不動点反復法

Takami Torao
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不動点反復法 (fixed-point iteration) は、集合 からそれ自身への写像 が与えられたとき、方程式 の解を求めるための数値解析的手法。このとき を不動点 (fixed-point) と呼ぶ。初期値 から開始し、漸化式 を反復適用することで不動点への収束列を構成する。

定義と性質

集合 上の写像 に対し、 を満たす点 を の不動点または固定点と定義する。不動点反復法は、任意の初期値 に対して列を生成し、この列が収束する極限として不動点を近似的に求める手法である。

グラフ上では、連続関数 の不動点は曲線 と対角線 の交点の 座標である。また集合 上に群 が作用しているとき、どの に対しても となる をこの作用の不動点と言う。

Table of Contents

  1. 定義と性質
    1. 例1. 反復関数 の不動点
  2. 不動点定理
  3. 参照

実数で定義される関数 と 上の点 が与えられたとき、不動点反復法は以下の数列で表される。ここで は不動点 に収束することを期待する数列である。

の不動点近似を求める場合、 と変形し という漸化式とみなして数列化を行う。

  • 反復関数 がリプシッツ連続であり、リプシッツ定数が 1 より小さいと反復法は収束しやすい。

  • 初期値が適切でないと、習得しなかったり他の不動点に収束することがある。

  • 初期値の選び方により収束が遅くなることがあるため、収束の早さを改善するための工夫が必要になることがある。

不動点反復法はニューラルネットワークの学習 (RNN)、固有ベクトル・固有値の算出 (PageRank アルゴリズム)、変分オートエンコーダー (VAE)、EM アルゴリズム、線形回帰など、さまざまなアルゴリズムや最適化プロセスで使われている。

例1. 反復関数 の不動点

例として関数 を用いて不動点反復法を説明する。この関数の不動点は を満たす で、解析的に (黄金比の比率) として求めることができる。

  1. 初期設定: 初期値 を適当な値に設定する。ここでは例として とする。

  2. 反復適用: 反復関数 を適用して式 () の計算を繰り返す。

  3. 収束判定: 収束条件 (例えば 、つまり前後の反復差が十分に小さい場合) を満たすまで反復を繰り返す。

この手順での値 の収束を Table 1 に示す。9 回の反復で 1.6180 と近似した値に収束していることがわかる。

Table 1. 反復関数 の不動点 の収束

不動点定理

不動点定理 (fixed-point theorem) は不動点が存在するための十分条件を与える定理の総称である。以下に有名な不動点定理とその十分条件を列挙する [1]。

バナッハの不動点定理 (縮小写像の原理)

が完備な距離空間で が縮小写像。

ブラウワーの不動点定理

が 内の閉凸集合またはそれと同相な閉集合で、 が連続写像。

レフシェッツの不動点定理

が有限多面体で、 が連続写像かつ のレフシェッツ数が 0 でない。

シャウダーの不動点定理

がバナッハ空間内の閉凸集合、 が連続関数で、その像 がコンパクト集合。

ティホノフの不動点定理

がバナッハ空間内のコンパクトな凸集合で、 が連続写像。

角谷の不動点定理

内のコンパクト凸集合 上で定義され、空でない の閉凸部分集合を値とする写像は、上半連続ならば不動点を持つ。数理経済学におけるナッシュ均衡の解の存在に適用されている。

参照

  1. 青本和彦, et al. 岩波数学入門辞典. 岩波書店 2005.