソとの会話でシエルの夫のピエール (Pierre) が事故で海に流されたことが明らかになる。Pierre という人名はフランス語で「石」や「岩」の意味もある。つまり “転がる石はコケを集めない” (🇫🇷 Pierre qui roule n'amasse pas mousse) のように、エスキエが石についての語るとき、かならずその言葉にはフランス語でピエールの名前が入っている。このキャンプでもエスキエがソリア (Soarrie) という名の石を無くして恋しがっている様子が描かれており、このようなエスキエの姿は、シエルにはピエールを亡くした自分と重なって見えることも覚えておきたい。モノリスという岩や、ギュスターヴやマエルの石投げなど、この作品はフランス語の Pierre に意図的にいくつかの意味を持たせているという見方ができる。
ルネとの会話では、互いの両親の話から音楽に共通点があることを見つける。ここでヴェルソが親と同じ芸術家 (絵画) ではなく、音楽に進んだという設定が物語の終盤と結びついてくる。最後に二人は「第 33 遠征隊楽団」の約束を交わす。
マエルは再びギュスターヴへの喪失に向き合い、ヴェルソは「亡くなった人に話しかけてみろ。頭の中でその人は生き続ける」と助言する。マエルは半信半疑だが、一人にもなりたくない。ヴェルソが黙ってそばに座る。言葉が届かないときに沈黙を共有できるのは、ジャーナルを置いて去った夜からの二人の距離の変化を静かに描いている。
シエルはヴェルソがエスキエの腹にワインを隠しているという「秘密」を暴き出し、最後の夜はワインで閉じられる。マエルだけが 16 歳であることのささやかな主張としてリンゴジュースを求める。
この軽やかなやりとりを離れたヴェルソが一人立っている元にアリシアが訪れ “Une vie à rêver” (夢を見る人生) と書かれた手紙を渡す。ヴェルソは妹の仮面を外し「俺の美しい妹に、この醜い仮面は不要だ」と言うと、アリシアは少し嬉しそうな表情をする。だがその温かさを切り裂くように闇の中からルノワールが現れ、ペイントレスを殺すことの代償をヴェルソに問う。ルノワールの一連の言葉からは、Act II を通じて築かれてきたマエル、ルネ、シエルとの絆が、ペイントレスの死と共に消滅しうるものとして語られている。
二人が共に口にする「モノリスの影で」という言葉は、明日、モノリスでこの確執に決着を付けようという互いの宣言である。
シレーヌ後のキャンプの会話
マエルがキュレーターに、布の形をしたシレーヌの心臓を渡すとシーンが暗転。マエル「また… あなたなの?」マエル「誰…」ヴェルソ「マエル?」ルネ「今回は何を見たの?」マエル「わ… 分からない。お、女の人。あれは… なんであんなものが見え続けるの?」キュレーターに向かって、マエル「あなたは誰?」バリアブレーカーを入手。
6.2.1. シエル
「上の空だね。」「なんでもない。緊張しているだけだ。」「ふーん。」「ここにたどり着くまで、長い道のりだった。」「あんたにとっては特に長かっただろうね。」「ところで、きみは随分と落ち着いているようだが。」「そう?」「緊張しないのか?」「当然してるけど… あたしたちは全力を尽くすだけ。それが届こうと届かなかろうとね。」「ふむ。」
「きみは昔は農民だったのか?だから鎌を使っている?」「そうだね。一度農民になったらずっと農民ってこと。」「だが両刃の鎌は農業で役に立つのか?」「効率も2倍ってね。あたしの収穫速度を見せてあげたいよ。」「間違いない。昔はルミエールの庭園広場が大好きだった。今は全く違う光景になっているんだろうな。」「昔よりもだいぶ種類が増えてるかもね。ドーム外チームが周囲の島から新種の植物を色々持ち帰ったから。それでピエールと出会ったんだ。あの人のチームに、ハニーペタルのサンプルを頼んだの。そしたら、あの人ってばブーケを持って来てさ。おまけに挿し木を15箱。」「頭がいい。農民と恋愛をしたいときには、枯れた花よりも生きている植物の方がいいのかもしれないな。」「枯れた花もいいものだよ。」「…」「きみは夫の話をあまりしないな。」「…」「すまない。」「大丈夫…」「ただ… あの人がいないことが今でも辛い。」「…」「あたしたちはどっちも完璧じゃなかったけど、お互いにとっては完璧な存在だった。」「彼に何があったんだ?」「…」「無理に話さなくてもいい。」「ルミエールの近くにある島で、事故で死んだの。遺体は流された。」「気の毒に。」「彼の抹消の覚悟はできてた。けど事故で死ぬなんて思ってなかった。あと5年は一緒にいられるはずだったのに。…」「…」「大丈夫。失った時間に腹を立てる代わりに、一緒に過ごした時間に感謝することを学んだからね。」「いい視点だ。出会えたきみたちは運が良かった。誰もが経験できるものじゃない。」「うん。あたしは… すごく運がいい。」「ああ、そこは敵わないな。」「他のことでなら敵うでしょ。」「“火遊び” を丁寧に言うとそうなるな。」「…」「将来的に… 俺が同じことで… 敵う可能性はあるか?」「今に集中しようよ。今日、つまり今夜ってこと。」「いいように使われている気がするが、それでいい。」「…」シエルとヴェルソの絆はより深まっている。親密度アップ. シエルとヴェルソは仲間から離れたいい場所を見つける。二人は異常に長い時間を共に過ごす。二人はキャンプへ戻る。ルネはヴェルソが見張りをサボったことに立腹している。シエルはルネの不満からヴェルソを救うことができない。
6.2.2. ルネ
「こんなに近くまで来たなんて。」「ああ。」「ありがとう。貴方については、シエルの言う通りだった。」「おっと。実際、礼を言うのはこちらだ。俺一人ではここまで来られなかっただろう。」「明日は来る。」
ヴェルソは第33遠征隊のジャーナルを記録しているルネに近付く。「第33遠征隊の記録を残しているのか?近いうちに死ぬ予定でも?」「明日何があるか分からない。貴方にではなく、私たちにね。」「いつもそんなに大量の記録を取っているのか?」「4歳の頃からずっと。」「本当に?」「脅迫的な研究者を両親に持つと、そうなる。」「だとしても、4歳は幼いな。」「32までしか生きられないと、そうでもないわ。」「…」「ルミエールでは誰もが6歳で訓練を始める。私は両親に弟子入りしたから、それよりも早く訓練を始めた…」「それはいいだろうな。両親はきみと過ごす時間が増える。」「二人には、家に帰らなくていい研究助手が必要だった。簡単な解決策は自分たちの子供を持つこと。」「…」「すごいわね、私に自分の話をさせた。」「質問とはこうやってするものだ。」「…」「俺の両親はどちらも芸術家だった。広く尊敬され、非常に有名だった。だから、二人と同じ道をたどるのはかなりの重圧だった。」「貴方も芸術家なの?」「両親が望んだ方向とは違うが。」「つまり?」「俺が夢中なのは音楽だよ。」「へえ。」「私も音楽が好き。」「何を弾くんだ?」「ギター。貴方は?」「主にピアノだが、ギターも少し。」「ピクトスから楽器を呼び出す方法を知っているだろう?」「…」「聞くまでもなかった。よし、楽団を始めようか!」「第33遠征隊楽団。気に入った。」ヴェルソとルネは同じ情熱を持っていた。ルネはヴェルソのこの一面に興味を引かれる。そしてヴェルソは、音楽好き仲間と演奏することに胸を躍らせている。親密度アップ. 二人はしばし、好きな曲や音楽をどう学んだかについて言葉を交わす。議論は白熱し、数時間続く。どちらも時間が過ぎるのを忘れている。
6.2.3. マエル
「見たものについてまだ考えているのか?」「ギュスターヴがここにいたらな。」「…」
ヴェルソはマエルが悲しそうにしているのに気付き、注意深く近付く。「…」「大丈夫か?」「うん…」「どうした?」「別に。ちょっと… ギュスターヴのことを考えていた。それとルシアンと… みんなのことも。」「…」「考えるのを抑え込めたって思うたびに… どこからともなく現われる波に流されちゃう。」「分かるよ…」「あなたはどうやって対処している?凄く長生きしているよね?」「どんな傷も時が癒やしてくれると言うが…」「そうなの?」「だが、俺は死もあらゆる傷を癒やすと思う。」「…」「悪い冗談だった、すまない。死は必ずしも終わりではない。」「どういう意味?」「ギュスターヴは別の形で生きているだろう?きみの記憶や、きみの他の者への人生の影響、ルミナコンバーターや彼がしていた研究を通してな。」「うん、そうだね。でも… ギュスターヴに会いたいときには、それじゃあんまり楽にならないかな。」「彼に話しかけてみればいい。」「…」「本当だ。そうすれば助けになる。少なくとも… 俺にとっては。その人ならどう言うか、どう反応するかを想像する。そうすれば、俺の頭の中でその人は生き続ける。」「やってみるよ…」マエルはヴェルソのアドバイスを疑っている。彼女は話す気分ではないが、一人でもいたくない。理解しているヴェルソは、黙ってマエルのそばに座る。マエルは二人が共有する静けさに感謝する。親密度アップ. それから、仲間のところへ戻る。
6.2.4. モノコ
「ついにここまで来たな。」「そうだな。」「覚悟はできているか?」「ああ。」
「タイクツだ。カードかサイコロで遊ぼう。」「嫌だ。お前はいつもズルする。」「違うな、オレはいつも勝つ。弱い奴だけが腕の悪さを棚に上げて不正だと言う。」「他のジェストラルたちだってお前と遊びたがらない。彼らはみんな弱いか?」「哀れな負け犬たちだ。」「分かった、決闘ならどうだ?ちゃんとしたのは何年もやっていない!うん、決闘の方がずっと楽しい。血をたぎらせよう!ほら、決闘しよう!楽しいぞ!」「いいぞ、負ける準備をしておけ!」ヴェルソとの決闘に入る。「はは!負けたのはそちらでは?」「運が良かったな。」「あー、何と言っていたかな? “弱い奴だけが腕の悪さを棚に上げて不正だという”?」「うーむ。お前が正しい。それともオレが言ったことだからオレが正しいのか?記憶よりも手強かった。優れた技術だ。オマエの勝利に敬意を表する。」「こちらこそ、お前の敗北に敬意を表するよ。お前の言う通りだったな、旧友よ。楽しかった。さあ、飲みに行こう。喉がカラカラだ。」モノコとヴェルソはまた手合わせできることにワクワクしている。互いの好意を示す、彼らだけの特別なやり方だ。親密度アップ. この決闘を通して、モノコは忘れていたスキルのいくつかを思い出した。二人は一緒に酒を飲み (モノコは仮面のせいで飲めないが)、仲間たちのところへ戻る。
6.2.5. エスキエ
「ソリア (Soarrie) が恋しいよ。」「俺もだ。」「ソリアは私が初めて貰った岩だったんだ。」「そうなのか?」「うむ。フランソワはとーってもうらやましがってな、クレアから代わりの岩を貰っていた。」「待て、フランソワが自分の意思を持っているなら、なぜお前から盗み続ける?」「私たちが相棒だからさ!フランソワはすごく楽しい奴だ。」
6.2.6. 眠る
シエル「あたしたち、やったね。」マエル「本当にペイントレスと対峙するんだね。」ルネ「ようやくこの輪廻を断てる。」シエル「それはそうと… ここにいる誰かさんは、あたしたちにとんでもない秘密を隠していた。」ルネ「何のこと?」シエル「バレないと思ったんでしょ?」シエル「エスキエが何でできているか、今まで誰も疑問に思わなかった?あたし、エスキエと話したんだ。」立ち上がってエスキエに近付くシエル。エスキエ「すまない、ヴェルソ!」エスキエの口から吐き出されるワインをコップに注ぐシエル。エスキエ「彼女は甘美な石を約束してくれたんだ!」ルネ「え!それはワイン?」ヴェルソ「オレはコイツの中に個人的な隠しものをしていた。どれも素晴らしいワインだよ。普段なら分けないが、今日は例外にしてもいいだろう。」エスキエ「友よ、独りで飲むのはやめろと言ったのに。」シエル「あんたの偉大なる寛大さに。」マエル「なんでこんなんが好きなのか分かんないよ。」ルネ「年を取れば分かるわ。」マエル「リンゴジュースある?」ヴェルソ「ああ、俺は、いや、続けてくれ。」
仲間から離れるヴェルソにアリシアが近付く。アリシアがヴェルソに Une vie à rêver (仏: 夢のような人生) と書かれた手紙を渡す。ヴェルソはアリシアのマスクを外す。ヴェルソ「俺の美しい妹に、この醜い仮面は不要だ。」少し笑ったようなアリシアをヴェルソが抱きしめる。暗闇に立つルノワール「お前はその子を抱きしめながら、死を宣告している。」ヴェルソ「お前がこいつをここに!?」首を振るアリシア。ルノワール「私は戦いに来たのではない。だが息子よ。無に消えることがどんな意味を持つか、分かるか?結果について考え抜いたことはあるか?お前のためではなく、私のためですらなく、彼女らのために。彼女らの記憶、夢、互いへの愛とは?本当に死を描いている者は誰なのか?そして代わりに生を描いているのは?彼女が望む限り、我々は存在し続ける。お前は我らが与えられた者を腐らせたがる。時折、我々は自身を囚える牢の柵を描く。絶望が目をくらませる。代償を払う覚悟はできたと思っているだろう。だが、お前のために、彼女らに代償を払わせるのか?」ヴェルソとルノワール「目前で、すべてが明らかにならんことを。牢の柵と柵と合間にて。」ヴェルソ「モノリスの影で。」ルノワール「モノリスの影で。」
6.2.7. ワールドマップに戻った後
シエル「うわ、昨日の夜は飲み過ぎちゃった。」モノコ「何も覚えてないぞ。」エスキエ「キミはオレを空っぽにしたぞ、友よ!」マエル「酔っ払いだらけ。」
7.
モノリス
二体のアクソンの心臓を手に入れたパーティは、キュレーターの鋳造したバリアブレイカーでモノリスの結界を破壊する。物語は、モノリス、ペイントレス、そしてこの世界の真実の核心に迫ってゆく。
7.1.
モノリスという場所
結界を突破して進んだ先には、ルミエールからはるか遠くに見えていたモノリス、そしてペイントレスが手の届く距離に見えている。マエル、ルネ、シエルは互いに言葉を交わしながら前進して行く。その三人から一拍遅れて、ヴェルソは遠目にペイントレスを見据えたまま立ち止まり、何かを考え込んでいる。そのようなヴェルソの様子を、モノコが一瞥してから、何も言わずに先に歩き始める。ヴェルソも覚悟を決めたようにその後に続く。
パーティはモノリスの真下でペイントレスに戦いを挑むが、ペイントレスは何も反応してこない。戦闘中、時間が凍り付き、旧ルミエールの屋敷にいた、無顔でキュレーターと同じ形質を持つ「ペイントレスの本体」が現われてマエルに接近する。マエルも無意識に手を伸ばす。その直後、マエル、ルネ、シエルの顔が次々に延焼する。しかしヴェルソとモノコには影響がない。炎は一瞬で消え、ペイントレスはその場から立ち去る。パーティもペイントレスを追ってモノリスの内部に入る。
モノリス内部は、これまでにパーティが歩いてきた土地を模した風景が続く長い道になっている。すべてのエリア名に「汚れた」(Tainted) が付き、各エリアのねじれた (偽の) 風景が複写されている。
モノリスを進むと、世界が突如モノクロに変わる場面に何度か遭遇する。色彩が抜け落ちた景色の中に、キャンバスの前に立つ人影が現われる。ペイントレスの過去の記憶の一瞬を覗き込んでいるとマエルが言う。
汚れた戦場を抜ける分岐にギュスターヴの墓があり、彼の義手が置いてある。これが現実のギュスターヴの墓地ではないことを分かっているマエルは「あ…」と声を出すだけで、そこに何かがあるわけではない。墓石はヴィサージュの悲しみの谷エリアに並んでいたものと同じデザインなので、この世界では一般的なものなのだろう。分岐を左に向かうと屋敷に通じる扉がある。
7.2.
父親の最後の懇願
モノリス頂上の直前でルノワールがパーティを阻む。ルノワールは体力が半分になると闇のクリーチャー (Dark Creature) を召喚して完全回復する。再び体力が 1/4 を下回るあたりで消失 (Vanish) 攻撃を使ってメンバーを戦闘から消し去ろうとする。この攻撃を食らったメンバーは抹消と同じようにクロマが霧散して戦闘から離脱する。この攻撃は、ルノワールが本世界における抹消の真の発動者であることを示唆している。
ルノワールとの戦闘が終わると、ルノワールはヴェルソに家族への回帰を懇願する。ルノワールは、自分たちが別の家族の複製として存在していることを気づいていながら、それでも家族という幻影に殉じようとしている。この会話の中でデサンドル家 (Dessendre Family) という名が初めて語られる。
ここでシーンがモノクロ化し、ルノワールの前にキュレーターが現れる。ルノワールはキュレーターが何者かを知っている様子で「破壊してもお前の妻は戻らない、互いをつなぐ最後の結びつきがなくなるだけだ」と語りかける。なぜルノワールが「お前」と呼び対等に語りかけるのか、両者はどういう関係か、その言葉が本当に意味するところが判明するのは、キュレーターの正体が明かされてからとなる。キュレーターはマエルの手を取り、ルノワールの胸に当てると、ルノワールは「私も彼女らを愛している」と漏らして消滅する。顔を落とすヴェルソ。キューレーターはその場から消える。
ルノワール戦の報酬としてルノワールのスーツ衣装を獲得する。報酬としてはコスチューム装備品だが、意味的には息子が父親の服を着るという、エディプス的かつ喪主的な儀礼の表象となる。
ルノワール戦の会話の書き起こし
パーティの行く手に現われるルノワール。マエル「あれは… お前…」ヴェルソ「俺たちは彼女を倒す。」ルノワール「嘆いているのは彼女だけではない。お前を失う痛み… 彼女はそれを、私に引き継がせた。罰、かもしれんな。事が起きたときに、その場にいなかったことへの。私は息子を失うことを拒む。」ヴェルソ「あの息子は他人だった。」ルノワール「だが、お前は違う。違うのだ。」ヴェルソ「あんたは何年も前に俺を失った。逆もしかりだ。」ルノワール「だから選択の余地をくれないのか?こんなことをする彼女とお前、どこに違いがある?」ヴェルソ「俺は疲れた。」ルノワール「では私を信じろ。私たちはお前の家族だ。」ヴェルソ「家族は… 複雑だ。」ルノワール「お前を救うことが失うことを意味するなら、それでいい。」ヴェルソ「奴から能力を奪いさえすればいい。」マエル「殺す方法は見つかるはず。」
ルノワールとの戦いが始まる。ルノワール「私たちを愛していないのか?」「彼女を失望させるな。」「私たちは互いを必要としている。分からないのか。」「好きなだけ私を恨め。そうすることで生きられるというのなら。」「思い出さないのか?昔のことを。」「私たちから目を背けるな。」ルノワールの体力が半分になったところで闇のクリーチャーが現われ、ルノワールの体力が全快する。ルノワール「妹にはもっとふさわしい場所がある。」
ルノワール撃破後、膝をついたルノワールを切りつけるマエル。呻くルノワール。しかしクロマが降りかかり復活するルノワール。「お前の本当の家族が誰か、思い出せ。彼女ではない。お前の妹。母親。私。私たちが、お前の家族だ。お前は我らに死を宣告する。何のために?お前の犠牲で本当に救われるのは誰だ?」マエル「あなたの妹。それに… 母親…」ヴェルソ「自分の幻影に溺れすぎているあんたには、理解できない。」ルノワール「では、デサンドル一家二度目の破滅を祝おう。」ルノワールが地面に杖を突き立てると闇がパーティを襲う。
そこにキュレーターが現われる。ルノワール「やっと、会えたな。お前の息子の形見は、もうこれしかないんだ。破壊してもお前の妻は戻らない。互いをつなぐ最後の結びつきがなくなるだけだ。」マエルに近付くキュレーター。マエルの手を取り、ルノワールの胸に当てると、ルノワールが消えて行く。ルノワール「私も彼女らを愛している。」消滅するルノワール。キュレーターもその場から消える。マエル「やったよ、ギュスターヴ。」ルネ「ねえ。どうやったの?」マエル「分からない。キュレーター… そんな気がする。」ルネ「もう一度できる?」マエル「どうだろ。ええと、多分?うん、できると思う。」シエル「ルノワールは何だったわけ?あいつがキュレーターに言っていたことって?」ヴェルソ「俺には… 分からない。」マエル「彼女はこの先にいる。」ルネ「ええ… この向こうにルミエールの未来がある。あらゆる遠征隊が目指してきたもの。わたしは信じるわ… 自分たちを。」
7.3.
頂上のペイントレス
第 33 遠征隊はモノリス頂上で遠くルミエールを見るペイントレスと対峙する。数十年間、ルミエールの人々が抹消の執行者と信じてきたペイントレスだが、実際に見る彼女は息子を失った母親がこの世界で嘆き悲しみ続けているという姿であった。これは遠征隊の前提を崩す。以前の戦いで、ルノワールから聞いた「キュレーターの妻」がペイントレスのことだとルネが気づく。このペイントレスがヴェルソを「真のヴェルソ」と柵越し、マエルを「アリシア」と呼ぶ様子は、一見して彼女の精神がすでに現実とこの世界とを識別できない段階にあることを匂わせる。ヴェルソが「(真の) ヴェルソは死んだ」と肯定することで、彼女が数十年間営み続けてきた代償行為の前提が崩壊する。これはペイントレスがこの世界にとどまり続けてきた理由そのものの消滅である。
ペイントレスを撃破すると崖下から巨人が登ってくる。ここでヴェルソはエスキエを呼びソリア (Soarrie) を渡して空中ステージでの第二戦が始まる。このシーンのヴェルソは、どう見てもソリアを自身の鞄に隠し持っており、「見つけたぞ」と渡しているのはやや欺瞞的に見える。ソリアを鞄の底に温存し続けたのは、ペイントレスと対峙すること、そしてその後に起きることへの葛藤があり、これが飛行というショートカットを出すことをためらわせていた、という、彼自身の内的逡巡の現われだったと解釈できる。彼のこのような内的逡巡の性格は、アリシアの手紙をこの時点で読んでいないことからもうかがえる。
戦闘の第三段階では、ペイントレスが攻撃を止め、パーティを回復し続けながら一方的に攻撃を受け、ヴェルソに手を引かれながら倒れる。マエルはルノワールの時と同じようにペイントレスを消そうとするが、躊躇して手が震えている。ヴェルソはその手を取り、ペイントレスの胸に手を当てる。ペイントレスの体が霧散して消滅し始める。その瞬間、ペイントレスはマエルに向かって現実の娘の名「アリシア」と呼ぶ。一瞬、マエルの目が濁った不気味な色に変わり、驚いたように手を引っ込める。ペイントレスが消えると、モノリスに描かれていた数字も消滅する。この瞬間は、遠征隊にとって勝利の祝祭であるとともに、ヴェルソにとっては母の死と沈黙が並置されるており、またその勝利の裏に隠された真実が後に災いとなって訪れることを示唆する、
シエルは第 33 遠征隊の旗を取り出し、マエルにそれを立てるように促す。ペイントレスが消滅した今、もう遠征隊は結成されないだろう。最後の遠征隊となる Expedition 33 の終わりを象徴する旗がモノリスの頂上に立てられる。マエルの「家に… 帰ろう」という一言で、パーティはエスキエの背中に乗ってルミエールへの帰路に着く。
ペイントレス戦の会話
ルネ「ここは… 外?」マエル「彼女はそこにいる… 感じる。」モノコ「できるだけ準備をした方が良い。上ったが最後、引き返せないぞ。」
マエル「彼女だ。ペイントレスだよ。」シエル「キュレーターにそっくり。」ルネ「ルノワールはキュレーターの妻の話をしていたわね。彼女がペイントレスなの?」悲しそうにペイントレスを見るヴェルソ。ペイントレス「帰って… きたのね…」ヴェルソに近付くペイントレス。ペイントレス「でも火事が… あなたは本当にここにいるの?それともあの人が… ああ… またあの人にだまされている?アリシア…」ルネ「アリシア?」ペイントレス「あなたの顔…」マエル「わたしの顔?わたしの顔が何?また燃やす気?」ルネ「アリシアは貴方の娘。」シエル「マエルを見ると思い出すんだね。失った娘のことを。」ペイントレス「一緒に来て。家に帰りましょう。」ヴェルソ「ああ。あなたは家に帰らないと。」ペイントレス「まただましたのね。彼女はアリシアじゃない。あなたはわたしのヴェルソじゃない。」ヴェルソ「ああ、ヴェルソは死んだ。」ペイントレス「いいえ、違う、あなたは彼の創ったもの。わたしじゃない。このキャンバスは奪わせない!」ヴェルソはルネを見ながら「だから俺たちは遠征隊を創り出した。」ルネ「明日は来るわ。」
ペイントレス戦開始。ペイントレス「あなたをこんな風に使うなんて、なんて残酷な父親。」「自分が何をやったか分かっている?あの子を殺したのよ!」「あなたたちはどうしているの?どうでもいいわ。」「モノコ。あなたも?こんな風にヴェルソを裏切るなんて。」
撃破後、膝をつきながら絶叫するペイントレス。地面が揺れ始める。ヴェルソ「クソ!まずいな。」崖の下に居た巨人 (ルミエールでペイントレスと呼ばれていたもの) が現われる。ヴェルソ「エスキエ!」飛翔して現われるエスキエ。ヴェルソは鞄から石を取り出して「見つけたぞ。」エスキエ「おおーっ!ソリアだ!」石を受け取ったエスキエはパーティを乗せて飛べるようになる。エスキエ「よぉ~し!出発進行!」ルネ「行きましょう。」
戦闘ステージが変わり、巨人に顔に納まったペイントレスと、エスキエの背中に乗ったパーティが対峙する。ペイントレス「ルノワールは好きなだけ嘆けばいい。わたしはわたしのやり方で悲しむわ。」「父親に伝えて。“わたしの世話をする” 必要はないと。」「傲慢な人。わたしが描き方を教えたのに。わたしの創ったものに反抗させようとするの?」「バカな子!あなたがわたしを拒絶したせいで、あの子は死んだ!」巨人が黒い闇をパーティに撒くと全員に「呪い、非力、無防備」がかかり、ペイントレスに 9 個のシールドが付与される。「わたしは狂っていない。自分が何をやっているか、ちゃんと分かってる。」
撃破後、地面に倒れ込むペイントレス。マエル「終わったの?」ヴェルソ「いや、まだだ。」再び戦闘に入るが、ペイントレスはもう立つ力も残っておらず、一方的にとどめを刺すことになる。消えて行くペイントレスがヴェルソに近付いて行き倒れ込む。ヴェルソはペイントレスの手を取って横にする。ペイントレス「どうして?」ヴェルソ「今は休むんだ。状況はすぐによくなる。」涙声のヴェルソ。マエルが近づき、手を胸に当てる。消えゆくペイントレス。ペイントレス「アリシア。」マエルは驚いたように手を引っ込めると、ペイントレスは消滅して花びらのようなクロマが飛び散る。モノリスに書かれた数字も霧散する。シエル「終わっ… た。数字が…」ルネ「彼女は消えた。消えたわ!」モノコ「終わったな。自由だ。」とヴェルソに話しかけるが、ヴェルソは母親を亡くしたばかりでまだ呆然としている。モノコ「キミたちは、みんな自由だ。」マエル「これって現実?」シエル「うん… ギュスターヴも見てくれてるよ。ほら…」シエルは第 33 遠征隊の旗を取り出す。シエル「立てようよ。」マエル、ルネ、シエルは崖の淵に進む。ルネ「恐らくだけど、もう遠征隊はないわよね?」シエル「象徴的じゃん!」マエルは二人の顔を見て、第 33 遠征隊の旗を立てる。マエル「家に… 帰ろう。」シエル「うん…」
8.
ルミエールへの凱旋
モノリスからルミエールまでのエスキエの背に乗った飛行では、死の覚悟から解放され自由になった者たちがこれからの人生について考える。この遠征で常に現在だけを見ていたシエルが、この物語の中で初めて「未来」を想定した言葉を発する。しかし、それも表面上のことで、これから起きる悲劇までのわずかな時間の中だけ。ヴェルソとモノコはそれを知っている様子で、未来について語る彼女らを見ながら押し黙っている。
巨人が撃破され、モノリスから数字が消えたことはルミエールからも観測されており、帰還した第 33 遠征隊は市民に出迎えられて凱旋する。何度振り返ってもモノリスの数字は消えている。ここでは、市民の歓迎、子供たちのエスキエやジェストラルへの畏怖、エマや三人の弟子たちへのギュスターヴの訃報、といった場面が配置される。この場面でマエルはギュスターヴのジャーナルを弟子たちに手渡す。
ヴェルソは祝祭の群衆から離れて独り岸壁に座り、前夜にアリシアから受け取った手紙を開封する。モノリスの道中、ルノワールやペイントレスとの対峙前、どの瞬間に開封しても彼は引き返せた可能性があるが、彼はあらゆる選択肢が失われ引き返せなくなった後でこれを読むことを選んだ。これは彼が自身の計画を正当化するために意図的に真実と向き合うことを遮断する、という、ルノワールが「絶望が目をくらませる」と前夜に警告した実演と言える。
8.1.
手紙に記された真実
アリシアがヴェルソに託した手紙は、これまでの物語で与えてこなかった世界の真の構造を記している。
兄さん。二つの家族を悩ませる戦いやごまかしにはもううんざりなの。だからこの手紙をあなたに託す。彼女に渡すかどうかは好きにして。
冒頭の一文は、現実世界の家族と、その複製の家族の両方が存在しており、そしてそれらが互いに相手の運命を巡って争っていることを述べている。先の戦いでルノワールはデサンドル家という現実世界の家族の名前を明かしている。
これから何が起きても、わたしの心は安らか。その時が来たら、兄さんもそうだといいな。マエル。わたしの兄とあなたが一緒に笑い合っているのを見ると、変な感じ。あなたには、わたしを苦しめる傷も記憶もない。アリシア… 彼女がそうなるはずだった。描かれたわたしではなく。
彼女はまた、ペイントレスの死によってこの世界や彼女自身が消滅することも受容している。マエルはこの世界に転生した現実世界のアリシア。現実世界のアリシアは、火傷跡があり、右目が欠損し、声も出せないが、マエルはそれを補正してこの世界に入ってきた。しかしこの世界の「複製のアリシア」は現実のアリシアのまま作られた。火傷跡がなく、声もあるマエルが、複製の兄ヴェルソと笑い合っているのを見て、本当は複製である私があなたの場所にいるべきだったのに、という心の痛みを露呈する。複製のアリシアは、自分が複製であること、そして自分の鏡像がこの複製の世界で幸福に生きている姿を目にしながら、その現実を引き受けている。
わたしの家族は、あなたの家族の複製。そしてこの世界は鏡。あなたの母親、ペイントレスが悲しみを避けるために描いた世界。
さらに、ペイントレスが現実世界のアリシアの母で、悲しみを避けるためにこの世界を描いた (創造した) という、物語の根本的な構成を初めて明かしている。つまり、この複製世界は画布 (キャンバス) の中に描かれた世界であり、プレーヤーがこれまでに見てきた風景、話してきた人々やエスキエ、ジェストラルは、すべて絵の中の世界だと。ここで、アリシアの母の悲しみとは、物語で何度か描写されている、屋敷の火事で現実世界の息子ヴェルソを失ったことを指している。アリシアの母は、息子を亡くした悲しみから逃れるためにヴェルソが幼い頃に描いた画布に入り、自身でヴェルソや家族の複製を画布に描いた、ということである。
これ以降、現実世界の存在と区別するために、アリシアの母によって画布の世界に描かれた存在を画布の~ (Painted -) と表現する。
あなたたちが旅をやり遂げると、わたしたちはみんなが深淵に落ちるでしょう。ペイントレスの世界を消していくと… あなたはきっと唯一の力を失う。わたしたちを消す人に立ち向かう力を。愛の証明に、抹消の花々を引き起こす人。彼女を愛しているから。あなたの父親だよ。
また、遠征隊の目的とそれが引き起こす致命的な結果についても言及している。ペイントレスはこの複製世界を滅ぼそうとしている力から世界を守っており、遠征隊が旅をやり遂げると (ペイントレスを倒すと) その効力が消えて滅亡の力に抗えなくなると記されている。そして、画布に描かれた人々を消そうとしている人 = ゴマージュの真の執行者が、現実世界のアリシアの父親、ルノワールだとも記している。現実世界の母であるペイントレスを妻とするのはキュレーターであることがモノリスの行程で言及されている。つまりキュレーターの正体はマエルの父親の現実世界のルノワールであり、ゴマージュの直接的な執行者でもあり、複製世界を滅亡させるために何も知らないマエルに協力している。その執行動機は母を画布の中から引き剥がして現実世界に連れ戻す、という屈折した愛である。
モノリスで、彼女は私たち全員に警告を描いている。彼女の力は弱まっているから救えるのはほんの少し。
一方で、ペイントレスがモノリスに書いていた数字は劣勢状況への警告だったことが明かされる。ペイントレスは画布世界全体を守ろうとしているが、衰弱で徐々にルノワールに押し切られており、毎年、守れる年齢層が縮小していた。その敗退の進行状況をモノリスに刻み続けていた。これまでルミエール市民が何十年も呪い続けた数字は、ルノワールに抹消されようとしている人々に大事な人と別れる時間を与えるための予言だった。
わたしたちは両方の家族の成功を願っている。でもあなたの家族は、生き残れるのはどちらか一つだと思っている。けれどわたしたちととも生きてきたあなたなら別の道を見つけるかもしれない。あなたの父親や姉とは違うのかもしれない。わたしが彼らとは違うように。あなたの母は生を描く。反面、あなたの父は死を描く。あなたは何を描く。
デサンドル家は、現実世界の家族と複製世界の家族は同時に存続できない、というゼロサムの制約を信じており、そこにペイントレス vs ルノワールの闘争の土台がある。しかし複製のアリシアは二者択一の前提そのものを疑う第三の道の可能性に希望を託す。母は生の過剰な保存 (画布の永続化)、父は死による前進 (画布の完全な消去)。この両極を挟み込む形で、マエルに第三の描き手としての自己定義を問いかける。
ここまでの展開でプレーヤー (またはルネやシエルも) が断片的に察していた真実の構造が、ここでマエルに開示されようとしている。しかし、マエルがこの真実を知ったところで取り返しは付かず、これからルミエールに起きる悲劇は回避できない。ヴェルソはこの手紙を海に捨てる。
8.2.
ルミエールの抹消
手紙を捨てたヴェルソがモノリスに目を向けると同時に、モノリスからの衝撃波のようなものがルミエールに到達する。ルミエールから光が消え、この世界での生命の根源であった「色彩」が失われる。ペイントレスが長きにわたって維持していた庇護が、ここで完全に消失する。ルミエールの全市民が次々と花びらのように霧散してゆき、「後に来る者」に渡されるはずのジャーナルは受取人を失い宙吊りになる。
シエルは霧散する自分の体を見ながらすべてを理解し受け入れるような諦観の笑みを浮かべて消える。ルネは周囲を見回しながら状況を冷静に理解しようとする姿のまま消える。マエルは最後に残り、他の人が消滅してゆくのを目に焼き付けながら悲しみの中に霧散する。
すべてを喪失した後、Act II は幕を降ろす。
凱旋からルミエールまでの会話
パーティを乗せての飛行が可能になったエスキエの背中に乗ってルミエールへ向かう。シエル「まだ不死っぽい?」ヴェルソ「昨日ほどではない。」シエル「試してみる?」ヴェルソ「申し出には感謝するよ。」シエル「モノコ。モノリスに着いてからのあんた、特に静かだったわね。」モノコ「そうか?」シエル「この後は?ルミエールに帰って… 人生は続く?」シエル「うん。あたしたちには何十年もある。不死ってこんな感じなのかもね。こんなに時間があったら何すればいいの?」ルネ「遠征隊は終わるかもしれない… けれど、私たちにはまだすることがある。解決していない疑問がたくさん残っているわ。」エスキエ「おお、前方にルミエール!」
出発した港に到着し、町の人々の歓迎を受ける第 33 遠征隊のパーティ、それにヴェルソ、エスキエ、モノコ。何度振り返って見てもモノリスの数字は消えている。陽気に踊るエスキエ。子供たちは伝説のジェストラルを怖々と見ている。エマと三人の弟子はマエルからギュスターヴが亡くなったことを知らされる。ヴェルソは岸壁に座り、前夜にアリシアから受け取った手紙を読む。
「兄さん。二つの家族を悩ませる戦いやごまかしにはもううんざりなの。だからこの手紙をあなたに託す。彼女に渡すかどうかは好きにして。これから何が起きても、わたしの心は安らか。その時が来たら、兄さんもそうだといいな。マエル。わたしの兄とあなたが一緒に笑い合っているのを見ると、変な感じ。あなたには、わたしを苦しめる傷も記憶もない。アリシア… 彼女がそうなるはずだった。描かれたわたしではなく。わたしの家族は、あなたの家族の複製。そしてこの世界は鏡。あなたの母親、ペイントレスが悲しみを避けるために描いた世界。あなたたちが旅をやり遂げると、わたしたちはみんなが深淵に落ちるでしょう。ペイントレスの世界を消していくと… あなたはきっと唯一の力を失う。わたしたちを消す人に立ち向かう力を。愛の証明に、抹消の花々を引き起こす人。彼女を愛しているから。あなたの父親だよ。モノリスで、彼女は私たち全員に警告を描いている。彼女の力は弱まっているから救えるのはほんの少し。わたしたちは両方の家族の成功を願っている。でもあなたの家族は、生き残れるのはどちらか一つだと思っている。けれどわたしたちととも生きてきたあなたなら別の道を見つけるかもしれない。あなたの父親や姉とは違うのかもしれない。わたしが彼らとは違うように。あなたの母は生を描く。反面、あなたの父は死を描く。あなたは何を描く。」ヴェルソはその手紙をゆっくりと海に捨てる。そのとき、モノリスからの衝撃波のようなものがルミエールに到達し、すべての人々は花びらのように霧散する。シエルはその死を受け入れるように笑みを浮かべながら消える。ルネは何が起きているのか周囲を見回しながら消えて行く。残ったマエルも消滅する。
9.
EPILOGUE. アリシア
このエピローグは、現実世界のアリシアが画布世界のマエルとしての人生を始めようとする 16 年前の出発点を、現実世界から俯瞰して説明する。モノリス歴 49 年は画布世界でマエルが生まれた年であり、そのときに現実世界でのやりとりを表している。
冒頭、火に包まれた屋敷の中に立ち、ゆっくり振り返り手を差し伸べるヴェルソ。ベットで目を覚ますアリシア (マエルの前身)。窓の外に見える歪んでいないエッフェル塔が、ここが現実世界のパリを舞台にしていることを示唆している。アリシアの顔には重い火傷跡があり右眼球も欠損している。
ベッドからゆっくり起き上がるアリシア。この部屋は、Act I でギュスターヴがマエルを見つけた部屋と同じだが、これはパリにある本物の屋敷。下から姉のクレアがアリシアを呼ぶ声がする。アリシアは返事をしようとするが声がでない。火事で喉にも損傷を受けているためで、画布の世界のマエルの姿は、現実世界のアリシアが「そうあるはずだった」健常な姿として描き直されたものであったことがわかる。アリシアが階下に降りる途中の階段に、兄ヴェルソの描いた家族の肖像画が飾られている。
屋敷内はほとんどの扉が閉ざされており、探索できる範囲は限られている。
屋敷はまだ火事からの修復中で、ルノワールやクレアのような画家が現実の建造物も創作できることを示唆している。
屋敷の出口では、外の世界がパリであることが物語で初めて明かされる。
ダイニングホールでは、壁に並ぶ家族の作品の前でアリシアが漏らす「私が認められたのはこの小さな絵だけ」という一言は、画家の一家のなかで彼女だけが十分に才能を認められてこなかったことを示している。これは Act III の根底にあるマエルの心情を表している。
その近くにはノコとモノコ 3 世という名前の 2 頭の犬が暖炉で温まりながら寝ている。
向かいにはクレアのハープと母のピアノが置かれている。ヴェルソのピアノや自分に書いてくれた歌を思い出して喪失感を口にする。
アトリエでは、ひときわ大きなキャンバスの前に父ルノワールと、母アリーン (Aline) の姿がある。このキャンバスは画布の世界の本体。彼らの魂は画布の中にいるため蝋人形のようにたたずんでいる。彼らの目の周りには鮮やかな青い色が塗られており、画家としての魂が画布へ完全に転送されている状態を示している。アリシアの姉クレア (Clea) がアトリエに現われ、アリシアに画布世界の状況と家族の真相を説明する。
9.1.
クレアが告げる真相
母アリーンと父ルノワールは現在も画布の中で対立を続けており、母は父をモノリスの底 (ルノワールの下書き) に、父は母をモノリスの頂上に、互いを幽閉し合った膠着状態にある。これは前章でパーティが目撃した「父 = キュレーター、母 = ペイントレス」の配置の現実世界からの俯瞰図であり、両者がモノリスを挟んで対称的に拘束し合っていたことが伝えられる。
クレア自身は画布の外から父を支援しており、母のクロマが母自身に環流することを防ぐために「クロマを操り、キャンバスを操る女」を画布内に放ち母を弱体化させていると話す。
画布世界のヴェルソは母の記憶を元に母によって描かれたコピーであり、現実世界のヴェルソは既に火事で他界している。アリシアは生き延びたが、声と片目と顔を失った。この事件で、母アリーンは息子の喪失を受け止めきれず、息子が幼少期に創った画布世界に閉じこもることを選び、その内部で新たな家族とともに世界を描き直した。
クレアは感情的な配慮を一切排した冷淡な態度でアリシアに接する。クレアは当初、自分一人が画布に入って父を助けようとして妹の参加を「足手まとい」と拒絶する。しかしアリシア自身が手伝いたいと意思表示すると、クレアは譲歩し、キャンバスに入ってるノワールを手伝うことを提案する。続けてクレアは、火事の際にアリシアが作家 (les Écrivains) たちの策略に何らかの形で利用されることを許してしまい、その結果ヴェルソが死んだという因果を突きつける。
ここで彼女の言葉から、デサンドル家と対立する作家という勢力の存在が初めて言及される。火事は事故ではなく、作家たちがアリシアを介してデサンドル家を攻撃した事件であり、ヴェルソは妹を救うために命を落としたことが明かされる。アリシアが画布世界に入った動機の根幹には、この罪責感が据えられてる。クレアはまた、もしアリシアが再び作家たちに利用されても助けないという、冷淡だが現実的な予告をする。クレアにとって妹を画布の中に囲っておくことは感情的な突き放しではなく戦略的な保護でもある。
また、クレアはアリシアに画布の中で自分を描き直して顔と喉を元に戻すように告げる。この世界では画家が画布内部で自身の身体を画家としての力で改変できることを示唆しており、これは Act III での重要な設定である。
なお、画布世界に入る前にフォトモードを使ってさまざまな俯瞰でアトリエ内を見ると良い。ルノワールとアリーンが創作に没頭するためにここで寝泊まりしていた跡や、天井に描かれたアクソンなど、アリシア視点では気付かなかった細部を見ることができる。
9.2.
アリシアからマエルへ
アリシアは母を引き剥がすだけでなく、引き剥がした母が再びキャンバスに入らないようにキャンバスそのものを隠すこと提案する。クレアと共にキャンバスを隠すが、これに対してクレアが告げる根本解は真に終わらせるには画布を破壊するしかなく、それは画布の中に残る真のヴェルソの魂の最後の欠片が「描くのをやめる」ことによってのみ達成されるという、本作の世界観の核心を明かす。画布世界の根源はアリーンが維持しているのではなく、ヴェルソの魂の欠片を支柱として成立しており、母はその支柱を頼りに画布へ留まっている。
画布へ入ったアリシアは即座に母アリーンのクロマに飲み込まれ、アリーンの創造物として描き直され、自分の主体性を保てないまま画布世界に取り込まれる。姉のクレアは外からそれを俯瞰しながら、自分が画布の世界から戻るまでの間に妹を作家たちとの争いに巻き込まないためにはかえって都合が良いだろうと受容する。Act I でマエルがルミエール市民だと疑いなく信じていたり、Act II でヴェルソに実の兄を見出さなかった理由がここで判明する。
アリシアはルミエールで一人の女児として生まれ落ち、画布の住人である両親役の二人からマエルの名付けを受ける。母親役の女性から娘に告げる祝福は、画布世界の住人として子を抱いた瞬間から短い間しか一緒にいられないことが織り込まれた、深い愛情に満ちた別れの言葉でもあった。同時に「仲間を見つけ、彼らを導く光になり、世界を変えるでしょう」という祝福は、物語の中でマエルが実際に果たした役割であり、この始まりの祝福が本編の展開を予示する形で置かれている。そしてキャンプの湖畔でヴェルソがマエルの名前の意味を語った言葉が事実であったことをプレーヤーに告げている。
エピローグの会話
火に包まれた屋敷の中に立ち、ゆっくり振り返り手を差し伸べるヴェルソ「君は大丈夫。」
ベットで目を覚ますアリシア。窓の外に見えるエッフェル塔のようなものが見える。クレア「アリシア?」アリシア「…」クレア「よかった、起きているのね。下におりてきて。」「早くしてちょうだい。わたしはルノワールのアトリエにいるわ。」家族の絵を見ながらアリシア「(ヴェルソ… もう家族の肖像画を描くことはないよね。あなたが絶対にいないから。)」クレア「アリシア、ダラダラしないで。廊下の突き当たりよ、場所は分かってるでしょ。」アトリエに入るアリシア。クレア「ようやくね。我が家の小さな影さんのお目覚め。」
出口を出ようとするアリシア「(この扉の向こうに用事はない…) (パリだ。)」
ダイニングホールの壁に掛けられている家族の作人を見るアリシア「(我が家の芸術作品。角にある小さいのはわたしのだ… 母さんがあの壁にふさわしいって認めたのは、これだけ。)」
クレア「うちの両親はホント頑固ね。まだキャンバスの中でケンカしているわ。父さんは母さんをモノリスのてっぺんに監禁して、母さんは父さんをモノリスの下に捕えた。こう着状態よ。」アリシア「(心配だよ。二人がキャンバスに入ってから随分たつもん。)」クレア「他のキャンバスで過ごす時間はもっと長いわ。そんなに焦らなくていい。」アリシア「… …」クレア「分かってるわよ。母さんがキャンバスで過ごし始めて、しばらくになる。おまけにルノワールは時間をムダにしている。助けを求めていない人を助けようとするなんて。対応しなくちゃいけない、もっと急ぎの件があるのに」アリシア「 (見た? …ヴェルソを。)」クレア「アリーンと同じくらいバカね。あいつはヴェルソじゃない。母さんの記憶を元に描かれたコピーよ。覚えておきなさい。」アリシア「(わかってるよ。わたしは子供じゃない。)」クレア「そんな目で見ないで。あなたが子供じゃないのはわかってるけど、大人でもないでしょ。それにわたしたち一家は、警戒感や引き際を見誤った人が多すぎるしね。」アリシア「(母さんを助けられる?)」クレア「何を助けろって言うの?逃げて隠れること?それなら母さんはもう成功してるでしょ。はっきり言うわ。アリーンがキャンバスの中で思考を停止させていたいなら、放っておけば良い。」アリシア「…」クレア「悲しみは言い訳にはならない。私たちはみんな悲しんでいるの。あの人は大人の女で画家の評議会の議長だった。自分の責任を怠った。あの人を甘やかしているヒマはないの。ヴェルソが死ぬ前なら、あの人もそう言ってたでしょうね。アリシア「(父さんを助けられる?)」クレア「もう助けたわ。アリーンはルノワールより腕がいいけど、わたしが手を貸したからルノワールの方が有利よ。ペットたちを置いたの。“クロマを操り、キャンバスを操る女”。母さんのクロマは奪えないけど、クロマが母さんに戻ることを防ぐことはできる。」アリシア「…」クレア「ええ、これでじゅうぶん。後は時間の問題よ。母さんの力が弱まれば、ルノワールは母さんの最古の創造物たちを消せる。あの不愉快な偽の家族を除いてね。母さんはアイツらを不死にしたいの。でも幸い、かなりの役立たずでもある。」クレア「わたしがいない間、自分で自分の面倒を見るのよ。」アリシア「(行っちゃうの?)」クレア「現実を見て。わたしたち家族が悼んでいるからと言って、世界は止まらない。衝突は広まっているわ。わたしたち画家が生き延びるために、しなくちゃいけないことがある。」アリシア「(わたし… 手伝いたい。)」クレア「あなたにできることはないわ。弱すぎて役に立たない。足手まといになる。前に一度、作家たちはわたしたちに対してあなたを利用した。彼らはためらいなく同じことをするはず。わたしがヴェルソと同じ選択をするとは約束できないわ。ヴェルソは自分の人生と引き換えにあなたを救った。だからわたしは彼を愛しているし憎んでもいる。あの大バカ者。ただし… 本気で役に立ちたいなら、キャンバスに入ってルノワールを手伝って。すぐにでも、あの人をこっちに連れ戻さなくちゃいけない。わたしはこの戦いを、必要なら独りで戦うつもり。だけど、どちらかと言えばイヤなの。ルノワールを手伝える?」アリシア「…」クレア「忘れないで。キャンバスにあの二人がいるのはひとえに、あなたの無邪気さのせいでヴェルソが命を失ったからよ。」アリシア「…」クレア「よし。準備ができたらキャンバスに入って。それから中で喉を描き直すのよ。会話の仕方をすっかり忘れてしまう前にね。」
父と母の前のキャンバスの前に立つアリシア「(ヴェルソの子供の頃のキャンバスだ。よくここで遊んだな… ヴェルソがエスキエとモノコを描いた場所。今は母さんと父さんが戦っている場所。クレアの言うとおり。わたしのせいだ。元に戻す手伝いをしなくちゃ。わたしは元に戻したい。本当に。わたしにできるなら… ヴェルソならそうするはず。それに… また痛みなく話したり呼吸したりできるようになったら… きっといいだろうなあ。わたしの顔も… だからこうするってわけじゃない、違う… こうするのが正しいことだから。わたしがあんなことを引き起こしたから…)」
クレアとキャンバスの前に立つアリシア「キャンバスから母さんを追い出してもまた戻ろうとするよ。キャンバスを隠さないと…」クレア「確かにそうね。それに… かなり巧みな隠し場所を選んだわね。それでも見つかるでしょうけど… 驚いたわ。唯一真の意味で終わらせるには、このキャンバスを壊すしかない。つまりそれは、ヴェルソの魂の最後の欠片が絵を描くのをやめるということ。」
日食の太陽。画布の世界に入ったアリシア。クレア「ね、そんなに大変じゃなかったでしょう。まって… あれはアリーンのクロマ。落ち着いて、主導権を握られないで。冷静に、アリシア。じゃないと描き… まったく、幸先がいいわね。あなたはアリーンの創造物としてこの世界で生まれ変わることになる。楽しんで。少なくとも、わたしが戻るまでは面倒ごとに巻き込まれないで済むでしょう。」
画布の世界でマエル (アリシア) が生まれる。ルミエールの男「ああ、女の子… 女の子だ!かわいいな。本当に… 本当に愛らしい声だ。名前は決めたのかい?」ルミエールの女「ええ。ああ、愛しい子。一緒にいられる時間はほんの少ししかない。あなたが私たちを知ることはなくて… 愛しているわ。伝えたいわ… あなたは一人じゃない。あなたはいつだって、私が腕に抱えた愛しい子。とびきりの笑顔で笑うでしょう。虹色の涙を流すでしょう。愛を知り、痛みを知るでしょう。喪失も嫌というほど知るでしょう。わたしたちの生きる世界は過酷だから。でもあなたは強い子。きっと生きてゆける。あなたはきっと葛藤して… 学びを得るはず。仲間と呼べる人を見つけるでしょう。そしてその人たちを導く光になるでしょう。そして世界と、周りの人たちを変える。あなたは永遠に私たちのお姫様。名前は決めていたの。この子の名前は… マエル。」
10.
ここまでの世界の真相
ルノワール戦からクレアが告げる真相に至るまで、終盤は立て続けに情報が開示される。ここで Act II 終了時点で判明している世界の真相を整理しておこう。
10.1.
現実世界のデサンドル家
父ルノワール、母アリーン、長女クレア、長男ヴェルソ、末娘アリシア (そして犬のモノコ三世とその子ノコ) からなるデサンドル家は、ベル・エポックのパリに暮らす画家の家族。クレアによれば、画家としての技量は父ルノワールより母アリーンの方が上で、クレア自身も相当の才に恵まれていることがうかがえる。末娘アリシアは父と兄にいくらか甘やかされて育ち、絵はあまり得意でなかった。モノリス内部で垣間見える幻影には、アリーンがヴェルソやアリシア、マエルに絵やピアノの手ほどきをする場面がある。クレアの部屋にはハープが置かれ、ヴェルソは絵よりもピアノを好んだ。
10.2.
ヴェルソが幼少期に描いた画布世界
ヴェルソは幼い頃、キャンバスにおとぎ話のような絵を描いていた。空を飛ぶ不思議な生き物エスキエ、デサンドル家の飼い犬の親子をモデルにしたモノコとノコ、さらにジェストラルやグランディスといった画布の住人も、その多くはこの時期にヴェルソの筆から生まれたものである。
この世界では、現実の人間が絵の中へ入ることは特別なことではない。ヴェルソ・クレア・アリシアの三兄妹も、幼い頃はしばしばこの画布世界へ遊びに来ていた。クレアがフランソワの親友であったこと、空飛ぶ屋敷での少年の話、そしてキャンプでのエスキエの言動の端々には、マエルをかつて共に遊んだアリシアとして認識していることを示唆している。
この画布はヴェルソの意志と想像力の中から生まれ、後にアリーンが描き加えたルミエールの街と市民の層が重なっている。子どもの空想とベル・エポックの街並みとがどこか不調和に同居しているのは、二層を生み出した者も、その年齢も動機も、まるで異なるためである。亡きヴェルソの魂の欠片が今もなおこの世界に宿り、ジェストラルの蘇生儀礼のような世界本来の循環を維持しているのは、この画布がひとりの画家の器にとどまらず、描いた者の意志そのものを孕んだ空間であることを示している。
10.3.
屋敷の火事
やがて現実世界では、画家と作家の対立が深刻化していった。そうしたある日、デサンドル家の屋敷で大きな火事が起きる。ヴェルソは妹アリシアを庇って命を落とし、アリシア自身も重い火傷を負った。この出来事は、燃える屋敷、炎の中に立つヴェルソ、モノリスの直前でマエルの頭に点く炎といった断片的なフラッシュバックとして、物語の随所に差し挟まれてきたものである。
火事の詳しい原因は語られないが、評議会の議長であったアリーンを狙って作家派閥が仕掛けたとする疑い、あるいは証拠があり、クレアは現実世界でその追及に奔走している。そして、経緯は不明ながら、アリシアはこの火事を起こすために作家たちに利用されたのだ、とデサンドル一家は考えている。またこの火事ときにルノワールは家に居なかったことをルノワール戦の会話で明かしている。
この火事は、その後に続くすべての出来事の起点となっている。ヴェルソの死がアリーンを画布に引きこもらせ、アリーンの引きこもりがルノワールを画布へと駆り立て、それが崩壊を招いた。第 33 遠征隊の旅は、デサンドル家の悲劇の一日から地続きに連なっている。
10.4.
アリーンの逃避
母アリーンは、息子を失った悲しみに耐えきれず、ヴェルソが幼い頃に描いた絵の中へ閉じこもった。そして画布の中でヴェルソを甦らせ、現実のパリを模したルミエールとその市民を描き、さらにルノワール・クレア・アリシアの姿も描いて、家族とともにそこで暮らし始めた。これが画布世界のデサンドル一家である。子どもの空想と、ベル・エポック期の街並みや人々とがやや不調和に同居しているのは、それらを描いた者も、描いた年齢も、描いた動機も異なるためである。なお、この画布には今も亡きヴェルソの魂の欠片が残って絵を描き続けており、ジェストラルの蘇生儀礼に見られるような世界本来の循環は、アリーンの営みとは独立して機能している。
アリーンがヴェルソを甦らせながら、アリシアの火傷は描き直さずに残したことには、画家としての倫理的な一線がうかがえる。現実のヴェルソはすでに失われており、画布の中で甦らせても「現実のヴェルソを否定し、上書きする」ことにはならない。だが現実のアリシアはいま傷を負って生きている。その姿を画布の中で無傷に描き直すことは、「現実のアリシアを否定し、その傷を無かったことにする」行為になりかねない。おそらくアリーンはそう判断し、火傷を負ったままのアリシアを画布の中でも受け入れていたのだろう。事実、旧ルミエールの屋敷で垣間見えたアリーン (ペイントレス) と画布のアリシアの間には、母と娘のような距離感がうかがえた。
10.5.
ルノワールの介入と崩壊
父ルノワールはこの状況を憂え、自らも画布の中へ入り、アリーンが描いた人々を抹消することで彼女を絵から引き剥がそうとした。この衝突が、画布世界で起きた「崩壊」である。アリーンとルノワールの応酬の果てにルミエールは大陸から切り離され、アリーンは自らの描いた家族を抹消されぬよう不死に作り変えた。旧ルミエール後のキャンプでヴェルソがシエルに自身の髪の話をしたとき、崩壊からしばらくして俺の髪は白くなったと語っている。おそらく、その時にアリーンの手で不死になったのだろう。
やがて二人は、アリーン (ペイントレス) をモノリスの頂上に、ルノワール (キュレーター) をモノリス下の「ルノワールの下書き」に、と互いを幽閉し合うことで、ひとまずの均衡へ達する。だが対立はその後も水面下で続いており、モノリスに刻まれる数字は、アリーンがこの画布世界をあとどれだけ維持できるかという、彼女の劣勢の度合いを表していた。年ごとに数字が減ってゆくのは抹消の宣告ではなく、彼女が押し負け、衰弱してゆく過程の記録にほかならない。
画布のヴェルソは、最初の遠征についてルネに問われたとき、当時はまだペイントレスのことを知らず、ただ自分の母親を探していた、と答えている。すなわち、世界の真実を知らない画布のヴェルソは、崩壊後に行方の知れなくなった母アリーンを捜していたのである。おそらくクレアとアリシアも、この第 0 遠征隊に名を連ねていただろう。
10.6.
クレアの介入とネヴロン
母アリーンと対照的なのが長女クレアである。クレアは、家族がこの悲嘆に囚われ続けていること自体を解決すべき事態と捉え、その根源、すなわち火事を引き起こした作家たちへの復讐を最優先に据えている。現実世界で彼女がその追及に奔走している様子は、忘れ去られた戦場で会う「消えゆく女」との会話からうかがえる。多忙な彼女は、父ルノワールが画布世界の諍いに早く決着をつけ、現実に戻って自分を手伝うことを望んでいる。
クレアは、画布の外からルノワールを支援するために「クロマを操り、キャンバスを操る女」を画布の世界へ送り込み、ネヴロンを作らせている。屋敷のクレアの部屋にネヴロンの絵画や彫刻が飾られていたことから、ネヴロンは元々現実のクレアの作品であり、自身もネヴロンを生み出せるとわかる。ネヴロンに殺された隊員の亡骸にクロマが残っていたのは、そのクロマを母アリーンに還元させず、彼女を衰弱させるためだと、エピローグでクレア自身が明かしている。
10.7.
マエルの正体
マエルは、現実世界のアリシア・デサンドルである。
火事で兄ヴェルソを失い、自らも顔と片目に重い火傷を負ったアリシアは、姉クレアの手で屋敷から運び出され、辛うじて一命を取り留めた。両親が画布の中で衝突を続けるなか、アリシアもまた父を支援するために画布へと入る。そこで彼女は火傷の跡を消し、失った声を取り戻すが、その矢先に母アリーンのクロマに飲み込まれて記憶を失い、そのまま画布世界でマエルとして生き直すことになった。Act I のマエルが自分をこの世界の住人だと信じて疑わず、Act II でヴェルソに実の兄を見いださなかったのはこのためである。
彼女が画布へ入った動機には、父を支援するという表向きの理由だけでなく、声すら出せない現実に留まるよりも元の姿を取り戻して生きるほうがよほど楽しいだろうという、現実逃避の側面もあった。
Act II の終盤では、画布のルノワールもペイントレスも最終的にマエルの手を介して消滅する。これはマエル自身もまたペイントレス (画家) であるために抹消と同様の能力を発動できるということを示唆している。









